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Posted by Shota Maehara : 5月 4, 2011

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マタイによる福音書

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

マタイによる福音書

 第一章
01:01> アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図。
01:02> アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父、ヤコブはユダとその兄弟たちとの父、
01:03> ユダはタマルによるパレスとザラとの父、パレスはエスロンの父、エスロンはアラムの父、
01:04> アラムはアミナダブの父、アミナダブはナアソンの父、ナアソンはサルモンの父、
01:05> サルモンはラハブによるボアズの父、ボアズはルツによるオベデの父、オベデはエッサイの父、
01:06> エッサイはダビデ王の父であった。ダビデはウリヤの妻によるソロモンの父であり、
01:07> ソロモンはレハベアムの父、レハベアムはアビヤの父、アビヤはアサの父、
01:08> アサはヨサパテの父、ヨサパテはヨラムの父、ヨラムはウジヤの父、
01:09> ウジヤはヨタムの父、ヨタムはアハズの父、アハズはヒゼキヤの父、
01:10> ヒゼキヤはマナセの父、マナセはアモンの父、アモンはヨシヤの父、
01:11> ヨシヤはバビロンへ移されたころ、エコニヤとその兄弟たちとの父となった。
01:12> バビロンへ移されたのち、エコニヤはサラテルの父となった。サラテルはゾロバベルの父、
01:13> ゾロバベルはアビウデの父、アビウデはエリヤキムの父、エリヤキムはアゾルの父、
01:14> アゾルはサドクの父、サドクはアキムの父、アキムはエリウデの父、
01:15> エリウデはエレアザルの父、エレアザルはマタンの父、マタンはヤコブの父、
01:16> ヤコブはマリヤの夫ヨセフの父であった。このマリヤからキリストといわれるイエスがお生れになった。
01:17> だから、アブラハムからダビデまでの代は合わせて十四代、ダビデからバビロンへ移されるまでは十四代、そして、バビロンへ移されてからキリストまでは十四代である。
01:18> イエス・キリストの誕生の次第はこうであった。母マリヤはヨセフと婚約していたが、まだ一緒にならない前に、聖霊によって身重になった。
01:19> 夫ヨセフは正しい人であったので、彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した。
01:20> 彼がこのことを思いめぐらしていたとき、主の使が夢に現れて言った、「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。
01:21> 彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。
01:22> すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。すなわち、
01:23> 「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。これは、「神われらと共にいます」という意味である。
01:24> ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。
01:25> しかし、子が生れるまでは、彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。
 第二章
02:01> イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、
02:02> 「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。
02:03> ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。
02:04> そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、キリストはどこに生れるのかと、彼らに問いただした。
02:05> 彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、
02:06> 『ユダの地、ベツレヘムよ、おまえはユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。おまえの中からひとりの君が出て、わが民イスラエルの牧者となるであろう』」。
02:07> そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、
02:08> 彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。
02:09> 彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
02:10> 彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
02:11> そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
02:12> そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。
02:13> 彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った、「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。
02:14> そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、
02:15> ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。
02:16> さて、ヘロデは博士たちにだまされたと知って、非常に立腹した。そして人々をつかわし、博士たちから確かめた時に基いて、ベツレヘムとその附近の地方とにいる二歳以下の男の子を、ことごとく殺した。
02:17> こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就したのである。
02:18> 「叫び泣く大いなる悲しみの声が/ラマで聞えた。ラケルはその子らのためになげいた。子らがもはやいないので、慰められることさえ願わなかった」。
02:19> さて、ヘロデが死んだのち、見よ、主の使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて言った、
02:20> 「立って、幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。
02:21> そこでヨセフは立って、幼な子とその母とを連れて、イスラエルの地に帰った。
02:22> しかし、アケラオがその父ヘロデに代ってユダヤを治めていると聞いたので、そこへ行くことを恐れた。そして夢でみ告げを受けたので、ガリラヤの地方に退き、
02:23> ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。
 第三章
03:01> そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教を宣べて言った、
03:02> 「悔い改めよ、天国は近づいた」。
03:03> 預言者イザヤによって、「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と言われたのは、この人のことである。
03:04> このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
03:05> すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、
03:06> 自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
03:07> ヨハネは、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けようとしてきたのを見て、彼らに言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか。
03:08> だから、悔改めにふさわしい実を結べ。
03:09> 自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。
03:10> 斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。
03:11> わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。しかし、わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
03:12> また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
03:13> そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。
03:14> ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。
03:15> しかし、イエスは答えて言われた、「今は受けさせてもらいたい。このように、すべての正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの言われるとおりにした。
03:16> イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊がはとのように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。
03:17> また天から声があって言った、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
 第四章
04:01> さて、イエスは御霊によって荒野に導かれた。悪魔に試みられるためである。
04:02> そして、四十日四十夜、断食をし、そののち空腹になられた。
04:03> すると試みる者がきて言った、「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」。
04:04> イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。
04:05> それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、宮の頂上に立たせて
04:06> 言った、「もしあなたが神の子であるなら、下へ飛びおりてごらんなさい。『神はあなたのために御使たちにお命じになると、あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』と書いてありますから」。
04:07> イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。
04:08> 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて
04:09> 言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。
04:10> するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
04:11> そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちがみもとにきて仕えた。
04:12> さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。
04:13> そしてナザレを去り、ゼブルンとナフタリとの地方にある海べの町カペナウムに行って住まわれた。
04:14> これは預言者イザヤによって言われた言が、成就するためである。
04:15> 「ゼブルンの地、ナフタリの地、海に沿う地方、ヨルダンの向こうの地、異邦人のガリラヤ、
04:16> 暗黒の中に住んでいる民は大いなる光を見、死の地、死の陰に住んでいる人々に、光がのぼった」。
04:17> この時からイエスは教を宣べはじめて言われた、「悔い改めよ、天国は近づいた」。
04:18> さて、イエスがガリラヤの海べを歩いておられると、ふたりの兄弟、すなわち、ペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレとが、海に網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。
04:19> イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。
04:20> すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。
04:21> そこから進んで行かれると、ほかのふたりの兄弟、すなわち、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、父ゼベダイと一緒に、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。そこで彼らをお招きになると、
04:22> すぐ舟と父とをおいて、イエスに従って行った。
04:23> イエスはガリラヤの全地を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
04:24> そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。
04:25> こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの向こうから、おびただしい群衆がきてイエスに従った。
 第五章
05:01> イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。
05:02> そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
05:03> 「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
05:04> 悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。
05:05> 柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
05:06> 義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。
05:07> あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
05:08> 心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
05:09> 平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。
05:10> 義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
05:11> わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。
05:12> 喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
05:13> あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。
05:14> あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
05:15> また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。
05:16> そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
05:17> わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。
05:18> よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。
05:19> それだから、これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。
05:20> わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。
05:21> 昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けねばならない』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
05:22> しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を受けねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。
05:23> だから、祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、
05:24> その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。
05:25> あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。
05:26> よくあなたに言っておく。最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。
05:27> 『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
05:28> しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。
05:29> もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。
05:30> もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。
05:31> また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
05:32> しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。
05:33> また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
05:34> しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。
05:35> また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは『大王の都』であるから。
05:36> また、自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもすることができない。
05:37> あなたがたの言葉は、ただ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以上に出ることは、悪から来るのである。
05:38> 『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
05:39> しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
05:40> あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。
05:41> もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共に二マイル行きなさい。
05:42> 求める者には与え、借りようとする者を断るな。
05:43> 『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
05:44> しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。
05:45> こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。
05:46> あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。そのようなことは取税人でもするではないか。
05:47> 兄弟だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。そのようなことは異邦人でもしているではないか。
05:48> それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。
 第六章
06:01> 自分の義を、見られるために人の前で行わないように、注意しなさい。もし、そうしないと、天にいますあなたがたの父から報いを受けることがないであろう。
06:02> だから、施しをする時には、偽善者たちが人にほめられるため会堂や町の中でするように、自分の前でラッパを吹きならすな。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
06:03> あなたは施しをする場合、右の手のしていることを左の手に知らせるな。
06:04> それは、あなたのする施しが隠れているためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
06:05> また祈る時には、偽善者たちのようにするな。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
06:06> あなたは祈る時、自分のへやにはいり、戸を閉じて、隠れた所においでになるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
06:07> また、祈る場合、異邦人のように、くどくどと祈るな。彼らは言葉かずが多ければ、聞きいれられるものと思っている。
06:08> だから、彼らのまねをするな。あなたがたの父なる神は、求めない先から、あなたがたに必要なものはご存じなのである。
06:09> だから、あなたがたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。
06:10> 御国がきますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。
06:11> わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。
06:12> わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください。
06:13> わたしたちを試みに会わせないで、悪しき者からお救いください。
06:14> もしも、あなたがたが、人々のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天の父も、あなたがたをゆるして下さるであろう。
06:15> もし人をゆるさないならば、あなたがたの父も、あなたがたのあやまちをゆるして下さらないであろう。
06:16> また断食をする時には、偽善者がするように、陰気な顔つきをするな。彼らは断食をしていることを人に見せようとして、自分の顔を見苦しくするのである。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
06:17> あなたがたは断食をする時には、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。
06:18> それは断食をしていることが人に知れないで、隠れた所においでになるあなたの父に知られるためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いて下さるであろう。
06:19> あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。
06:20> むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。
06:21> あなたの宝のある所には、心もあるからである。
06:22> 目はからだのあかりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいだろう。
06:23> しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。
06:24> だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。
06:25> それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。
06:26> 空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。
06:27> あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。
06:28> また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。
06:29> しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
06:30> きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。
06:31> だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。
06:32> これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。
06:33> まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。
06:34> だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
 第七章
07:01> 人をさばくな。自分がさばかれないためである。
07:02> あなたがたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう。
07:03> なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
07:04> 自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。
07:05> 偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるだろう。
07:06> 聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。
07:07> 求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。
07:08> すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。
07:09> あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。
07:10> 魚を求めるのに、へびを与える者があろうか。
07:11> このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天にいますあなたがたの父はなおさら、求めてくる者に良いものを下さらないことがあろうか。
07:12> だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。これが律法であり預言者である。
07:13> 狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいって行く者が多い。
07:14> 命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。
07:15> にせ預言者を警戒せよ。彼らは、羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲なおおかみである。
07:16> あなたがたは、その実によって彼らを見わけるであろう。茨からぶどうを、あざみからいちじくを集める者があろうか。
07:17> そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
07:18> 良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることはできない。
07:19> 良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれる。
07:20> このように、あなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。
07:21> わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。
07:22> その日には、多くの者が、わたしにむかって『主よ、主よ、わたしたちはあなたの名によって預言したではありませんか。また、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの力あるわざを行ったではありませんか』と言うであろう。
07:23> そのとき、わたしは彼らにはっきり、こう言おう、『あなたがたを全く知らない。不法を働く者どもよ、行ってしまえ』。
07:24> それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。
07:25> 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。
07:26> また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。
07:27> 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである」。
07:28> イエスがこれらの言を語り終えられると、群衆はその教にひどく驚いた。
07:29> それは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。
 第八章
08:01> イエスが山をお降りになると、おびただしい群衆がついてきた。
08:02> すると、そのとき、ひとりのらい病人がイエスのところにきて、ひれ伏して言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
08:03> イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、らい病は直ちにきよめられた。
08:04> イエスは彼に言われた、「だれにも話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた供え物をささげて、人々に証明しなさい」。
08:05> さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、
08:06> 「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。
08:07> イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。
08:08> そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。
08:09> わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
08:10> イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。
08:11> なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、
08:12> この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。
08:13> それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。
08:14> それから、イエスはペテロの家にはいって行かれ、そのしゅうとめが熱病で、床についているのをごらんになった。
08:15> そこで、その手にさわられると、熱が引いた。そして女は起きあがってイエスをもてなした。
08:16> 夕暮になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくおいやしになった。
08:17> これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。
08:18> イエスは、群衆が自分のまわりに群がっているのを見て、向こう岸に行くようにと弟子たちにお命じになった。
08:19> するとひとりの律法学者が近づいてきて言った、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従ってまいります」。
08:20> イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。
08:21> また弟子のひとりが言った、「主よ、まず、父を葬りに行かせて下さい」。
08:22> イエスは彼に言われた、「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」。
08:23> それから、イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。
08:24> すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。
08:25> そこで弟子たちはみそばに寄ってきてイエスを起し、「主よ、お助けください、わたしたちは死にそうです」と言った。
08:26> するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。
08:27> 彼らは驚いて言った、「このかたはどういう人なのだろう。風も海も従わせるとは」。
08:28> それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。
08:29> すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。
08:30> さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。
08:31> 悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
08:32> そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
08:33> 飼う者たちは逃げて町に行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいを知らせた。
08:34> すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。
 第九章
09:01> さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。
09:02> すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。
09:03> すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。
09:04> イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。
09:05> あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
09:06> しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
09:07> すると彼は起きあがり、家に帰って行った。
09:08> 群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。
09:09> さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
09:10> それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。
09:11> パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
09:12> イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。
09:13> 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
09:14> そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
09:15> するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。
09:16> だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。
09:17> だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。
09:18> これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。
09:19> そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。
09:20> するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。
09:21> み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。
09:22> イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。
09:23> それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。
09:24> 「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
09:25> しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。
09:26> そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。
09:27> そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。
09:28> そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。
09:29> そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。
09:30> すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。
09:31> しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。
09:32> 彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれて口のきけない人をイエスのところに連れてきた。
09:33> すると、悪霊は追い出されて、口のきけない人が物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。
09:34> しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。
09:35> イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
09:36> また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。
09:37> そして弟子たちに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。
09:38> だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。
 第十章
10:01> そこで、イエスは十二弟子を呼び寄せて、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやす権威をお授けになった。
10:02> 十二使徒の名は、次のとおりである。まずペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、それからゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
10:03> ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、
10:04> 熱心党のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切った者である。
10:05> イエスはこの十二人をつかわすに当り、彼らに命じて言われた、「異邦人の道に行くな。またサマリヤ人の町にはいるな。
10:06> むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところに行け。
10:07> 行って、『天国が近づいた』と宣べ伝えよ。
10:08> 病人をいやし、死人をよみがえらせ、らい病人をきよめ、悪霊を追い出せ。ただで受けたのだから、ただで与えるがよい。
10:09> 財布の中に金、銀または銭を入れて行くな。
10:10> 旅行のための袋も、二枚の下着も、くつも、つえも持って行くな。働き人がその食物を得るのは当然である。
10:11> どの町、どの村にはいっても、その中でだれがふさわしい人か、たずね出して、立ち去るまではその人のところにとどまっておれ。
10:12> その家にはいったなら、平安を祈ってあげなさい。
10:13> もし平安を受けるにふさわしい家であれば、あなたがたの祈る平安はその家に来るであろう。もしふさわしくなければ、その平安はあなたがたに帰って来るであろう。
10:14> もしあなたがたを迎えもせず、またあなたがたの言葉を聞きもしない人があれば、その家や町を立ち去る時に、足のちりを払い落しなさい。
10:15> あなたがたによく言っておく。さばきの日には、ソドム、ゴモラの地の方が、その町よりは耐えやすいであろう。
10:16> わたしがあなたがたをつかわすのは、羊をおおかみの中に送るようなものである。だから、へびのように賢く、はとのように素直であれ。
10:17> 人々に注意しなさい。彼らはあなたがたを衆議所に引き渡し、会堂でむち打つであろう。
10:18> またあなたがたは、わたしのために長官たちや王たちの前に引き出されるであろう。それは、彼らと異邦人とに対してあかしをするためである。
10:19> 彼らがあなたがたを引き渡したとき、何をどう言おうかと心配しないがよい。言うべきことは、その時に授けられるからである。
10:20> 語る者は、あなたがたではなく、あなたがたの中にあって語る父の霊である。
10:21> 兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、また子は親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。
10:22> またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
10:23> 一つの町で迫害されたなら、他の町へ逃げなさい。よく言っておく。あなたがたがイスラエルの町々を回り終らないうちに、人の子は来るであろう。
10:24> 弟子はその師以上のものではなく、僕はその主人以上の者ではない。
10:25> 弟子がその師のようであり、僕がその主人のようであれば、それで十分である。もし家の主人がベルゼブルと言われるならば、その家の者どもはなおさら、どんなにか悪く言われることであろう。
10:26> だから彼らを恐れるな。おおわれたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。
10:27> わたしが暗やみであなたがたに話すことを、明るみで言え。耳にささやかれたことを、屋根の上で言いひろめよ。
10:28> また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。
10:29> 二羽のすずめは一アサリオンで売られているではないか。しかもあなたがたの父の許しがなければ、その一羽も地に落ちることはない。
10:30> またあなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。
10:31> それだから、恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。
10:32> だから人の前でわたしを受けいれる者を、わたしもまた、天にいますわたしの父の前で受けいれるであろう。
10:33> しかし、人の前でわたしを拒む者を、わたしも天にいますわたしの父の前で拒むであろう。
10:34> 地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。
10:35> わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。
10:36> そして家の者が、その人の敵となるであろう。
10:37> わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。
10:38> また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。
10:39> 自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。
10:40> あなたがたを受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。
10:41> 預言者の名のゆえに預言者を受けいれる者は、預言者の報いを受け、義人の名のゆえに義人を受けいれる者は、義人の報いを受けるであろう。
10:42> わたしの弟子であるという名のゆえに、この小さい者のひとりに冷たい水一杯でも飲ませてくれる者は、よく言っておくが、決してその報いからもれることはない」。
 第十一章
11:01> イエスは十二弟子にこのように命じ終えてから、町々で教えまた宣べ伝えるために、そこを立ち去られた。
11:02> さて、ヨハネは獄中でキリストのみわざについて伝え聞き、自分の弟子たちをつかわして、
11:03> イエスに言わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」。
11:04> イエスは答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしていることをヨハネに報告しなさい。
11:05> 盲人は見え、足なえは歩き、らい病人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。
11:06> わたしにつまずかない者は、さいわいである」。
11:07> 彼らが帰ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。
11:08> では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。柔らかい着物をまとった人々なら、王の家にいる。
11:09> では、なんのために出てきたのか。預言者を見るためか。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。
11:10> 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』と書いてあるのは、この人のことである。
11:11> あなたがたによく言っておく。女の産んだ者の中で、バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。しかし、天国で最も小さい者も、彼よりは大きい。
11:12> バプテスマのヨハネの時から今に至るまで、天国は激しく襲われている。そして激しく襲う者たちがそれを奪い取っている。
11:13> すべての預言者と律法とが預言したのは、ヨハネの時までである。
11:14> そして、もしあなたがたが受けいれることを望めば、この人こそは、きたるべきエリヤなのである。
11:15> 耳のある者は聞くがよい。
11:16> 今の時代を何に比べようか。それは子供たちが広場にすわって、ほかの子供たちに呼びかけ、
11:17> 『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、胸を打ってくれなかった』と言うのに似ている。
11:18> なぜなら、ヨハネがきて、食べることも、飲むこともしないと、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、
11:19> また人の子がきて、食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。しかし、知恵の正しいことは、その働きが証明する」。
11:20> それからイエスは、数々の力あるわざがなされたのに、悔い改めることをしなかった町々を、責めはじめられた。
11:21> 「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰をかぶって、悔い改めたであろう。
11:22> しかし、おまえたちに言っておく。さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。
11:23> ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。おまえの中でなされた力あるわざが、もしソドムでなされたなら、その町は今日までも残っていたであろう。
11:24> しかし、あなたがたに言う。さばきの日には、ソドムの地の方がおまえよりは耐えやすいであろう」。
11:25> そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。
11:26> 父よ、これはまことにみこころにかなった事でした。
11:27> すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子を知る者は父のほかにはなく、父を知る者は、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほかに、だれもありません。
11:28> すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。
11:29> わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。
11:30> わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである」。
 第十二章
12:01> そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通られた。すると弟子たちは、空腹であったので、穂を摘んで食べはじめた。
12:02> パリサイ人たちがこれを見て、イエスに言った、「ごらんなさい、あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています」。
12:03> そこでイエスは彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えたとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのか。
12:04> すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほか、自分も供の者たちも食べてはならぬ供えのパンを食べたのである。
12:05> また、安息日に宮仕えをしている祭司たちは安息日を破っても罪にはならないことを、律法で読んだことがないのか。
12:06> あなたがたに言っておく。宮よりも大いなる者がここにいる。
12:07> 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か知っていたなら、あなたがたは罪のない者をとがめなかったであろう。
12:08> 人の子は安息日の主である」。
12:09> イエスはそこを去って、彼らの会堂にはいられた。
12:10> すると、そのとき、片手のなえた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に人をいやしても、さしつかえないか」と尋ねた。
12:11> イエスは彼らに言われた、「あなたがたのうちに、一匹の羊を持っている人があるとして、もしそれが安息日に穴に落ちこんだなら、手をかけて引き上げてやらないだろうか。
12:12> 人は羊よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日に良いことをするのは、正しいことである」。
12:13> そしてイエスはその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、ほかの手のように良くなった。
12:14> パリサイ人たちは出て行って、なんとかしてイエスを殺そうと相談した。
12:15> イエスはこれを知って、そこを去って行かれた。ところが多くの人々がついてきたので、彼らを皆いやし、
12:16> そして自分のことを人々にあらわさないようにと、彼らを戒められた。
12:17> これは預言者イザヤの言った言葉が、成就するためである、
12:18> 「見よ、わたしが選んだ僕、わたしの心にかなう、愛する者。わたしは彼にわたしの霊を授け、そして彼は正義を異邦人に宣べ伝えるであろう。
12:19> 彼は争わず、叫ばず、またその声を大路で聞く者はない。
12:20> 彼が正義に勝ちを得させる時まで、いためられた葦を折ることがなく、煙っている燈心を消すこともない。
12:21> 異邦人は彼の名に望みを置くであろう」。
12:22> そのとき、人々が悪霊につかれた盲人で口のきけない人を連れてきたので、イエスは彼をいやして、物を言い、また目が見えるようにされた。
12:23> すると群衆はみな驚いて言った、「この人が、あるいはダビデの子ではあるまいか」。
12:24> しかし、パリサイ人たちは、これを聞いて言った、「この人が悪霊を追い出しているのは、まったく悪霊のかしらベルゼブルによるのだ」。
12:25> イエスは彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ、内部で分れ争う国は自滅し、内わで分れ争う町や家は立ち行かない。
12:26> もしサタンがサタンを追い出すならば、それは内わで分れ争うことになる。それでは、その国はどうして立ち行けよう。
12:27> もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。
12:28> しかし、わたしが神の霊によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。
12:29> まただれでも、まず強い人を縛りあげなければ、どうして、その人の家に押し入って家財を奪い取ることができようか。縛ってから、はじめてその家を掠奪することができる。
12:30> わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。
12:31> だから、あなたがたに言っておく。人には、その犯すすべての罪も神を汚す言葉も、ゆるされる。しかし、聖霊を汚す言葉は、ゆるされることはない。
12:32> また人の子に対して言い逆らう者は、ゆるされるであろう。しかし、聖霊に対して言い逆らう者は、この世でも、きたるべき世でも、ゆるされることはない。
12:33> 木が良ければ、その実も良いとし、木が悪ければ、その実も悪いとせよ。木はその実でわかるからである。
12:34> まむしの子らよ。あなたがたは悪い者であるのに、どうして良いことを語ることができようか。おおよそ、心からあふれることを、口が語るものである。
12:35> 善人はよい倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。
12:36> あなたがたに言うが、審判の日には、人はその語る無益な言葉に対して、言い開きをしなければならないであろう。
12:37> あなたは、自分の言葉によって正しいとされ、また自分の言葉によって罪ありとされるからである」。
12:38> そのとき、律法学者、パリサイ人のうちのある人々がイエスにむかって言った、「先生、わたしたちはあなたから、しるしを見せていただきとうございます」。
12:39> すると、彼らに答えて言われた、「邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、預言者ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。
12:40> すなわち、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるであろう。
12:41> ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
12:42> 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果から、はるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。
12:43> 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからない。
12:44> そこで、出てきた元の家に帰ろうと言って帰って見ると、その家はあいていて、そうじがしてある上、飾りつけがしてあった。
12:45> そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を一緒に引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人ののちの状態は初めよりももっと悪くなるのである。よこしまな今の時代も、このようになるであろう」。
12:46> イエスがまだ群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちとが、イエスに話そうと思って外に立っていた。
12:47> それで、ある人がイエスに言った、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟がたが、あなたに話そうと思って、外に立っておられます」。
12:48> イエスは知らせてくれた者に答えて言われた、「わたしの母とは、だれのことか。わたしの兄弟とは、だれのことか」。
12:49> そして、弟子たちの方に手をさし伸べて言われた、「ごらんなさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。
12:50> 天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。
 第十三章
13:01> その日、イエスは家を出て、海べにすわっておられた。
13:02> ところが、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわられ、群衆はみな岸に立っていた。
13:03> イエスは譬で多くの事を語り、こう言われた、「見よ、種まきが種をまきに出て行った。
13:04> まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。
13:05> ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、
13:06> 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
13:07> ほかの種はいばらの地に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまった。
13:08> ほかの種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
13:09> 耳のある者は聞くがよい」。
13:10> それから、弟子たちがイエスに近寄ってきて言った、「なぜ、彼らに譬でお話しになるのですか」。
13:11> そこでイエスは答えて言われた、「あなたがたには、天国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていない。
13:12> おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
13:13> だから、彼らには譬で語るのである。それは彼らが、見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである。
13:14> こうしてイザヤの言った預言が、彼らの上に成就したのである。『あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。
13:15> この民の心は鈍くなり、その耳は聞えにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。
13:16> しかし、あなたがたの目は見ており、耳は聞いているから、さいわいである。
13:17> あなたがたによく言っておく。多くの預言者や義人は、あなたがたの見ていることを見ようと熱心に願ったが、見ることができず、またあなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである。
13:18> そこで、種まきの譬を聞きなさい。
13:19> だれでも御国の言を聞いて悟らないならば、悪い者がきて、その人の心にまかれたものを奪いとって行く。道ばたにまかれたものというのは、そういう人のことである。
13:20> 石地にまかれたものというのは、御言を聞くと、すぐに喜んで受ける人のことである。
13:21> その中に根がないので、しばらく続くだけであって、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。
13:22> また、いばらの中にまかれたものとは、御言を聞くが、世の心づかいと富の惑わしとが御言をふさぐので、実を結ばなくなる人のことである。
13:23> また、良い地にまかれたものとは、御言を聞いて悟る人のことであって、そういう人が実を結び、百倍、あるいは六十倍、あるいは三十倍にもなるのである」。
13:24> また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである。
13:25> 人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦をまいて立ち去った。
13:26> 芽がはえ出て実を結ぶと、同時に毒麦もあらわれてきた。
13:27> 僕たちがきて、家の主人に言った、『ご主人様、畑におまきになったのは、良い種ではありませんでしたか。どうして毒麦がはえてきたのですか』。
13:28> 主人は言った、『それは敵のしわざだ』。すると僕たちが言った『では行って、それを抜き集めましょうか』。
13:29> 彼は言った、『いや、毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れない。
13:30> 収穫まで、両方とも育つままにしておけ。収穫の時になったら、刈る者に、まず毒麦を集めて束にして焼き、麦の方は集めて倉に入れてくれ、と言いつけよう』」。
13:31> また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、
13:32> それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる」。
13:33> またほかの譬を彼らに語られた、「天国は、パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。
13:34> イエスはこれらのことをすべて、譬で群衆に語られた。譬によらないでは何事も彼らに語られなかった。
13:35> これは預言者によって言われたことが、成就するためである、「わたしは口を開いて譬を語り、世の初めから隠されていることを語り出そう」。
13:36> それからイエスは、群衆をあとに残して家にはいられた。すると弟子たちは、みもとにきて言った、「畑の毒麦の譬を説明してください」。
13:37> イエスは答えて言われた、「良い種をまく者は、人の子である。
13:38> 畑は世界である。良い種と言うのは御国の子たちで、毒麦は悪い者の子たちである。
13:39> それをまいた敵は悪魔である。収穫とは世の終りのことで、刈る者は御使たちである。
13:40> だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。
13:41> 人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、
13:42> 炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
13:43> そのとき、義人たちは彼らの父の御国で、太陽のように輝きわたるであろう。耳のある者は聞くがよい。
13:44> 天国は、畑に隠してある宝のようなものである。人がそれを見つけると隠しておき、喜びのあまり、行って持ち物をみな売りはらい、そしてその畑を買うのである。
13:45> また天国は、良い真珠を捜している商人のようなものである。
13:46> 高価な真珠一個を見いだすと、行って持ち物をみな売りはらい、そしてこれを買うのである。
13:47> また天国は、海におろして、あらゆる種類の魚を囲みいれる網のようなものである。
13:48> それがいっぱいになると岸に引き上げ、そしてすわって、良いのを器に入れ、悪いのを外へ捨てるのである。
13:49> 世の終りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使たちがきて、義人のうちから悪人をえり分け、
13:50> そして炉の火に投げこむであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
13:51> あなたがたは、これらのことが皆わかったか」。彼らは「わかりました」と答えた。
13:52> そこで、イエスは彼らに言われた、「それだから、天国のことを学んだ学者は、新しいものと古いものとを、その倉から取り出す一家の主人のようなものである」。
13:53> イエスはこれらの譬を語り終えてから、そこを立ち去られた。
13:54> そして郷里に行き、会堂で人々を教えられたところ、彼らは驚いて言った、「この人は、この知恵とこれらの力あるわざとを、どこで習ってきたのか。
13:55> この人は大工の子ではないか。母はマリヤといい、兄弟たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。
13:56> またその姉妹たちもみな、わたしたちと一緒にいるではないか。こんな数々のことを、いったい、どこで習ってきたのか」。
13:57> こうして人々はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里や自分の家以外では、どこででも敬われないことはない」。
13:58> そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。
 第十四章
14:01> そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、
14:02> 家来に言った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」。
14:03> というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、獄に入れていた。
14:04> すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
14:05> そこでヘロデはヨハネを殺そうと思ったが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と認めていたからである。
14:06> さてヘロデの誕生日の祝に、ヘロデヤの娘がその席上で舞をまい、ヘロデを喜ばせたので、
14:07> 彼女の願うものは、なんでも与えようと、彼は誓って約束までした。
14:08> すると彼女は母にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。
14:09> 王は困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、それを与えるように命じ、
14:10> 人をつかわして、獄中でヨハネの首を切らせた。
14:11> その首は盆に載せて運ばれ、少女にわたされ、少女はそれを母のところに持って行った。
14:12> それから、ヨハネの弟子たちがきて、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。
14:13> イエスはこのことを聞くと、舟に乗ってそこを去り、自分ひとりで寂しい所へ行かれた。しかし、群衆はそれと聞いて、町々から徒歩であとを追ってきた。
14:14> イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。
14:15> 夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。
14:16> するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。
14:17> 弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。
14:18> イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
14:19> そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。
14:20> みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
14:21> 食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。
14:22> それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。
14:23> そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
14:24> ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
14:25> イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
14:26> 弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。
14:27> しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。
14:28> するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。
14:29> イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。
14:30> しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。
14:31> イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
14:32> ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。
14:33> 舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。
14:34> それから、彼らは海を渡ってゲネサレの地に着いた。
14:35> するとその土地の人々はイエスと知って、その附近全体に人をつかわし、イエスのところに病人をみな連れてこさせた。
14:36> そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。
 第十五章
15:01> ときに、パリサイ人と律法学者たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言った、
15:02> 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」。
15:03> イエスは答えて言われた、「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。
15:04> 神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
15:05> それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、
15:06> 父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。
15:07> 偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、
15:08> 『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
15:09> 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』」。
15:10> それからイエスは群衆を呼び寄せて言われた、「聞いて悟るがよい。
15:11> 口にはいるものは人を汚すことはない。かえって、口から出るものが人を汚すのである」。
15:12> そのとき、弟子たちが近寄ってきてイエスに言った、「パリサイ人たちが御言を聞いてつまずいたことを、ご存じですか」。
15:13> イエスは答えて言われた、「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。
15:14> 彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」。
15:15> ペテロが答えて言った、「その譬を説明してください」。
15:16> イエスは言われた、「あなたがたも、まだわからないのか。
15:17> 口にはいってくるものは、みな腹の中にはいり、そして、外に出て行くことを知らないのか。
15:18> しかし、口から出て行くものは、心の中から出てくるのであって、それが人を汚すのである。
15:19> というのは、悪い思い、すなわち、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、誹りは、心の中から出てくるのであって、
15:20> これらのものが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事することは、人を汚すのではない」。
15:21> さて、イエスはそこを出て、ツロとシドンとの地方へ行かれた。
15:22> すると、そこへ、その地方出のカナンの女が出てきて、「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて苦しんでいます」と言って叫びつづけた。
15:23> しかし、イエスはひと言もお答えにならなかった。そこで弟子たちがみもとにきて願って言った、「この女を追い払ってください。叫びながらついてきていますから」。
15:24> するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。
15:25> しかし、女は近寄りイエスを拝して言った、「主よ、わたしをお助けください」。
15:26> イエスは答えて言われた、「子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
15:27> すると女は言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、小犬もその主人の食卓から落ちるパンくずは、いただきます」。
15:28> そこでイエスは答えて言われた、「女よ、あなたの信仰は見あげたものである。あなたの願いどおりになるように」。その時に、娘はいやされた。
15:29> イエスはそこを去って、ガリラヤの海べに行き、それから山に登ってそこにすわられた。
15:30> すると大ぜいの群衆が、足、手、目や口などが不自由な人々、そのほか多くの人々を連れてきて、イエスの足もとに置いたので、彼らをおいやしになった。
15:31> 群衆は、口のきけなかった人が物を言い、手や足が不自由だった人がいやされ、盲人が見えるようになったのを見て驚き、そしてイスラエルの神をほめたたえた。
15:32> イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。しかし、彼らを空腹のままで帰らせたくはない。恐らく途中で弱り切ってしまうであろう」。
15:33> 弟子たちは言った、「荒野の中で、こんなに大ぜいの群衆にじゅうぶん食べさせるほどたくさんのパンを、どこで手に入れましょうか」。
15:34> イエスは弟子たちに「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
15:35> そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、
15:36> 七つのパンと魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、弟子たちはこれを群衆にわけた。
15:37> 一同の者は食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七つのかごにいっぱいになった。
15:38> 食べた者は、女と子供とを除いて四千人であった。
15:39> そこでイエスは群衆を解散させ、舟に乗ってマガダンの地方へ行かれた。
 第十六章
16:01> パリサイ人とサドカイ人とが近寄ってきて、イエスを試み、天からのしるしを見せてもらいたいと言った。
16:02> イエスは彼らに言われた、「あなたがたは夕方になると、『空がまっかだから、晴だ』と言い、
16:03> また明け方には『空が曇ってまっかだから、きょうは荒れだ』と言う。あなたがたは空の模様を見分けることを知りながら、時のしるしを見分けることができないのか。
16:04> 邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう」。そして、イエスは彼らをあとに残して立ち去られた。
16:05> 弟子たちは向こう岸に行ったが、パンを持って来るのを忘れていた。
16:06> そこでイエスは言われた、「パリサイ人とサドカイ人とのパン種を、よくよく警戒せよ」。
16:07> 弟子たちは、これは自分たちがパンを持ってこなかったためであろうと言って、互に論じ合った。
16:08> イエスはそれと知って言われた、「信仰の薄い者たちよ、なぜパンがないからだと互に論じ合っているのか。
16:09> まだわからないのか。覚えていないのか。五つのパンを五千人に分けたとき、幾かご拾ったか。
16:10> また、七つのパンを四千人に分けたとき、幾かご拾ったか。
16:11> わたしが言ったのは、パンについてではないことを、どうして悟らないのか。ただ、パリサイ人とサドカイ人とのパン種を警戒しなさい」。
16:12> そのとき彼らは、イエスが警戒せよと言われたのは、パン種のことではなく、パリサイ人とサドカイ人との教のことであると悟った。
16:13> イエスがピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は人の子をだれと言っているか」。
16:14> 彼らは言った、「ある人々はバプテスマのヨハネだと言っています。しかし、ほかの人たちは、エリヤだと言い、また、エレミヤあるいは預言者のひとりだ、と言っている者もあります」。
16:15> そこでイエスは彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。
16:16> シモン・ペテロが答えて言った、「あなたこそ、生ける神の子キリストです」。
16:17> すると、イエスは彼にむかって言われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの事をあらわしたのは、血肉ではなく、天にいますわたしの父である。
16:18> そこで、わたしもあなたに言う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てよう。黄泉の力もそれに打ち勝つことはない。
16:19> わたしは、あなたに天国のかぎを授けよう。そして、あなたが地上でつなぐことは、天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれるであろう」。
16:20> そのとき、イエスは、自分がキリストであることをだれにも言ってはいけないと、弟子たちを戒められた。
16:21> この時から、イエス・キリストは、自分が必ずエルサレムに行き、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえるべきことを、弟子たちに示しはじめられた。
16:22> すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめ、「主よ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」と言った。
16:23> イエスは振り向いて、ペテロに言われた、「サタンよ、引きさがれ。わたしの邪魔をする者だ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。
16:24> それからイエスは弟子たちに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
16:25> 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを見いだすであろう。
16:26> たとい人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。
16:27> 人の子は父の栄光のうちに、御使たちを従えて来るが、その時には、実際のおこないに応じて、それぞれに報いるであろう。
16:28> よく聞いておくがよい、人の子が御国の力をもって来るのを見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
 第十七章
17:01> 六日ののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。
17:02> ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、その顔は日のように輝き、その衣は光のように白くなった。
17:03> すると、見よ、モーセとエリヤが彼らに現れて、イエスと語り合っていた。
17:04> ペテロはイエスにむかって言った、「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
17:05> 彼がまだ話し終えないうちに、たちまち、輝く雲が彼らをおおい、そして雲の中から声がした、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。これに聞け」。
17:06> 弟子たちはこれを聞いて非常に恐れ、顔を地に伏せた。
17:07> イエスは近づいてきて、手を彼らにおいて言われた、「起きなさい、恐れることはない」。
17:08> 彼らが目をあげると、イエスのほかには、だれも見えなかった。
17:09> 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。
17:10> 弟子たちはイエスにお尋ねして言った、「いったい、律法学者たちは、なぜ、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。
17:11> 答えて言われた、「確かに、エリヤがきて、万事を元どおりに改めるであろう。
17:12> しかし、あなたがたに言っておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし人々は彼を認めず、自分かってに彼をあしらった。人の子もまた、そのように彼らから苦しみを受けることになろう」。
17:13> そのとき、弟子たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言われたのだと悟った。
17:14> さて彼らが群衆のところに帰ると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて、ひざまずいて、言った、
17:15> 「主よ、わたしの子をあわれんでください。てんかんで苦しんでおります。何度も何度も火の中や水の中に倒れるのです。
17:16> それで、その子をお弟子たちのところに連れてきましたが、なおしていただけませんでした」。
17:17> イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまであなたがたに我慢ができようか。その子をここに、わたしのところに連れてきなさい」。
17:18> イエスがおしかりになると、悪霊はその子から出て行った。そして子はその時いやされた。
17:19> それから、弟子たちがひそかにイエスのもとにきて言った、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。
17:20> するとイエスは言われた、「あなたがたの信仰が足りないからである。よく言い聞かせておくが、もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この山にむかって『ここからあそこに移れ』と言えば、移るであろう。このように、あなたがたにできない事は、何もないであろう。
17:21> 〔しかし、このたぐいは、祈と断食とによらなければ、追い出すことはできない〕」。
17:22> 彼らがガリラヤで集まっていた時、イエスは言われた、「人の子は人々の手にわたされ、
17:23> 彼らに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。弟子たちは非常に心をいためた。
17:24> 彼らがカペナウムにきたとき、宮の納入金を集める人たちがペテロのところにきて言った、「あなたがたの先生は宮の納入金を納めないのか」。
17:25> ペテロは「納めておられます」と言った。そして彼が家にはいると、イエスから先に話しかけて言われた、「シモン、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。
17:26> ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。
17:27> しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい」。
 第十八章
18:01> そのとき、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「いったい、天国ではだれがいちばん偉いのですか」。
18:02> すると、イエスは幼な子を呼び寄せ、彼らのまん中に立たせて言われた、
18:03> 「よく聞きなさい。心をいれかえて幼な子のようにならなければ、天国にはいることはできないであろう。
18:04> この幼な子のように自分を低くする者が、天国でいちばん偉いのである。
18:05> また、だれでも、このようなひとりの幼な子を、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。
18:06> しかし、わたしを信ずるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海の深みに沈められる方が、その人の益になる。
18:07> この世は、罪の誘惑があるから、わざわいである。罪の誘惑は必ず来る。しかし、それをきたらせる人は、わざわいである。
18:08> もしあなたの片手または片足が、罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。両手、両足がそろったままで、永遠の火に投げ込まれるよりは、片手、片足になって命に入る方がよい。
18:09> もしあなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。両眼がそろったままで地獄の火に投げ入れられるよりは、片目になって命に入る方がよい。
18:10> あなたがたは、これらの小さい者のひとりをも軽んじないように、気をつけなさい。あなたがたに言うが、彼らの御使たちは天にあって、天にいますわたしの父のみ顔をいつも仰いでいるのである。
18:11> 〔人の子は、滅びる者を救うためにきたのである。〕
18:12> あなたがたはどう思うか。ある人に百匹の羊があり、その中の一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。
18:13> もしそれを見つけたなら、よく聞きなさい、迷わないでいる九十九匹のためよりも、むしろその一匹のために喜ぶであろう。
18:14> そのように、これらの小さい者のひとりが滅びることは、天にいますあなたがたの父のみこころではない。
18:15> もしあなたの兄弟が罪を犯すなら、行って、彼とふたりだけの所で忠告しなさい。もし聞いてくれたら、あなたの兄弟を得たことになる。
18:16> もし聞いてくれないなら、ほかにひとりふたりを、一緒に連れて行きなさい。それは、ふたりまたは三人の証人の口によって、すべてのことがらが確かめられるためである。
18:17> もし彼らの言うことを聞かないなら、教会に申し出なさい。もし教会の言うことも聞かないなら、その人を異邦人または取税人同様に扱いなさい。
18:18> よく言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天でも皆つながれ、あなたがたが地上で解くことは、天でもみな解かれるであろう。
18:19> また、よく言っておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんな願い事についても地上で心を合わせるなら、天にいますわたしの父はそれをかなえて下さるであろう。
18:20> ふたりまたは三人が、わたしの名によって集まっている所には、わたしもその中にいるのである」。
18:21> そのとき、ペテロがイエスのもとにきて言った、「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯した場合、幾たびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。
18:22> イエスは彼に言われた、「わたしは七たびまでとは言わない。七たびを七十倍するまでにしなさい。
18:23> それだから、天国は王が僕たちと決算をするようなものだ。
18:24> 決算が始まると、一万タラントの負債のある者が、王のところに連れられてきた。
18:25> しかし、返せなかったので、主人は、その人自身とその妻子と持ち物全部とを売って返すように命じた。
18:26> そこで、この僕はひれ伏して哀願した、『どうぞお待ちください。全部お返しいたしますから』。
18:27> 僕の主人はあわれに思って、彼をゆるし、その負債を免じてやった。
18:28> その僕が出て行くと、百デナリを貸しているひとりの仲間に出会い、彼をつかまえ、首をしめて『借金を返せ』と言った。
18:29> そこでこの仲間はひれ伏し、『どうか待ってくれ。返すから』と言って頼んだ。
18:30> しかし承知せずに、その人をひっぱって行って、借金を返すまで獄に入れた。
18:31> その人の仲間たちは、この様子を見て、非常に心をいため、行ってそのことをのこらず主人に話した。
18:32> そこでこの主人は彼を呼びつけて言った、『悪い僕、わたしに願ったからこそ、あの負債を全部ゆるしてやったのだ。
18:33> わたしがあわれんでやったように、あの仲間をあわれんでやるべきではなかったか』。
18:34> そして主人は立腹して、負債全部を返してしまうまで、彼を獄吏に引きわたした。
18:35> あなたがためいめいも、もし心から兄弟をゆるさないならば、わたしの天の父もまたあなたがたに対して、そのようになさるであろう」。
 第十九章
19:01> イエスはこれらのことを語り終えられてから、ガリラヤを去ってヨルダンの向こうのユダヤの地方へ行かれた。
19:02> すると大ぜいの群衆がついてきたので、彼らをそこでおいやしになった。
19:03> さてパリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして言った、「何かの理由で、夫がその妻を出すのは、さしつかえないでしょうか」。
19:04> イエスは答えて言われた、「あなたがたはまだ読んだことがないのか。『創造者は初めから人を男と女とに造られ、
19:05> そして言われた、それゆえに、人は父母を離れ、その妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである』。
19:06> 彼らはもはや、ふたりではなく一体である。だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。
19:07> 彼らはイエスに言った、「それでは、なぜモーセは、妻を出す場合には離縁状を渡せ、と定めたのですか」。
19:08> イエスが言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、妻を出すことを許したのだが、初めからそうではなかった。
19:09> そこでわたしはあなたがたに言う。不品行のゆえでなくて、自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行うのである」。
19:10> 弟子たちは言った、「もし妻に対する夫の立場がそうだとすれば、結婚しない方がましです」。
19:11> するとイエスは彼らに言われた、「その言葉を受けいれることができるのはすべての人ではなく、ただそれを授けられている人々だけである。
19:12> というのは、母の胎内から独身者に生れついているものがあり、また他から独身者にされたものもあり、また天国のために、みずから進んで独身者となったものもある。この言葉を受けられる者は、受けいれるがよい」。
19:13> そのとき、イエスに手をおいて祈っていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。
19:14> するとイエスは言われた、「幼な子らをそのままにしておきなさい。わたしのところに来るのをとめてはならない。天国はこのような者の国である」。
19:15> そして手を彼らの上においてから、そこを去って行かれた。
19:16> すると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて言った、「先生、永遠の生命を得るためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。
19:17> イエスは言われた、「なぜよい事についてわたしに尋ねるのか。よいかたはただひとりだけである。もし命に入りたいと思うなら、いましめを守りなさい」。
19:18> 彼は言った、「どのいましめですか」。イエスは言われた、「『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。
19:19> 父と母とを敬え』。また『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』」。
19:20> この青年はイエスに言った、「それはみな守ってきました。ほかに何が足りないのでしょう」。
19:21> イエスは彼に言われた、「もしあなたが完全になりたいと思うなら、帰ってあなたの持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
19:22> この言葉を聞いて、青年は悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。
19:23> それからイエスは弟子たちに言われた、「よく聞きなさい。富んでいる者が天国にはいるのは、むずかしいものである。
19:24> また、あなたがたに言うが、富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。
19:25> 弟子たちはこれを聞いて非常に驚いて言った、「では、だれが救われることができるのだろう」。
19:26> イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはそれはできないが、神にはなんでもできない事はない」。
19:27> そのとき、ペテロがイエスに答えて言った、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従いました。ついては、何がいただけるでしょうか」。
19:28> イエスは彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。世が改まって、人の子がその栄光の座につく時には、わたしに従ってきたあなたがたもまた、十二の位に座してイスラエルの十二の部族をさばくであろう。
19:29> おおよそ、わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子、もしくは畑を捨てた者は、その幾倍もを受け、また永遠の生命を受けつぐであろう。
19:30> しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう。
 第二十章
20:01> 天国は、ある家の主人が、自分のぶどう園に労働者を雇うために、夜が明けると同時に、出かけて行くようなものである。
20:02> 彼は労働者たちと、一日一デナリの約束をして、彼らをぶどう園に送った。
20:03> それから九時ごろに出て行って、他の人々が市場で何もせずに立っているのを見た。
20:04> そして、その人たちに言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。相当な賃銀を払うから』。
20:05> そこで、彼らは出かけて行った。主人はまた、十二時ごろと三時ごろとに出て行って、同じようにした。
20:06> 五時ごろまた出て行くと、まだ立っている人々を見たので、彼らに言った、『なぜ、何もしないで、一日中ここに立っていたのか』。
20:07> 彼らが『だれもわたしたちを雇ってくれませんから』と答えたので、その人々に言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい』。
20:08> さて、夕方になって、ぶどう園の主人は管理人に言った、『労働者たちを呼びなさい。そして、最後にきた人々からはじめて順々に最初にきた人々にわたるように、賃銀を払ってやりなさい』。
20:09> そこで、五時ごろに雇われた人々がきて、それぞれ一デナリずつもらった。
20:10> ところが、最初の人々がきて、もっと多くもらえるだろうと思っていたのに、彼らも一デナリずつもらっただけであった。
20:11> もらったとき、家の主人にむかって不平をもらして
20:12> 言った、『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。
20:13> そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。
20:14> 自分の賃銀をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ。
20:15> 自分の物を自分がしたいようにするのは、当りまえではないか。それともわたしが気前よくしているので、ねたましく思うのか』。
20:16> このように、あとの者は先になり、先の者はあとになるであろう」。
20:17> さて、イエスはエルサレムへ上るとき、十二弟子をひそかに呼びよせ、その途中で彼らに言われた、
20:18> 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に渡されるであろう。彼らは彼に死刑を宣告し、
20:19> そして彼をあざけり、むち打ち、十字架につけさせるために、異邦人に引きわたすであろう。そして彼は三日目によみがえるであろう」。
20:20> そのとき、ゼベダイの子らの母が、その子らと一緒にイエスのもとにきてひざまずき、何事かをお願いした。
20:21> そこでイエスは彼女に言われた、「何をしてほしいのか」。彼女は言った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国で、ひとりはあなたの右に、ひとりは左にすわれるように、お言葉をください」。
20:22> イエスは答えて言われた、「あなたがたは、自分が何を求めているのか、わかっていない。わたしの飲もうとしている杯を飲むことができるか」。彼らは「できます」と答えた。
20:23> イエスは彼らに言われた、「確かに、あなたがたはわたしの杯を飲むことになろう。しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの父によって備えられている人々だけに許されることである」。
20:24> 十人の者はこれを聞いて、このふたりの兄弟たちのことで憤慨した。
20:25> そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者たちはその民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。
20:26> あなたがたの間ではそうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、
20:27> あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、僕とならねばならない。
20:28> それは、人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためであるのと、ちょうど同じである」。
20:29> それから、彼らがエリコを出て行ったとき、大ぜいの群衆がイエスに従ってきた。
20:30> すると、ふたりの盲人が道ばたにすわっていたが、イエスがとおって行かれると聞いて、叫んで言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。
20:31> 群衆は彼らをしかって黙らせようとしたが、彼らはますます叫びつづけて言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。
20:32> イエスは立ちどまり、彼らを呼んで言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。
20:33> 彼らは言った、「主よ、目をあけていただくことです」。
20:34> イエスは深くあわれんで、彼らの目にさわられた。すると彼らは、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。
 第二十一章
21:01> さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブ山沿いのベテパゲに着いたとき、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、
21:02> 「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、子ろばがそばにいるのを見るであろう。それを解いてわたしのところに引いてきなさい。
21:03> もしだれかが、あなたがたに何か言ったなら、主がお入り用なのです、と言いなさい。そう言えば、すぐ渡してくれるであろう」。
21:04> こうしたのは、預言者によって言われたことが、成就するためである。
21:05> すなわち、「シオンの娘に告げよ、見よ、あなたの王がおいでになる、柔和なおかたで、ろばに乗って、くびきを負うろばの子に乗って」。
21:06> 弟子たちは出て行って、イエスがお命じになったとおりにし、
21:07> ろばと子ろばとを引いてきた。そしてその上に自分たちの上着をかけると、イエスはそれにお乗りになった。
21:08> 群衆のうち多くの者は自分たちの上着を道に敷き、また、ほかの者たちは木の枝を切ってきて道に敷いた。
21:09> そして群衆は、前に行く者も、あとに従う者も、共に叫びつづけた、「ダビデの子に、ホサナ。主の御名によってきたる者に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。
21:10> イエスがエルサレムにはいって行かれたとき、町中がこぞって騒ぎ立ち、「これは、いったい、どなただろう」と言った。
21:11> そこで群衆は、「この人はガリラヤのナザレから出た預言者イエスである」と言った。
21:12> それから、イエスは宮にはいられた。そして、宮の庭で売り買いしていた人々をみな追い出し、また両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえされた。
21:13> そして彼らに言われた、「『わたしの家は、祈の家ととなえらるべきである』と書いてある。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしている」。
21:14> そのとき宮の庭で、盲人や足なえがみもとにきたので、彼らをおいやしになった。
21:15> しかし、祭司長、律法学者たちは、イエスがなされた不思議なわざを見、また宮の庭で「ダビデの子に、ホサナ」と叫んでいる子供たちを見て立腹し、
21:16> イエスに言った、「あの子たちが何を言っているのか、お聞きですか」。イエスは彼らに言われた、「そうだ、聞いている。あなたがたは『幼な子、乳のみ子たちの口にさんびを備えられた』とあるのを読んだことがないのか」。
21:17> それから、イエスは彼らをあとに残し、都を出てベタニヤに行き、そこで夜を過ごされた。
21:18> 朝はやく都に帰るとき、イエスは空腹をおぼえられた。
21:19> そして、道のかたわらに一本のいちじくの木があるのを見て、そこに行かれたが、ただ葉のほかは何も見当らなかった。そこでその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえには実がならないように」と言われた。すると、いちじくの木はたちまち枯れた。
21:20> 弟子たちはこれを見て、驚いて言った、「いちじくがどうして、こうすぐに枯れたのでしょう」。
21:21> イエスは答えて言われた、「よく聞いておくがよい。もしあなたがたが信じて疑わないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、この山にむかって、動き出して海の中にはいれと言っても、そのとおりになるであろう。
21:22> また、祈のとき、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」。
21:23> イエスが宮にはいられたとき、祭司長たちや民の長老たちが、その教えておられる所にきて言った、「何の権威によって、これらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。
21:24> そこでイエスは彼らに言われた、「わたしも一つだけ尋ねよう。あなたがたがそれに答えてくれたなら、わたしも、何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。
21:25> ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。天からであったか、人からであったか」。すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
21:26> しかし、もし人からだと言えば、群衆が恐ろしい。人々がみなヨハネを預言者と思っているのだから」。
21:27> そこで彼らは、「わたしたちにはわかりません」と答えた。すると、イエスが言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい。
21:28> あなたがたはどう思うか。ある人にふたりの子があったが、兄のところに行って言った、『子よ、きょう、ぶどう園へ行って働いてくれ』。
21:29> すると彼は『おとうさん、参ります』と答えたが、行かなかった。
21:30> また弟のところにきて同じように言った。彼は『いやです』と答えたが、あとから心を変えて、出かけた。
21:31> このふたりのうち、どちらが父の望みどおりにしたのか」。彼らは言った、「あとの者です」。イエスは言われた、「よく聞きなさい。取税人や遊女は、あなたがたより先に神の国にはいる。
21:32> というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、義の道を説いたのに、あなたがたは彼を信じなかった。ところが、取税人や遊女は彼を信じた。あなたがたはそれを見たのに、あとになっても、心をいれ変えて彼を信じようとしなかった。
21:33> もう一つの譬を聞きなさい。ある所に、ひとりの家の主人がいたが、ぶどう園を造り、かきをめぐらし、その中に酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。
21:34> 収穫の季節がきたので、その分け前を受け取ろうとして、僕たちを農夫のところへ送った。
21:35> すると、農夫たちは、その僕たちをつかまえて、ひとりを袋だたきにし、ひとりを殺し、もうひとりを石で打ち殺した。
21:36> また別に、前よりも多くの僕たちを送ったが、彼らをも同じようにあしらった。
21:37> しかし、最後に、わたしの子は敬ってくれるだろうと思って、主人はその子を彼らの所につかわした。
21:38> すると農夫たちは、その子を見て互に言った、『あれはあと取りだ。さあ、これを殺して、その財産を手に入れよう』。
21:39> そして彼をつかまえて、ぶどう園の外に引き出して殺した。
21:40> このぶどう園の主人が帰ってきたら、この農夫たちをどうするだろうか」。
21:41> 彼らはイエスに言った、「悪人どもを、皆殺しにして、季節ごとに収穫を納めるほかの農夫たちに、そのぶどう園を貸し与えるでしょう」。
21:42> イエスは彼らに言われた、「あなたがたは、聖書でまだ読んだことがないのか、『家造りらの捨てた石が/隅のかしら石になった。これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』。
21:43> それだから、あなたがたに言うが、神の国はあなたがたから取り上げられて、御国にふさわしい実を結ぶような異邦人に与えられるであろう。
21:44> またその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。
21:45> 祭司長たちやパリサイ人たちがこの譬を聞いたとき、自分たちのことをさして言っておられることを悟ったので、
21:46> イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者だと思っていたからである。
 第二十二章
22:01> イエスはまた、譬で彼らに語って言われた、
22:02> 「天国は、ひとりの王がその王子のために、婚宴を催すようなものである。
22:03> 王はその僕たちをつかわして、この婚宴に招かれていた人たちを呼ばせたが、その人たちはこようとはしなかった。
22:04> そこでまた、ほかの僕たちをつかわして言った、『招かれた人たちに言いなさい。食事の用意ができました。牛も肥えた獣もほふられて、すべての用意ができました。さあ、婚宴においでください』。
22:05> しかし、彼らは知らぬ顔をして、ひとりは自分の畑に、ひとりは自分の商売に出て行き、
22:06> またほかの人々は、この僕たちをつかまえて侮辱を加えた上、殺してしまった。
22:07> そこで王は立腹し、軍隊を送ってそれらの人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。
22:08> それから僕たちに言った、『婚宴の用意はできているが、招かれていたのは、ふさわしくない人々であった。
22:09> だから、町の大通りに出て行って、出会った人はだれでも婚宴に連れてきなさい』。
22:10> そこで、僕たちは道に出て行って、出会う人は、悪人でも善人でもみな集めてきたので、婚宴の席は客でいっぱいになった。
22:11> 王は客を迎えようとしてはいってきたが、そこに礼服をつけていないひとりの人を見て、
22:12> 彼に言った、『友よ、どうしてあなたは礼服をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、彼は黙っていた。
22:13> そこで、王はそばの者たちに言った、『この者の手足をしばって、外の暗やみにほうり出せ。そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。
22:14> 招かれる者は多いが、選ばれる者は少ない」。
22:15> そのときパリサイ人たちがきて、どうかしてイエスを言葉のわなにかけようと、相談をした。
22:16> そして、彼らの弟子を、ヘロデ党の者たちと共に、イエスのもとにつかわして言わせた、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたであって、真理に基いて神の道を教え、また、人に分け隔てをしないで、だれをもはばかられないことを知っています。
22:17> それで、あなたはどう思われますか、答えてください。カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。
22:18> イエスは彼らの悪意を知って言われた、「偽善者たちよ、なぜわたしをためそうとするのか。
22:19> 税に納める貨幣を見せなさい」。彼らはデナリ一つを持ってきた。
22:20> そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。
22:21> 彼らは「カイザルのです」と答えた。するとイエスは言われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。
22:22> 彼らはこれを聞いて驚嘆し、イエスを残して立ち去った。
22:23> 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、その日、イエスのもとにきて質問した、
22:24> 「先生、モーセはこう言っています、『もし、ある人が子がなくて死んだなら、その弟は兄の妻をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
22:25> さて、わたしたちのところに七人の兄弟がありました。長男は妻をめとったが死んでしまい、そして子がなかったので、その妻を弟に残しました。
22:26> 次男も三男も、ついに七人とも同じことになりました。
22:27> 最後に、その女も死にました。
22:28> すると復活の時には、この女は、七人のうちだれの妻なのでしょうか。みんながこの女を妻にしたのですが」。
22:29> イエスは答えて言われた、「あなたがたは聖書も神の力も知らないから、思い違いをしている。
22:30> 復活の時には、彼らはめとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。
22:31> また、死人の復活については、神があなたがたに言われた言葉を読んだことがないのか。
22:32> 『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』と書いてある。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である」。
22:33> 群衆はこれを聞いて、イエスの教に驚いた。
22:34> さて、パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを言いこめられたと聞いて、一緒に集まった。
22:35> そして彼らの中のひとりの律法学者が、イエスをためそうとして質問した、
22:36> 「先生、律法の中で、どのいましめがいちばん大切なのですか」。
22:37> イエスは言われた、「『心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。
22:38> これがいちばん大切な、第一のいましめである。
22:39> 第二もこれと同様である、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。
22:40> これらの二つのいましめに、律法全体と預言者とが、かかっている」。
22:41> パリサイ人たちが集まっていたとき、イエスは彼らにお尋ねになった、
22:42> 「あなたがたはキリストをどう思うか。だれの子なのか」。彼らは「ダビデの子です」と答えた。
22:43> イエスは言われた、「それではどうして、ダビデが御霊に感じてキリストを主と呼んでいるのか。
22:44> すなわち『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。
22:45> このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいるなら、キリストはどうしてダビデの子であろうか」。
22:46> イエスにひと言でも答えうる者は、なかったし、その日からもはや、進んでイエスに質問する者も、いなくなった。
 第二十三章
23:01> そのときイエスは、群衆と弟子たちとに語って言われた、
23:02> 「律法学者とパリサイ人とは、モーセの座にすわっている。
23:03> だから、彼らがあなたがたに言うことは、みな守って実行しなさい。しかし、彼らのすることには、ならうな。彼らは言うだけで、実行しないから。
23:04> また、重い荷物をくくって人々の肩にのせるが、それを動かすために、自分では指一本も貸そうとはしない。
23:05> そのすることは、すべて人に見せるためである。すなわち、彼らは経札を幅広くつくり、その衣のふさを大きくし、
23:06> また、宴会の上座、会堂の上席を好み、
23:07> 広場であいさつされることや、人々から先生と呼ばれることを好んでいる。
23:08> しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはならない。あなたがたの先生は、ただひとりであって、あなたがたはみな兄弟なのだから。
23:09> また、地上のだれをも、父と呼んではならない。あなたがたの父はただひとり、すなわち、天にいます父である。
23:10> また、あなたがたは教師と呼ばれてはならない。あなたがたの教師はただひとり、すなわち、キリストである。
23:11> そこで、あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。
23:12> だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう。
23:13> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国を閉ざして人々をはいらせない。自分もはいらないし、はいろうとする人をはいらせもしない。
23:14> 〔偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。だから、もっときびしいさばきを受けるに違いない。〕
23:15> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者をつくるために、海と陸とを巡り歩く。そして、つくったなら、彼を自分より倍もひどい地獄の子にする。
23:16> 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは言う、『神殿をさして誓うなら、そのままでよいが、神殿の黄金をさして誓うなら、果す責任がある』と。
23:17> 愚かな盲目な人たちよ。黄金と、黄金を神聖にする神殿と、どちらが大事なのか。
23:18> また、あなたがたは言う、『祭壇をさして誓うなら、そのままでよいが、その上の供え物をさして誓うなら、果す責任がある』と。
23:19> 盲目な人たちよ。供え物と供え物を神聖にする祭壇とどちらが大事なのか。
23:20> 祭壇をさして誓う者は、祭壇と、その上にあるすべての物とをさして誓うのである。
23:21> 神殿をさして誓う者は、神殿とその中に住んでおられるかたとをさして誓うのである。
23:22> また、天をさして誓う者は、神の御座とその上にすわっておられるかたとをさして誓うのである。
23:23> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味の十分の一を宮に納めておりながら、律法の中でもっと重要な、公平とあわれみと忠実とを見のがしている。それもしなければならないが、これも見のがしてはならない。
23:24> 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。
23:25> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。杯と皿との外側はきよめるが、内側は貪欲と放縦とで満ちている。
23:26> 盲目なパリサイ人よ。まず、杯の内側をきよめるがよい。そうすれば、外側も清くなるであろう。
23:27> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。
23:28> このようにあなたがたも、外側は人に正しく見えるが、内側は偽善と不法とでいっぱいである。
23:29> 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者の墓を建て、義人の碑を飾り立てて、こう言っている、
23:30> 『もしわたしたちが先祖の時代に生きていたなら、預言者の血を流すことに加わってはいなかっただろう』と。
23:31> このようにして、あなたがたは預言者を殺した者の子孫であることを、自分で証明している。
23:32> あなたがたもまた先祖たちがした悪の枡目を満たすがよい。
23:33> へびよ、まむしの子らよ、どうして地獄の刑罰をのがれることができようか。
23:34> それだから、わたしは、預言者、知者、律法学者たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある者を殺し、また十字架につけ、そのある者を会堂でむち打ち、また町から町へと迫害して行くであろう。
23:35> こうして義人アベルの血から、聖所と祭壇との間であなたがたが殺したバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上に流された義人の血の報いが、ことごとくあなたがたに及ぶであろう。
23:36> よく言っておく。これらのことの報いは、みな今の時代に及ぶであろう。
23:37> ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人たちを石で打ち殺す者よ。ちょうど、めんどりが翼の下にそのひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。
23:38> 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。
23:39> わたしは言っておく、『主の御名によってきたる者に、祝福あれ』とおまえたちが言う時までは、今後ふたたび、わたしに会うことはないであろう」。
 第二十四章
24:01> イエスが宮から出て行こうとしておられると、弟子たちは近寄ってきて、宮の建物にイエスの注意を促した。
24:02> そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは、これらすべてのものを見ないか。よく言っておく。その石一つでもくずされずに、そこに他の石の上に残ることもなくなるであろう」。
24:03> またオリブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとにきて言った、「どうぞお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。あなたがまたおいでになる時や、世の終りには、どんな前兆がありますか」。
24:04> そこでイエスは答えて言われた、「人に惑わされないように気をつけなさい。
24:05> 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がキリストだと言って、多くの人を惑わすであろう。
24:06> また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。注意していなさい、あわててはいけない。それは起らねばならないが、まだ終りではない。
24:07> 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう。
24:08> しかし、すべてこれらは産みの苦しみの初めである。
24:09> そのとき人々は、あなたがたを苦しみにあわせ、また殺すであろう。またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての民に憎まれるであろう。
24:10> そのとき、多くの人がつまずき、また互に裏切り、憎み合うであろう。
24:11> また多くのにせ預言者が起って、多くの人を惑わすであろう。
24:12> また不法がはびこるので、多くの人の愛が冷えるであろう。
24:13> しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
24:14> そしてこの御国の福音は、すべての民に対してあかしをするために、全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである。
24:15> 預言者ダニエルによって言われた荒らす憎むべき者が、聖なる場所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、
24:16> そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
24:17> 屋上にいる者は、家からものを取り出そうとして下におりるな。
24:18> 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
24:19> その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
24:20> あなたがたの逃げるのが、冬または安息日にならないように祈れ。
24:21> その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。
24:22> もしその期間が縮められないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選民のためには、その期間が縮められるであろう。
24:23> そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』と言っても、それを信じるな。
24:24> にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、大いなるしるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。
24:25> 見よ、あなたがたに前もって言っておく。
24:26> だから、人々が『見よ、彼は荒野にいる』と言っても、出て行くな。また『見よ、へやの中にいる』と言っても、信じるな。
24:27> ちょうど、いなずまが東から西にひらめき渡るように、人の子も現れるであろう。
24:28> 死体のあるところには、はげたかが集まるものである。
24:29> しかし、その時に起る患難の後、たちまち日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。
24:30> そのとき、人の子のしるしが天に現れるであろう。またそのとき、地のすべての民族は嘆き、そして力と大いなる栄光とをもって、人の子が天の雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
24:31> また、彼は大いなるラッパの音と共に御使たちをつかわして、天のはてからはてに至るまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。
24:32> いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。
24:33> そのように、すべてこれらのことを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。
24:34> よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。
24:35> 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。
24:36> その日、その時は、だれも知らない。天の御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。
24:37> 人の子の現れるのも、ちょうどノアの時のようであろう。
24:38> すなわち、洪水の出る前、ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていた。
24:39> そして洪水が襲ってきて、いっさいのものをさらって行くまで、彼らは気がつかなかった。人の子の現れるのも、そのようであろう。
24:40> そのとき、ふたりの者が畑にいると、ひとりは取り去られ、ひとりは取り残されるであろう。
24:41> ふたりの女がうすをひいていると、ひとりは取り去られ、ひとりは残されるであろう。
24:42> だから、目をさましていなさい。いつの日にあなたがたの主がこられるのか、あなたがたには、わからないからである。
24:43> このことをわきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、目をさましていて、自分の家に押し入ることを許さないであろう。
24:44> だから、あなたがたも用意をしていなさい。思いがけない時に人の子が来るからである。
24:45> 主人がその家の僕たちの上に立てて、時に応じて食物をそなえさせる忠実な思慮深い僕は、いったい、だれであろう。
24:46> 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。
24:47> よく言っておくが、主人は彼を立てて自分の全財産を管理させるであろう。
24:48> もしそれが悪い僕であって、自分の主人は帰りがおそいと心の中で思い、
24:49> その僕仲間をたたきはじめ、また酒飲み仲間と一緒に食べたり飲んだりしているなら、
24:50> その僕の主人は思いがけない日、気がつかない時に帰ってきて、
24:51> 彼を厳罰に処し、偽善者たちと同じ目にあわせるであろう。彼はそこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
 第二十五章
25:01> そこで天国は、十人のおとめがそれぞれあかりを手にして、花婿を迎えに出て行くのに似ている。
25:02> その中の五人は思慮が浅く、五人は思慮深い者であった。
25:03> 思慮の浅い者たちは、あかりは持っていたが、油を用意していなかった。
25:04> しかし、思慮深い者たちは、自分たちのあかりと一緒に、入れものの中に油を用意していた。
25:05> 花婿の来るのがおくれたので、彼らはみな居眠りをして、寝てしまった。
25:06> 夜中に、『さあ、花婿だ、迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。
25:07> そのとき、おとめたちはみな起きて、それぞれあかりを整えた。
25:08> ところが、思慮の浅い女たちが、思慮深い女たちに言った、『あなたがたの油をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが消えかかっていますから』。
25:09> すると、思慮深い女たちは答えて言った、『わたしたちとあなたがたとに足りるだけは、多分ないでしょう。店に行って、あなたがたの分をお買いになる方がよいでしょう』。
25:10> 彼らが買いに出ているうちに、花婿が着いた。そこで、用意のできていた女たちは、花婿と一緒に婚宴のへやにはいり、そして戸がしめられた。
25:11> そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様、ご主人様、どうぞ、あけてください』と言った。
25:12> しかし彼は答えて、『はっきり言うが、わたしはあなたがたを知らない』と言った。
25:13> だから、目をさましていなさい。その日その時が、あなたがたにはわからないからである。
25:14> また天国は、ある人が旅に出るとき、その僕どもを呼んで、自分の財産を預けるようなものである。
25:15> すなわち、それぞれの能力に応じて、ある者には五タラント、ある者には二タラント、ある者には一タラントを与えて、旅に出た。
25:16> 五タラントを渡された者は、すぐに行って、それで商売をして、ほかに五タラントをもうけた。
25:17> 二タラントの者も同様にして、ほかに二タラントをもうけた。
25:18> しかし、一タラントを渡された者は、行って地を掘り、主人の金を隠しておいた。
25:19> だいぶ時がたってから、これらの僕の主人が帰ってきて、彼らと計算をしはじめた。
25:20> すると五タラントを渡された者が進み出て、ほかの五タラントをさし出して言った、『ご主人様、あなたはわたしに五タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。
25:21> 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。
25:22> 二タラントの者も進み出て言った、『ご主人様、あなたはわたしに二タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。
25:23> 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。
25:24> 一タラントを渡された者も進み出て言った、『ご主人様、わたしはあなたが、まかない所から刈り、散らさない所から集める酷な人であることを承知していました。
25:25> そこで恐ろしさのあまり、行って、あなたのタラントを地の中に隠しておきました。ごらんください。ここにあなたのお金がございます』。
25:26> すると、主人は彼に答えて言った、『悪い怠惰な僕よ、あなたはわたしが、まかない所から刈り、散らさない所から集めることを知っているのか。
25:27> それなら、わたしの金を銀行に預けておくべきであった。そうしたら、わたしは帰ってきて、利子と一緒にわたしの金を返してもらえたであろうに。
25:28> さあ、そのタラントをこの者から取りあげて、十タラントを持っている者にやりなさい。
25:29> おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
25:30> この役に立たない僕を外の暗い所に追い出すがよい。彼は、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。
25:31> 人の子が栄光の中にすべての御使たちを従えて来るとき、彼はその栄光の座につくであろう。
25:32> そして、すべての国民をその前に集めて、羊飼が羊とやぎとを分けるように、彼らをより分け、
25:33> 羊を右に、やぎを左におくであろう。
25:34> そのとき、王は右にいる人々に言うであろう、『わたしの父に祝福された人たちよ、さあ、世の初めからあなたがたのために用意されている御国を受けつぎなさい。
25:35> あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせ、かわいていたときに飲ませ、旅人であったときに宿を貸し、
25:36> 裸であったときに着せ、病気のときに見舞い、獄にいたときに尋ねてくれたからである』。
25:37> そのとき、正しい者たちは答えて言うであろう、『主よ、いつ、わたしたちは、あなたが空腹であるのを見て食物をめぐみ、かわいているのを見て飲ませましたか。
25:38> いつあなたが旅人であるのを見て宿を貸し、裸なのを見て着せましたか。
25:39> また、いつあなたが病気をし、獄にいるのを見て、あなたの所に参りましたか』。
25:40> すると、王は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。
25:41> それから、左にいる人々にも言うであろう、『のろわれた者どもよ、わたしを離れて、悪魔とその使たちとのために用意されている永遠の火にはいってしまえ。
25:42> あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせず、かわいていたときに飲ませず、
25:43> 旅人であったときに宿を貸さず、裸であったときに着せず、また病気のときや、獄にいたときに、わたしを尋ねてくれなかったからである』。
25:44> そのとき、彼らもまた答えて言うであろう、『主よ、いつ、あなたが空腹であり、かわいておられ、旅人であり、裸であり、病気であり、獄におられたのを見て、わたしたちはお世話をしませんでしたか』。
25:45> そのとき、彼は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。これらの最も小さい者のひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。
25:46> そして彼らは永遠の刑罰を受け、正しい者は永遠の生命に入るであろう」。
 第二十六章
26:01> イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。
26:02> 「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。
26:03> そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、
26:04> 策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。
26:05> しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。
26:06> さて、イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、
26:07> ひとりの女が、高価な香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。
26:08> すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。
26:09> それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。
26:10> イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。
26:11> 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。
26:12> この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。
26:13> よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。
26:14> 時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところに行って
26:15> 言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。
26:16> その時から、ユダはイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。
26:17> さて、除酵祭の第一日に、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「過越の食事をなさるために、わたしたちはどこに用意をしたらよいでしょうか」。
26:18> イエスは言われた、「市内にはいり、かねて話してある人の所に行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越を守ろうと、言っておられます』」。
26:19> 弟子たちはイエスが命じられたとおりにして、過越の用意をした。
26:20> 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒に食事の席につかれた。
26:21> そして、一同が食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。
26:22> 弟子たちは非常に心配して、つぎつぎに「主よ、まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。
26:23> イエスは答えて言われた、「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、わたしを裏切ろうとしている。
26:24> たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。
26:25> イエスを裏切ったユダが答えて言った、「先生、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言われた、「いや、あなただ」。
26:26> 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取って食べよ、これはわたしのからだである」。
26:27> また杯を取り、感謝して彼らに与えて言われた、「みな、この杯から飲め。
26:28> これは、罪のゆるしを得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である。
26:29> あなたがたに言っておく。わたしの父の国であなたがたと共に、新しく飲むその日までは、わたしは今後決して、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。
26:30> 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。
26:31> そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「今夜、あなたがたは皆わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊の群れは散らされるであろう』と、書いてあるからである。
26:32> しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。
26:33> するとペテロはイエスに答えて言った、「たとい、みんなの者があなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」。
26:34> イエスは言われた、「よくあなたに言っておく。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないというだろう」。
26:35> ペテロは言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。弟子たちもみな同じように言った。
26:36> それから、イエスは彼らと一緒に、ゲツセマネという所へ行かれた。そして弟子たちに言われた、「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここにすわっていなさい」。
26:37> そしてペテロとゼベダイの子ふたりとを連れて行かれたが、悲しみを催しまた悩みはじめられた。
26:38> そのとき、彼らに言われた、「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、わたしと一緒に目をさましていなさい」。
26:39> そして少し進んで行き、うつぶしになり、祈って言われた、「わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい」。
26:40> それから、弟子たちの所にきてごらんになると、彼らが眠っていたので、ペテロに言われた、「あなたがたはそんなに、ひと時もわたしと一緒に目をさましていることが、できなかったのか。
26:41> 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。
26:42> また二度目に行って、祈って言われた、「わが父よ、この杯を飲むほかに道がないのでしたら、どうか、みこころが行われますように」。
26:43> またきてごらんになると、彼らはまた眠っていた。その目が重くなっていたのである。
26:44> それで彼らをそのままにして、また行って、三度目に同じ言葉で祈られた。
26:45> それから弟子たちの所に帰ってきて、言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。見よ、時が迫った。人の子は罪人らの手に渡されるのだ。
26:46> 立て、さあ行こう。見よ、わたしを裏切る者が近づいてきた」。
26:47> そして、イエスがまだ話しておられるうちに、そこに、十二弟子のひとりのユダがきた。また祭司長、民の長老たちから送られた大ぜいの群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
26:48> イエスを裏切った者が、あらかじめ彼らに、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえろ」と合図をしておいた。
26:49> 彼はすぐイエスに近寄り、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻した。
26:50> しかし、イエスは彼に言われた、「友よ、なんのためにきたのか」。このとき、人々は進み寄って、イエスに手をかけてつかまえた。
26:51> すると、イエスと一緒にいた者のひとりが、手を伸ばして剣を抜き、そして大祭司の僕に切りかかって、その片耳を切り落した。
26:52> そこで、イエスは彼に言われた、「あなたの剣をもとの所におさめなさい。剣をとる者はみな、剣で滅びる。
26:53> それとも、わたしが父に願って、天の使たちを十二軍団以上も、今つかわしていただくことができないと、あなたは思うのか。
26:54> しかし、それでは、こうならねばならないと書いてある聖書の言葉は、どうして成就されようか」。
26:55> そのとき、イエスは群衆に言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。わたしは毎日、宮ですわって教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。
26:56> しかし、すべてこうなったのは、預言者たちの書いたことが、成就するためである」。そのとき、弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
26:57> さて、イエスをつかまえた人たちは、大祭司カヤパのところにイエスを連れて行った。そこには律法学者、長老たちが集まっていた。
26:58> ペテロは遠くからイエスについて、大祭司の中庭まで行き、そのなりゆきを見とどけるために、中にはいって下役どもと一緒にすわっていた。
26:59> さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするため、イエスに不利な偽証を求めようとしていた。
26:60> そこで多くの偽証者が出てきたが、証拠があがらなかった。しかし、最後にふたりの者が出てきて、
26:61> 言った、「この人は、わたしは神の宮を打ちこわし、三日の後に建てることができる、と言いました」。
26:62> すると、大祭司が立ち上がってイエスに言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。
26:63> しかし、イエスは黙っておられた。そこで大祭司は言った、「あなたは神の子キリストなのかどうか、生ける神に誓ってわれわれに答えよ」。
26:64> イエスは彼に言われた、「あなたの言うとおりである。しかし、わたしは言っておく。あなたがたは、間もなく、人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。
26:65> すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「彼は神を汚した。どうしてこれ以上、証人の必要があろう。あなたがたは今このけがし言を聞いた。
26:66> あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは答えて言った、「彼は死に当るものだ」。
26:67> それから、彼らはイエスの顔につばきをかけて、こぶしで打ち、またある人は手のひらでたたいて言った、
26:68> 「キリストよ、言いあててみよ、打ったのはだれか」。
26:69> ペテロは外で中庭にすわっていた。するとひとりの女中が彼のところにきて、「あなたもあのガリラヤ人イエスと一緒だった」と言った。
26:70> するとペテロは、みんなの前でそれを打ち消して言った、「あなたが何を言っているのか、わからない」。
26:71> そう言って入口の方に出て行くと、ほかの女中が彼を見て、そこにいる人々にむかって、「この人はナザレ人イエスと一緒だった」と言った。
26:72> そこで彼は再びそれを打ち消して、「そんな人は知らない」と誓って言った。
26:73> しばらくして、そこに立っていた人々が近寄ってきて、ペテロに言った、「確かにあなたも彼らの仲間だ。言葉づかいであなたのことがわかる」。
26:74> 彼は「その人のことは何も知らない」と言って、激しく誓いはじめた。するとすぐ鶏が鳴いた。
26:75> ペテロは「鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、外に出て激しく泣いた。
 第二十七章
27:01> 夜が明けると、祭司長たち、民の長老たち一同は、イエスを殺そうとして協議をこらした上、
27:02> イエスを縛って引き出し、総督ピラトに渡した。
27:03> そのとき、イエスを裏切ったユダは、イエスが罪に定められたのを見て後悔し、銀貨三十枚を祭司長、長老たちに返して
27:04> 言った、「わたしは罪のない人の血を売るようなことをして、罪を犯しました」。しかし彼らは言った、「それは、われわれの知ったことか。自分で始末するがよい」。
27:05> そこで、彼は銀貨を聖所に投げ込んで出て行き、首をつって死んだ。
27:06> 祭司長たちは、その銀貨を拾いあげて言った、「これは血の代価だから、宮の金庫に入れるのはよくのない」。
27:07> そこで彼らは協議の上、外国人の墓地にするために、その金で陶器師の畑を買った。
27:08> そのために、この畑は今日まで血の畑と呼ばれている。
27:09> こうして預言者エレミヤによって言われた言葉が、成就したのである。すなわち、「彼らは、値をつけられたもの、すなわち、イスラエルの子らが値をつけたものの代価、銀貨三十を取って、
27:10> 主がお命じになったように、陶器師の畑の代価として、その金を与えた」。
27:11> さて、イエスは総督の前に立たれた。すると総督はイエスに尋ねて言った、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」と言われた。
27:12> しかし、祭司長、長老たちが訴えている間、イエスはひと言もお答えにならなかった。
27:13> するとピラトは言った、「あんなにまで次々に、あなたに不利な証言を立てているのが、あなたには聞えないのか」。
27:14> しかし、総督が非常に不思議に思ったほどに、イエスは何を言われても、ひと言もお答えにならなかった。
27:15> さて、祭のたびごとに、総督は群衆が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやる慣例になっていた。
27:16> ときに、バラバという評判の囚人がいた。
27:17> それで、彼らが集まったとき、ピラトは言った、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。
27:18> 彼らがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。
27:19> また、ピラトが裁判の席についていたとき、その妻が人を彼のもとにつかわして、「あの義人には関係しないでください。わたしはきょう夢で、あの人のためにさんざん苦しみましたから」と言わせた。
27:20> しかし、祭司長、長老たちは、バラバをゆるして、イエスを殺してもらうようにと、群衆を説き伏せた。
27:21> 総督は彼らにむかって言った、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。彼らは「バラバの方を」と言った。
27:22> ピラトは言った、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。彼らはいっせいに「十字架につけよ」と言った。
27:23> しかし、ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると彼らはいっそう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。
27:24> ピラトは手のつけようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、水を取り、群衆の前で手を洗って言った、「この人の血について、わたしには責任がない。おまえたちが自分で始末をするがよい」。
27:25> すると、民衆全体が答えて言った、「その血の責任は、われわれとわれわれの子孫の上にかかってもよい」。
27:26> そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
27:27> それから総督の兵士たちは、イエスを官邸に連れて行って、全部隊をイエスのまわりに集めた。
27:28> そしてその上着をぬがせて、赤い外套を着せ、
27:29> また、いばらで冠を編んでその頭にかぶらせ、右の手には葦の棒を持たせ、それからその前にひざまずき、嘲弄して、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。
27:30> また、イエスにつばきをかけ、葦の棒を取りあげてその頭をたたいた。
27:31> こうしてイエスを嘲弄したあげく、外套をはぎ取って元の上着を着せ、それから十字架につけるために引き出した。
27:32> 彼らが出て行くと、シモンという名のクレネ人に出会ったので、イエスの十字架を無理に負わせた。
27:33> そして、ゴルゴダ、すなわち、されこうべの場、という所にきたとき、
27:34> 彼らはにがみをまぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、飲もうとされなかった。
27:35> 彼らはイエスを十字架につけてから、くじを引いて、その着物を分け、
27:36> そこにすわってイエスの番をしていた。
27:37> そしてその頭の上の方に、「これはユダヤ人の王イエス」と書いた罪状書きをかかげた。
27:38> 同時に、ふたりの強盗がイエスと一緒に、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。
27:39> そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって
27:40> 言った、「神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ。もし神の子なら、自分を救え。そして十字架からおりてこい」。
27:41> 祭司長たちも同じように、律法学者、長老たちと一緒になって、嘲弄して言った、
27:42> 「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。あれがイスラエルの王なのだ。いま十字架からおりてみよ。そうしたら信じよう。
27:43> 彼は神にたよっているが、神のおぼしめしがあれば、今、救ってもらうがよい。自分は神の子だと言っていたのだから」。
27:44> 一緒に十字架につけられた強盗どもまでも、同じようにイエスをののしった。
27:45> さて、昼の十二時から地上の全面が暗くなって、三時に及んだ。
27:46> そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
27:47> すると、そこに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「あれはエリヤを呼んでいるのだ」。
27:48> するとすぐ、彼らのうちのひとりが走り寄って、海綿を取り、それに酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。
27:49> ほかの人々は言った、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。
27:50> イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息をひきとられた。
27:51> すると見よ、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。また地震があり、岩が裂け、
27:52> また墓が開け、眠っている多くの聖徒たちの死体が生き返った。
27:53> そしてイエスの復活ののち、墓から出てきて、聖なる都にはいり、多くの人に現れた。
27:54> 百卒長、および彼と一緒にイエスの番をしていた人々は、地震や、いろいろのできごとを見て非常に恐れ、「まことに、この人は神の子であった」と言った。
27:55> また、そこには遠くの方から見ている女たちも多くいた。彼らはイエスに仕えて、ガリラヤから従ってきた人たちであった。
27:56> その中には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母マリヤ、またゼベダイの子たちの母がいた。
27:57> 夕方になってから、アリマタヤの金持で、ヨセフという名の人がきた。彼もまたイエスの弟子であった。
27:58> この人がピラトの所へ行って、イエスのからだの引取りかたを願った。そこで、ピラトはそれを渡すように命じた。
27:59> ヨセフは死体を受け取って、きれいな亜麻布に包み、
27:60> 岩を掘って造った彼の新しい墓に納め、そして墓の入口に大きい石をころがしておいて、帰った。
27:61> マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓にむかってそこにすわっていた。
27:62> あくる日は準備の日の翌日であったが、その日に、祭司長、パリサイ人たちは、ピラトのもとに集まって言った、
27:63> 「長官、あの偽り者がまだ生きていたとき、『三日の後に自分はよみがえる』と言ったのを、思い出しました。
27:64> ですから、三日目まで墓の番をするように、さしずをして下さい。そうしないと、弟子たちがきて彼を盗み出し、『イエスは死人の中から、よみがえった』と、民衆に言いふらすかも知れません。そうなると、みんなが前よりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。
27:65> ピラトは彼らに言った、「番人がいるから、行ってできる限り、番をさせるがよい」。
27:66> そこで、彼らは行って石に封印をし、番人を置いて墓の番をさせた。
 第二十八章
28:01> さて、安息日が終って、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓を見にきた。
28:02> すると、大きな地震が起った。それは主の使が天から下って、そこにきて石をわきへころがし、その上にすわったからである。
28:03> その姿はいなずまのように輝き、その衣は雪のように真白であった。
28:04> 見張りをしていた人たちは、恐ろしさの余り震えあがって、死人のようになった。
28:05> この御使は女たちにむかって言った、「恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしにわかっているが、
28:06> もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。
28:07> そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい、『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言っておく」。
28:08> そこで女たちは恐れながらも大喜びで、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った。
28:09> すると、イエスは彼らに出会って、「平安あれ」と言われたので、彼らは近寄りイエスのみ足をいだいて拝した。
28:10> そのとき、イエスは彼らに言われた、「恐れることはない。行って兄弟たちに、ガリラヤに行け、そこでわたしに会えるであろう、と告げなさい」。
28:11> 女たちが行っている間に、番人のうちのある人々が都に帰って、いっさいの出来事を祭司長たちに話した。
28:12> 祭司長たちは長老たちと集まって協議をこらし、兵卒たちにたくさんの金を与えて言った、
28:13> 「『弟子たちが夜中にきて、われわれの寝ている間に彼を盗んだ』と言え。
28:14> 万一このことが総督の耳にはいっても、われわれが総督に説いて、あなたがたに迷惑が掛からないようにしよう」。
28:15> そこで、彼らは金を受け取って、教えられたとおりにした。そしてこの話は、今日に至るまでユダヤ人の間にひろまっている。
28:16> さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行って、イエスが彼らに行くように命じられた山に登った。
28:17> そして、イエスに会って拝した。しかし、疑う者もいた。
28:18> イエスは彼らに近づいてきて言われた、「わたしは、天においても地においても、いっさいの権威を授けられた。
28:19> それゆえに、あなたがたは行って、すべての国民を弟子として、父と子と聖霊との名によって、彼らにバプテスマを施し、
28:20> あなたがたに命じておいたいっさいのことを守るように教えよ。見よ、わたしは世の終りまで、いつもあなたがたと共にいるのである」。

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マルコによる福音書

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

マルコによる福音書

第一章
01:01> 神の子イエス・キリストの福音のはじめ。
01:02> 預言者イザヤの書に、「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。
01:03> 荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と書いてあるように、
01:04> バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。
01:05> そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
01:06> このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
01:07> 彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。
01:08> わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。
01:09> そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。
01:10> そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。
01:11> すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
01:12> それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。
01:13> イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。
01:14> ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、
01:15> 「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。
01:16> さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。
01:17> イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。
01:18> すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。
01:19> また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。
01:20> そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。
01:21> それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。
01:22> 人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。
01:23> ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、
01:24> 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。
01:25> イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。
01:26> すると、けがれた霊は彼をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。
01:27> 人々はみな驚きのあまり、互に論じて言った、「これは、いったい何事か。権威ある新しい教だ。けがれた霊にさえ命じられると、彼らは従うのだ」。
01:28> こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの全地方、いたる所にひろまった。
01:29> それから会堂を出るとすぐ、ヤコブとヨハネとを連れて、シモンとアンデレとの家にはいって行かれた。
01:30> ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床についていたので、人々はさっそく、そのことをイエスに知らせた。
01:31> イエスは近寄り、その手をとって起されると、熱が引き、女は彼らをもてなした。
01:32> 夕暮になり日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのところに連れてきた。
01:33> こうして、町中の者が戸口に集まった。
01:34> イエスは、さまざまの病をわずらっている多くの人々をいやし、また多くの悪霊を追い出された。また、悪霊どもに、物言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスを知っていたからである。
01:35> 朝はやく、夜の明けるよほど前に、イエスは起きて寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。
01:36> すると、シモンとその仲間とが、あとを追ってきた。
01:37> そしてイエスを見つけて、「みんなが、あなたを捜しています」と言った。
01:38> イエスは彼らに言われた、「ほかの、附近の町々にみんなで行って、そこでも教を宣べ伝えよう。わたしはこのために出てきたのだから」。
01:39> そして、ガリラヤ全地を巡りあるいて、諸会堂で教えを宣べ伝え、また悪霊を追い出された。
01:40> ひとりのらい病人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
01:41> イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。
01:42> すると、らい病が直ちに去って、その人はきよくなった。
01:43> イエスは彼をきびしく戒めて、すぐにそこを去らせ、こう言い聞かせられた、
01:44> 「何も人に話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた物をあなたのきよめのためにささげて、人々に証明しなさい」。
01:45> しかし、彼は出て行って、自分の身に起ったことを盛んに語り、また言いひろめはじめたので、イエスはもはや表立っては町に、はいることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、人々は方々から、イエスのところにぞくぞくと集まってきた。

第二章

02:01> 幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、
02:02> 多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御言を彼らに語っておられた。
02:03> すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。
02:04> ところが、群衆のために近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。
02:05> イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
02:06> ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、
02:07> 「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。
02:08> イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。
02:09> 中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
02:10> しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、
02:11> 「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
02:12> すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。
02:13> イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。
02:14> また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
02:15> それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。
02:16> パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
02:17> イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
02:18> ヨハネの弟子とパリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人の弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
02:19> するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。
02:20> しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。
02:21> だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。
02:22> まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。
02:23> ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。
02:24> すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。
02:25> そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、また読んだことがないのか。
02:26> すなわち、大祭司アビアタルの時、神の家にはいって、祭司たちのほか食べてはならぬ供えのパンを、自分も食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。
02:27> また彼らに言われた、「安息日は人のためにあるもので、人が安息日のためにあるのではない。
02:28> それだから、人の子は、安息日にもまた主なのである」。

第三章

03:01> イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。
03:02> 人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。
03:03> すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、
03:04> 人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。
03:05> イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりになった。
03:06> パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。
03:07> それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、
03:08> エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。
03:09> イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。
03:10> それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。
03:11> また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。
03:12> イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。
03:13> さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。
03:14> そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、
03:15> また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。
03:16> こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、
03:17> またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。
03:18> つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、
03:19> それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。イエスが家にはいられると、
03:20> 群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。
03:21> 身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。
03:22> また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。
03:23> そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンがサタンを追い出すことができようか。
03:24> もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。
03:25> また、もし家が内わで分れ争うなら、その家は立ち行かないであろう。
03:26> もしサタンが内部で対立し分争するなら、彼は立ち行けず、滅んでしまう。
03:27> だれでも、まず強い人を縛りあげなければ、その人の家に押し入って家財を奪い取ることはできない。縛ってからはじめて、その家を略奪することができる。
03:28> よく言い聞かせておくが、人の子らには、その犯すすべての罪も神をけがす言葉も、ゆるされる。
03:29> しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる」。
03:30> そう言われたのは、彼らが「イエスはけがれた霊につかれている」と言っていたからである。
03:31> さて、イエスの母と兄弟たちとがきて、外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。
03:32> ときに、群衆はイエスを囲んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟、姉妹たちが、外であなたを尋ねておられます」と言った。
03:33> すると、イエスは彼らに答えて言われた、「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」。
03:34> そして、自分をとりかこんで、すわっている人々を見まわして、言われた、「ごらんなさい、ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。
03:35> 神のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。

第四章

04:01> イエスはまたも、海べで教えはじめられた。おびただしい群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわったまま、海上におられ、群衆はみな海に沿って陸地にいた。
04:02> イエスは譬で多くの事を教えられたが、その教の中で彼らにこう言われた、
04:03> 「聞きなさい、種まきが種をまきに出て行った。
04:04> まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。
04:05> ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、
04:06> 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
04:07> ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまったので、実を結ばなかった。
04:08> ほかの種は良い地に落ちた。そしてはえて、育って、ますます実を結び、三十倍、六十倍、百倍にもなった」。
04:09> そして言われた、「聞く耳のある者は聞くがよい」。
04:10> イエスがひとりになられた時、そばにいた者たちが、十二弟子と共に、これらの譬について尋ねた。
04:11> そこでイエスは言われた、「あなたがたには神の国の奥義が授けられているが、ほかの者たちには、すべてが譬で語られる。
04:12> それは『彼らは見るには見るが、認めず、聞くには聞くが、悟らず、悔い改めてゆるされることがない』ためである」。
04:13> また彼らに言われた、「あなたがたはこの譬がわからないのか。それでは、どうしてすべての譬がわかるだろうか。
04:14> 種まきは御言をまくのである。
04:15> 道ばたに御言がまかれたとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言を聞くと、すぐにサタンがきて、彼らの中にまかれた御言を、奪って行くのである。
04:16> 同じように、石地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くと、すぐに喜んで受けるが、
04:17> 自分の中に根がないので、しばらく続くだけである。そののち、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。
04:18> また、いばらの中にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くが、
04:19> 世の心づかいと、富の惑わしと、その他いろいろな欲とがはいってきて、御言をふさぐので、実を結ばなくなる。
04:20> また、良い地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞いて受けいれ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶのである」。
04:21> また彼らに言われた、「ますの下や寝台の下に置くために、あかりを持ってくることがあろうか。燭台の上に置くためではないか。
04:22> なんでも、隠されているもので、現れないものはなく、秘密にされているもので、明るみに出ないものはない。
04:23> 聞く耳のある者は聞くがよい」。
04:24> また彼らに言われた、「聞くことがらに注意しなさい。あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられ、その上になお増し加えられるであろう。
04:25> だれでも、持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」。
04:26> また言われた、「神の国は、ある人が地に種をまくようなものである。
04:27> 夜昼、寝起きしている間に、種は芽を出して育って行くが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。
04:28> 地はおのずから実を結ばせるもので、初めに芽、つぎに穂、つぎに穂の中に豊かな実ができる。
04:29> 実がいると、すぐにかまを入れる。刈入れ時がきたからである」。
04:30> また言われた、「神の国を何に比べようか。また、どんな譬で言いあらわそうか。
04:31> それは一粒のからし種のようなものである。地にまかれる時には、地上のどんな種よりも小さいが、
04:32> まかれると、成長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が宿るほどになる」。
04:33> イエスはこのような多くの譬で、人々の聞く力にしたがって、御言を語られた。
04:34> 譬によらないでは語られなかったが、自分の弟子たちには、ひそかにすべてのことを解き明かされた。
04:35> さてその日、夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と言われた。
04:36> そこで、彼らは群衆をあとに残し、イエスが舟に乗っておられるまま、乗り出した。ほかの舟も一緒に行った。
04:37> すると、激しい突風が起り、波が舟の中に打ち込んできて、舟に満ちそうになった。
04:38> ところが、イエス自身は、舳の方でまくらをして、眠っておられた。そこで、弟子たちはイエスをおこして、「先生、わたしどもがおぼれ死んでも、おかまいにならないのですか」と言った。
04:39> イエスは起きあがって風をしかり、海にむかって、「静まれ、黙れ」と言われると、風はやんで、大なぎになった。
04:40> イエスは彼らに言われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして信仰がないのか」。
04:41> 彼らは恐れおののいて、互に言った、「いったい、この方はだれだろう。風も海も従わせるとは」。

第五章

05:01> こうして彼らは海の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。
05:02> それから、イエスが舟からあがられるとすぐに、けがれた霊につかれた人が墓場から出てきて、イエスに出会った。
05:03> この人は墓場をすみかとしており、もはやだれも、鎖でさえも彼をつなぎとめて置けなかった。
05:04> 彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせを砕くので、だれも彼を押えつけることができなかったからである。
05:05> そして、夜昼たえまなく墓場や山で叫びつづけて、石で自分のからだを傷つけていた。
05:06> ところが、この人がイエスを遠くから見て、走り寄って拝し、
05:07> 大声で叫んで言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。神に誓ってお願いします。どうぞ、わたしを苦しめないでください」。
05:08> それは、イエスが、「けがれた霊よ、この人から出て行け」と言われたからである。
05:09> また彼に、「なんという名前か」と尋ねられると、「レギオンと言います。大ぜいなのですから」と答えた。
05:10> そして、自分たちをこの土地から追い出さないようにと、しきりに願いつづけた。
05:11> さて、そこの山の中腹に、豚の大群が飼ってあった。
05:12> 霊はイエスに願って言った、「わたしどもを、豚にはいらせてください。その中へ送ってください」。
05:13> イエスがお許しになったので、けがれた霊どもは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れは二千匹ばかりであったが、がけから海へなだれを打って駆け下り、海の中でおぼれ死んでしまった。
05:14> 豚を飼う者たちが逃げ出して、町や村にふれまわったので、人々は何事が起ったのかと見にきた。
05:15> そして、イエスのところにきて、悪霊につかれた人が着物を着て、正気になってすわっており、それがレギオンを宿していた者であるのを見て、恐れた。
05:16> また、それを見た人たちは、悪霊につかれた人の身に起った事と豚のこととを、彼らに話して聞かせた。
05:17> そこで、人々はイエスに、この地方から出て行っていただきたいと、頼みはじめた。
05:18> イエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人がお供をしたいと願い出た。
05:19> しかし、イエスはお許しにならないで、彼に言われた、「あなたの家族のもとに帰って、主がどんなに大きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを知らせなさい」。
05:20> そこで、彼は立ち去り、そして自分にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの地方に言いひろめ出したので、人々はみな驚き怪しんだ。
05:21> イエスがまた舟で向こう岸へ渡られると、大ぜいの群衆がみもとに集まってきた。イエスは海べにおられた。
05:22> そこへ、会堂司のひとりであるヤイロという者がきて、イエスを見かけるとその足もとにひれ伏し、
05:23> しきりに願って言った、「わたしの幼い娘が死にかかっています。どうぞ、その子がなおって助かりますように、おいでになって、手をおいてやってください」。
05:24> そこで、イエスは彼と一緒に出かけられた。大ぜいの群衆もイエスに押し迫りながら、ついて行った。
05:25> さてここに、十二年間も長血をわずらっている女がいた。
05:26> 多くの医者にかかって、さんざん苦しめられ、その持ち物をみな費してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます悪くなる一方であった。
05:27> この女がイエスのことを聞いて、群衆の中にまぎれ込み、うしろから、み衣にさわった。
05:28> それは、せめて、み衣にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、思っていたからである。
05:29> すると、血の元がすぐにかわき、女は病気がなおったことを、その身に感じた。
05:30> イエスはすぐ、自分の内から力が出て行ったことに気づかれて、群衆の中で振り向き、「わたしの着物にさわったのはだれか」と言われた。
05:31> そこで弟子たちが言った、「ごらんのとおり、群衆があなたに押し迫っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。
05:32> しかし、イエスはさわった者を見つけようとして、見まわしておられた。
05:33> その女は自分の身に起ったことを知って、恐れおののきながら進み出て、みまえにひれ伏して、すべてありのままを申し上げた。
05:34> イエスはその女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。すっかりなおって、達者でいなさい」。
05:35> イエスが、まだ話しておられるうちに、会堂司の家から人々がきて言った、「あなたの娘はなくなりました。このうえ、先生を煩わすには及びますまい」。
05:36> イエスはその話している言葉を聞き流して、会堂司に言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい」。
05:37> そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネのほかは、ついて来ることを、だれにもお許しにならなかった。
05:38> 彼らが会堂司の家に着くと、イエスは人々が大声で泣いたり、叫んだりして、騒いでいるのをごらんになり、
05:39> 内にはいって、彼らに言われた、「なぜ泣き騒いでいるのか。子供は死んだのではない。眠っているだけである」。
05:40> 人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなの者を外に出し、子供の父母と供の者たちだけを連れて、子供のいる所にはいって行かれた。
05:41> そして子供の手を取って、「タリタ、クミ」と言われた。それは、「少女よ、さあ、起きなさい」という意味である。
05:42> すると、少女はすぐに起き上がって、歩き出した。十二歳にもなっていたからである。彼らはたちまち非常な驚きに打たれた。
05:43> イエスは、だれにもこの事を知らすなと、きびしく彼らに命じ、また、少女に食物を与えるようにと言われた。

第六章

06:01> イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。
06:02> そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。
06:03> この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。
06:04> イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。
06:05> そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。
06:06> そして、彼らの不信仰を驚き怪しまれた。それからイエスは、附近の村々を巡りあるいて教えられた。
06:07> また十二弟子を呼び寄せ、ふたりずつつかわすことにして、彼らにけがれた霊を制する権威を与え、
06:08> また旅のために、つえ一本のほかには何も持たないように、パンも、袋も、帯の中に銭も持たず、
06:09> ただわらじをはくだけで、下着も二枚は着ないように命じられた。
06:10> そして彼らに言われた、「どこへ行っても、家にはいったなら、その土地を去るまでは、そこにとどまっていなさい。
06:11> また、あなたがたを迎えず、あなたがたの話を聞きもしない所があったなら、そこから出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足の裏のちりを払い落しなさい」。
06:12> そこで、彼らは出て行って、悔改めを宣べ伝え、
06:13> 多くの悪霊を追い出し、大ぜいの病人に油をぬっていやした。
06:14> さて、イエスの名が知れわたって、ヘロデ王の耳にはいった。ある人々は「バプテスマのヨハネが、死人の中からよみがえってきたのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」と言い、
06:15> 他の人々は「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は「昔の預言者のような預言者だ」と言った。
06:16> ところが、ヘロデはこれを聞いて、「わたしが首を切ったあのヨハネがよみがえったのだ」と言った。
06:17> このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤをめとったが、そのことで、人をつかわし、ヨハネを捕えて獄につないだ。
06:18> それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
06:19> そこで、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。
06:20> それはヘロデが、ヨハネは正しくて聖なる人であることを知って、彼を恐れ、彼に保護を加え、またその教を聞いて非常に悩みながらも、なお喜んで聞いていたからである。
06:21> ところが、よい機会がきた。ヘロデは自分の誕生日の祝に、高官や将校やガリラヤの重立った人たちを招いて宴会を催したが、
06:22> そこへ、このヘロデヤの娘がはいってきて舞をまい、ヘロデをはじめ列座の人たちを喜ばせた。そこで王はこの少女に「ほしいものはなんでも言いなさい。あなたにあげるから」と言い、
06:23> さらに「ほしければ、この国の半分でもあげよう」と誓って言った。
06:24> そこで少女は座をはずして、母に「何をお願いしましょうか」と尋ねると、母は「バプテスマのヨハネの首を」と答えた。
06:25> するとすぐ、少女は急いで王のところに行って願った、「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆にのせて、それをいただきとうございます」。
06:26> 王は非常に困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、少女の願いを退けることを好まなかった。
06:27> そこで、王はすぐに衛兵をつかわし、ヨハネの首を持って来るように命じた。衛兵は出て行き、獄中でヨハネの首を切り、
06:28> 盆にのせて持ってきて少女に与え、少女はそれを母にわたした。
06:29> ヨハネの弟子たちはこのことを聞き、その死体を引き取りにきて、墓に納めた。
06:30> さて、使徒たちはイエスのもとに集まってきて、自分たちがしたことや教えたことを、みな報告した。
06:31> するとイエスは彼らに言われた、「さあ、あなたがたは、人を避けて寂しい所へ行って、しばらく休むがよい」。それは、出入りする人が多くて、食事をする暇もなかったからである。
06:32> そこで彼らは人を避け、舟に乗って寂しい所へ行った。
06:33> ところが、多くの人々は彼らが出かけて行くのを見、それと気づいて、方々の町々からそこへ、一せいに駆けつけ、彼らより先に着いた。
06:34> イエスは舟から上がって大ぜいの群衆をごらんになり、飼う者のない羊のようなその有様を深くあわれんで、いろいろと教えはじめられた。
06:35> ところが、はや時もおそくなったので、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。
06:36> みんなを解散させ、めいめいで何か食べる物を買いに、まわりの部落や村々へ行かせてください」。
06:37> イエスは答えて言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。弟子たちは言った、「わたしたちが二百デナリものパンを買ってきて、みんなに食べさせるのですか」。
06:38> するとイエスは言われた。「パンは幾つあるか。見てきなさい」。彼らは確かめてきて、「五つあります。それに魚が二ひき」と言った。
06:39> そこでイエスは、みんなを組々に分けて、青草の上にすわらせるように命じられた。
06:40> 人々は、あるいは百人ずつ、あるいは五十人ずつ、列をつくってすわった。
06:41> それから、イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさき、弟子たちにわたして配らせ、また、二ひきの魚もみんなにお分けになった。
06:42> みんなの者は食べて満腹した。
06:43> そこで、パンくずや魚の残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
06:44> パンを食べた者は男五千人であった。
06:45> それからすぐ、イエスは自分で群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸のベツサイダへ先におやりになった。
06:46> そして群衆に別れてから、祈るために山へ退かれた。
06:47> 夕方になったとき、舟は海のまん中に出ており、イエスだけが陸地におられた。
06:48> ところが逆風が吹いていたために、弟子たちがこぎ悩んでいるのをごらんになって、夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らに近づき、そのそばを通り過ぎようとされた。
06:49> 彼らはイエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、大声で叫んだ。
06:50> みんなの者がそれを見て、おじ恐れたからである。しかし、イエスはすぐ彼らに声をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐れることはない」と言われた。
06:51> そして、彼らの舟に乗り込まれると、風はやんだ。彼らは心の中で、非常に驚いた。
06:52> 先のパンのことを悟らず、その心が鈍くなっていたからである。
06:53> 彼らは海を渡り、ゲネサレの地に着いて舟をつないだ。
06:54> そして舟からあがると、人々はすぐイエスと知って、
06:55> その地方をあまねく駆けめぐり、イエスがおられると聞けば、どこへでも病人を床にのせて運びはじめた。
06:56> そして、村でも町でも部落でも、イエスがはいって行かれる所では、病人たちをその広場におき、せめてその上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お願いした。そしてさわった者は皆いやされた。

第七章

07:01> さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。
07:02> そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。
07:03> もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。
07:04> また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。
07:05> そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。
07:06> イエスは言われた、「イザヤは、あなたがた偽善者について、こう書いているが、それは適切な預言である、『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
07:07> 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』。
07:08> あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。
07:09> また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。
07:10> モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
07:11> それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、
07:12> その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。
07:13> こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。
07:14> それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。
07:15> すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。
07:16> 〔聞く耳のある者は聞くがよい〕」。
07:17> イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。
07:18> すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。
07:19> それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。
07:20> さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。
07:21> すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、
07:22> 姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。
07:23> これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。
07:24> さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。
07:25> そして、けがれた霊につかれた幼い娘をもつ女が、イエスのことをすぐ聞きつけてきて、その足もとにひれ伏した。
07:26> この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。
07:27> イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
07:28> すると女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。
07:29> そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。
07:30> そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。
07:31> それから、イエスはまたツロの地方を去り、シドンを経てデカポリス地方を通りぬけ、ガリラヤの海べにこられた。
07:32> すると人々は、耳が聞えず口のきけない人を、みもとに連れてきて、手を置いてやっていただきたいとお願いした。
07:33> そこで、イエスは彼ひとりを群衆の中から連れ出し、その両耳に指をさし入れ、それから、つばきでその舌を潤し、
07:34> 天を仰いでため息をつき、その人に「エパタ」と言われた。これは「開けよ」という意味である。
07:35> すると彼の耳が開け、その舌のもつれもすぐ解けて、はっきりと話すようになった。
07:36> イエスは、この事をだれにも言ってはならぬと、人々に口止めをされたが、口止めをすればするほど、かえって、ますます言いひろめた。
07:37> 彼らは、ひとかたならず驚いて言った、「このかたのなさった事は、何もかも、すばらしい。耳の聞えない者を聞えるようにしてやり、口のきけない者をきけるようにしておやりになった」。

第八章

08:01> そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、
08:02> 「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。
08:03> もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。
08:04> 弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。
08:05> イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。
08:06> そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。
08:07> また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。
08:08> 彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。
08:09> 人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、
08:10> すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。
08:11> パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。
08:12> イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。
08:13> そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。
08:14> 弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。
08:15> そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。
08:16> 弟子たちは、これを自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。
08:17> イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。
08:18> 目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。まだ思い出さないのか。
08:19> 五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。
08:20> 「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。
08:21> そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。
08:22> そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。
08:23> イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。
08:24> すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。
08:25> それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。
08:26> そこでイエスは、「村にはいってはいけない」と言って、彼を家に帰された。
08:27> さて、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられたが、その途中で、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は、わたしをだれと言っているか」。
08:28> 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります」。
08:29> そこでイエスは彼らに尋ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「あなたこそキリストです」。
08:30> するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。
08:31> それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日の後によみがえるべきことを、彼らに教えはじめ、
08:32> しかもあからさまに、この事を話された。すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめたので、
08:33> イエスは振り返って、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた、「サタンよ、引きさがれ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。
08:34> それから群衆を弟子たちと一緒に呼び寄せて、彼らに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
08:35> 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失う者は、それを救うであろう。
08:36> 人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。
08:37> また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。
08:38> 邪悪で罪深いこの時代にあって、わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、父の栄光のうちに聖なる御使たちと共に来るときに、その者を恥じるであろう」。

第九章

09:01> また、彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。神の国が力をもって来るのを見るまでは、決して死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
09:02> 六日の後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、
09:03> その衣は真白く輝き、どんな布さらしでも、それほどに白くすることはできないくらいになった。
09:04> すると、エリヤがモーセと共に彼らに現れて、イエスと語り合っていた。
09:05> ペテロはイエスにむかって言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
09:06> そう言ったのは、みんなの者が非常に恐れていたので、ペテロは何を言ってよいか、わからなかったからである。
09:07> すると、雲がわき起って彼らをおおった。そして、その雲の中から声があった、「これはわたしの愛する子である。これに聞け」。
09:08> 彼らは急いで見まわしたが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが、自分たちと一緒におられた。
09:09> 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。
09:10> 彼らはこの言葉を心にとめ、死人の中からよみがえるとはどういうことかと、互に論じ合った。
09:11> そしてイエスに尋ねた、「なぜ、律法学者たちは、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。
09:12> イエスは言われた、「確かに、エリヤが先にきて、万事を元どおりに改める。しかし、人の子について、彼が多くの苦しみを受け、かつ恥ずかしめられると、書いてあるのはなぜか。
09:13> しかしあなたがたに言っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして彼について書いてあるように、人々は自分かってに彼をあしらった」。
09:14> さて、彼らがほかの弟子たちの所にきて見ると、大ぜいの群衆が弟子たちを取り囲み、そして律法学者たちが彼らと論じ合っていた。
09:15> 群衆はみな、すぐイエスを見つけて、非常に驚き、駆け寄ってきて、あいさつをした。
09:16> イエスが彼らに、「あなたがたは彼らと何を論じているのか」と尋ねられると、
09:17> 群衆のひとりが答えた、「先生、口をきけなくする霊につかれているわたしのむすこを、こちらに連れて参りました。
09:18> 霊がこのむすこにとりつきますと、どこででも彼を引き倒し、それから彼はあわを吹き、歯をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。
09:19> イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまで、あなたがたに我慢ができようか。その子をわたしの所に連れてきなさい」。
09:20> そこで人々は、その子をみもとに連れてきた。霊がイエスを見るや否や、その子をひきつけさせたので、子は地に倒れ、あわを吹きながらころげまわった。
09:21> そこで、イエスが父親に「いつごろから、こんなになったのか」と尋ねられると、父親は答えた、「幼い時からです。
09:22> 霊はたびたび、この子を火の中、水の中に投げ入れて、殺そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお助けください」。
09:23> イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」。
09:24> その子の父親はすぐ叫んで言った、「信じます。不信仰なわたしを、お助けください」。
09:25> イエスは群衆が駆け寄って来るのをごらんになって、けがれた霊をしかって言われた、「言うことも聞くこともさせない霊よ、わたしがおまえに命じる。この子から出て行け。二度と、はいって来るな」。
09:26> すると霊は叫び声をあげ、激しく引きつけさせて出て行った。その子は死人のようになったので、多くの人は、死んだのだと言った。
09:27> しかし、イエスが手を取って起されると、その子は立ち上がった。
09:28> 家にはいられたとき、弟子たちはひそかにお尋ねした、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。
09:29> すると、イエスは言われた、「このたぐいは、祈によらなければ、どうしても追い出すことはできない」。
09:30> それから彼らはそこを立ち去り、ガリラヤをとおって行ったが、イエスは人に気づかれるのを好まれなかった。
09:31> それは、イエスが弟子たちに教えて、「人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺され、殺されてから三日の後によみがえるであろう」と言っておられたからである。
09:32> しかし、彼らはイエスの言われたことを悟らず、また尋ねるのを恐れていた。
09:33> それから彼らはカペナウムにきた。そして家におられるとき、イエスは弟子たちに尋ねられた、「あなたがたは途中で何を論じていたのか」。
09:34> 彼らは黙っていた。それは途中で、だれが一ばん偉いかと、互に論じ合っていたからである。
09:35> そこで、イエスはすわって十二弟子を呼び、そして言われた、「だれでも一ばん先になろうと思うならば、一ばんあとになり、みんなに仕える者とならねばならない」。
09:36> そして、ひとりの幼な子をとりあげて、彼らのまん中に立たせ、それを抱いて言われた。
09:37> 「だれでも、このような幼な子のひとりを、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そして、わたしを受けいれる者は、わたしを受けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである」。
09:38> ヨハネがイエスに言った、「先生、わたしたちについてこない者が、あなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。
09:39> イエスは言われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの名で力あるわざを行いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。
09:40> わたしたちに反対しない者は、わたしたちの味方である。
09:41> だれでも、キリストについている者だというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれるものは、よく言っておくが、決してその報いからもれることはないであろう。
09:42> また、わたしを信じるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海に投げ込まれた方が、はるかによい。
09:43> もし、あなたの片手が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両手がそろったままで地獄の消えない火の中に落ち込むよりは、片手になって命に入る方がよい。
09:44> 〔地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕
09:45> もし、あなたの片足が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両足がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片足で命に入る方がよい。
09:46> 〔地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕
09:47> もし、あなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出しなさい。両眼がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片目になって神の国に入る方がよい。
09:48> 地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。
09:49> 人はすべて火で塩づけられねばならない。
09:50> 塩はよいものである。しかし、もしその塩の味がぬけたら、何によってその味が取りもどされようか。あなたがた自身の内に塩を持ちなさい。そして、互に和らぎなさい」。

第十章

10:01> それから、イエスはそこを去って、ユダヤの地方とヨルダンの向こう側へ行かれたが、群衆がまた寄り集まったので、いつものように、また教えておられた。
10:02> そのとき、パリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして質問した、「夫はその妻を出しても差しつかえないでしょうか」。
10:03> イエスは答えて言われた、「モーセはあなたがたになんと命じたか」。
10:04> 彼らは言った、「モーセは、離縁状を書いて妻を出すことを許しました」。
10:05> そこでイエスは言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、あなたがたのためにこの定めを書いたのである。
10:06> しかし、天地創造の初めから、『神は人を男と女とに造られた。
10:07> それゆえに、人はその父母を離れ、
10:08> ふたりの者は一体となるべきである』。彼らはもはや、ふたりではなく一体である。
10:09> だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。
10:10> 家にはいってから、弟子たちはまたこのことについて尋ねた。
10:11> そこで、イエスは言われた、「だれでも、自分の妻を出して他の女をめとる者は、その妻に対して姦淫を行うのである。
10:12> また妻が、その夫と別れて他の男にとつぐならば、姦淫を行うのである」。
10:13> イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。
10:14> それを見てイエスは憤り、彼らに言われた、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。
10:15> よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。
10:16> そして彼らを抱き、手をその上において祝福された。
10:17> イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄り、みまえにひざまずいて尋ねた、「よき師よ、永遠の生命を受けるために、何をしたらよいでしょうか」。
10:18> イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。
10:19> いましめはあなたの知っているとおりである。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。欺き取るな。父と母とを敬え』」。
10:20> すると、彼は言った、「先生、それらの事はみな、小さい時から守っております」。
10:21> イエスは彼に目をとめ、いつくしんで言われた、「あなたに足りないことが一つある。帰って、持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
10:22> すると、彼はこの言葉を聞いて、顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。
10:23> それから、イエスは見まわして、弟子たちに言われた、「財産のある者が神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。
10:24> 弟子たちはこの言葉に驚き怪しんだ。イエスは更に言われた、「子たちよ、神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。
10:25> 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。
10:26> すると彼らはますます驚いて、互に言った、「それでは、だれが救われることができるのだろう」。
10:27> イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはできないが、神にはできる。神はなんでもできるからである」。
10:28> ペテロがイエスに言い出した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従って参りました」。
10:29> イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでもわたしのために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、もしくは畑を捨てた者は、
10:30> 必ずその百倍を受ける。すなわち、今この時代では家、兄弟、姉妹、母、子および畑を迫害と共に受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受ける。
10:31> しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう」。
10:32> さて、一同はエルサレムへ上る途上にあったが、イエスが先頭に立って行かれたので、彼らは驚き怪しみ、従う者たちは恐れた。するとイエスはまた十二弟子を呼び寄せて、自分の身に起ろうとすることについて語りはじめられた、
10:33> 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に引きわたされる。そして彼らは死刑を宣告した上、彼を異邦人に引きわたすであろう。
10:34> また彼をあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺してしまう。そして彼は三日の後によみがえるであろう」。
10:35> さて、ゼベダイの子ヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちがお頼みすることは、なんでもかなえてくださるようにお願いします」。
10:36> イエスは彼らに「何をしてほしいと、願うのか」と言われた。
10:37> すると彼らは言った、「栄光をお受けになるとき、ひとりをあなたの右に、ひとりを左にすわるようにしてください」。
10:38> イエスは言われた、「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることができるか」。
10:39> 彼らは「できます」と答えた。するとイエスは言われた、「あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けるであろう。
10:40> しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ備えられている人々だけに許されることである」。
10:41> 十人の者はこれを聞いて、ヤコブとヨハネとのことで憤慨し出した。
10:42> そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者と見られている人々は、その民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。
10:43> しかし、あなたがたの間では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、
10:44> あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、すべての人の僕とならねばならない。
10:45> 人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためである」。
10:46> それから、彼らはエリコにきた。そしてイエスが弟子たちや大ぜいの群衆と共にエリコから出かけられたとき、テマイの子、バルテマイという盲人のこじきが、道ばたにすわっていた。
10:47> ところが、ナザレのイエスだと聞いて、彼は「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」と叫び出した。
10:48> 多くの人々は彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」。
10:49> イエスは立ちどまって、「彼を呼べ」と命じられた。そこで、人々はその盲人を呼んで言った、「喜べ、立て、おまえを呼んでおられる」。
10:50> そこで彼は上着を脱ぎ捨て、踊りあがってイエスのもとにきた。
10:51> イエスは彼にむかって言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。その盲人は言った、「先生、見えるようになることです」。
10:52> そこでイエスは言われた、「行け、あなたの信仰があなたを救った」。すると彼は、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。

第十一章

11:01> さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブの山に沿ったベテパゲ、ベタニヤの附近にきた時、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、
11:02> 「むこうの村へ行きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも乗ったことのないろばの子が、つないであるのを見るであろう。それを解いて引いてきなさい。
11:03> もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな事をするのかと言ったなら、主がお入り用なのです。またすぐ、ここへ返してくださいますと、言いなさい」。
11:04> そこで、彼らは出かけて行き、そして表通りの戸口に、ろばの子がつないであるのを見たので、それを解いた。
11:05> すると、そこに立っていた人々が言った、「そのろばの子を解いて、どうするのか」。
11:06> 弟子たちは、イエスが言われたとおり彼らに話したので、ゆるしてくれた。
11:07> そこで、弟子たちは、そのろばの子をイエスのところに引いてきて、自分たちの上着をそれに投げかけると、イエスはその上にお乗りになった。
11:08> すると多くの人々は自分たちの上着を道に敷き、また他の人々は葉のついた枝を野原から切ってきて敷いた。
11:09> そして、前に行く者も、あとに従う者も共に叫びつづけた、「ホサナ、主の御名によってきたる者に、祝福あれ。
11:10> 今きたる、われらの父ダビデの国に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。
11:11> こうしてイエスはエルサレムに着き、宮にはいられた。そして、すべてのものを見まわった後、もはや時もおそくなっていたので、十二弟子と共にベタニヤに出て行かれた。
11:12> 翌日、彼らがベタニヤから出かけてきたとき、イエスは空腹をおぼえられた。
11:13> そして、葉の茂ったいちじくの木を遠くからごらんになって、その木に何かありはしないかと近寄られたが、葉のほかは何も見当らなかった。いちじくの季節でなかったからである。
11:14> そこで、イエスはその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえの実を食べる者がないように」と言われた。弟子たちはこれを聞いていた。
11:15> それから、彼らはエルサレムにきた。イエスは宮に入り、宮の庭で売り買いしていた人々を追い出しはじめ、両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえし、
11:16> また器ものを持って宮の庭を通り抜けるのをお許しにならなかった。
11:17> そして、彼らに教えて言われた、「『わたしの家は、すべての国民の祈の家ととなえらるべきである』と書いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしてしまった」。
11:18> 祭司長、律法学者たちはこれを聞いて、どうかしてイエスを殺そうと計った。彼らは、群衆がみなその教に感動していたので、イエスを恐れていたからである。
11:19> 夕方になると、イエスと弟子たちとは、いつものように都の外に出て行った。
11:20> 朝はやく道をとおっていると、彼らは先のいちじくが根元から枯れているのを見た。
11:21> そこで、ペテロは思い出してイエスに言った、「先生、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、枯れています」。
11:22> イエスは答えて言われた、「神を信じなさい。
11:23> よく聞いておくがよい。だれでもこの山に、動き出して、海の中にはいれと言い、その言ったことは必ず成ると、心に疑わないで信じるなら、そのとおりに成るであろう。
11:24> そこで、あなたがたに言うが、なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。
11:25> また立って祈るとき、だれかに対して、何か恨み事があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。
11:26> 〔もしゆるさないならば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。
11:27> 彼らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが宮の内を歩いておられると、祭司長、律法学者、長老たちが、みもとにきて言った、
11:28> 「何の権威によってこれらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。
11:29> そこで、イエスは彼らに言われた、「一つだけ尋ねよう。それに答えてほしい。そうしたら、何の権威によって、わたしがこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。
11:30> ヨハネのバプテスマは天からであったか、人からであったか、答えなさい」。
11:31> すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
11:32> しかし、人からだと言えば……」。彼らは群衆を恐れていた。人々が皆、ヨハネを預言者だとほんとうに思っていたからである。
11:33> それで彼らは「わたしたちにはわかりません」と答えた。するとイエスは言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。

第十二章

12:01> そこでイエスは譬で彼らに語り出された、「ある人がぶどう園を造り、垣をめぐらし、また酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。
12:02> 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を取り立てさせようとした。
12:03> すると、彼らはその僕をつかまえて、袋だだきにし、から手で帰らせた。
12:04> また他の僕を送ったが、その頭をなぐって侮辱した。
12:05> そこでまた他の者を送ったが、今度はそれを殺してしまった。そのほか、なお大ぜいの者を送ったが、彼らを打ったり、殺したりした。
12:06> ここに、もうひとりの者がいた。それは彼の愛子であった。自分の子は敬ってくれるだろうと思って、最後に彼をつかわした。
12:07> すると、農夫たちは『あれはあと取りだ。さあ、これを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と話し合い、
12:08> 彼をつかまえて殺し、ぶどう園の外に投げ捨てた。
12:09> このぶどう園の主人は、どうするだろうか。彼は出てきて、農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう。
12:10> あなたがたは、この聖書の句を読んだことがないのか。『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった。
12:11> これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』」。
12:12> 彼らはいまの譬が、自分たちに当てて語られたことを悟ったので、イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。そしてイエスをそこに残して立ち去った。
12:13> さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのもとにつかわして、その言葉じりを捕えようとした。
12:14> 彼らはきてイエスに言った、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをも、はばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基いて神の道を教えてくださいます。ところで、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。
12:15> イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。
12:16> 彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。
12:17> するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した。
12:18> 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、イエスのもとにきて質問した、
12:19> 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もし、ある人の兄が死んで、その残された妻に、子がない場合には、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
12:20> ここに、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
12:21> 次男がその女をめとって、また子をもうけずに死に、三男も同様でした。
12:22> こうして、七人ともみな子孫を残しませんでした。最後にその女も死にました。
12:23> 復活のとき、彼らが皆よみがえった場合、この女はだれの妻なのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。
12:24> イエスは言われた、「あなたがたがそんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからではないか。
12:25> 彼らが死人の中からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。
12:26> 死人がよみがえることについては、モーセの書の柴の篇で、神がモーセに仰せられた言葉を読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあるではないか。
12:27> 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。あなたがたは非常な思い違いをしている」。
12:28> ひとりの律法学者がきて、彼らが互に論じ合っているのを聞き、またイエスが巧みに答えられたのを認めて、イエスに質問した、「すべてのいましめの中で、どれが第一のものですか」。
12:29> イエスは答えられた、「第一のいましめはこれである、『イスラエルよ、聞け。主なるわたしたちの神は、ただひとりの主である。
12:30> 心をつくし、精神をつくし、思いをつくし、力をつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。
12:31> 第二はこれである、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。これより大事ないましめは、ほかにない」。
12:32> そこで、この律法学者はイエスに言った、「先生、仰せのとおりです、『神はひとりであって、そのほかに神はない』と言われたのは、ほんとうです。
12:33> また『心をつくし、知恵をつくし、力をつくして神を愛し、また自分を愛するように隣り人を愛する』ということは、すべての燔祭や犠牲よりも、はるかに大事なことです」。
12:34> イエスは、彼が適切な答をしたのを見て言われた、「あなたは神の国から遠くない」。それから後は、イエスにあえて問う者はなかった。
12:35> イエスが宮で教えておられたとき、こう言われた、「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子だと言うのか。
12:36> ダビデ自身が聖霊に感じて言った、『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。
12:37> このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。大ぜいの群衆は、喜んでイエスに耳を傾けていた。
12:38> イエスはその教の中で言われた、「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くことや、広場であいさつされることや、
12:39> また会堂の上席、宴会の上座を好んでいる。
12:40> また、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。
12:41> イエスは、さいせん箱にむかってすわり、群衆がその箱に金を投げ入れる様子を見ておられた。多くの金持は、たくさんの金を投げ入れていた。
12:42> ところが、ひとりの貧しいやもめがきて、レプタ二つを入れた。それは一コドラントに当る。
12:43> そこで、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめは、さいせん箱に投げ入れている人たちの中で、だれよりもたくさん入れたのだ。
12:44> みんなの者はありあまる中から投げ入れたが、あの婦人はその乏しい中から、あらゆる持ち物、その生活費全部を入れたからである」。

第十三章

13:01> イエスが宮から出て行かれるとき、弟子のひとりが言った、「先生、ごらんなさい。なんという見事な石、なんという立派な建物でしょう」。
13:02> イエスは言われた、「あなたは、これらの大きな建物をながめているのか。その石一つでもくずされないままで、他の石の上に残ることもなくなるであろう」。
13:03> またオリブ山で、宮にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお尋ねした。
13:04> 「わたしたちにお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。またそんなことがことごとく成就するような場合には、どんな前兆がありますか」。
13:05> そこで、イエスは話しはじめられた、「人に惑わされないように気をつけなさい。
13:06> 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだと言って、多くの人を惑わすであろう。
13:07> また、戦争と戦争のうわさとを聞くときにも、あわてるな。それは起らねばならないが、まだ終りではない。
13:08> 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに地震があり、またききんが起るであろう。これらは産みの苦しみの初めである。
13:09> あなたがたは自分で気をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、衆議所に引きわたされ、会堂で打たれ、長官たちや王たちの前に立たされ、彼らに対してあかしをさせられるであろう。
13:10> こうして、福音はまずすべての民に宣べ伝えられねばならない。
13:11> そして、人々があなたがたを連れて行って引きわたすとき、何を言おうかと、前もって心配するな。その場合、自分に示されることを語るがよい。語る者はあなたがた自身ではなくて、聖霊である。
13:12> また兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。
13:13> また、あなたがたはわたしの名のゆえに、すべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
13:14> 荒らす憎むべきものが、立ってはならぬ所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
13:15> 屋上にいる者は、下におりるな。また家から物を取り出そうとして内にはいるな。
13:16> 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
13:17> その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
13:18> この事が冬おこらぬように祈れ。
13:19> その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである。
13:20> もし主がその期間を縮めてくださらないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選ばれた選民のために、その期間を縮めてくださったのである。
13:21> そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、『見よ、あそこにいる』と言っても、それを信じるな。
13:22> にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、しるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。
13:23> だから、気をつけていなさい。いっさいの事を、あなたがたに前もって言っておく。
13:24> その日には、この患難の後、日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、
13:25> 星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。
13:26> そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
13:27> そのとき、彼は御使たちをつかわして、地のはてから天のはてまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。
13:28> いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。
13:29> そのように、これらの事が起るのを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。
13:30> よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。
13:31> 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。
13:32> その日、その時は、だれも知らない。天にいる御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。
13:33> 気をつけて、目をさましていなさい。その時がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。
13:34> それはちょうど、旅に立つ人が家を出るに当り、その僕たちに、それぞれ仕事を割り当てて責任をもたせ、門番には目をさましておれと、命じるようなものである。
13:35> だから、目をさましていなさい。いつ、家の主人が帰って来るのか、夕方か、夜中か、にわとりの鳴くころか、明け方か、わからないからである。
13:36> あるいは急に帰ってきて、あなたがたの眠っているところを見つけるかも知れない。
13:37> 目をさましていなさい。わたしがあなたがたに言うこの言葉は、すべての人々に言うのである」。

第十四章

14:01> さて、過越と除酵との祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、策略をもってイエスを捕えたうえ、なんとかして殺そうと計っていた。
14:02> 彼らは、「祭の間はいけない。民衆が騒ぎを起すかも知れない」と言っていた。
14:03> イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。
14:04> すると、ある人々が憤って互に言った、「なんのために香油をこんなにむだにするのか。
14:05> この香油を三百デナリ以上にでも売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。そして女をきびしくとがめた。
14:06> するとイエスは言われた、「するままにさせておきなさい。なぜ女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。
14:07> 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるから、したいときにはいつでも、よい事をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも一緒にいるわけではない。
14:08> この女はできる限りの事をしたのだ。すなわち、わたしのからだに油を注いで、あらかじめ葬りの用意をしてくれたのである。
14:09> よく聞きなさい。全世界のどこででも、福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。
14:10> ときに、十二弟子のひとりイスカリオテのユダは、イエスを祭司長たちに引きわたそうとして、彼らの所へ行った。
14:11> 彼らはこれを聞いて喜び、金を与えることを約束した。そこでユダは、どうかしてイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。
14:12> 除酵祭の第一日、すなわち過越の小羊をほふる日に、弟子たちがイエスに尋ねた、「わたしたちは、過越の食事をなさる用意を、どこへ行ってしたらよいでしょうか」。
14:13> そこで、イエスはふたりの弟子を使いに出して言われた、「市内に行くと、水がめを持っている男に出会うであろう。その人について行きなさい。
14:14> そして、その人がはいって行く家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。
14:15> するとその主人は、席を整えて用意された二階の広間を見せてくれるから、そこにわたしたちのために用意をしなさい」。
14:16> 弟子たちは出かけて市内に行って見ると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。
14:17> 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒にそこに行かれた。
14:18> そして、一同が席について食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたの中のひとりで、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている」。
14:19> 弟子たちは心配して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。
14:20> イエスは言われた、「十二人の中のひとりで、わたしと一緒に同じ鉢にパンをひたしている者が、それである。
14:21> たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。
14:22> 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取れ、これはわたしのからだである」。
14:23> また杯を取り、感謝して彼らに与えられると、一同はその杯から飲んだ。
14:24> イエスはまた言われた、「これは、多くの人のために流すわたしの契約の血である。
14:25> あなたがたによく言っておく。神の国で新しく飲むその日までは、わたしは決して二度と、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。
14:26> 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。
14:27> そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「あなたがたは皆、わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊は散らされるであろう』と書いてあるからである。
14:28> しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。
14:29> するとペテロはイエスに言った、「たとい、みんなの者がつまずいても、わたしはつまずきません」。
14:30> イエスは言われた、「あなたによく言っておく。きょう、今夜、にわとりが二度鳴く前に、そう言うあなたが、三度わたしを知らないと言うだろう」。
14:31> ペテロは力をこめて言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。みんなの者もまた、同じようなことを言った。
14:32> さて、一同はゲツセマネという所にきた。そしてイエスは弟子たちに言われた、「わたしが祈っている間、ここにすわっていなさい」。
14:33> そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを一緒に連れて行かれたが、恐れおののき、また悩みはじめて、彼らに言われた、
14:34> 「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、目をさましていなさい」。
14:35> そして少し進んで行き、地にひれ伏し、もしできることなら、この時を過ぎ去らせてくださるようにと祈りつづけ、そして言われた、
14:36> 「アバ、父よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころのままになさってください」。
14:37> それから、きてごらんになると、弟子たちが眠っていたので、ペテロに言われた、「シモンよ、眠っているのか、ひと時も目をさましていることができなかったのか。
14:38> 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。
14:39> また離れて行って同じ言葉で祈られた。
14:40> またきてごらんになると、彼らはまだ眠っていた。その目が重くなっていたのである。そして、彼らはどうお答えしてよいか、わからなかった。
14:41> 三度目にきて言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。もうそれでよかろう。時がきた。見よ、人の子は罪人らの手に渡されるのだ。
14:42> 立て、さあ行こう。見よ。わたしを裏切る者が近づいてきた」。
14:43> そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが進みよってきた。また祭司長、律法学者、長老たちから送られた群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
14:44> イエスを裏切る者は、あらかじめ彼らに合図をしておいた、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえて、まちがいなく引っぱって行け」。
14:45> 彼は来るとすぐ、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。
14:46> 人々はイエスに手をかけてつかまえた。
14:47> すると、イエスのそばに立っていた者のひとりが、剣を抜いて大祭司の僕に切りかかり、その片耳を切り落した。
14:48> イエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。
14:49> わたしは毎日あなたがたと一緒に宮にいて教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし聖書の言葉は成就されねばならない」。
14:50> 弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
14:51> ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、
14:52> その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。
14:53> それから、イエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみな集まってきた。
14:54> ペテロは遠くからイエスについて行って、大祭司の中庭まではいり込み、その下役どもにまじってすわり、火にあたっていた。
14:55> さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするために、イエスに不利な証拠を見つけようとしたが、得られなかった。
14:56> 多くの者がイエスに対して偽証を立てたが、その証言が合わなかったからである。
14:57> ついに、ある人々が立ちあがり、イエスに対して偽証を立てて言った、
14:58> 「わたしたちはこの人が『わたしは手で造ったこの神殿を打ちこわし、三日の後に手で造られない別の神殿を建てるのだ』と言うのを聞きました」。
14:59> しかし、このような証言も互に合わなかった。
14:60> そこで大祭司が立ちあがって、まん中に進み、イエスに聞きただして言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。
14:61> しかし、イエスは黙っていて、何もお答えにならなかった。大祭司は再び聞きただして言った、「あなたは、ほむべき者の子、キリストであるか」。
14:62> イエスは言われた、「わたしがそれである。あなたがたは人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。
14:63> すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「どうして、これ以上、証人の必要があろう。
14:64> あなたがたはこのけがし言を聞いた。あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは皆、イエスを死に当るものと断定した。
14:65> そして、ある者はイエスにつばきをかけ、目隠しをし、こぶしでたたいて、「言いあててみよ」と言いはじめた。また下役どもはイエスを引きとって、手のひらでたたいた。
14:66> ペテロは下で中庭にいたが、大祭司の女中のひとりがきて、
14:67> ペテロが火にあたっているのを見ると、彼を見つめて、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言った。
14:68> するとペテロはそれを打ち消して、「わたしは知らない。あなたの言うことがなんの事か、わからない」と言って、庭口の方に出て行った。
14:69> ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。
14:70> ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。
14:71> しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。
14:72> するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。

第十五章

15:01> 夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。
15:02> ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。
15:03> そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。
15:04> ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。
15:05> しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。
15:06> さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。
15:07> ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。
15:08> 群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、
15:09> ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。
15:10> それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。
15:11> しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。
15:12> そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。
15:13> 彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。
15:14> ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。
15:15> それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
15:16> 兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の内に連れて行き、全部隊を呼び集めた。
15:17> そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、
15:18> 「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って敬礼をしはじめた。
15:19> また、葦の棒でその頭をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて拝んだりした。
15:20> こうして、イエスを嘲弄したあげく、紫の衣をはぎとり、元の上着を着せた。それから、彼らはイエスを十字架につけるために引き出した。
15:21> そこへ、アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人が、郊外からきて通りかかったので、人々はイエスの十字架を無理に負わせた。
15:22> そしてイエスをゴルゴダ、その意味は、されこうべ、という所に連れて行った。
15:23> そしてイエスに、没薬をまぜたぶどう酒をさし出したが、お受けにならなかった。
15:24> それから、イエスを十字架につけた。そしてくじを引いて、だれが何を取るかを定めたうえ、イエスの着物を分けた。
15:25> イエスを十字架につけたのは、朝の九時ごろであった。
15:26> イエスの罪状書きには「ユダヤ人の王」と、しるしてあった。
15:27> また、イエスと共にふたりの強盗を、ひとりを右に、ひとりを左に、十字架につけた。
15:28> 〔こうして「彼は罪人たちのひとりに数えられた」と書いてある言葉が成就したのである。〕
15:29> そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって言った、「ああ、神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ、
15:30> 十字架からおりてきて自分を救え」。
15:31> 祭司長たちも同じように、律法学者たちと一緒になって、かわるがわる嘲弄して言った、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。
15:32> イスラエルの王キリスト、いま十字架からおりてみるがよい。それを見たら信じよう」。また、一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。
15:33> 昼の十二時になると、全地は暗くなって、三時に及んだ。
15:34> そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
15:35> すると、そばに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「そら、エリヤを呼んでいる」。
15:36> ひとりの人が走って行き、海綿に酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとして言った、「待て、エリヤが彼をおろしに来るかどうか、見ていよう」。
15:37> イエスは声高く叫んで、ついに息をひきとられた。
15:38> そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。
15:39> イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。
15:40> また、遠くの方から見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、またサロメがいた。
15:41> 彼らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに従って仕えた女たちであった。なおそのほか、イエスと共にエルサレムに上ってきた多くの女たちもいた。
15:42> さて、すでに夕がたになったが、その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、
15:43> アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。
15:44> ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。
15:45> そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。
15:46> そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。
15:47> マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが納められた場所を見とどけた。

第十六章

16:01> さて、安息日が終ったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとが、行ってイエスに塗るために、香料を買い求めた。
16:02> そして週の初めの日に、早朝、日の出のころ墓に行った。
16:03> そして、彼らは「だれが、わたしたちのために、墓の入口から石をころがしてくれるのでしょうか」と話し合っていた。
16:04> ところが、目をあげて見ると、石はすでにころがしてあった。この石は非常に大きかった。
16:05> 墓の中にはいると、右手に真白な長い衣を着た若者がすわっているのを見て、非常に驚いた。
16:06> するとこの若者は言った、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお納めした場所である。
16:07> 今から弟子たちとペテロとの所へ行って、こう伝えなさい。イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて、あなたがたに言われたとおり、そこでお会いできるであろう、と」。
16:08> 女たちはおののき恐れながら、墓から出て逃げ去った。そして、人には何も言わなかった。恐ろしかったからである。
16:09> 〔週の初めの日の朝早く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに御自身をあらわされた。イエスは以前に、この女から七つの悪霊を追い出されたことがある。
16:10> マリヤは、イエスと一緒にいた人々が泣き悲しんでいる所に行って、それを知らせた。
16:11> 彼らは、イエスが生きておられる事と、彼女に御自身をあらわされた事とを聞いたが、信じなかった。
16:12> この後、そのうちのふたりが、いなかの方へ歩いていると、イエスはちがった姿で御自身をあらわされた。
16:13> このふたりも、ほかの人々の所に行って話したが、彼らはその話を信じなかった。
16:14> その後、イエスは十一弟子が食卓についているところに現れ、彼らの不信仰と、心のかたくななことをお責めになった。彼らは、よみがえられたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。
16:15> そして彼らに言われた、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ。
16:16> 信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、不信仰の者は罪に定められる。
16:17> 信じる者には、このようなしるしが伴う。すなわち、彼らはわたしの名で悪霊を追い出し、新しい言葉を語り、
16:18> へびをつかむであろう。また、毒を飲んでも、決して害を受けない。病人に手をおけば、いやされる」。
16:19> 主イエスは彼らに語り終ってから、天にあげられ、神の右にすわられた。
16:20> 弟子たちは出て行って、至る所で福音を宣べ伝えた。主も彼らと共に働き、御言に伴うしるしをもって、その確かなことをお示しになった。〕

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ルカによる福音書

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

ルカによる福音書

第 一 章
01:01> わたしたちの間に成就された出来事を、最初から親しく見た人々であって、
01:02> 御言に仕えた人々が伝えたとおり物語に書き連ねようと、多くの人が手を着けましたが、
01:03> テオピロ閣下よ、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、ここに、それを順序正しく書きつづって、閣下に献じることにしました。
01:04> すでにお聞きになっている事が確実であることを、これによって十分に知っていただきたいためであります。
01:05> ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツと言った。
01:06> ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。
01:07> ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。
01:08> さてザカリヤは、その組が当番になり神のみ前に祭司の努めをしていたとき、
01:09> 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。
01:10> 香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。
01:11> すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。
01:12> ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。
01:13> そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈りが聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。
01:14> 彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。
01:15> 彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、
01:16> そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。
01:17> 彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。
01:18> するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。
01:19> 御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。
01:20> 時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったら、あなたは口がきけなくなり、この事の起こる日まで、ものが言えなくなる」。
01:21> 民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。
01:22> ついに彼が出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図するだけで、引きつづき、口がきけないままでいた。
01:23> それから努めの期日が終わったので、家に帰った。
01:24> そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、
01:25> 「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。
01:26> 六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。
01:27> この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。
01:28> 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。
01:29> この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろかと、思いをめぐらしていた。
01:30> すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、おなたは神から恵みをいただいているのです。
01:31> 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
01:32> 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、
01:33> 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。
01:34> そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。
01:35> 御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生まれ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。
01:36> あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。
01:37> 神には、なんでもできないことはありません」。
01:38> そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。
01:39> そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、
01:40> ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。
01:41> エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、
01:42> 声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。
01:43> 主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。
01:44> ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。
01:45> 主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。
01:46> するとマリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、
01:47> わたしの霊は救主なる主をたたえます。
01:48> この卑しい女さえ、心にかけてくださいました。今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と言うでしょう、
01:49> 力あるかたが、わたしに大きな事をしてくださったからです。そのみ名はきよく、
01:50> そのあわれみは、代々限りなく主をかしこみ恐れる者に及びます。
01:51> 主はみ胸をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、
01:52> 権力のある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、
01:53> 飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。
01:54> 主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、
01:55> わたしたちの祖父アブラハムとその子孫とをとこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。
01:56> マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。
01:57> さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。
01:58> 近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。
01:59> 八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしょうとした。
01:60> ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。
01:61> 人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。
01:62> そして父親に、「どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。
01:63> ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。
01:64> すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。
01:65> 近所の人々はみな恐れをいだき、またユダヤの山里の至るところに、これらの事がことごとく語り伝えられたので、
01:66> 聞く者たちは皆それを心に留めて、「この子は、いったい、どんな者になるのだろう」と語り合った。主のみ手が彼と共にあった。
01:67> 父ザカリヤは聖霊に満たされ、予言して言った、
01:68> 「主なるイスラエルの神は、ほむべきんな。神はその民を顧みてこれをあがない、
01:69> わたしたちのために救いの角を僕ダビデの家にお立てになった。
01:70> 古くから、聖なる預言者たちの口によってお語りになったように、
01:71> わたしたちを敵から、またすべてわたしたちを憎む者の手から、救い出すためである。
01:72> こうして、神はわたしたちの祖父たちにあわれみをかけ、その聖なる契約、
01:73> すなわち、祖父アブラハムにお立てになった誓いをおぼえて、
01:74> わたしたちを敵の手から救い出し、
01:75> 生きている限り、きよく正しく、みまえに恐れなく仕えさせてくださるのである。
01:76> 幼な子よ、あなたは、いと高き者の預言者と呼ばれるであろう。主のみまえに先立って行き、その道を備え、
01:77> 罪のゆるしによる救いをその民に知らせるのであるから。
01:78> これはわたしたちの神のあわれみ深いみこころによる。また、そのあわれみによって、日の光が上からわたしたちに臨み、
01:79> 暗黒と死の陰とに住む者を照らし、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。
01:80> 幼な子は成長し、その霊も強くなり、そしてイスラエルに現れる日まで、荒野にいた。
第二章

02:01> そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。
02:02> これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。
02:03> 人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。
02:04> ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガラリヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
02:05> それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。
02:06> ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、
02:07> 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。
02:08> さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
02:09> すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照らしたので、彼らは非常に恐れた。
02:10> 御使は言った、「恐れるな、見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。
02:11> きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生まれになった。このかたこそ主なるキリストである。
02:12> あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。
02:13> するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、
02:14> 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。
02:15> 御使たちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互いに語り合った。
02:16> そして急いで行って、マリヤとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた。
02:17> 彼らに合った上で、この子について自分たちに告げ知らされた事を、人々に伝えた。
02:18> 人々はみな、羊飼たちが話してくれたことを聞いて、不思議に思った。
02:19> しかし、マリヤはこれらの事をことごとく心に留めて、思いめぐらしていた。
02:20> 羊飼たちは、見聞きしたことが何もかも自分たちに語られたとおりであったので、神をあがめ、またさんびしながら帰って行った。
02:21> 八日が過ぎ、割礼をほどこす時になったので、受胎のまえに御使が告げたとおり、幼な子をイエスと名づけた。
02:22> それから、モーセの律法による彼らのきよめの期間が過ぎたとき、両親は幼な子を連れてエルサレムへ上った。
02:23> それは主の律法に「母の胎を初めて開く男の子はみな、主に聖別された者と、となえられねばならない」と書いてあるとおり、幼な子を主にささげるためであり、
02:24> また同じ主の律法に、「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽」と定めてあるのに従って、犠牲をささげるためであった。
02:25> その時、エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しい信仰深い人で、イウラエルの慰められるのを待ち望んでいた。また聖霊が彼に宿っていた。
02:26> そして主のつかわす救主に会うまでは死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。
02:27> この人が御霊に感じて宮にはいった。すると律法に定めてあることを行うため、両親もその子イエスを連れてはいってきたので、
02:28> シメオンは幼な子を腕に抱き、神をほめたたえて言った、
02:29> 「主よ、今こそ、あなたはみ言葉のとおりにこの僕を安らかに去らせてくださいます、
02:30> わたしの目が今あなたの救いを見たのですから。
02:31> この救はあなたが万民のまえにお備えになったもので
02:32> 異邦人を照す啓示の光、み民イスラエルの栄光であります」。
02:33> 父と母は幼な子についてこのように語られたことを、不思議に思った。
02:34> するとシメオンは彼らを祝し、そし母マリヤに言った、「ごらんなさい、この幼な子は、イスラエルの多くの人を倒れさせたり立ちあがらせたりするために、また反対を受けるしるしとして、定められています。ー 
02:35> そして、あなた自身もつるぎで胸を刺し貫かれるでしょう。ー それは多くの人の心にある思いが、現れるようになるためです」。
02:36> また、アセル族のバヌエルのり娘で、アンナという女預言者がいた。彼女は非常に年をとっていた。むすめの時代にとついで、七年間だけ夫と共に住み、
02:37> その後やもめぐらしをし、八十四歳になっていた。そして宮を離れずに夜も昼も断食と祈りとをもって神に仕えていた。
02:38> この老女も、ちょうどそのとき近寄ってきて、神に感謝をささげ、そしてこの幼な子のことを、エルサレムの救いを待ち望んでいるすべての人々に語りはじめた。
02:39> 両親は主の律法どおりすべての事をすませたので、ガリラヤへむかい、自分の町ナザレに帰った。
02:40> 幼な子は、ますます成長して強くなり、知恵に満ち、そして神の恵みがその上にあった。
02:41> さて、イエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムへ上っていった。
02:42> イエスが十二歳になった時も、慣例に従って祭のために上京した。
02:43> ところが、祭が終わって帰るとき、少年イエスはエルサレムに居残っておられたが、両親はそれに気づかなかった。
02:44> そして道連れの中にいることと思いこんで、一日路を行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜しはじめたが、
02:45> 見つからなにので、捜しまわりながらエルサレムへ引返した。
02:46> そして三日の後に、イエスが宮の中で教師たちのまん中にすわって、彼らの話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。
02:47> 聞く人々はみな、イエスの賢さやその答に驚嘆していた。
02:48> 両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った、「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。
02:49> するとイエスは言われた、「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存知なかったのですか」。
02:50> しかし、両親はその語られた言葉を悟ることができなかった。
02:51> それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの事をみな心に留めていた。
02:52> イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。
第三章

03:01> 皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンティオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、
03:02> アンナスとカヤバとが大祭司であったとき、神の言が荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。
03:03> 彼はヨルダンのほとりの全地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えた。
03:04> それは、預言者イザヤの言葉の書に書いてあるとおりである。すなわち「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』。
03:05> すべての谷は埋められ、すべての山と丘とは、平らにされ、曲がったところはまっすぐに、わるい道はならされ、
03:06> 人はみな神の救を見るであろう」。
03:07> さて、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出てきた群衆に向かって言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、のがれられると、おまえたちにだれが教えたのか。
03:08> だから、悔改めにふさわしい実を結べ。自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく。神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起こすことができるのだ。
03:09> 斧がすでに木の根元に置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ」。
03:10> そこで群衆が彼に、「それては、わたしたちは何をすればよいのですか」と尋ねた。
03:11> 彼は答えて言った、「下着二枚を持っている者は、持たない者に分けてやりなさい。食物を持っている者も同様にしなさい」。
03:12> 取税人もバプテスマを受けにきて、彼に言った、「先生、わたしたちは何をすればよいのですか」。
03:13> 彼らに言った、「きまっているもの以上に取り立ててはいけない」。
03:14> 兵卒たちもたずねて言った、「では、わたしたちは何をすればよいのですか」。彼は言った、「人をおどかしたり、だまし取ったりしてはいけない。自分の給与で満足しなさい」。
03:15> 民衆は救主を待ち望んでいたので、みな心の中でヨハネのことを、もしかしたらこの人がそれではなかろうかと考えていた。
03:16> そこでヨハネはみんなの者にむかって言われた、「わたしは水でおまえたちにバプテスマを授けるが、わたしよりも力のあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつひもを解く値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
03:17> また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
03:18> こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまの勧めをして、民衆を教え説いた。
03:19> ところが領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロデヤのことで、また自分がしたあらゆる悪事について、ヨハネから非難されたので、
03:20> 彼を獄に閉じ込めて、いろいろな悪事の上に、もう一つ悪事を重ねた。
03:21> さて、民衆がみなバプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開けて、
03:22> 聖霊がはとのような姿をとってイエスの上に下り、そして天から声がした、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
03:23> イエスが宣教をはじめられたのは、年およそ三十歳の時であって、人々の考えによれば、ヨセフの子であった。ヨセフはヘリの子、
03:24> それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、
03:25> マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、
03:26> マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、
03:27> ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、
03:28> メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、
03:29> ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、
03:30> シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、
03:31> メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、
03:32> エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、
03:33> アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、
03:34> ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、
03:35> セレグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、
03:36> カイナン、アルバクサデ、セム、ノア、ラメク、
03:37> メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、
03:38> エノス、セツ、アダム、そして神にいたる。
第四章

04:01> さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、
04:02> 荒野を四十日のあいだ御霊にひままわされて、悪魔の試みにあわれた。そのあいだ何も食べず、その日数がつきると、空腹になられた。
04:03> そこで悪魔が言った、「もしあなたが神の子であるなら、この石に、パンになれと命じてごらんなさい」。
04:04> イエスは答えられて言われた、「『人はパンだけで生きるものてせはない』と書いてある」。
04:05> それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、またたくまに世界のすべての国々をみせて
04:06> 言った、「これらの国々の権威と栄華とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて、だれでも好きな人にあげてよいのですから。
04:07> それで、もしあなたがわたしの前にひざまずくなら、これを全部あなたのものにしてあげましょう」。
04:08> イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を拝し、ただ神のみに仕えよ』と書いてある」。
04:09> それから悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、宮の頂上に立たせて言った、「もしあなたが神の子であるなら、ここから下へ飛びおりてごらんなさい。
04:10> 『神はあなたのために、御使たちに命じてあなたを守らせるであろう』とあり、
04:11> また、『あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らは手でささえるであろう』とも書いてあります」。
04:12> イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』と言われている」。
04:13> 悪魔はあらゆる試みをしつくして、一時イエスを離れた。
04:14> それからイエスは御霊の力に満ちあふれてガリラヤへ帰られると、そのうわさがその地方全体にひろまった。
04:15> イエスは諸会堂で教え、みんなの者から尊敬をお受けになった。
04:16> それからお育ちになったナザレに行き、安息日にいつものように会堂にはいり、聖書を朗読しようとして立たれた。
04:17> すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を出された、
04:18> 「主の御霊がわたしに宿っている。貧しい人々に福音を宣べ伝えさせるために、わたしを聖別してくださったからである。主はわたしをつかわして、囚人が解放され、盲人の目が開かれることを告げ知らせ、打ちひしがれている者に自由を得させ、
04:19> 主のめぐみの年を告げ知らせるのである」。
04:20> イエスは聖書を巻いて、係り者に返し、席に着かれると、会堂にいるみんなの者の目がイエスに注がれた。
04:21> そこでイエスは、「この聖句は、あなたがたが耳にしたこの日に成就した」と説きはじめられた。
04:22> すると、彼らはみなイエスをほめ、またその口から出て来るめぐみの言葉に感嘆して言った、「この人はヨセフの子ではないか」。
04:23> そこで彼らに言われた、「あなたがたは、きっと『医者よ、自分自身をいやせ』ということわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うであろう」。
04:24> それから言われた、「よく言っておく。預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである。
04:25> よく聞いておきなさい。エリヤの時代に、三年六か月にわたって天が閉じ、イスラエル全土に大ききんがあった際、そこには多くのやもめがいたのに、
04:26> エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。
04:27> また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くのらい病人がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。
04:28> 会堂にいた者たちはこれを聞いて、みな憤りに満ち、
04:29> 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘のがけまでひっぱって行って、突き落とそうとした。
04:30> しかし、イエスは彼らのまんなかを通り抜けて、去って行かれた。
04:31> それから、イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると、人々をお教えになったが、
04:32> その言葉に権威があったので、彼らはその教えに驚いた。
04:33> すると、汚れた悪霊につかれた人が会堂にいて、大声で叫びだした。
04:34> 「ああ、ナザレのイエスよ、あなたわたしたちとなにの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。
04:35> イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。すると悪霊は彼を人のなかに投げ倒し、傷を負わせずに、その人から出て行った。
04:36> みんなの者は驚いて、互いに語り合って言った、「これは、いったい、ないという言葉だろう。権威と力とをもって汚れた霊に命じられると、彼らは出て行くのだ」。
04:37> こうしてイエスの評判が、その地方のいたる所にひろまっていった。
04:38> イエスは会堂を出てシモンの家におはいりになった。ところがシモンのしゅうとめが高い熱を病んでいたので、人々は彼女のためにイエスにお願いした。
04:39> そこで、イエスはそのまくらもとに立って、熱が引くように命じられると、熱は引き、女はすぐに起き上がって、彼らをもてなした。
04:40> 日が暮れると、いろいろな病気になやむ者をかかえている人々が、皆それをイエスのところに連れてきたのでそのひとりひとりに手を置いて、おいやしになった。
04:41> 悪霊も「あなたこそ神の子です」と叫びながら多くの人々から出て行った。しかし、イエスは彼らを戒めて、物を言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスはキリストだと知っていたからである。
04:42> 夜が明けると、イエスは寂しい所へ出て行かれたが、群衆が捜しまわって、みもとに集まり、自分たちから離れて行かないようにと、引き止めた。
04:43> しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々にも神の国の福音を宣べ伝えねばならない。自分はそのためにつかわされたのである」と言われた。
04:44> そして、ユダヤの諸会堂で教え説かれた。
第五章

05:01> さて、群衆が神の言葉を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、
05:02> そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、船からおりて網を洗っていた。
05:03> その一そうはシモンの船であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そしてすわって、船の中から群衆にお教えになった。
05:04> 話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。
05:05> シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。
05:06> そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。
05:07> そこで、もう一そうの船にいた仲間に、加勢するよう合図したので、彼らがきて魚を両方の船いっぱいに入れた。そのために、船は沈みそうになった。
05:08> これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。
05:09> 彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。
05:10> シモンの仲間であったゼベタイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。
05:11> そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。
05:12> イエスがある町におられた時、全身らい病になっている人がそこにいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて願って言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
05:13> イエスは手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、らい病がただちに去ってしまった。
05:14> イエスはだれにも話さないようにと彼に言い聞かせ、「ただ行って自分のからだを祭司に見せ、それからあなたのきよめのために、モーセが命じたとおりのささげ物をして、人々に証明しなさい」とお命じになった。
05:15> しかし、イエスの評判はますますひろまって行き、おびだたしい群衆が、教を聞いたり、病気をなおしてもらったりするために、集まってきた。
05:16> しかしイエスは、寂しい所に退いて祈っておられた。
05:17> ある日のこと、イエスが教えておられると、ガリラヤのユダヤの方々の村から、またエルサレムからきたパリサイ人や律法学者たちが、そこにすわっていた。主の力が働いて、イエスは人々をいやされた。
05:18> その時、ある人々が、ひとりの中風をわずらっている人を床にのせたまま連れてきて、家の中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。
05:19> ところが、群衆のためにどうしても運び入れる方法がなかったので、屋根にのぼり、瓦をはいで、病人を床ごと群衆のまん中につりおろして、イエスの前においた。
05:20> イエスは彼らの信仰を見て、「人よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
05:21> すると律法学者とパリサイ人たちとは、「神を汚すことを言うこの人は、いったい、何者だ。神おひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるのか」と言って論じはじめた。
05:22> イエスは彼らの論議を見ぬいて、「あなたがたは心の中で何を論じているのか。
05:23> あなたの罪はゆるされたと言うのと、起きて歩けと言うのと、どちらがたやすいか。
05:24> しかし、人の子が地上で罪をゆるす権威を持っていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに対して言い、中風の者にむかって、「あなたに命じる。起きよ、床を取り上げて家に帰れ」と言われた。
05:25> すると病人は即座にみんなの前で起きあがり、寝ていた床を取りあげて、神をあがめながら家に帰って行った。
05:26> みんなの者は驚嘆してしまった。そして神をあがめ、おそれに満たされて、「きょうは驚くべきことを見た」と言った。
05:27> そののち、イエスが出て行かれると、レビという名の収税人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
05:28> すると、彼はいっさいを捨てて立ちあがり、イエスに従ってきた。
05:29> それから、レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を催したが、収税人やそのほか大ぜいの人々が、共に食卓に着いていた。
05:30> ところが、パリサイ人やその律法学者たちが、イエスの弟子たちに対してつぶやいて言った、「どうしてあなたがたは、収税人や罪人などと飲食を共にするのか」。
05:31> イエスは答えて言われた、「健康な人に医者はいらない。いるのは病人である。
05:32> わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」。
05:33> また彼らは、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちは、しばしば断食をし、また祈をしてており、パリサイ人の弟子たちもそうしているのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています」。
05:34> するとイエスは言われた、「あなたがたには、花婿が一緒にいるのに、婚礼の客に断食をさせることができるであろうか。
05:35> しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう」。
05:36> それからイエスはまた一つの譬を語られた、「だれも、新しい着物から布ぎれを切り取って、古い着物につぎを当てるものはない。もしそんなことをしたら、新しい着物を裂くことになるし、新しいのから取った布ぎれも古いのに合わないであろう。
05:37> まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、
05:38> 新しいぶどう酒は皮袋をはり裂き、そしてぶどう酒は流れ出るし、皮袋もむだになるであろう。新しいぶどう酒は新しい皮袋にいれるべきである。
05:39> まただれも、古い酒を飲んでから、新しいのをほしがりはしない。『古いのが良い』と考えているからである」。
第六章

06:01> ある安息日にイエスが麦畑の中をとおって行かれたとき、弟子たちが穂をつみ、手でもみながら食べていた。
06:02> すると、あるパリサイ人たちが言った、「あなたがたはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのか」。
06:03> そこでイエスが答えて言われた、「あなたがたは、ダビデのしたことについて、読んだことがないのか。
06:04> すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほかだれも食べてはならぬ供えのパンを取って食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。
06:05> また彼らに言われた、「人の子は安息日の主である」。
06:06> また、ほかの安息日に会堂にはいって教えておられたところ、そこに右手のなえた人がいた。
06:07> 律法学者やパリサイ人たちは、イエスを訴える口実を見付けようと思って、安息日にいやされるかどうかをうかがっていた。
06:08> イエスは彼らの思っていることを知って、その手のなえた人に、「起きて、まん中に立ちなさい」と言われると、起き上がって立った。
06:09> そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたに聞くが、安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」。
06:10> そして彼ら一同を見まわして、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そのとおりにすると、その手は元どおりになった。
06:11> そこで彼らは激しく怒って、イエスをどうかしてやろうと、互いに話合いをはじめた。
06:12> このころ、イエスは祈るために山へ行き、夜を徹して神に祈られた。
06:13> 夜が明けると、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び出し、これに使徒という名をお与えになった。
06:14> すなわち、ペテロとも呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、
06:15> マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと、熱心党と呼ばれたシモン、
06:16> ヤコブの子ユダ、それからイスカレオテのユダ。このユダが裏切者となったのである。
06:17> そして、イエスは彼らと一緒に山を下って平地に立たれたが、大ぜいの弟子たちや、ユダの全土、エルサレム、ツロとシドンの海岸地方などから大群衆が、
06:18> 教えを聞こうとし、また病気をなおしてもらおうとして、そこにきていた。そして汚れた霊に悩まされている者たちも、いやされた。
06:19> また群衆はイエスにさわろうと努めた。それは力がイエスの内から出て、みんなの者を次々にいやしたからである。
06:20> そのとき、イエスは目をあげ、弟子たちを見て言われた、「あなたがた貧しい人たちは、さいわいだ。神の国はあなたがたのものである。
06:21> あなたがたいま飢えている人たちは、さいわいだ。飽き足りるようになるからである。あなたがたいま泣いている人たちは、さいわいだ。笑うようになるからである。
06:22> 人々があなたがたを憎むとき、また人の子のためにあなたがたを排斥し、ののしり、汚名を着せるときは、あなたがたはさいわいだ。
06:23> その日には喜びおどれ。見よ、天においてあなたがたの受ける報いは大きいのだから。彼らの祖先も、預言者たちに対して同じことをしたのである。
06:24> しかしあなたがた富んでいる人たちは、わざわいだ。慰めを受けてしまっているからである。
06:25> あなたがた今満腹している人たちは、わざわいだ。飢えるようになるからである。あなたがた今笑っている人たちは、わざわいだ。悲しみ泣くようになるからである。
06:26> 人が皆あなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。彼らの祖先も、にせ預言者たちに対しておなじことをしたのである。
06:27> しかし、聞いているあなたがたに言う。敵を愛し、憎む者に親切にせよ。
06:28> のろう者を祝福し、はずかしめる者のために祈れ。あなたがたの頬を打つ者にはほかの頬を向けてやり、
06:29> あなたの上着を奪い取る者には下着をも拒むな。
06:30> あなたに求める者には与えてやり、あなたの持ち物を奪う者からは取りもどそうとするな。
06:31> 人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ。
06:32> 自分を愛してくれる人を愛したからとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛している。
06:33> 自分をよくしてくれる者によくしたとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、それくらいの事はしている。
06:34> また返してもらうつもりで貸したとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でも、同じだけのものを返してもらおうとして、仲間に貸すのである。
06:35> しかし、あなたがたは、敵を愛し、人によくしてやり、また、何も当てにしないで貸してやれ。そうすれば受ける報いは大きく、あなたがたはいと高き者の子となるであろう。いと高き者は、恩を知らぬ者にも、悪人にも、なさけ深いからである。
06:36> あなたがたの父なる神が慈愛深いように、あなたがたも慈愛深い者となれ。
06:37> 人をさばくな。そうすれば、自分もさばかれることがないであろう。また人を罪に定めるな。そうすれば、自分も罪に定められることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分もゆるされるであろう。
06:38> 与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう。人々はおし入れ、ゆすり入れ、あふれ出るまで量をよくして、あなたがたのふところに入れてくれるであろう。あなたがたの量るその量りで、自分にも量りかえされるであろうから」。
06:39> イエスはまた一つの譬で語られた、「盲人は盲人の手引きができようか。ふたりとも穴に落ち込まないだろうか。
06:40> 弟子はその師以上のものではないが、修行をつめば、みなその師のようになろう。
06:41> なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
06:42> 自分の目にある梁を見ないでいて、どうして兄弟にむかって、兄弟よ、あなたの目にあるちりを取らせてください、と言えようか。偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい、そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるちりをとりのけることができるだろう。
06:43> 悪い実のなる良い木はないし、また良い実のなる悪い木もない。
06:44> 木はそれぞれ、その実でわかる。いばらからいちじくを取ることはないし、野ばらからぶどうを摘むこともない。
06:45> 善人は良い心の倉から良い者を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。心からあふれ出ることを、口が語るものである。
06:46> わたしを主よ、主よ、と呼びながら、なぜわたしのいうことを行わないのか。
06:47> わたしのもとにきて、わたしの言葉を聞いて行う者が、何に似ているか、あなたがたに教えよう。
06:48> それは、地を深く掘り、岩の上に土台をすえて家を建てる人に似ている。洪水が出て激流がその家に押し寄せてきても、それを揺り動かすことはできない。よく建ててあるからである。
06:49> しかし聞いても行わない人は、土台なしで、土の上に家を建てた人に似ている。激流がその家に押し寄せてきたら、たちまち倒れてしまい、その被害は大きいのである」。
第七章

07:01> イエスはこれらの言葉をことごとく人々に聞かせてしまったのち、カペナウムに帰ってこられた。
07:02> ところが、ある百卒長の頼みにしていた僕が、病気になって死にかかっていた。
07:03> この百卒長はイエスのことを聞いて、ユダヤ人の長老たちをイエスのところにつかわして、自分の僕を助けにきてくださるようにと、お願いした。
07:04> 彼らはイエスのところにきて、熱心に願って言った、「あの人はそうしていただくねうちがございます。
07:05> わたしたちの国民を愛し、わたしたちのために会堂を建ててくれたのです」。
07:06> そこで、イエスは彼らと連れだってお出かけになった。ところが、その家からほど遠くないあたりまでこられたとき、百卒長は友だちを送ってイエスに言わせた、「主よ、ぞうぞ、ご足労をくださいませんように。わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。
07:07> それですから、自分でお迎えにあがるねうちさえないと思っていたのです。ただ、お言葉を下さい。そして、わたしの僕をなおしてください。
07:08> わたしも権威の下に服している者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
07:09> イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた群衆の方に振り向いて言われた、「あなたがたに言っておくが、これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない」。
07:10> 使いにきた者たちが家に帰ってみると、僕は元気になっていた。
07:11> そののち、間もなく、ナインという町へおいでになったが、弟子たちや大ぜいの群衆も一緒に行った。
07:12> 町の門に近づかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであった者が死んだので、葬りに出すところであった。大ぜいの町の人たちが、その母につきそっていた。
07:13> 主はこの婦人を見て深い同情を寄せられ、「泣かないでいなさい」と言われた。
07:14> そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいる者たちが立ち止まったので、「若者よ、さあ、起きなさい」と言われた。
07:15> すると、死人が起きあがって物を言い出した。イエスは彼を母にお渡しになった。
07:16> 人々はみな恐れをいだき、「大預言者がわたしたちの間に現れた」、また、「神はその民を顧みてくださった」と言って、神をほめたたえた。
07:17> イエスについてのこの話は、ユダヤ全土およびその附近のいたる所にひろまった。
07:18> ヨハネの弟子たちは、これらのことを全部彼に報告した。するとヨハネは弟子の中から二人の者を呼んで、
07:19> 主のもとに送り「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」と尋ねさせた。
07:20> そこで、この人たちがイエスのもとにきて言った、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの使いですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか、とヨハネが尋ねています」。
07:21> そのとき、イエスはさきざまの病苦と悪霊とに悩む人々いやし、また多くの盲人を見えるようにしておられたが、
07:22> 答えて言われた、「行って、あなたがたの見聞きしたことを、ヨハネに報告しなさい。盲人は見え、足なえは歩き、らい病人はきよまり、耳しいはきこえ、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。
07:23> わたしにつまずかない者は、さいわいである」。
07:24> ヨハネの使いが行ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか、風に揺らぐ葦であるのか。
07:25> では、何を見に出てきたのか、柔らかい着物をまとった人か。きらびやかに着かざって、ぜいたくに暮らしている人々なら、宮殿にいる。
07:26> では、何を見に出てきたのか。預言者か。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者で
07:27> 『見よ、わたしは使いをあなたの先につかわし、おなたの前に、道を整えさせるであろう』と書いてあるのは、この人のことである。
07:28> あなたがたに言っておく。女の産んだ者の中で、ヨハネより大きい人物はいない。しかし、神の国で最も小さい者も、彼より大きい。
07:29> (これを聞いた民衆は皆、また収税人たちも、ヨハネのバプテスマを受けて神の正しいことを認めた。
07:30> しかし、パリサイ人と律法学者たちとは彼からバプテスマを受けないで、自分たちに対する神のみこころを無にした。)
07:31> だから今の時代の人々を何に比べようか。彼らは何に似ているか。
07:32> それは子供たちが広場にすわって、互いに呼びかけ、『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、泣いてくれなかった』と言うのに似ている。
07:33> なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンを食べることも、ぶどう酒を飲むこともしないと、あなたがたは、おれは悪霊につかれているのだ、と言い、
07:34> また人の子がきて食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また収税人、罪人の仲間だ、と言う。
07:35> しかし、知恵の正しいことは、そのすべての子が証明する」。
07:36> あるパリサイ人がイエスに、食事を共にしたいと申し出たので、そのパリサイ人の家にはいって食卓に着かれた。
07:37> するとそのとき、その町で罪の女であったものが、パリサイ人の家で食卓に着いておられることを聞いて、香油の入れてある石膏の壷を持ってきて、
07:38> 泣きながら、イエスのうしろでその足もとに寄り、まず涙でイエスの足をぬらし、自分の髪の毛でぬぐい、そして、その足に接吻して、香油を塗った。
07:39> イエスを招いたパリサイ人がそれを見て、心の中で言った、「もしこの人が預言者であるなら、自分にさわっている女がだれだか、どんな女かわかるはずだ。それは罪の女なのだから」。
07:40> そこでイエスは彼に向かって言われた、「シモン、あなたに言うことがある」。彼は「先生、おっしゃってください」と言った。
07:41> イエスが言われた、ある金貸しに金をかりた人がふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリを借りていた。
07:42> ところが、返すことができなかったので、彼はふたり共ゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらが彼を多く愛するだろうか」。
07:43> シモンが答えて言った、「多くゆるしてもらったほうだと思います」。イエスが言われた、「あなたの判断は正しい」。
07:44> それから女の方に振り向いて、シモンに言われた、「この女を見ないか。わたしがあなたの家にはいってきた時に、あなたは足を洗う水をくれなかった。ところが、この女は涙でわたしの足をぬらし、髪の毛でふいてくれた。
07:45> あなたはわたしに接吻をしてくれなかったが、彼女はわたしが家にはいった時から、わたしの足に接吻をしてやまなかった。
07:46> あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが、彼女はわたしの足に香油を塗ってくれた。
07:47> それて、あなたに言うが、この女は多く愛したから、その多くの罪はゆるされているのである。少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない」。
07:48> そして女に、「あなたの罪はゆるされた」と言われた。
07:49> すると同席の者たちが心の中で言いはじめた、「罪をゆるすことさえするこの人は、いったい、何者だろう」。
07:50> しかし、イエスは女に向かって言われた、「あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。
第八章

08:01> そののちイエスは、神の国の福音を説きまた伝えながら、町々村々を巡回し続けられたが、十二弟子もお供をした。
08:02> また悪霊を追い出され病気をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ、
08:03> ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの婦人たちも一緒にいて、自分たちの持ち物をもって一行に奉仕した。
08:04> さて、大ぜいの群衆が集まり、その上、町々からの人たちがイエスのところに、ぞくぞくと押し寄せてきたので、一つの譬で話をされた、
08:05> 「種まきが種をまきに出て行った。まいているうちに、ある種は道ばたに落ち、踏みつけられ、そして空の鳥に食べられてしまった。
08:06> ほかの種は岩の上に落ち、はえはしたが水気がないので枯れてしまった。
08:07> ほかの種は、いばらの間に落ちたので、いばらも一緒に茂ってきて、それをふさいでしまった。
08:08> ところが、ところがほかの種はよい地に落ちたので、はえ育って百倍もの実を結んだ」。こう語られたのち、声をあげて「きく耳のある者は聞くがよい」と言われた。
08:09> 弟子たちは、この譬はどういう意味でしょうか、とイエスに質問した。
08:10> そこで言われた、「あなたがたには、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの人たちには、見ても見えず、聞いても悟られないために、譬で話すのである。
08:11> この譬はこういう意味である。種は神の言である。
08:12> 道ばたに落ちたのは、聞いたのち、信じることも救われることもないように、悪魔によってその心から御言が奪い取られる人たちのことである。
08:13> 岩の上に落ちたのは、御言を聞いた時には喜んで受けいれるが、根がないので、しばらくは信じていても、試練の時が来ると、信仰を捨てる人たちのことである。
08:14> いばらの中に落ちたのは、聞いても日を過ごすうちに、生活の心づかいや富や快楽にふさがれて、実を熟するまでにならない人たちのことである。
08:15> 良い地に落ちたのは、御言を聞いたのち、これを正しい良い心でしっかりと守り、耐え忍んで実を結ぶに至るひとたちのことである。
08:16> だれもあかりをともして、それを何かの器でおおいかぶせたり、寝台の下に置いたりはしない。燭台の上に置いて、はいって来る人たちに光が見えるようにするのである。
08:17> 隠されているもので、あらわれないものはなく、秘密にされているもので、ついには知られ、明るみに出されないものはない。
08:18> だから、どう聞くかに注意するがよい。持っている人には更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるであろう」。
08:19> さて、イエスの母と兄弟たちとがイエスのところにきたが、群衆のためそば近くに行くことができなかった。
08:20> それで、だれかが「あなたの母上と兄弟がたが、お目にかかろうと思って、外に立っておられます」と取次いだ。
08:21> するとイエスは人々にむかって言われた、「神の御言を聞いて行う者こそ、わたしの母、わたしの兄弟なのである」。
08:22> ある日のこと、イエスは弟子たちと船に乗り込み、「湖の向こう岸へわたろう」と言われたので、一同が船出した。
08:23> 渡っていく間に、イエスは眠ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろしてきたので、彼らは水をかぶって危険になった。
08:24> そこで、みそばに寄ってきてイエスを起こし、「先生、先生、わたしたちは死にそうです」と言った。イエスは起き上がって、風と荒波とをおしかりになると、止んでなぎになった。
08:25> イエスは彼らに言われた、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」。かれらは恐れ驚いて互いに言い合った、「いったい、このかたはだれだろう。お命じになると、風も水も従うとは」。
08:26> それから、彼らはガリラヤの対岸、ゲラサ人の地に渡った。
08:27> 陸にあがられると、その町の人で、悪霊につかれて長いあいだ着物も着ず、家に居つかないで墓場にばかりいた人に、出会われた。
08:28> この人がイエスを見て叫び出し、みまえにひれ伏して大声で言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがおるのです。お願いです、わたしを苦しめないでください」。
08:29> それは、イエスが汚れた霊に、その人から出て行け、とお命じになったからである。というのは、悪霊が何度も彼をひき捕えたので、彼は鎖と足かせとでつながれて看視されていたが、それを断ち切っては悪霊によって荒野へ追いやられていたのである。
08:30> イエスは彼に「なんという名前か」とお尋ねになると、「レギオンと言います」と答えた。彼の中にたくさんの悪霊がはいり込んでいたからである。
08:31> 悪霊どもは、底知れぬ所に落ちていくことを自分たちにお命じにならぬようにと、イエスに願いつづけた。
08:32> ところが、そこの山べにおびただしい豚の群れが飼ってあったので、その豚の中にはいることを許していただきたいと、悪霊どもが願い出た。イエスはそれをお許しになった。
08:33> そこで悪霊どもは、その人から出て豚の中にはいり込んだ。するとその群れは、がけから湖へなだれを打って駆け下り、おぼれ死んでしまった。
08:34> 飼う者たちは、この出来事を見て逃げ出して、町や村里にふれまわった。
08:35> 人々はこの出来事を見に出てきた。そしてイエスのところにきて、悪霊を追い出してもらった人が着物を着て、正気になってイエスの足もとにすわっているのを見て、恐れた。
08:36> それを見た人たちは、この悪霊につかれていた者が救われた次第を、彼らに語り聞かせた。
08:37> それから、ゲラサの地方の民衆はこぞって、自分たちの所から立ち去ってくださるようにとイエスに頼んだ。彼らが非常な恐怖に襲われていたからである。そこで、イエスは船に乗って帰りかけられた。
08:38> 悪霊を追い出してもらった人は、お供したいと、しきりに願ったが、イエスはこう言って彼をお帰しになった。
08:39> 「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい」。そこで彼は立ち去って、自分にイエスがして下さったことを、ことごとく町中に言いひろめた。
08:40> イエスが帰ってこられると、群衆は喜び迎えた。みんながイエスを待ちうけていたのである。
08:41> するとそこに、ヤイロという名の人がきた。この人は会堂司であった。イエスの足もとにひれ伏して、自分の家においでくださるようにと、しきりに願った。
08:42> 彼に十二歳ばかりになるひとりむ娘があったが、死にかけていた。ところが、イエスが出て行かれる途中、群衆が押し迫ってきた。
08:43> ここに、十二年間も長血をわずらっていて、医者のために自分の身代をみな使い果たしてしまったが、だれにもなおしてもらえなかった女がいた。
08:44> この女がうしろから近寄ってみ衣のふさにさわったところ、その長血がたちまち止まってしまった。
08:45> イエスは言われた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々はみな自分ではないと言ったので、ペテロが「先生、群衆があなたを取り囲んで、ひしめき合っているのです」と答えた。
08:46> しかしイエスは言われた、「だれかがわたしにさわった。力がわたしから出て行ったのを感じたのだ」。
08:47> 女は隠しきれないのを知って、震えながら進み出て、みまえにひれ伏し、イエスにさわった訳と、さわるとたちまちなおったこととを、みんなの前で話した。
08:48> そこでイエスが女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。
08:49> イエスがまだ話しておられるうちに、会堂司の家から人がきて、「お嬢さんはなくなられました。この上、先生を煩わすには及びません」と言った。
08:50> しかしイエスはこれを聞いて会堂司にむかって言われた、「恐れることはない。だた信じなさい。娘は助かるのだ」。
08:51> それから家にはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその子の父母のほかは、だれも一緒にはいって来ることをお許しにならなかった。
08:52> 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。イエスは言われた、「泣くな、娘は死んだのではない。眠っているだけである」。
08:53> 人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。
08:54> イエスは娘の手を取って、呼びかけて言われた、「娘よ、起きなさい」。
08:55> するとその霊がもどってきて、娘は即座に立ち上がった。イエスは何か食べ物を与えるように、さしずをされた。
08:56> 両親は驚いてしまった。イエスはこの出来事をだれにも話さないようにと、彼らに命じられた。
第九章

09:01> それからイエスは十二弟子を呼び集めて、彼らにすべての悪霊を制し、病気をいやす力と権威とをお授けになった。
09:02> また神の国を宣べ伝え、かつ病気をなおすためにつかわして
09:03> 言われた、「旅のために何も携えるな。つえも袋もパンも銭も持たず、また下着も二枚は持つな。
09:04> また、どこかの家にはいったら、そこに留まっておれ。そしてそこから出かけることにしなさい。
09:05> だれもあなたがたを迎えるものがいなかったら、その町を出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足からちりを払い落としなさい」。
09:06> 弟子たちは出て行って、村々を巡り歩き、いたる所で福音を宣べ伝え、また病気をいやした。
09:07> さて、領主ヘロデはいろいろな出来事を耳にして、あわて惑っていた。それは、ある人たちは、ヨハネが死人の中からよみがえったと言い、
09:08> またある人たちは、エリヤが現れたと言い、またほかの人たちは、昔の預言者のひとりが復活したのだと言っていたからである。
09:09> そこでヘロデが言った、「ヨハネはわたしがすでに首を切ったのだか、こうしてうわさされているこの人は、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスに会ってみよう思っていた。
09:10> 使徒たちは帰ってきて、自分たちのしたことをすべてイエスにはなした。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退かれた。
09:11> ところが群衆がそれと知って、ついてきたので、これを迎えて神の国のことを語り聞かせ、また治療を要する人たちをいやされた。
09:12> それから日が傾きかけたので、十二弟子がイエスのもとにきて言った、「群衆を解散して、まわりの村々や部落へ行って宿を取り、食物を手にいれるようにさせてください。わたしたちはこにな寂しい所にきているのですから」。
09:13> しかしイエスは言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。彼らは言った、「わたしたちにはパン五つと魚二ひきしかありません、この大ぜいの人のために食物を買いに行くかしなければ」。
09:14> というのは、男が五千人ばかりもいたからである。しかしイエスは弟子たちに言われた、「人々をおおよそ五十人ずつの組にして、すわらせなさい」。
09:15> 彼らはそのとおりにして、みんなをすわらせた。
09:16> イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福してさき、弟子たちにわたして群衆に配らせた。
09:17> みんなの者は食べて満腹した。そして、その余りくずを集めたら、十二かごあった。
09:18> イエスはひとりで祈っておられたとき、弟子たちが近くにいたので、彼らに尋ねて言われた、「群衆はわたしをだれだと言っているのか」。
09:19> 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。しかしほかの人たちは、エリヤだと言い、また昔の預言者のひとりが復活したのだとち、言っている者もあります」。
09:20> 彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うのか」。ペテロが答えて言った、「神のキリストです」。
09:21> イエスは彼らを戒め、この事をだれにも言うなと命じ、そして言われた、
09:22> 「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日目によみがえる」。
09:23> それから、みんなの者に、言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
09:24> 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを救うであろう。
09:25> 人が全世界をもうけても、自分自身を失いまたは損したら、なんの得になろうか。
09:26> わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、自分の栄光と、父と聖なる御使との栄光のうちに現れて来るとき、その者を恥じるであろう。
09:27> よく聞いておくがよい、神の国を見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
09:28> これらのことを話された後、八日ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブを連れて、祈るために山に登られた。
09:29> 祈っておられる間に、み顔の様が変り、み衣がまばゆいほどに白く輝いた。
09:30> すると見よ、二人の人がイエスと語り合っていた。それはモーセとエリヤであったが、
09:31> 栄光の中に現れて、イエスがエルサレムで遂げようとする最後のことについてはなしていたのである。
09:32> ペテロとその仲間の者たちとは熟睡していたが、目をさますと、イエスの栄光の姿と、共に立っているふたりの人とを見た。
09:33> このふたりがイエスを離れ去ろうとしたとき、ペテロは自分が何を言っているかわからないで、イエスに言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
09:34> 彼がこう言っている間に雲がわき起こって彼らをおおいはじめた。そしてその雲に囲まれたとき、彼らは恐れた。
09:35> すると雲の中から声があった、「これはわたしの子、わたしの選んだ者である。これを聞け」。
09:36> そして声が止んだとき、イエスがひとりだけになっておられた。弟子たちは沈黙を守って、自分たちが見たことについては、そのころだれにも話さなかった。
09:37> 翌日、一同が山を降りて来ると、大ぜいの群衆がイエスを出迎えた。
09:38> すると突然、ある人が群衆の中から大声をあげて言った、「先生、お願いです。わたしのむすこを見てやってください。この子はわたしのひとりむすこですが。
09:39> 霊が取り付きますと、彼は急に叫び出すのです。それから、霊は彼をひきつれさせて、あわを吹かせ、彼を弱り果てさせて、なかなか出て行かないのです。
09:40> それで、お弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。
09:41> イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。またあなたがたに我慢できようか。あなたの子をここに連れてきなさい」。
09:42> ところが、その子がイエスのところに来る時にも、悪霊が彼を引き倒して、引きつけさせた。イエスはこの汚れた霊をしかりつけ、その子供をいやして、父親にお渡しになった。
09:43> 人人はみな、神の偉大な力に非常に驚いた。みんなの者がイエスのしておられた数々の事を不思議に思っていると、弟子たちに言われた、
09:44> 「あなたがたはこの言葉を耳におさめて置きなさい。人の子は人々の手に渡されようとしている」。
09:45> しかし、彼らはなんのことかわからなかった。それが彼らに隠されていて、悟ることができなかったのである。また彼らはそのことについて尋ねるのを恐れていた。
09:46> 弟子たちの間に、彼らのうちでだれがいちばん偉いのだろうかということで、議論がはじまった。
09:47> イエスは彼らの心の思いを見抜き、ひとりの幼な子を取りあげて自分のそばに立たせ、彼らに言われた、
09:48> 「だれでもこの幼な子をわたしの名ゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そしてわたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。あなたがたみんなの中でいちばん小さい者こそ、大きいのである」。
09:49> するとヨハネが答えて言った、「先生、わたしたちはある人があなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちの仲間でないので、やめさせました」。
09:50> イエスは彼に言われた、「やめさせないがよい。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方なのである」。
09:51> さて、イエスが天に上げられる日が近づいたので、エルサレムへ行こうと決意して、その方へ顔をむけられ、
09:51> 自分に先立って使者たちをおつかわしになった。そして彼らがサマリヤ人の村へはいって行き、イエスのために準備をしようとしたところ、
09:53> 村人は、エルサレムへむかって進んで行かれるというので、イエスを歓迎しようとはしなかった。
09:54> 弟子のヤコブとヨハネとはそれを見て言った、「主よ、いかがでしょう。彼らを焼き払ってしまうように、天から火をよび求めましょうか」。
09:55> イエスは振りかえって、彼らをおしかりになった。
09:56> そして一同はほかの村へ行った。
09:57> 道を進んで行くと、ある人がイエスに言った、「あなたがおいでになる所ならどこへでも従ってまいります」。
09:58> イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。
09:59> またほかの人に、「わたしに従ってきなさい」と言われた。するとその人が言った、「まず、父を葬りに行かせてください」。
09:60> 彼に言われた、「その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい。あなたは、出て行って神の国を告げひろめなさい」。
09:61> またほかの人が言った、「主よ、従ってまいりますが、まず家の者に別れを言いに行かせてください」。
09:62> イエスは言われた、「手をすきにかけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくないものである」。
第一0章

10:01> その後、主は別に七十二人を撰び、行こうとしておられたすべての町や村へ、ふたりずつ先におつかわしになった。
10:02> そのとき、彼らに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい。
10:03> さあ、行きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、小羊をおおかみの中に送るようなものである。
10:04> 財布も袋も持って行くな。だれにも道であいさつするな。
10:05> どこかの家にはいったら。まず『平安がこの家にあるように』と言いなさい。
10:06> もし平安の子がそこにおれば、あなたがたの祈る平安はその人の上にとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたの上に帰って来るであろう。
10:07> それで、その同じ家に留まっていて、家の人が出してくれるものを飲み食いしなさい。働き人がその報いを得るのは当然である。家から家へと渡り歩くな。
10:08> どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えてくれるなら、前に出されるものを食べなさい。
10:09> そして、その町にいる病人をいやしてやり、『神の国はあなたがたに近づいた』と言いなさい。
10:10> しかし、どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えない場合には、大通りに出て行って言いなさい、
10:11> 『わたしたちの足についているこの町のちりも、ぬぐい捨てて行く。しかし、神の国が近づいたことは、承知しているがよい』。
10:12> あなたがたに言っておく。その日には、この町よりもソドムの方が耐えやすいであろう。わざわいだ、コラジンよ。
10:13> わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちの中でなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰の中にすわって、悔い改めたであろう。
10:14> しかし、さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。
10:15> ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉まで落とされるであろう。
10:16> あなたがたに聞き従う者は、わたしに聞き従うものであり、あなたがたを拒む者は、わたしをおつかわしになったかたを拒むのである」。
10:17> 七十二人が喜んで帰ってきて言った、「主よ、あなたの名によっていたしますと、悪霊までがわたしたちに服従します」。
10:18> 彼らに言われた、「わたしはサタンが電光のように天から落ちるのを見た。
10:19> わたしはあなたがたに、へびやさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けた。だから、あなたがたに害をおよぼす者はまったく無いであろう。
10:20> しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶな。むしろ、あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。
10:21> そのとき、イエスは聖霊によって喜びあふれて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵ある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。父よ、これはまことに、みこころにかなった事でした。
10:22> すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子がだれであるかは、父のほか知っている者はありません。また父がだれであるかは、子と、父をあらわそいとして子が選んだ者とのほか、だれも知っている者はいません」。
10:23> それから弟子たちの方に振りむいて、ひそかに言われた、「あなたがたが見ていることを見る目は、さいわいである。
10:24> あなたがたに言っておく。多くの預言者や王たちも、あなたがたの見ていることを見ようとしたが、見ることができず、あなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである」。
10:25> するとそこへ、ある律法学者が現れ、イエスを試みようとして言った、「先生、何をしたら永遠の生命を受けられましょうか」。
10:26> 彼に言われた、「律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか」。
10:27> 彼は答えて言った、「『心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。また、『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』とあります」。
10:28> 彼に言われた、「あなたの答は正しい。そのとおり行いなさい。そうすれば、いのちが得られる」。
10:29> すると彼は自分の立場を弁護しようと思って、イエスに言った、「では、わたしの隣り人とはだれのことですか」。
10:30> イエスが答えて言われた、「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、傷を負わせ、半殺しにしたまま、逃げ去った。
10:31> するとたまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、向こう側を通って行った。
10:32> 同様に、レビ人もこのこの場所にさしかかってきたが、彼を見ると向こう側を通って行った。
10:33> ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、
10:34> 近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒とを注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。
10:35> 翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、『この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います』と言った。
10:36> この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか」。
10:37> 彼が言った、「その人に慈悲深い行いをした人です」。そこでイエスは言われた、「あなたも行って同じようにしなさい」。
10:38> 一同が旅を続けているうちに、イエスがある村へはいられた。するとマルタという名の女がイエスを家に迎え入れた。
10:39> この女にマリヤという妹がいたが、主の足元にすわって、御言に聞き入っていた。
10:40> ところが、マルタは接待のことで忙しくて心をとりみだし、イエスのところにきて言った、「主よ、妹がわたしにだけ接待をさせているのを、なんともお思いになりませんか。わたしの手伝いをするように妹におっしゃってください」。
10:41> 主は答えて言われた、「マルタよ、マルタよ、あなたは多くのことに心を配って思いわずらっている。
10:42> しかし、無くてはならぬものは多くはない。いや、一つだけである。マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」。
第一一章

11:01> また、イエスはある所に行で祈っておられたが、それが終わったとき、弟子のひとりが言った、「主よ、ヨハネがその弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈ることを教えてください」。
11:02> そこで彼らに言われた、『父よ、御名をあがめられますように、御国がきますように。
11:03> わたしたちの日ごとの食物を、日々お与えください。
11:04> わたしたちに負債のある者を皆ゆるしますから、わたしたちの罪をもおゆるしください。わたしたちを試みに会わせないでください』」。
11:05> そして彼らに言われた、「あなたがたのうちのだれかに、友人があるとして、その人のところへ真夜中に行き、『友よ、パンを三つ化してください。
11:06> 友だちが旅先からわたしのところに着いたのですが、何も出すものがありませんから』と言った場合、
11:07> 彼は内から、『面倒をかけないでくれ。もう戸は締めてしまったし、子供たちもわたしと一緒にとこにはいっているので、いま起きて何もあげるわけにはいかない』と言うであろう。
11:08> しかし、よく聞きなさい、友人だからというのでは起きて与えないが、しきりに願うので、起き上がって必要なものを出してくれるであろう。
11:09> そこでわたしはあなたがたに言う。求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。
11:10> すべて求める者に得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。
11:11> あなたがたのうちで、父であるものは、その子が魚を求めるのに、魚の代わりにへびをあたえるだろうか。
11:12> 卵を求めるのに、さそりを与えるだろうか。
11:13> このように、あなたがたは悪い者でであっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天の父はなおさら、求めて来る者に聖霊を下さらないことがあろうか」。
11:14> さて、イエスが悪霊を追い出しておられた。それは、物を言えなくする霊であった。悪霊が出て行くと、口の聞けない人が物を言うようになったので、群衆は不思議に思った。
11:15> その中のある人々が、「彼は悪霊のかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」、と言い、
11:16> またほかの人々はイエスを試みようとして、天からのしるしを求めた。
11:17> しかしイエスは、彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ国が内部で分裂すれば自滅してしまい、また家が分れ争えば倒れてしまう。
11:18> そこでサタンも内部で分裂すれば、その国はどうして立ち行けよう。おなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出していると言うが、
11:19> もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。
11:20> しかし、わたしが神の指によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。
11:21> 強い人が十分に武装して自分の邸宅を守っている限り、その持ち物は安全である。
11:22> しかし、もっと強い者が襲ってきて彼に打ち勝てば、その頼みにしていた武具を奪って、その分捕品を分けるのである。
11:23> わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。
11:24> 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからないので、出てきた元の家に帰ろうと言って、
11:25> 帰って見ると、その家はそうじがしてある上、飾りつけがしてあった。
11:26> そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人の後の状態は初めよりももっと悪くなるのである」。
11:27> イエスがこう話しておられるとき、群衆の中からひとりの女が声を張りあげて言った、「あなたを宿した胎、あなたが吸われた乳房は、なんとめぐまれていることでしょう」。
11:28> しかしイエスは言われた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、神の言を聞いてそれを守る人たちである」。
11:29> さて群衆が群がり集まったので、イエスは語り出された、「この時代は邪悪な時代である。それはしるしを求めるが、ヨナのしるしのほかはには、なんのしるしも与えられないであろう。
11:30> というのは、ニネベの人々に対してヨナがしるしとなったように、人の子もこの時代に対してしるしとなるであろう。
11:31> 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために、地の果てからはるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。
11:32> ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
11:33> だれもあかりをともして、それを穴倉の中や枡の下に置くことはしない。むしろはいって来る人たちに、そのあかりが見えるように、燭台の上におく。
11:34> あなたの目は、からだのあかりである。あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいが、目がわるければ、からだも暗い。
11:35> だからあなたの内なる光が暗くならないように注意しなさい。
11:36> もし、あなたのからだ全体が明るくて、暗い部分が少しもなければ、ちょうど、あかりが輝いてあなたを照らす時のように、全身が明るくなるであろう」
11:37> イエスが語っておられた時、あるパリサイ人が自分の家で食事をしていただきたいと申し出たので、はいって食卓につかれた。ところが、
11:38> 食前にまず洗うことをなさらなかったのを見て、そのパリサイ人は不思議に思った。
11:39> そこで主は言われた、「いったい、あなたがたパリサイ人は、杯や盆の外側をきよめるが、あなたがたの内側は貪欲と邪悪とで満ちている。
11:40> 愚かな者たちよ、外側を造ったかたは、また内側も造られたではないか。
11:41> ただ、内側にあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、清いものとなる。
11:42> しかし、あなた方パリサイ人は、わざわいである。はっか、うん香、あらゆる野菜などの十分の一を宮に納めておきながら、義と神に対する愛とをなおざりにしている。それもなおざりにできないが、これを行わねばならない。
11:43> あなたがたパリサイ人は、わざわいである。会堂の上席や広場での敬礼を好んでいる。
11:44> あなたがたは、わざわいである。人目につかない墓のようなものである。その上を歩いても人々は気づかないでいる」。
11:45> ひとりの律法学者がイエスに答えて言った、「先生、そんなことを言われるのは、わたしたちまでも侮辱することです」。
11:46> そこで言われた、「あなたがた律法学者も、わざわいである。負い切れない重荷を人に負わせながら、自分ではその荷に指一本でも触れようとしない。
11:47> あなたがたは、わざわいである。預言者たちの碑を建てるが、しかし彼らを殺したのは、あなたがたの先祖であったのだ。
11:48> だから、あなたがたは、自分の先祖のしわざに同意する証人なのだ。先祖が彼らを殺し、あなたがたがその碑を建てるのだから。
11:49> それゆえに、『神の知恵』も言っている、『わたしは預言者と使徒とを彼らにつかわすが、彼らはそのうちのある者を殺したり、迫害したりするであろう』。
11:50> それで、アベルの血から祭壇と神殿との間で殺されたザカリヤの血に至るまで、世の初めから流されてきたすべての預言者の血について、この時代がその責任を問われる。
11:51> そうだ、あなたがたに言って置く、この時代がその責任を問われるであろう。
11:52> あなたがた律法学者は、わざわいである。知識のかぎを取りあげて、自分がはいらないばかりか、はいろうとする人たちを妨げてきた」。
11:53> イエスがそこを出て行かれると、律法学者やパリサイ人は、激しく詰め寄り、いろいろな事を問いかれて、
11:54> イエスの口から何か言いがかりを得ようと、ねらいはじめた。
第一二章

12:01> その間に、おびただしい群衆が、互いに踏み合うほどに群がってきたが、イエスはまず弟子たちに語りはじめらた、「パリサイ人のパン種、すなわち彼らの偽善に気をつけなさい。
12:02> おおいかぶされたもので、現れてこないものはなく。隠れているもので、知られてこないものはない。
12:03> だから、あなたがたが暗やみで言ったことは、なんでもみな明るみで聞かれ、密室で耳にささやいたことは、屋根の上で言いひろめられるであろう。
12:04> そこでわたしの友であるあなたがたに言うが、からだを殺しても、そのあとでそれ以上なにもできない者どもを恐れるな。
12:05> 恐るべき者がだれであるか、教えてあげよう。殺したあとで、更に地獄に投げ込む権威のあるかたを恐れなさい。
12:06> 五羽のすずめは二アサリオンで売られているではないか。しかも、その一羽も神のみまえで忘れられてはいない。
12:07> その上、あなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。
12:08> そこで、あなたがたに言う。だれでも人の前でわたしを受けいれる者を、人の子も神の使いたちの前で受けいれるであろう。
12:09> しかし、人の前でわたしを拒む者は、神の使いたちの前で拒まれるであろう。
12:10> また、人の子に言い逆らう者はゆるされるであろうが、聖霊をけがす者は、ゆるされることはない。
12:11> あなたがたが会堂や役人や高官の前へひっぱられて行った場合には、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配しないがよい。
12:12> 言うべきことは、聖霊がその時に教えてくださるからである」。
12:13> 群衆の中のひとりがイエスに言った、「先生、わたしの兄弟に、遺産を分けてくれるようにおっしゃつてください」。
12:14彼に言われた、「人よ、だれがわたしをあなたがたの裁判人または分配人に立てたのか」。
12:15> それから人々にむかって言われた、「あらゆる貪欲に対してよくよく警戒しなさい。たといたくさんの物を持っていても、人のいのちは、持ち物にはよらないのである」。
12:16> そこで一つの譬で語られた、「ある金持の畑が豊作であった。
12:17> そこで彼は心の中で、『どうしようか、わたしの作物をしまっておく所がないのだが』とおもいめぐらして
12:18> 言った、『こうしよう。わたしの倉を取りこわし、もっと大きいのを建てて、そこに穀物や食糧を全部しまい込もう。
12:19> そして自分の魂に言おう。たましいよ、おまえには長年月分の食糧がたくさんたくわえてある。さあ安心せよ、食え、飲め、楽しめ』。
12:20> すると神が彼に言われた、『愚かな者よ、あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。そしたら、あなたが用意した物は、だれのものになるのか』。
12:21> 自分のために宝を積んで神に対して富まない者は、これと同じである」。
12:22> それから弟子たちに言われた、「それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようとかと、命のことで思いわずらい、何を着ようかとからだのことで思いわずらうな。
12:23> 命は食物にまさり、からだは着物にまさっている。
12:24> からすのことを考えて見よ。まくことも、刈ることもせず、また、納屋もなく倉もない。それだのに、神は彼らを養っていて下さる。あなたがたは鳥よりも、はるかにすぐれているではないか。
12:25> あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。
12:26> そんな小さい事でさえできないのに、どうしてほかのことを思いわずらうのか。
12:27> 野の花のことを考えて見るがよい。紡ぎもせず、織りもしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花一つほどにも着飾ってはいなかった。
12:28> きょうは野にあって、あすは炉に投げ入れられる草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。
12:29> あなたがたも、何を食べ、何を飲もうかと、あくせくするな、また気を使うな。
12:30> これらのものは皆、この世の異邦人が切に求めているものである。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要であることを、ご存知である。
12:31> ただ、御国を求めなさい。そうすれば、これらのものは添えて与えられるであろう。
12:32> 恐れるな、小さい群れよ。御国を下さることは、あなたがたの父のみこころなのである。
12:33> 自分の持ち物を売って、施しなさい。自分のために古びることのない財布をつくり、盗人も近寄らず、虫も食い破らない天に、尽きることのない宝をたくわえなさい。
12:34> あなたがたの宝のある所には、心もあるからである。
12:35> 腰に帯をしめ、あかりをともしていなさい。
12:36> 主人が婚宴から帰ってきて戸をたたくとき、すぐあけてあげようと待っている人のようにしていなさい。
12:37> 主人が帰ってきたとき、目を覚ましているのを見られる僕たちを食卓につかせ、進み寄って給仕してくれるであろう。
12:38> 主人が夜中ごろ、あるいは夜明けごろに帰ってきても、そうしているのを見られるなら、その人たちはさいわいである。
12:39> このことを、わきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、自分の家に押し入らせはしないであろう。
12:40> あなたがたも用意していなさい。思いがけない時に人の子が来るからである」。
12:41> するとペテロが言った、「主よ、この譬をはなしておられるのはわたしたちのためですか。それとも、みんなの者のためなのですか」。
12:42> そこで主が言われた、「主人が、召使たちの上に立てて、時に応じて定めの食事をそなえさせる忠実な思慮深い家令は、いったいだれであろう。
12:43> 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。
12:44> よく言っておくが、主人はその僕を立てて自分の全財産を管理させるであろう。
12:45> しかし、もしその僕が、主人の帰りがおそいと心の中で思い、男女の召使たちを打ちたたき、そして食べたり、飲んだりして酔いはじめるならば、
12:46> その僕の主人は思いがけない日、気づかない時に帰って来るであろう。そして、彼を厳罰に処して、不忠実なものたちと同じ目にあわせるであろう。
12:47> 主人のこころを知っていながら、それに従って用意もせず勤めもしなかった僕は、多くむち打たれるであろう。
12:48> しかし、知らずに打たれるようなことをした者は、打たれ方が少ないだろう。多く与えられた者からは多く求められ、多く任せられた者からは更に多く要求されるであろう。
12:49> わたしは、火を地上に投じるためにきたのだ。火がすでに燃えていたならと、わたしはどんなに願っていることか。
12:50> しかし、わたしには受けなければならないバプテスマがある。そして、それを受けてしまうまでは、わたしはどんなにか苦しい思いをすることであろう。
12:51> あなたがたは、わたしが平和をこの地上にもたらすためにきたと思っているのか。あなたがたに言っておく。そうではない。むしろ分裂である。
12:52> というのは、今から後は、一家の内で五人が相分れて、三人はふたりに、ふたりは三人に対立し、
12:53> また父は子、子は父に、母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに、対立するであろう」。
12:54> イエスはまた群衆に対しても言われた、「あなたがたは、雲が西に起るのを見るとすぐ、にわか雨がやって来る、と言う。果たしてそのとおりになる。
12:55> それから南風が吹くと、暑くなるだろう、と言う。果たしてそのとおりになる。
12:56> 偽善者よ、あなたがたは天地の模様を見分けることを知りながら、どうして今の時代を見分けることができないのか。
12:57> また、あなたがたは、なぜ正しいことを自分で判断しないのか。
12:58> たとえば、あなたを訴える人と一緒に役人のところへ行くときには、途中でその人と和解するように努めるがよい。そうしないと、その人はあなたを裁判官のところへひっぱって行き、裁判官はあなたを獄吏に引き渡し、獄吏はあなたを獄に投げ込むであろう。
12:59> わたしは言って置く、最後の一レプタまでも支払ってしまうまでは、決してそこから出て来ることはできない」。
第一三章

13:01> ちょうどその時、ある人々がきて、ピラトがガリラヤ人たちの血を流し、それを彼らの犠牲の血に混ぜたことを、イエスに知らせた。
13:02> そこでイエスは答えて言われた、「それらのガリラヤ人が、そのような災難あったからといって、他のすべてのガリラヤ人以上に罪が深かったと思うのか。
13:03> あなたがたに言うが、そうではない、あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう。
13:04> また、シロアムの塔が倒れたためにおし殺したあの十八人は、エルサレムの他の全民衆以上に罪の負債があったと思うか。
13:05> あなたがたに言うが、そうではない、あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう」。
13:06> それから、この譬で語られた、「ある人が自分のぶどう園にいちじくの木を植えて置いたので、実を探しにきたが見つからなかった。
13:07> そこで園丁に言った、『わたしは三年間も実を求めて、このいちじくの木のところにきたのだが、いまだに見あたらない。その木を切り倒してしまえ。なんのために、土地をむだにふそがせて置くのか』。
13:08> すると園丁は答えて言った、『ご主人様、ことしも、そのままにして置いてください。そのまわりを掘って肥料をやって見ますから。
13:09> それで来年実がなりましたら結構です。もしそれでもだめなら、切り倒してください』」。
13:10> 安息日に、ある会堂で教えておられると、
13:11> そこに十八年も病気の霊につかれ、かがんだままで、からだを伸ばすことの全くできない女がいた。
13:12> イエスはこの女を見て、呼びよせ、「女よ、あなたの病気はなおった」と言って、
13:13> 手をその上に置かれた。すると立ちどころに、そのからだがますくになり、そして神をたたえはじめた。
13:14> ところが会堂司は、イエスが安息日に病気をいやされたことに憤り、群衆にむかって言った、「働くべき日は六日ある。その間に、なおしてもらいにきなさい。安息日にはいけない」。
13:15> 主はこれに答えて言われた、「偽善者たちよ、あなたがたはだれでも、安息日であっても、自分の牛やろばを家畜小屋から解いて、水を飲ませに引き出してやるではないか。
13:16> それなら、十八年もサタンに縛られいた、アブラハムの娘であるこの女を、安息日であっても、その束縛から解いてやるべきではなかったか」。
13:17> こう言われたので、イエスに反対していた人たちはみな恥じ入った。そして群衆はこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざを見て喜んだ。
13:18> そこで言われた、「神の国は何に似ているか。またそれを何にたとえようか。
13:19> 一粒のからし種のようなものである。ある人がそれを取って庭にまくと、育って木となり、空の鳥もその枝に宿るようになる」。
13:20> また言われた、「神の国を何にたとえようか。
13:21> パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。
13:22> さてイエスは教えながら町々村々を通り過ぎ、エルサレムへと旅を続けられた。
13:23> すると、ある人がイエスに、「主よ、救われる人は少ないのですか」と尋ねた。
13:24> そこでイエスは人々にむかって言われた、「狭い戸口からはいるように努めなさい。事実、はいろうとしても、はいれない人が多いのだから。
13:25> 家の主人が立って戸を閉じてしまってから、あなたがたが外に立ち戸をたたき始めて、『ご主人様、ぞうぞあけてください』と言っても、主人はそれに答えて、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしはしらない』と言うであろう。
13:26> そのとき、『わたしたちはあなたとご一緒に飲み食いしました。また、あなたはわたしたちの大通りで教えてくださいました』と言い出しても、
13:27> 彼は、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしは知らない。悪事を働く者どもよ、みんな行ってしまえ』と言うであろう。
13:28> あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者たちが、神の国にはいっているのに、自分たちは外に投げ出されることになれば、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
13:29> それから人々が、東から西から、また南から北からきて、神の国の宴会の席につくであろう。
13:30> こうしてあとのもので先になるものがあり、また、先のものであとのものになるものもある」。
13:31> ちょうどその時、あるパリサイ人たちが、イエスに近寄ってきて言った、「ここから出て行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています」。
13:32> そこで彼らに言われた、「あのきつねのところへ行ってこう言え、『見よ、わたしはきょうもあすも悪霊を追い出し、また、病気をいやし、そして三日目にわざを終えるであろう。
13:33> しかし、きょうもあすも、またその次の日も、わたしは進んで行かねばならない。預言者がエルサレム以外の地で死ぬことは、あり得ないからである』。
13:34> ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえたちにつかわされた人々を石で打ち殺す者よ、ちょうどめんどりが翼の下にひなを集めるように、私はおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。
13:35> 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。わたしは言って置く、『主の名によってきたるものに、祝福あれ』とおまえたちが言う時の来るまでは、再びわたしに会うことはないであろう」。
第一四章

14:01> ある安息日のこと、食事をするために、あるパリサイ派のかしらの家にはいって行かれたが、人々はイエスの様子をうかがっていた。
14:02> するとそこに、水腫をわずらっている人が、みまえにいた。
14:03> イエスは律法学者パリサイ人たちにむかって言われた、「安息日に人をいやすのは、正しいことかどうか」。
14:04> 彼らは黙っていた。そこでイエスはその人に手を置いていやしてやり、そしてお帰りになった。
14:05> それから彼らに言われた、「あなたがたのうちで、自分のむすこか牛が井戸に落ち込んだなら、安息日だからといって、すぐに引き上げてやらない者がいるだろうか」。
14:06> 彼らはこれに対して返す言葉がなかった。
14:07> 客に招かれた者たちが上座を選んでいる様子をごらんになって、彼らに一つの譬で語られた。
14:08> 「婚宴に招かれたときには、上座につくな。あるいは、おなたがたよりも身分の高い人が招かれているかも知れない。
14:09> その場合、あなたとその人を招いた人がきて、『このかたに座を、譲ってください』と言うであろう。そのとき、あなたは恥じ入って末座につくことになるであろう。
14:10> むしろ、招かれた場合には、末座に行ってすわりなさい。そうすれば、招いてくれた人がきて、『友よ、上座の方へお進みください』と言うであろう。そのとき、あなたの席を共にするみんなの前で、面目をほどこすことになるであろう。
14:11> おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるのであろう」。
14:12> また、イエスは自分を招いた人に言われた、「午餐または晩餐の席を設ける場合には、友人、兄弟、親族、金持の隣り人なとは呼ばぬがよい。おそらく彼らもあなたを招きかえし、それであなたは返礼を受けることになるから。
14:13> むしろ、宴会を催す場合には、貧しい人、体の不自由な人、足の悪い人、目の見えない人などを招くが良い。
14:14> そうすれば、彼らは返礼ができないから、あなたはさいわいになるであろう。正しい人々の復活の際には、あなたはむくいられるであろう」。
14:15> 列席者のひとりがこれを聞いてイエスに「神の国で食事をする人は、さいわいです」と言った。
14:16> そこでイエスが言われた、「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招いた。
14:17> 晩餐の時刻になったので、招いておいた人たちのもとに僕を送って、『さあ、おいでください。もう準備ができましたから』と言わせた。
14:18> ところが、みんな一様に断りはじめた。最初の人は『わたしは土地を買いましたので、行って見なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と言った。
14:19> ほかの人は、『わたしは五対の牛を買いましたので、それをしらべに行くところです。どうぞ、おゆるしください』、
14:20> もうひとりの人は、『わたしは妻をめとりましたので、参ることができません』と言った。
14:21> 僕は帰ってきて、以上の事を主人に報告した。すると家の主人はおこって僕に言った、『いますぐに、町の大通りや小道へ行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の悪い人などを、ここへ連れてきなさい』。
14:22> 僕は言った、『ご主人様、仰せのとおりにいたしましたが、まだ席がございます』。
14:23> 主人が僕に言った、『道やかきねのあたりに出て行って、この家がいっぱいになるように、人々を無理やりひっぱってきなさい。
14:24> あなたがたに言って置くが、招かれた人で、わたしの晩餐にあずかる者はひとりもないであろう』」。
14:25> 大ぜいの群衆ががついてきたので。イエスは彼らの方をに向かって言われた、
14:26> 「だれでも、父、母、妻、子、兄弟、姉妹、さらに自分の命までも捨てて、わたしの弟子となることはできない。
14:28> 自分の十字架を負うてわたしについて来るものでなければ、わたしの弟子となることはできない。あなたがたのうちで、だれかが邸宅を建てようと思うなら、それを仕上げるのに足りるだけの金を持っているかどうかをみるため、まず、すわってその費用を計算しないだろうか。
14:29> そうしないと、土台をすえただけで完成することができず、見ているみんなの人が、
14:30> 『あの人は建てかけたが仕上げができなかった』と言ってあざ笑うようになろう。
14:31> また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えるために出ていく場合には、まず座して、こちらの一万人をもって、二万人を率いて向かってくる適に対抗できるかどうか、考えて見ないだろうか。
14:32> もし自分の力にあまれば、適がまだ遠くにいるうちに、使者を送って、和を求めるであろう。
14:33> それと同じように、あなたがたのうちで、自分の財産をことごとくすて切るものでなくては、わたしの弟子となることはできない。
14:34> 塩は良いものだ。しかし、塩もききめがなくなったら、何によって塩味が取りもどされようか。
14:35> 土にも肥料にも役立たず、外に投げ捨てられてしまう。聞く耳のあるものは聞くがよい」。
第一五章

15:01> さて、収税人や罪人たちが皆、イエスの話を聞こうとして近寄ってきた。
15:02> するとパリサイ人や律法学者たちがつぶやいて、「この人は罪人たちを迎えて一緒に食事をしている」と言った。
15:03> そこでイエスは彼らに、この譬をお話になった、
15:04> 「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を野に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜しに歩かないであろうか。
15:05> そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩に乗せ、
15:06> 家に帰ってきて友人や隣り人を呼び集め、『わたしと一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うであろう。
15:07> よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、悔い改めが必要としない九十九人の正しい人のためにもまさる大きいよろこびが、天にあるであろう」。
15:08> また、ある女が銀貨十枚を持っていて、もしその一枚をなくしたとすれば、彼女はあかりをつけて家中を掃き、それを見つけるまでは注意深く捜さないであろうか。
15:09> そして見つけたなら、女友だちや近所の女たちを呼び集めて、『わたしと一緒に喜んでください。なくした銀貨が見つかりましたから』と言うであろう。
15:10> よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、神の御使たちの前でよろこびがあるであろう」。
15:11> また言われた、「ある人に、ふたりのむすこがあった。
15:12> ところが、弟が父親に言った、『父よ、あなたの財産のうちでわたしがいただく分をください』。そこで、父はその身代をふたりに分けてやった。
15:13> それから幾日もたたないうちに、弟は自分のものを全部とりまとめて遠い所へ行き、そこで放蕩に身を持ちくずして財産を使い果たした。
15:14> 何もかも浪費してしまったのち、その地方にひどいききんがあったので、彼は食べることにも窮しはじめた。
15:15> そこで、その地方のある住民のところに行って身を寄せたところが、その人は彼を畑にやって豚を飼わせた。
15:16> 彼は、豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいと思うほどであったが、何もくれる人はなかった。
15:17> そこで彼は本心に立ちかえって言った『父のところには食物のあり余っている雇人が大ぜいいるのに、わたしはここで飢えて死のうとしている。
15:18> 立って、父のところへ帰って、こう言おう、父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。
15:19> もう、あなたのむすこと呼ばれる資格はありません。ぞうぞ、雇人のひとり同様にしてください』。
15:20> そこで立って、父のところへ出かけた。まだ遠く離れていたのに、父は彼をみとめ、哀れに思って走り寄り、その首をだいて接吻した。
15:21> むすこは父に言った、『父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。もうあなたの息子と呼ばれる資格はありません』。
15:22> しかし父は僕たちに言いつけた、『さあ、早く、最上の着物を出してきてこの子に着せ、指輪を手にはめ、はきものを足にはかせなさい。
15:23> また、肥えた子牛を引いてきてほふりなさい。食べて楽しもうではないか。
15:24> このむすこが死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから』。それから祝宴がはじまった。
15:25> ところが、兄は畑にいたが、帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえたので、
15:26> ひとりの僕を呼んで、『いったい、これは何事なのか』と尋ねた。
15:27> 僕は答えた、『あなたのご兄弟がお帰りになりました。無事に迎えたというので、父上が肥えた子牛をほふらせなさったのです』。
15:28> 兄はおこって家にはいろうとしなかったので、父が出てきてなだめると、
15:29> 兄は父にむかって言った、『わたしは何か年もあなたに仕えて、一度でもあなたの言いつけにそむいたことはなかったのに、友だちと楽しむために子やぎ一匹も下さったことはありません。
15:30> それだのに、遊女どもと一緒になって、あなたの身代を食いつぶしたこのあなたの子が帰ってくると、そのために肥えた子牛をほふりなさいました』。
15:31> すると父は言った、『子よ、あなたはいつもわたしと一緒にいるし、またわたしのものは全部あなたのものだ。
15:32> しかし、このあなたの弟は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから、喜び祝うのはあたりまえである』」。
第一六章

16:01> イエスはまた、弟子たちに言われた、「ある金持ちのところにひとりの家令がいたが、彼は主人の財産を浪費していると、告げ口する者があった。
16:03> そこで主人が彼を呼んで言った、『あなたについて聞いていることがある、あれはどうなのか。あなたの会計報告を出しなさい。もう家令をさせて置くわけにはいかないから』。
16:03> この家令は心の中で思った、『どうしようか、主人がわたしの職を取り上げようとしている。土を掘るには力がないし、物ごいをするのは恥ずかしい。
16:04> そうだ、わかった。こうしておけば、職をやめさせられる場合、人人がわたしを、その家に迎えてくれるだろう』。
16:05> それから彼は、主人の負債者をひとりびとり呼び出して、初めの人に、『あなたは、わたしの主人にどれだけ負債がありますか』と尋ねた。
16:06> 『油百樽です』と答えた。そこで家令が言った、『ここにあなたの証書がある。すぐそこにすわって、五十樽と書き変えなさい』。
16:07> 次ぎに、もうひとりに、『あなたの負債はどれだけですか』と尋ねると、『麦百石です』と答えた。これに対して、『ここに、あなたの証書があるが、八十石と書き変えなさい』と言った。
16:08> ところが主人は、この不正な家令の利口なやり方をほめた。この世の子らはその時代に対しては、光の子らよりも利口である。
16:09> またあなたがたに言うが、不正の富を用いてでも、自分のために友だちをつくるがよい。そうすれば、富が無くなった場合、あなたがたを永遠のすまいに迎えてくれるであろう。
16:10> 小事に忠実な人は、大事にも忠実である。そして、小事に不忠実な人は大事にも不忠実である。
16:11> だから、もしあなたがたが不正の富について忠実てなかったら、だれが真の富を任せるだろうか。
16:12> また、もしほかの人のものについて忠実でなかったら、だれがあなたがたのものを与えてくれようか。
16:13> どの僕でも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない」。
16:14> 欲の深いパリサイ人たちが、すべてこれらの言葉を聞いて、イエスをあざ笑った。
16:15> そこで彼らにむかって言われた、「あなたがたは、人々の前で自分を正しいとする人たちである。しかし、神はあなたがたの心をご存じである。人々の間で尊ばれるものは、神のまえでは忌みきらわれる。
16:16> 律法と預言者とはヨハネの時までのものである。それ以来、神の国が宣べ伝えられ、人々は皆これに突入している。
16:17> しかし、律法の一画が落ちるよりは、天地の滅びる方が、もっとたやすい。
16:18> すべて自分の妻を出して他の女をめとるものは、姦淫をおこなうものであり、また、夫から出された女をめとる者も、姦淫を行うものである。
16:19> ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。
16:20> ところが、ラザロという貧しい人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、
16:21> その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。
16:22> この貧しい人がついに死に、御使たちにつれられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。
16:24> そして黄泉について苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火災の中で苦しみもだえています』。
16:25> アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪い物を受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。
16:26> そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。
16:27> そこで金持が言った、『父よ、ではお願いします。わたしの父の家へラザロをつかわしてください。
16:28> わたしに五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに警告していただきたいのです』。
16:29> アブラハムは言った、『彼らにはモーセと預言者とがある。それに聞くがよかろう』。
16:30> 金持が言った、『いえいえ、父アブラハムよ、もし死人の中からだれかが兄弟たちのところへ行ってくれましたら、彼らは悔い改めるでしょう』。
16:31> アブラハムは言った、『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』」。
第一七章

17:01> イエスは弟子たちに言われた、「罪の誘惑が来ることは避けられない。しかし、それをきたらせる者は、わざわいである。
17:02> これらの小さい者のひとりを罪に誘惑するよりは、むしろ、ひきうすを首にかけられて海に投げ入れられた方が、ましである。
17:03> あなたがたは、自分で注意しなさい。もしあなたがたの兄弟が罪を犯すなら、彼をいさめなさい。そして悔い改めたら、ゆるしてやりなさい。
17:04> もしあなたに対して一日に七度罪を犯し、そして七度『悔い改めます』と言ってあなたのところへ帰ってくれば、ゆるしてやるがよい」。
17:05> 使徒たちは主に「わたしたちの信仰を増してください」と言った。
17:06> そこで主が言われた、「もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この桑の木に、『抜け出して海に植われ』と言ったとしても、その言葉どおりになるであろう。
17:07> あなたがたのうちでだれかに、耕作か牧畜かをする僕があるとする。その僕が畑から帰って来たとき、彼に『かぐきて、食卓につきなさい』と言うだろうか、
17:08> かえって、『夕食の用意をしてくれ。そしてわたしが飲み食いするあいだ、帯をしめて給仕をしなさい。そのあとで、飲み食いをするがよい』と、言うではないか。
17:09> 僕が命じられたことをしたからといって、主人は彼に感謝するだろうか。
17:10> 同様にあなたがたも、命じられたことを皆してしまったとき、『わたしはふつつかな僕です。すべき事をしたに過ぎません』と言いなさい」。
17:11> イエスはエルサレムへ行かれるとき、サマリヤとガリラヤとの間を通られた。
17:12> そして、ある村へはいられると、十人のらい病人に出会われたが、彼らは遠くの方で立ちとどまり、
17:13> 声を張りあげて、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください」と言った。
17:14> イエスは彼らをごらんになって、「祭司たちのところへ行って、からだを見せなさい」と言われた。そして、行く途中で彼らはきよめられた。
17:15> そのうちのひとりは、自分がいやされたことを知り、大声で神をほめたたえながら帰ってきて、
17:16> イエスの足もとにひれ伏して感謝した。これはサマリヤ人であった。
17:17> イエスは彼にむかって言われた、「きよめられたのは、十人ではなかったか。ほかの九人は、どこにいるのか。
17:18> 神をほめたたえるために帰ってきたのものは、この他国人のほかにはいないのか」。
17:19> それから、その人に言われた、「立って行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのだ」。
17:20> 神の国はいつ来るのかと、パリサイ人が訪ねたので、イエスは答えて言われた、「神の国は、見られるかたちで来るものではない。
17:21> また『見よ、ここにある』『あそこにある』などとも言えない。神の国は、実にあなたがたのただ中にあるのだ」。
17:22> それから弟子たちに言われた、「あなたがたは、人の子の日を一日でも見たいと願っても見ることができない時が来るであろう。
17:23> 人々はあなたがたに、『見よ、あそこに』『見よ、ここに』と言うだろう。しかし、そちらへ行くな、彼らのあとを追うな。
17:24> いなずまが天の端からひかり出て天の端へとひらめき渡るように、人の子もその日には同じようであろだろう。
17:25> しかし、彼はまず多くの苦しみを受け、またこの時代の人々に捨てられねばならない。
17:26> そして、ノアの時にあったように、人の子の時にも同様なことが起こるであろう。
17:27> ノアが箱船にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていたが、そこへ洪水が襲ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。
17:28> ロトの時にも同じようなことが起こった。人々は食い、飲み、買い、売り、植え、建てなどしていたが、
17:29> ロトがソドムから出て行った日に、天から火と硫黄とが降ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。
17:30> 人の子が現れる日も、ちょうどそれと同様であろう。
17:31> その日には、屋上にいる者は、自分の持ち物が家の中にあっても、取りにおりるな。畑にいる者も同じように、あとへもどるな。
17:32> ロトの妻のことを思い出しなさい。
17:33> 自分の命を救おうとするものは、それを失い、それを失うものは、保つのである。
17:34> あなたがたに言っておく。その夜、ふたりの男が一つ寝床にいるならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。
17:35> ふたりの女が一緒にうすをひいているならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。〔
17:36> ふたりの男が畑におれば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう〕」。
17:37> 弟子たちは「主よ、それはどこであるのですか」と尋ねた。するとイエスは言われた、「死体のある所には、はげたかが集まるものである」。
第一八章

18:01> また、イエスは失望せずに常に祈るべきことを、人々に譬で教えられた。
18:02> 「ある町に、神を恐れず、人を人と思わぬ裁判官がいた。
18:03> ところが、その同じ町にひとりのやもめがいて、彼のもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしを訴える者をさばいて、わたしを守ってください』と願いつづけた。
18:04> 彼はしばらくの間きき入れないでいたが、そののち、心のうちで考えた、『わたしは神をも恐れず、人を人と思わないが、
18:05> このやもめがわたしに面倒をかけるから、彼女のためになる裁判をしてやろう。そうしたら、絶えずやってきてわたしを悩ますことがなくなるだろう』」。
18:06> そこで主は言われた、「この不義な裁判官の言っていることを聞いたか。
18:07> まして神は、日夜叫び求める選民のために、正しいさばきをしてくださらずに長い間そのままにしておかれることがあろうか。
18:08> あなたがたに言っておくが、神はすみやかにさばいてくださるであろう。しかし、人の子が来るとき、地上に信仰が見られるであろうか」。
18:09> 自分が義人だと自任して他人を見下げている人に対して、イエスはこの譬をお話になった。
18:10> 「ふたりの人が祈るために宮に上った。そのひとりはパリサイ人であり、もうひとりは収税人であった。
18:11> パリサイ人は立って、ひとりでこう祈った、『神よ、わたしはほかの人たちのような貪欲な者、不正な者、姦淫をする者ではなく、また、この収税人のような人間でもないことを感謝します。
18:12> わたしは一周に二度断食しており、全収入の十分の一をささげています』。
18:13> ところが、収税人は遠く離れて立ち、目を天に向けようともしなしで、胸を打ちながら言った、『神様、罪人のわたしをおゆるしください』と。
18:14> あなたがたに言っておく。神に議とされて自分の家に帰ったのは、この収税人であって、あのパリサイ人ではなかった。おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう」。
18:15> イエスにさわっていただきために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちはそれを見て、彼らをたしなめた。
18:16> するとイエスは幼な子らを呼び寄せて言われた、「幼な子らをわたしのところに来るままにしておきなさい、止めてはならない。神の国はこのような者の国である。
18:17> よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにないることは決してできない」。
18:18> また、ある役人がイエスに尋ねた、「よき師よ、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」。
18:19> イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。
18:20> いましめはあなたの知っているとおりである、『姦淫するな、殺すな、盗むな、偽証を立てるな、父と母を敬え』」。
18:21> すると彼は言った、「それらのことはみな、小さい時から守っております」。
18:22> イエスはこれを聞いて言われた、「あなたのする事がまだ一つ残っている。持っているものをみな売り払って、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
18:23> 彼はこの言葉を聞いて非常に悲しんだ。大金持であったからである。
18:24> イエスは彼の様子を見て言われた、「財産のある者が神の国にはいるのはなんとむずかしいことであろう。
18:25> 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっと優しい」。
18:26> これを聞いた人々が、「それでは、だれが救われることができるのですか」と尋ねると、
18:27> イエスは言われた、「人にはできない事も、神にはできる」。
18:28> ペテロが言った、「ごらんなさい、わたしたちは自分のものを捨てて、あなたに従いました」。
18:29> イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでも神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子を捨てた者は、
18:30> 必ずこの時代ではその幾倍もを受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受けるのである」。
18:31> イエスは十二弟子を呼び寄せて言われた、「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子について預言者たちがしるしたことは、すべて成就するであろう。
18:32> 人の子は異邦人に引きわたされ、あざけられ、はずかしめを受け、つばきをかれられ、
18:33> また、むち打たれてから、ついに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。
18:34> 弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。この言葉が彼らに隠されていたので、イエスの言われた事が理解できなかった。
18:35> イエスがエリコに近づかれたとき、ある盲人が道ばたにすわって、物ごいをしていた。
18:36> 群衆が通り過ぎる音を耳にして、彼は何事があるのかと尋ねた。
18:37> ところが、ナザレのイエスがお通りなのだと聞かされたので、
18:38> 声をあげて、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんで下さい」と言った。
18:39> 先頭に立つ人々が彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子よ、わたしをあわれんで下さい」。
18:40> そこでイエスは立ちどまって、その者を連れて来るように、とお命じになった。彼が近づいたとき、
18:41> 「わたしに何をしてほしいのか」とおたずねになると、「主よ、見えるようになることです」と答えた。
18:42> そこでイエスは言われた、「見えるようになれ、あなたの信仰があなたを救った」。
18:43> すると彼は、たちまち見えるようになった。そして神をあがめながらイエスに従って行った。これを見て、人々はみな神をさんびした。
第一九章

19:01> さて、イエスはエリコにはいって、その町をお通りになった。
19:02> ところが、そこにザアカイという名の人がいた。この人は収税人のかしらで、金持であった。
19:03> 彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆にさえぎられて見ることができなかった。
19:04> そこでイエスを見るために、前の方に走って行って、いちじく桑の木に登った。そこを通られるところだったからである。
19:05> イエスは、その場所にこられたとき、上を見あげて言われた、「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることにしているから」。
19:06> そこでザアカイは急いでおりてきて、よろこんでイエスを迎え入れた。
19:07> 人々はみな、これを見てつぶやき、「彼は罪人の家にはいって、客となった」、と言った。
19:08> ザアカイは立って主に言った、「主よ、わたしは誓って自分の財産の半分を貧民に施します。また、もしだれかから不正な取立をしていましたら、それを四倍にして返します」。
19:09> イエスは彼に言われた、「きょう、救がこの家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。
19:10> 人の子がきたのは、失われたものを尋ね出して救うためである」。
19:11> 人々がこれらの言葉を聞いているとき、イエスはなお一つの譬をお話になった。それはエルサレムに近づいてこられたし、また人々が神の国はたちまち現れると思っていたためである。
19:12> それで言われた、「ある身分の高い人が、王位を受けて帰ってくるために遠い所へ旅立つことになった。
19:13> そこで十人の僕を呼び十ミナを渡して言った、『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』。
19:14> ところが、本国の住民は彼を憎んでいたので、あとから使者をおくって、『この人が王になるのをわれわれは望んでいない』と言わせた。
19:15> さて、彼が王位を受けて帰ってきたとき、だれがどんなもうけをしたかを知ろうとして、金を渡しておいた僕たちを呼んでこさせた。
19:16> 最初の者が進み出て言った、『ご主人様、あなたの一ミナで十ミナをもうけました』。
19:17> 主人は言った、『よい僕よ、うまくやった。あなたは小さい事に忠実であったから、十の町を支配させる』。
19:18> 次の者がきて言った、『ご主人様、あなたの一ミナで五ミナをつくりました』。
19:19> そこでこの者にも、『では、あなたは五つの町のかしらになれ』と言った。
19:20> それからもうひとりの者がきて言った、『ご主人様、さあ、ここにあなたの一ミナがあります。わたしはそれをふくさに包んで、しまっておきました。
19:21> あなたはきびしい方で、おあずけにならなかったものを取りたて、おまきんならなかったものを刈る人なので、おそろしかったのです』。
19:22> 彼に言った、『悪い僕よ、わたしはあなたの言ったその言葉であなたをさばこう。わたしがきびしくて、あずけなかったものを取りたて、まかなかったものを刈る人間だと、知っているのか。
19:23> では、なぜわたしの金を銀行に入れなかったのか。そうすれば、わたしが帰ってきたとき、その金を利子と一緒に引き出したであろうに』。
19:24> そして、そばに立っていた人々に、『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナを持っている者に与えなさい』と言った。
19:25> 彼らは言った、『ご主人様、あの人は既に十ミナを持っています』。
19:26> 『あなたがたに言うが、おおよそ持っている人には、なお与えられ、持っていない人からは、持っているものまで取り上げられるであろう。
19:27> しかしわたしが王になることを好まなかったあの敵どもを、ここにひっぱってきて、わたしの前で打ち殺せ』」。
19:28> イエスはこれらのことを言ったのち、先頭に立ち、エルサレムへ上って行かれた。
19:29> そしてオリブという山に沿ったベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、ふたりの弟子をつかわして言われた、
19:30> 「向こうの村へ行きなさい。そこにはいったら、まだだれも乗ったことのないろばの子がつないであるのを見るであろう。それを解いて、引いてきなさい。
19:31> もしだれかが『なぜ解くのか』と問うたら、『主がお入り用なのです』と、そう言いなさい」。
19:32> そこで、つかわされた者たちが行って見ると、果たして、言われたとおりであった。
19:33> 彼らが、そのろばの子を解いていると、その持ち主たちが、「なぜろばの子を解くのか」と言ったので、
19:34> 「主がお入り用なのです」と答えた。
19:35> そしてそれをイエスのところに引いてきて、そのろばの上に自分たちの上着をかけてイエスをお乗せした。
19:36> そして進んで行かれると、人々は自分たちの上着を道に敷いた。
19:37> いよいよオリブ山の下り道あたりに近づかれると、大ぜいの弟子たちはみな喜んで、彼らが見たすべての力あるみわざについて、声高らかに神をさんびして言いはじめた、
19:38> 「主の御名によってきたる王に、祝福あれ、天には平和、いと高きところには栄光あれ」。
19:39> ところが、群衆の中にいたあるパリサイ人たちがイエスに言った、「先生、あなたの弟子たちをおしかり下さい」。
19:40> 答えて言われた、「あなたがたに言うが、もしこの人たちが黙れば、石が叫ぶであろう」。
19:41> いよいよ都の近くにきて、それが見えたとき、そのために泣いて言われた、
19:42> 「もしおまえも、この日に、平和をもたらす道を知ってさえいたら・・・・・・しかし、それは今おまえの目に隠されている。
19:43> いつかは、敵が周囲に塁を築き、おまえを取りかこんで、四方から押し迫り、
19:44> おまえとその内にいる子らとを地に打ち倒し、城内の一つの石も他の石の上に残して置かない日が来るであろう。それは、おまえが神のおとずれの時を知らないでいたからである」。
19:45> それから宮にはいり、商売人たちを追い出しはじめて、
19:46> 彼らに言われた「『わが家は祈りの家であるべきだ』と書いてあるのに、あなたがたはそれを盗賊の巣にしてしまった」。
19:47> イエスが毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者また民衆の重立った者たちはイエスを殺そうと思っていたが、
19:48> 民衆がみな熱心にイエスに耳を傾けていたので、手のくだしようがなかった。
第二0章

20:01> ある日、イエスが宮で人々に教え、福音を宣べておられると、祭司長や律法学者たちが、長老たちと共に近寄ってきて、
20:02> イエスに言った、「何の権威によってこれらの事をするのですか。そうする権威をあなたに与えたのはだれですか、わたしたちに言ってください」。
20:03> そこで、イエスは答えて言われた、「わたしも、ひと言たずねよう。それに答えてほしい。
20:04> ヨハネのバプテスマは、天からであったか、人からであったか」。
20:05> 彼らは互いに論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
20:06> しかし、もし人からだと言えば、民衆はみなヨハネを預言者だと信じているから、わたしたちを石で打つだろう」。
20:07> それで彼らは「とこからか、知りません」と答えた。
20:08> イエスはこれに対して言われた、「わたしも何の権威によってこれらのことをするのか、あなたがたに言うまい」。
20:09> そこでイエスは次の譬を民衆に語り出された、「ある人がぶどう園を造って農夫たちに貸し、長い旅にでた。
20:10> 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を出させようとした。ところが、農夫たちは、その僕を袋だたきにして、から手で帰らせた。
20:11> そこで彼はもうひとりの僕を送った。彼らはそり僕も袋だたきにし、侮辱を加えて、から手で帰らせた。
20:12> そこで更に三人目の者を送ったが、彼らはこの者も、傷を負わせて追い出した。
20:13> ぶどう園の主人は言った、『どうしようか。そうだ、わたしの愛子をつかわそう。これなら、たぶんうやまってくれるだろう』。
20:14> ところが、農夫たちは彼を見ると、『あれはあと取りだ。あれを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになる』と互いに話し合い、
20:15> 彼をぶどう園の外に追い出して殺した。そのさい、ぶどう園の主人は、彼らをどうするだろうか。
20:16> 彼は出てきて、この農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう」。人々はこれを聞いて、「そんなことがあってはなりません」と言った。
20:17> そこで、イエスは彼らを見つめて言われた、「それでは、『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった』と書いてあるのは、どういうことですか。
20:18> すべてその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。
20:19> このとき、律法学者たちや祭司長たちはイエスに手をかけようと思ったが、民衆を恐れた。いまの譬が自分たちに当てて語られたのだと、悟ったからである。
20:20> そこで、彼らは機会をうかがい、義人を装うまわし者どもを送って、イエスを総督の支配と権威とに引き渡すため、その言葉じりを捕らえさせようとした。
20:21> 彼らは尋ねて言った、「先生、わたしたちは、あなたの語り教えられることが正しく、また、あなたは、分け隔てをなさらず、真理に基づいて神の道を教えておられることを、承知しています。
20:22> ところで、カイザルに貢を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。
20:23> イエスは彼らの悪巧みを見破って言われた、
20:24> 「デナリを見せなさい。それにあるのは、だれの肖像、だれの記号なのか」。「カイザルのです」と、彼らが答えた。
20:25> するとイエスは彼らに言われた、「それなら、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。
20:26> そこで彼らは、民衆の前でイエスの言葉じりを捕らえることができず、その答に驚嘆して、黙ってしまった。
20:27> 復活ということはないと言い張っていたサドカイ人のある者たちが、イエスに近寄ってきて質問した、
20:28> 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もしある人の兄が妻をめとり、子がなくて死んだなら、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけなければならない』。
20:29> ところで、ここに七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
20:30> そして次男、三男と、次々に、その女をめとり、
20:31> 七人とも同様に、子をもうけずに死にました。
20:32> のちに、その女も死にました。
20:33> さて復活の時には、この女は七人のうち、だれの妻になるのですか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。
20:34> イエスは彼らに言われた、「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、
20:35> かの世にはいって死人からの復活にあずかるにふさわしい者たちは、めとったり、とついだりすることはない。
20:36> 彼らは天使に等しいものであり、また復活にあずかるゆえに、神の子でもあるので、もう死ぬことはあり得ないからである。
20:37> 死人がよみがえることは、モーセも柴の篇で、主を『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んで、これを示した。
20:38> 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。人はみな神に生きるものだからである」。
20:39> 律法学者のうちのある人々が答えて言った、「先生、仰せのとおりです」。
20:40> 彼らはそれ以上何もあえて問いかけようとしなかった。
20:41> イエスは彼らに言われた、「どうして人々はキリストをダビデの子だと言うのか。
20:42> ダビデ自身が詩編の中で言っている、『主はわが主に仰せになった、
20:43> あなたの敵をあのたの足台とする時までは、わたしの右に座していなさい』。
20:44> このように、ダビデはキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。
20:45> 民衆がみな聞いているとき、イエスは弟子たちに言われた、
20:46> 「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くのを好み、広場での敬礼や会堂の上席や宴会の上座をよろこび、
20:47> やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈りをする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。
第二一章

21:01> イエスは目をあげて、金持たちがさいせん箱に献金を投げ入れているのを見られ、
21:02> また、ある貧しいゆもめが、レプタ二つをいれるのを見て、
21:03> 言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめは、だれよりもたくさん入れたのだ。
21:04> これらの人たちはみな、ありあまる中から献金を投げ入れたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費全部を入れたからである」。
21:05> ある人々が、見事な石と奉納物とで宮が飾られていることを話していたので、イエスは言われた、
21:06> 「あなたがたはこれらのものをながめているか、その石一つでもくずされずに、他の石の上に残ることもなくなる日が、来るであろう」。
21:07> そこで彼らはたずねた、「先生、では、いつそんなことが起こるのでしょうか。またそんなことが起こるような場合には、どんな前兆がありますか」。
21:08> イエスは言われた、「あなたがたは、惑わされないように気をつけなさい。多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだとか、時が近づいたとか、家であろう言うであろう。彼らについて行くな。
21:09> 戦争と騒乱とのうわさを聞くときにも、おじ恐れるな。こうしたことはまず起こらねばならないが、終わりはすぐにはこない」。
21:10> それから彼らに言われた、「民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。
21:11> また大地震があり、あちこちに疫病やききんが起こり、いろいろ恐ろしいことや天から物すごい前兆があるであろう。
21:12> しかし、これらのあらゆる出来事のある前に、人々はあなたがたに手をかけて迫害をし、会堂や獄に引き渡し、わたしの名ゆえに王や総督の前にひっぱって行くであろう。
21:13> それは、あなたがたがあかしをする機会となるであろう。
21:14> だからどう答弁しようかと、前もって考えておかないことに心を決めなさい。
21:15> あなたの反対者のだれもが抗弁も否定もできないような言葉と知恵とを、わたしが授けるから。
21:16> しかし、あなたがたは両親、兄弟、友人にさえ裏切られるであろう。
21:17> また、あなたがたの中で殺されるものもあろう。また、わたしの名ゆえにすべての人に憎まれるであろう。
21:18> しかし、あなたがたの髪の毛一すじでも失われることはない。
21:19> あなたがたは堪え忍ぶ事によって、自分の魂をかち取るであろう。
21:20> エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたとさとりなさい。
21:21> そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。市中にいる者は、そこから出ていくがよい。
21:22> それは、聖書にしるされたすべての事が実現する刑罰の日であるからだ。
21:23> その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。地上には大きな苦難があり、この民にはみ怒りが臨み、
21:24> 彼らはつるぎの刃に倒れ、また捕らえられて諸国へ引きゆかれるであろう。そしてエルサレムは、異邦人の時期が満ちるまで、彼らに踏みにじられているであろう。
21:25> また日と月と星とに、しるしが現れるであろう。そして、地上では、諸国民が悩み、海と大波とのとどろきにおじ惑い、
21:26> 人々は世界に起ころうとする事を思い、恐怖と不安で気絶するであろう。もろもろの天体が揺り動かされるからである。
21:27> そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
21:28> これらの事が起こりはじめたら、身を起し頭をもちあげなさい。あなたがたの救いが近づいているのだから」。
21:29> それから一つの譬を話された、「いちじくの木を、またすべての木をみなさい。
21:30> はや芽を出せば、あなたがたはそれを見て、夏がすでに近いと、自分で気づくのである。
21:31> このようにあなたがたも、これらの事が事が起こるのを見たなら、神の国が近づいたのだとさとりなさい。
21:32> よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起こるまでは、この時代は滅びることがない。
21:33> 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は決して滅びることがない。
21:34> あなたがたが放縦や、泥酔や、世の煩いのために心が鈍っているうちに、思いがけないとき、その日がわなのようにあなたがたを捕らえることがないように、よく注意していなさい。
21:35> その日は全面に住む全ての人に臨むからである。
21:36> これらの起ころうとしているすべての事からのがれて、人の子の前に立つことができるように、絶えず目をさまして祈っていなさい」。
21:37> イエスは昼のあいだは宮で教え、夜は出て行ってオリブという山で夜をすごしておられた、
21:38> 民衆はみな、み教えを聞こうとして、いつも朝早く宮に行き、イエスのもとに集まった。
第二二章

22:01> さて、過越といわれている徐酵祭が近づいた。
22:02> 祭司長たちや律法学者たちは、どうかしてイエスを殺そうと計っていた。民衆を恐れていたからである。
22:03> そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテのユダと呼ばれていたユダに、サタンがはいった。
22:04> すなわち、彼は祭司長たちや宮守がしらたちのところへ行って、どうしてイエスを彼らに渡そうかと、その方法について協議した。
22:05> 彼らは喜んで、ユダに金を与える取決めをした。
22:06> ユダはそれを承諾した。そして、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、機会をねらっていた。
22:07> さて、過越の小羊をほふるべき徐酵祭の日がきたので、
22:08> イエスはペテロとヨハネとを使いに出して言われた、「行って、過越の食事ができるように準備をしなさい」。
22:09> 彼らは言った、「どこに準備をしたらよいのですか」。
22:10> イエスは言われた、「市内にはいったら、水がめを持っている男に出会うであろう。その人がはいる家までついて行って、
22:11> その家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。
22:12> すると、その主人は席の整えられた二階の広間を見せてくれるから、そこに用意をしなさい」。
22:13> 弟子たちは出て行ってみると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。
22:14> 時間になったので、イエスは食卓につかれ、使徒たちも共に席についた。
22:15> イエスは彼らに言われた、「わたしは苦しみを受ける前に、あなたがたとこの過越の食事をしようと、切に望んでいた。
22:16> あなたがたに言って置くが、神の国で過越が成就する時までは、わたしは二度と、この過越の食事をすることはない」。
22:17> そして杯を取り、感謝して言われた、「これを取って、互いに分けて飲め、
22:18> あなたがたに言っておくが、今からのち神の国が来るまでは、わたしはぶどうの実から造ったものを、いっさい飲まない」。
22:19> またパンを取り、感謝してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。
22:20> 食事ののち、杯も同じ様にして言われた、「この杯は、あなたがたのために流すわたしの血で立てられる新しい契約である。
22:21> しかし、そこに、わたしを裏切る者が、わたしと一緒に食卓に手を置いている。
22:22> 人の子は定められたとおりに、去って行く。しかし人の子を裏切るその人は、わざわいである」。
22:23> 弟子たちは、自分たちのうちのだれが、そんな事をしようとしているのだろうと、互いに論じはじめた。
22:24> それから、自分たちの中でだれがいちばん偉いだろうかと言って、争論が彼らの間に、起こった。
22:25> そこでイエスが言われた、「異邦の王たちはその民の上に君臨し、また、権力をふるっている者たちは恩人と呼ばれる。
22:26> しかし、あなたがた、そうであってはならない。かえって、あなたがたの中でいちばん偉い人はいちばん若い者のように、指導する人は仕える者のようになるべきである。
22:27> 食卓につく人と給仕する者と、どちらが偉いのか。食卓につく人の方ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、給仕する者のようにしている。
22:28> あなたがたは、わたしの試練のあいだ、わたしと一緒に最後まで忍んでくれた人たちである。
22:29> それで、わたしの父が国の支配をわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、
22:30> わたしの国で食卓について飲み食いをさせ、また位に座してイスラエルの十二の部族をさばかせるであろう。
22:31> シモン、シモン、見よ、サタンはあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って許された。
22:32> しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った。それて、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。
22:33> シモンが言った、「主よ、わたしは獄にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く覚悟です」。
22:34> するとイエスが言われた、「ペテロよ、あなたに言っておく。きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。
22:35> そして彼らに言われた、「わたしが財布も袋もくつも持たせずにあなたがたをつかわしたとき。何かこまったことがあったか」。彼らは、「いいえ、何もありませんでした」と答えた。
22:36> そこで言われた、「しかし今は、財布のあるものはそれを持って行け。袋も同様に持って行け。また、つるぎのない者は、自分の上着を売って、それを買うがよい。
22:37> あなたがたに言うが、『彼は罪人のひとりに数えられた』としるしてあることは、わたしに係わることは成就している」。
22:38> 弟子たちが言った、「主よ、ごらんなさい、ここにつるぎが二振りございます」。イエスは言われた、「それでよい」。
22:39> イエスは出て、いつものようにオリブ山に行かれると、弟子たちも従って行った。
22:40> いつもの場所に着いてから、彼らに言われた、「誘惑に陥らないように祈りなさい」。
22:41> そしてご自分は、石を投げてとどくほど離れたところへ退き、ひさせまづいて、祈って言われた、
22:42> 「父よ、みこころならば、どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころが成るようにしてください」。
22:43> そのとき、御使が天からあらわれてイエスを力づけた。
22:44> イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた。
22:45> 祈りをおえて立ちあがり、弟子たちのところへ行かれると、彼らは悲しみのはて寝入っているのをごらんになって、
22:46> 言われた、「なぜ眠っているのか。誘惑に陥らないように、起きて祈っていなさい」。
22:47> イエスがまだそう言っておられるうちに、そこに群衆が現れ、十二弟子のひちとでユダという者が先頭に立って、イエスに接吻しようとして近づいてきた。
22:48> そこでイエスは言われた、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」。
22:49> イエスのそばにいた人たちは、事のなりゆきを見て、「主よ、つるぎで切りつけてやりましょうか」と言って、
22:50> そのうちのひとりが、祭司長の僕に切りつけ、その右の耳を切り落とした。
22:51> イエスはこれに対して言われた、「それだけでやめなさい」。そして、その僕の耳に手を触れて、おいやしになった。
22:52> それから、自分にむかってくる祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣と棒を持って出てきたのか。
22:53> 毎日あなたがたと宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今あなたがたの時には、また、やみの支配の時である」。
22:54> それから人々はイエスを捕え、ひっぱって大祭司の邸宅へつれて行った。ペテロは遠くからついて行った。
22:55> 人々は中庭のまん中に火をたいて、一緒にすわっていたので、ペテロもその中にすわった。
22:56> すると、ある女中が、彼が火のそばにすわっているのを見、彼を見つめて、「この人もイエスと一緒にいました」と言った。
22:57> ペテロはそれを打ち消して、「わたしはその人を知らない」と言った。
22:58> しばらくして、ほかの人がペテロを見て行った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。
22:59> 約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから」。
22:60> ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終わらぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。
22:61> 主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。
22:62> そして外へ出て、激しく泣いた。
22:63> イエスを監視していた人たちは、イエスを嘲弄し、打ちたたき、
22:64> 目かくしをして、「言いあててみよ、打ったのは、だれか」ときいたりした。
22:65> そのほか、いろいろな事でイエスを愚弄した。
22:66> 夜が明けたとき、人民の長老、祭司長たち、律法学者たちが集まり、イエスを議会に引き出して言った、
22:67> 「あなたがキリストなら、そう言ってもらいたい」。イエスは言われた、「わたしが言っても、あなたがたは信じないだろう。
22:68> また、わたしがたずねても、答えないだろう。
22:69> しかし、人の子は今からのち、全能の神の右に座するであろう」。
22:70> 彼らは言った、「では、あなたは神の子なのか」。イエスは言われた、「あなたがたの言うとおりである」。
22:71> すると彼らは言った、「これ以上、なんの証拠がいるか。われわれは直接彼の口から聞いたのだから」。
第二三章

23:01> 群衆はみな立ちあがって、イエスをピラトのところへ連れて行った。
23:02> そして訴え出て言った、「わたしたちは、この人が、国民を惑わし、貢ぎをカイザルに納めることを禁じ、また自分こそ王なるキリストだと、となえているところを目撃しました」。
23:03> ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」とお答になった。
23:04> そこでピラトは祭司長たちと群衆にむかって言った、「わたしはこの人になんの罪もみとめない」。
23:05> ところが彼らは、ますます言いつのってやまなかった、「彼は、ガリラヤからはじめてこの所まで、ユダヤ全国にわたって教え、民衆を煽動しているのです」。
23:06> ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、
23:07> そしてヘロデの支配下のものであることを確かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを送りとどけた。
23:08> ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、かねてイエスのことを聞いていたので、会って見たいと長いあいだ思っていたし、またイエスが何か奇跡を行うのを見たいと望んでいたからである。
23:09> それで、いろいろと質問を試みたが、イエスは何もお答にならなかった。
23:10> 祭司長たちと、律法学者たちとは立って、激しい語調でイエスを訴えた。
23:11> またヘロデはその兵卒どもと一緒になって、イエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はなやかな着物を着せてピラトへ送りかえした。
23:12> ヘロデとピラトとは、以前は互いに敵視していたが、この日に親しい仲になった。
23:13> ピラトは祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて言った、
23:14> 「おまえたとは、この人を民衆を惑わすものとしてわたしのところに連れてきたので、おまえたちの面前でしらべたが、訴え出ているような罪は、この人に少しもみとめられなかった。
23:15> ヘロデもまたみとめなかった。現に彼はイエスをわれわれに送りかえしてきた。この人はなんら死に当たるようなことはしていないのである。
23:16> だから、彼をむち打ってから、ゆるしてやることにしよう」。〔
23:17> 祭ごとにピラトがひとりの囚人をゆるしてやることになっていた。〕
23:18> ところが、彼らはいっせいに叫んで言った、「その人を殺せ。バラバをゆるしてくれ」。
23:19> このバラバは、都で起こった暴動と殺人とのかどで、獄に投ぜられていた者である。
23:20> ピラトはイエスをゆるしてやりたいと思って、もう一度かれらに呼びかけた。
23:21> しかし彼らは、わめきたてて「十字架につけよ、彼を十字架につけよ」と言いつづけた。
23:22> ピラトは三度目に彼らにむかって言った、「では、この人は、いったい、どんな悪事をしたのか。彼には死に当る罪は全くみとめられなかった。だから、むち打ってから彼をゆるしてやることにしよう」。
23:23> ところが、彼らは大声をあげて詰め寄り、イエスを十字架につけるように要求した。そして、その声が勝った。
23:24> ピラトはついに彼らの願いどおりにすることに決定した。
23:25> そして、暴動と殺人とのかどで獄に投ぜられた者の方を、彼らの要求に応じてゆるしてやり、イエスの方は彼らに引き渡して、その意のままにまかせた。
23:26> 彼らがイエスをひいていく途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕えて十字架を負わせ、それをになってイエスのあとから行かせた。
23:27> 大ぜいの民衆と、悲しみ嘆いてやまない女たちの群れとが、イエスに従って行った。
23:28> イエスは女たちの方に振りむいて言われた、「エルサレムの娘たちよ、わたしのために泣くな。むしろ、あなたがた自身のため、また自分の子供たちのために泣くがよい。
23:29> 『不妊の女と子を産まなかった胎と、ふくませなかった乳房とは、さいわいだ』と言う日が、いまに来る。
23:30> そのとき、人々は山にむかって、われわれにおおいかぶされと言い出すであろう。
23:31> もし、生木でさえそうされるなら、枯木はどうされることであろう」。
23:32> さて、イエスと共に刑を受けるために、ほかにふたりの犯罪人も引かれていった。
23:33> されこうべと呼ばれているところに着くと、人々はそこでイエスを十字架に着け、犯罪人たちも、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけた。
23:34> そのとき、イエスは言われた、「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです。人々はイエスの着物をくじ引きで分け会った。
23:35> 民衆は立って見ていた。役人たちもあざ笑って言った、「彼は他人を救った。もし彼が神のキリスト、選ばれた者であるなら、自分自身を救いなさい」。
23:36> 兵卒どももイエスをののしり、近寄ってきて酢いぶどう酒をさし出して言った、
23:37> 「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」。
23:38> イエスの上には、「ユダヤ人の王」と書いた札がかけてあった。
23:39> 十字架にかけられた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と、イエスに悪口を言いつづけた。
23:40> もうひとりは、それをたしなめて言った、「おまえは同じ刑を受けていながら、神を恐れないのか。
23:41> お互は自分のやった事のむくいを受けているのだから、こうなったのは当然だ。しかし、このかたは何も悪いことをしたのではない」。
23:42> そして言った、「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」。
23:43> イエスは言われた、「よく言っておくが、あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」。
23:44> 時はもう昼の十二時ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時に及んだ。
23:45> そして聖所の幕が真ん中から裂けた。
23:46> そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。
23:47> 百卒長はこの有様を見て、神をあがめ、「ほんとうに、この人は正しい人であった」と言った。
23:48> この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。
23:49> すべてイエスを知っていた者や、ガリラヤから従ってきた女たちも、遠い所に立って、これらのことを見ていた。
23:50> ここに、ヨセフという議員がいたが、善良で正しい人であった。
23:51> この人はユダヤの町アリマタヤの出身で、神の国を待ち望んでいた。彼は議会の議決や行動には賛成していなかった。
23:52> この人がピラトのところへ行って、イエスのからだの引取り方を願い出て、
23:53> それを取りおろして亜麻布に包み、まだだれも葬ったことのない、岩を掘って造った墓に納めた。
23:54> この日は準備の日であって、安息日が始まりかけていた。
23:55> イエスと一緒にガリラヤからきた女たちは、あとについてきて、その墓を見、また、イエスのからだか、納められる様子を見とどけた。
23:56> そして帰って、香料と香油とを用意した。それからおきてに従って安息日を休んだ。
第二四章

24:01> 週の初めの日、夜明け前に、女たちは用意しておいた香料を携えて、墓に行った。
24:02> ところが、石が墓からころがしてあるので、
24:03> 中にはいってみると、主イエスのからだが見当たらなかった。
24:04> そのため途方にくれていると、見よ、輝いた衣をきたふたりの者が、彼らに現れた。
24:05> 女たちは驚き恐れて、顔を地に伏せていると、このふたりの者が言った、「あなたがたは、なぜ生きた方を死人の中にたずねているのか。
24:06> そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにえられたとき、あなたがたにお話になったことを思い出しなさい。
24:07> すなわち、人の子は必ず罪人らの手に渡され、十字架につけられ、そして三日目によみがえる、と仰せられたではないか」。
24:08> そこで女たちはその言葉を思い出し、
24:09> 墓から帰って、これらいっさいのことを、十一弟子や、その他みんなの人に報告した。
24:10> この女たちちいうのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびユコブの母マリヤであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。
24:11> ところが使徒たちには、それが愚かな話のように思われて、それを信じなかった。〔
24:12> ペテロは立って墓へ走って行き、かがんで中を見ると、亜麻布だけがそこにあったので、事の次第を不思議に思いながら帰って行った。〕
24:13> この日、ふたりの弟子が、エルサレムから七マイルばかり離れたエマオという村へ行きながら、
24:14> このいっさいの出来事について互いに語り合っていた。
24:15> 語り合い論じ合っていると、イエスご自身が近づいてきて、彼らと一緒に歩いていかれた。
24:16> しかし、彼らの目がさえぎられて、イエスを認めることができなかった。
24:17> イエスは彼らに言われた、「歩きながら互いに語り合っているその話しはなんのことなのか」。彼らは悲しそうな顔をして立ちどまった。
24:18> そのひとりのクレオパという者が、答えて言った、「あなたはエルサレムに泊まっていながら、あなただけが、この都でこのごろ起こったことをご存じないのですか」。
24:19> 「それは、どんなことか」と言われると、かれらは言った、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、神とすべての民衆との前で、わざにも言葉にも力ある預言者でしたが、
24:20> 祭司長たちや役人たちが、死刑に処するために引き渡し、十字架につけたのです。
24:21> わたしたちは、イスラエルを救うのはこの人であろうと、望みをかけていました。しかもその上に、この事が起こってから、きょうが三日目なのです。
24:22> ところが、わたしたちの仲間である数人の女が、わたしたちを驚かせました。というのは、彼らが朝早く墓に行きますと、
24:23> イエスのからだが見当たらないので、帰ってきましたが、そのとき御使が現れて、『イエスは生きておられる』と告げたと申すのです。
24:24> それで、わたしたちの仲間が数人、墓に行って見ますと、果たして女たち言ったとおりで、イエスは見当たりませんでした」。
24:25> そこでイエスは言われた、「ああ、愚かで心のにぶいため、預言者たちが説いたすべての事を信じられない者たちよ。
24:26> キリストは必ず、これらの苦難を受けて、その栄光に入るはずではなかったのか」。
24:27> こう言って、モーセやすべての預言者からはじめて、聖書全体にわたり、ご自身についてしるしてある事どもを、説きあかされた。
24:28> それから、彼らは行こうとしていた村に近づいたが、イエスがなお先へ進みいかれる様子であった。
24:29> そこで、しいて引き止めて言った、゜わたしたちと一緒にお泊まり下さい。もう夕暮れになっており、日もはや傾いていています」。イエスが彼らと共に泊まるために、家にはいられた。
24:30> 一緒に食卓につかれたとき、パンを取り、祝福してさき、彼らに渡しておられるうちに、
24:31> 彼らの目が開けて、それがイエスであることがわかった。すると、み姿が見えなくなった。
24:32> 彼らは互いに言った、゜道々をお話になったとき、また聖書を説き明かしてくださったとき、お互いの心の内が燃えたではないか」。
24:33> そして、すぐに立ってエルサレムに帰って見ると、十一弟子とその仲間が集まっていて、
24:34> 「主はほんとうによみがえって、シモンに現れなさった」と言っていた。
24:35> そこでふたりの者は、途中であったことや、パンをおさきになる様子でイエスだとわかったことなどを話した。
24:36> こう話していると、イエスが彼らの中にお立ちになった。〔そして「やすかれ」と言われた。〕
24:37> 彼らは恐れ驚いて、霊を見ているのだと思った。
24:38> そこでイエスが言われた、「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起こすのか。
24:39> わたしの手や足を見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」。〔
24:40> こう言って、手と足とをお見せになった。〕
24:41> 彼らは喜びのあまり、まだ信じられないで不思議に思っていると、イエスが「ここに何か食物があるか」と言われた。
24:42> 彼らが焼いた魚の一きれをさしあげると。
24:43> イエスはそれを取って、みんなの前で食べられた。
24:44> それから彼らに対して言われた、「わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言者と詩編とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成就する」。
24:45> そこでイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて
24:46> 言われた、「こう、しるしてある。キリストは苦しみを受けて、三日目に死人の中からよみがえる。
24:47> そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔い改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる。
24:48> あなたがたは、これらの事の証人である。
24:49> 見よ、わたしの父が約束されたものを、あなたがたに贈る。だから、上から力を授けられるまでは、あなたがたは都にとどまっていなさい」。
24:50> それから、イエスは彼らをベタニヤの近くまで連れて行き、手をあげて彼らを祝福された。
24:51> 「祝福しておられるうちに、彼らを離れて、〔天にあげられた。〕
24:52> 彼らは〔イエスを拝し、〕非常な喜びをもってエルサレムに帰り、
24:53> 絶えず宮にいて、神をほめたたえた。

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ヨハネによる福音書

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

ヨハネによる福音書

第一章
01:01> 初めに言があった。言は主と共にあった。言は神であった。
01:02> この言は初めに神と共にあった。
01:03> すべてのものは。これによってできた。できたもののうち。一つとしてこれによらないものはなかった。
01:04> この言は命であった。そしてこの命は人の光であった。
01:05> 光はやみの中で輝いている。そして、やみはこれに勝たなかった。
01:06> ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。その名をヨハネと言った。
01:07> この人はあかしのためにきた。光についてあかしをし、彼によってすべての人が信じるためである。
01:08> 彼は光ではなく、ただ、光についてあかしをするためにきたのである。
01:09> すべての人を照らすまことの光であって、世にきた。
01:10> 彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。
01:11> 彼は自分のところにきたのに、自分の民は彼を受けいれなかった。
01:12> しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。
01:13> それらの人は、血すじによらず、肉の欲によらず、また、人の欲にもよらず、ただ神によって生まれたのである。
01:14> そして言は肉体となり、わたしたちのうちに宿った。わたしたちはその栄光を見た。それは父のひとり子としての栄光であった。めぐみとまことに満ちていた。
01:15> ヨハネは彼についてあかしをし、叫んで言った「『わたしのあとに来るかたは、わたしよりすぐれたかたである。わたしよりも先におられたかたである』とわたしが言ったのは、この人のことである」。
01:16> わたしたちすべての者は、その満ち満ちているものの中から受けて、めぐみにめぐみを加えられた。
01:17> 律法はモーセをとおして与えられ、めぐみとまことは、イエス・キリストをとおしてきたのである。
01:18> 神を見た者はまだひとりもいない。ただ父のふところにいるひとりの子なる神だけが、神をあらわしたのである。
01:19> さて、ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちやレビ人たちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」と問わせたが、その時ヨハネが立てたあかしは、こうであった。
01:20> すなわち、彼は告白して否まず、「わたしはキリストではない」と告白した。
01:21> そこで、彼らは問うた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。彼は「いや、そうではない」と言った。「では、あの預言者ですか」。彼は「いいえ」と答えた。
01:22> そこで、彼らは言った、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした人々に、答を持って行けるようにしていただきたい。あなた自身をだれだと考えているのですか」。
01:23> 彼は言った、「わたしは、預言者イザヤが言ったように、『主の道をまっすぐにせよ荒野で呼ばわる者の声』である」。
01:24> つかわされた人たちは、パリサイ人であった。
01:25> 彼らはヨハネに問うて言った、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの預言者でもないのなら、なぜバプテスマを授けるのですか」。
01:26> ヨハネは彼らに答えて言った、「わたしは水でバプテスマを授けるが、あなたがたの知らないかたが、あなたがたの中にたっておられる。
01:27> それがわたしのあとにおいでになる方であって、わたしはその人のくつひもを解く値うちもない」。
01:28> これらのことは、ヨハネがバプテスマを授けていたヨルダンの向こうのベタニヤであったのである。
01:29> その翌日、ヨハネはイエスが自分の方にこられるのを見て言った、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。
01:30> 『わたしのあとに来るかたは、わたしよりすぐれたかたである。わたしよりも先におられたかたである』とわたしが言ったのは、この人のことである。
01:31> わたしはこのかたを知らなかった。しかし、このかたがイスラエルに現れてくださるそのことのために、わたしはきて、水でバプテスマを授けているのである」。
01:32> ヨハネはまたあかしをして言った、「わたしは、御霊がはとのように天から下って、彼の上にとどまるのを見た。
01:33> わたしはこの人を知らなかった。しかし、水でバプテスマを授けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに言われた、『ある人の上に、御霊が下ってとともるのを見たら、その人こそは、御霊によってバプテスマを授けるかたである』。
01:34> わたしはそれを見たので、このかたこそ神の子であると、あかしをしたのである」。
01:35> その翌日、ヨハネはまたふたりの弟子たちと一緒に立っていたが、
01:36> イエスが歩いておられるのに目をとめて言った、「見よ、神の小羊」。
01:37> そのふたりの弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
01:38> イエスはふり向き、彼らがついてくるのを見て言われた、「なにか願いがあるのか」。彼らは言った、「ラビ(訳して言えば、先生)どこにおとまりなのですか」。
01:39> イエスは彼らに言われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を見た。そして、その日はイエスのところに泊まった。時は午後四時ごろであった。
01:40> ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
01:41> 彼はまず自分の兄弟シモンにに出会って言った、「わたしたちはメシヤ(訳せば、キリスト)にいま出会った」。
01:42> そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは彼に目をとめて言われた、「あなたはヨハネの子シモンである。あなたをケバ(訳せば、ペテロ)と呼ぶことにする」。
01:43> その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされたが、ピリポに出会って言われた、「わたしに従ってきなさい」。
01:44> ピリポは、アンデレとペテロとの町ベッサイダの人であった。
01:45> このピリポがナタナエルに出会って言った、「わたしたちは、モーセが律法の中にしるしており、預言者たちがしるしていた人、ヨセフの子、ナザレのイエスにいま出会った」。
01:46> ナタナエルは彼に言った、「ナザレから、なんのよいものが出ようか」。ピリポは彼に言った、「きて見なさい」。
01:47> イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた、「見よ、あの人こそ、ほんとうのイスラエル人である。その心には偽りがない」。
01:48> ナタナエルは言った、「どうしてわたしをご存じなのですか」。イエスは答えて言われた、「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたが、いちじくの木の下にいるのを見た」。
01:49> ナタナエルは答えた、「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です」。
01:50> イエスは答えて言われた、「あなたが、いちじくの木の下にいるのを見たと、わたしが言ったので信じるのか。これよりも、もっと大きなことを、あなたは見るであろう」。
01:51> また言われた、「よくよくあなたがたに言っておく、天が開けて、神の御使たちが人の子の上に上り下りするのを、あなたがたは見るであろう」。

第二章
02:01> 三日目にガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
02:02> イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれた。
02:03> ぶどう酒がかくなったので、母はイエスに言った、「ぶどう酒がなくなっていまいました」。
02:04> イエスは母に言われた、「婦人よ、あなたは、わたしと、なんの係わりがありますか。わたしの時は、まだきていません」。
02:05> 母は僕たちに言った、「このかたが、あなたに言いつけることは、なんでもして下さい」。
02:06> そこには、ユダヤ人のきよめのならわしに従って、それぞれ四、五斗もはいる石の水がめが、六つ置いてあった。
02:07> イエスは彼らに「かめに水をいっぱい入れなさい」と言われたので、彼らは口のところまでいっぱいに入れた。
02:08> そこで彼らに言われた、「さあ、くんで、料理がしらのところに持って行きなさい」。すると、彼らは持って行った。
02:09> 料理がしらは、ぶどう酒になった水をなめてみたが、それがどこからきたか知らなかったので、(水をくんだ僕たちは知っていた)花婿を呼んで
02:10> 言った、「どんな人でも、初めによいぶどう酒を出して、酔いがまわったころにわるいのを出すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう酒を今までとっておかれました」。
02:11> イエスはこの最初のしるしをガリラヤのカナで行い、その栄光を現された。そして弟子たちはイエスを信じた。
02:12> そののち、イエスは、その母、兄弟たち、弟子たちと一緒に、カペナウムに下って、幾日かそこにとどまられた。
02:13> さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、イエスはエルサレムに上られた。
02:14> そして牛、羊、はとを売る者や両替をする者などが宮の庭にすわり込んでいるのをごらんになって、
02:15> なわでむちを造り、羊も牛もみな宮から追いだし、両替人の金を散らし、その台をひっくりかえし、
02:16> はとを売る人々には「これらのものを持って、ここから出て行け。わたしの父の家を商売の家とするな」と言われた。
02:17> 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が、わたしを食いつくすであろう」と書いてあることを思い出した。
02:18> そこで、ユダヤ人はイエスに言った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せてくれますか」。
02:19> イエスは彼らに答えて言われた、「この神殿をこわしたら、わたしは三日のうちに、それを起こすであろう」。
02:20> そこで、ユダヤ人たちは言った、「この神殿を建てるのには、四十六年もかかっています。それだのに、あなたは三日のうちに、それを建てるのですか」。
02:21> イエスは自分のからだである神殿のことを言われたのである。
02:22> それで、イエスが死人の中からよみがえったとき、弟子たちはイエスがこう言われたことを思い出して、聖書とイエスのこの言葉とを信じた。
02:23> 過越の祭の間、イエスがエルサレムに滞在しておられたとき、多くの人々は、その行われたしるしを見て、イエスの名を信じた。
02:24> しかしイエスご自身は、かれらに自分をお任せにならなかった。それは、すべての人を知っておられ、
02:25> また人についてあかしする者を、必要とされなかったからである。それは、ご自身人の心の中にあることを知っておられたからである。

第三章
03:01> パリサイ人のひとりで、その名をニコデモというユダヤ人の指導者があった。
03:02> この人が夜イエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちはあなたが神からこられた教師であることを知っています。神がご一緒でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできません」。
03:03> イエスは答えて言われた、「よくよくあなたに言っておく。だれても新しく生まれなければ、神の国を見ることはできない」。
03:04> ニコデモは言った、「人は年をとってからうまれることが、どうしてできますか。もう一度、母の胎にはいって生まれることができましょうか」。
03:05> イエスは答えられた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも、水と霊とから生まれなければ、神の国にはいることはできない。
03:06> 肉から生まれる者は肉であり、霊から生まれる者は霊である。
03:07> あなたがたは新しく生まれなければからないと、わたしが言ったからとて、不思議に思うには及ばない。
03:08> 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞くが、それがどこからきて、どこへ行くかは知らない。霊から生まれる者もみな、それと同じである」。
03:09> ニコデモはイエスに答えて言った、「どうして、そんなことがあり得ましょうか」。
03:10> イエスは彼に答えて言われた、「あなたはイスラエルの教師でありながら、これぐらいのことがわからないのか。
03:11> よくよく言っておく。わたしたちは自分の知っていることを語り、また自分の見たことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしを受けいれない。
03:12> わたしが地上のことを語っているのに、あなたがたが信じないならば、天上のことを語った場合、どうしてそれを信じるだろうか。
03:13> 天から下ってきた者、すなわち人の子のほかには、だれも天に上った者はない。
03:14> そして、ちょうどモーセが荒野でへびを上げたように、人の子もまた上げなければならない。
03:15> それは彼を信じる者が、すべて永遠の命を得るためである」。
03:16> 神はそのひとり子を賜ったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。
03:17> 神が御子を世に使わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって、この世が救われるためである。
03:18> 彼を信じる者は、さばかれない。信じない者は、すでにさばかれている。神のひとり子の名を信じることをしないからである。
03:19> そのさばきというのは、光がこの世にきたのに、人々はそのおこないが悪いために、光よりもやみの方を愛したことである。
03:20> 悪を行っている者はみな光を憎む。そして、そのおこないが明るみに出されるのを恐れて、光にこようとはしない。
03:21> しかし、真理を行っている者は光に来る。その人のおこないの、神にあってなされたということが、明らかにされるためである。
03:22> こののち、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らと一緒にそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。
03:23> ヨハネもサリムに近いアイノンで、バプテスマを授けていた。そこには水かたくさんあったからである。人々がぞくぞくとやってきてバプテスマを受けていた。
03:24> そのとき、ヨハネはまだ獄に入れられてはいなかった。
03:25> ところが、ヨハネの弟子たちのとひとりのユダヤ人との間に、きよめのことで争論が起った。
03:26> そこで彼らはヨハネのところにきて言った、「先生、ごらん下さい。ヨルダンの向こうであなたと一緒にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマを授けており、皆の者が、そのかたのところへ出かけています」。
03:27> ヨハネは答えて言った、「人は天から与えられなければ、何ものも受けることはできない。
03:28> 『わたしはキリストではなく、そのかたよりも先につかわされた者である』と言ったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身である。
03:29> 花嫁をもつ者は花婿である。花婿の友人は立って彼の声を聞き、その声を聞いて大いに喜ぶ。こうして、子の喜びはわたしに満ちたりている。
03:30> 彼は必ず栄え、わたしは衰える。
03:31> 上から来る者は、すべてのものの上にある。地から出る者は、地に属する者であって、地のことを語る。天から来る者は、すべてのものの上にある。
03:32> 彼はその見たところ、聞いたところをあかししているが、だれもそあかしを受けいれない。
03:33> しかし、そのあかしを受けいれる者は、神がまことであることを、たしかに認めたのである、
03:34> 神がおつかわしになったかたは、神の言葉を語る。神は聖霊を限りなく賜うからである。
03:35> 父は御子を愛して、万物をその手にお与えになった。
03:36> 御子を信じる者は永遠の命を持つ。御子に従わない者は、命にあずかることがないばかりか、神の怒りがその上にとどまるのである」。

第四章
04:01> イエスがヨハネよりも多くの弟子をつくり、またバプテスマを授けておられるということを、パリサイ人たちが聞き、それを主が知られたとき、
04:02> (しかし、イエスみずからが、バプテスマをお授けになったのではなく、その弟子たちであった)
04:03> ユダヤを去って、またガリラヤへ行かれた。
04:04> しかし、イエスはサマリヤを通過しなければならなかった。
04:05> そこで、イエスはサマリヤのスカルという町においでになった。この町は、ヤコブがそのこヨセフに与えた土地の近くにあったが、
04:06> そこにヤコブの井戸があった。イエスは旅の疲れを覚えて、そのまま、この井戸のそばにすわっておられた。時は昼の十二時頃であった。
04:07> ひとりのサマリヤの女が水をくみにきたので、イエスはこの女に、「水を飲ませて下さい」と言われた。
04:08> 弟子たちは食物を買いに町に行っていたのである。
04:09> すると、サマリヤの女はイエスに言った、「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゅるのですか」。これは、ユダヤ人はサマリヤ人と交際していなかったからである。
04:10> イエスは答えて言われた、「もしあなたが神の賜物のことを知り、また、『水を飲ませてくれ』と言った者が、だれであるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水をもらったことであろう」。
04:11> 女はイエスに言った、「主よ、あなたは、くむ物をお持ちにならず、その上、井戸は深いのです。その生ける水を、どこから手に入れるのですか。
04:12> あなたは、この井戸を下さったわたしたちの父ヤコブよりも、偉いかたなのですか。ヤコブ自身も飲み、その子らも、その家畜も、この井戸から飲んだのですが」。
04:13> イエスは女に答えて言われた、「この水を飲む者はだれでも、またかわくであろう。
04:14> しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう」。
04:15> 女はイエスに言った、「主よ、わたしがかわくことなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その水をわたしに下さい」。
04:16> イエスは女に言われた、「あなたの夫を呼びに行って、ここに連れてきなさい」。
04:17> 女は答えて言った、「わたしには夫はありません」。イエスは女に言われた、「夫がないと言ったのは、もっともだ。
04:18> あなたには五人の夫があったが、今のあなたの夫ではない。あなたの言葉の通りである」。
04:19> 女はイエスに言った、「主よ、わたしはあなたを預言者と見ます。
04:20> わたしたちの先祖は、この山で礼拝をしたのですか。あなたがたは礼拝すべき場所は、エルサレムにあると言っています」。
04:21> イエスは女に言われた、「女よ、わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが、この山でも、またエルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来る。
04:22> あなたがたは自分の知らないものを拝んでいるが、わたしたちは知っているかたを礼拝している。救はユダヤ人から来るからである。
04:23> しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊とまこととをもって父を礼拝する時が来る。そうだ、今きている。父は、このような礼拝をする者たちを求めておられるからである。
04:24> 神は霊であるから、礼拝をする者も、霊とまこととをもって礼拝するべきである」。
04:25> 女はイエスに言った、「わたしは、キリストと呼ばれるメシヤがこられることを知っています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことを知らせて下さるでしょう」。
04:26> イエスは女に言われた、「あなたと話しているこのわたしが、それである」。
04:27> そのとき、弟子たちが帰って来て、イエスがひとりの女と話しておられるのを見て不思議に思った、しかし、「何を求めておられますか」とも「何を彼女と話しておられるのですか」とも、尋ねる者はひとりもなかった。
04:28> この女は水がめをそのままそこに置いて町に行き、人々に言った、
04:29> 「わたしのしたことを何もかも、言いあてた人がいます。さあ、見にきてごらんなさい。もしかしたら、この人がキリストかも知れません」。
04:30> 人人は町を出て、ぞくぞくとイエスのところへ行った。
04:31> その間に弟子たちはイエスに、「先生、召しあがってください」とすすめた。
04:32> ところが、イエスは言われた、「わたしには、あなたがたの知らない食物がある」。
04:33> そこで、弟子たちが互いに言った、「だれかが、何か食べるものを持ってきてさしあげたのであろうか」。
04:34> イエスは彼らに言われた、「わたしの食物というのは、わたしをつかわされたかたのみこころを行い、そのみわざなし遂げることである。
04:35> あなたがたは、刈入れ時が来るまでには、まだ四か月あると、言っているではないか。しかし、わたしはあなたがたに言う。目をあけて畑を見なさい。はや色づいて刈入れを待っている。
04:36> 刈る者は報酬を受けて、永遠の命に至る実を集めている。まく者も刈る者も、共々に喜ぶためである。
04:37> そこで、『ひとりがまき、ひとりが刈る』ということわざか、ほんとうのこととなる。
04:38> わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために苦労しなかったものを刈とらせた。ほかの人々が労苦し、あなたがたは、彼らの労苦の実にあずかっているのである」。
04:39> さて、この町からきた多くのサマリヤ人は、「この人は、わたしのしたことを何もかも言いあてた」とあかしした女の言葉によって、イエスを信じた。
04:40> そこで、サマリヤ人たちはイエスのもとにきて、自分たちのところに滞在していただきたいと願ったので、イエスはそこにふつか滞在された。
04:41> そしてなお多くの人々が、イエスの言葉を聞いて信じた。
04:42> 彼らは女に言った、「わたしたちが信じるのは、もうあなたが話してくれたからではない。自分自身で親しく聞いて、この人こそまことに世の救主であることが、わかったからである」。
04:43> ふつかの後に、イエスはここを去ってガリラヤへ行かれた。
04:44> イエスはみずからはっきり、「預言者は自分の故郷では救われないものだ」と言われたのである。ガリラヤに着かれると、
04:45> ガリラヤの人たちはイエスを歓迎した、それは、彼らも祭に行ったので、その祭の時、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく見ていたからである。
04:46> イエスは、またガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒にかえられた所である。ところが、病気をしているむすこを持つある役人がカペナウムにいた。
04:47> この人が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを聞き、みもとにきて、カペナウムに下って、彼の子をなおしていただきたいと、願った。その子が死にかかっていたからである。
04:48> そこで、イエスは彼に言われた、「あなたがたは、しるしと奇跡とを見ない限り、決して信じないだろう」。
04:49> この役人はイエスに言った、「主よ、ぞうぞ、子供が死なないうちにきて下さい」。
04:50> イエスは彼に言われた、「お帰りなさい。あなたのむすこは助かるのだ」。彼は自分に言われたイエスの言葉を信じて帰って行った。
04:51> その下って行く途中、僕たちが彼に出会い、その子が助かったことを告げた。
04:52> そこで、彼は僕たちに、そのなおりはじめた時刻を尋ねてみたら、「きのうの午後一時に熱が引きました」と答えた。
04:53> それは、イエスが「あなたのむすこは助かるのだ」と言われたのと同じ時刻であったことを、この父は知って、彼自身もその家族一同も信じた。
04:54> これは、イエスがユダヤからきてなされた第二のしるしである。

第五章
05:01> こののち、ユダヤ人の祭があったので、イエスはエルサレムに上られた。
05:02> エルサレムにある羊の門のそばに、ヘブル語でベテスダと呼ばれる池があった。そこには五つの廊があった。
05:03> その廊の中には、病人、盲人、足なえ、やせ衰えた者などが、大ぜいからだを横たえていた。〔彼らは水の動くのを待っていたからである。
05:04> それは、時々、主の御使がこの池に降りてきて水を動かすことがあるが、水が動いたときまっ先にはいる者は、どんな病気にかかっていても、いやされたからである。〕
05:05> さて、そこに三十八年のあいだ、病気に悩んでいる人があった。
05:06> イエスはその人が横になっているのを見、また長い間わずらっていたのを知って、その人に「なおりたいのか」と言われた。
05:07> この病人はイエスに答えた、「主よ、水が動く時に、わたしを池の中に入れてくれる人がいません。わたしがはいりかけると、ほかの人が先に降りて行くのです」。
05:08> イエスは彼に言われた、「起きて、あなたの床を取りあげ、そして歩きなさい」、
05:09> すると、この人はすぐにいやされ、床をとりあげて歩いて行った。その日は安息日であった。
05:10> そこでユダヤ人たちは、そのいやされた人に言った、「きょうは安息日だ。床を取りあげるのは、よろしくない」。
05:11> 彼は答えた、「わたしをなおして下さったかたが、床を取りあげて歩けと、わたしに言われました」。
05:12> 彼らは尋ねた、「取りあげて歩けと言った人は、だれか」。
05:13> しかし、このいやされた人は、それがだれであるか知らなかった。群衆がその場にいたので、イエスはそっと出て行かれたからである。
05:14> そののち、イエスは宮でその人に出会ったので、彼に言われた、「ごらん、あなたはよくなった、もう罪を犯してはいけない。何かもっと悪いことが、あなたの身に起こるかも知れないから」。
05:15> 彼は出て行って、自分をいやしたのは、イエスであったと、ユダヤ人たちに告げた。
05:16> そのためユダヤ人たちは、安息日このようなことをしたと言って、イエスを責めた。
05:17> そこで、イエスは彼らに答えられた、「わたしの父は今に至るまで働いておられる。わたしも働くのである」。
05:18> このためにユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうと計るようになった。それはイエスが安息日を破られたばかりではなく、神を自分の父と呼んで、自分を神と等しいものとされたからである。
05:19> さて、イエスは彼らに答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。子は父のなさることを見てする以外に、自分からは何事もすることができない。父のなさることであればすべて、子もそのとおりにするのである。
05:20> なぜなら、父は子を愛して、みずからなさることは、すべて子にお示しになるからである。そして、それよりもなお大きなわざを、お示しになるであろう。あなたがたが、それによって不思議に思うためである。
05:21> すなわち、父が死人を起こして命をお与えになるように、子もまた、そのこころにかなう人々に命を与えるであろう。
05:22> 父はだれをもさばかない。さばきのことはすべて、子にゆだねられたからである。
05:23> それは、すべての人が父を敬うと同様に、子を敬うためである。子を敬わない者は、子をつかわされた父をも敬わない。
05:24> よくよくあなたがたに言っておく。わたしの言葉を聞いて、わたしをつかわされたかたを信じる者は、永遠の命を受け、またさばかれることがなく、死から命に移っているのである。
05:25> よくよくあなたがたに言っておく。死んだ人たちが、神の子の声を聞く時がくる。今すでにきている。そして聞く人は生きるであろう。
05:26> それは、父がご自分のうちに生命をお持ちになっていると同様に、子もまた、自分のうちに生命を持つことをお許しになったからである。
05:27> そして子は人の子であるから、子にさばきを行う権威をお与えになった。
05:28> このことを驚くには及ばない。墓の中にいる者たちがみな神の子の声を聞き、
05:29> 善をおこなった人々は、生命を受けるためによみがえり、悪をおこなった人々は、さばきを受けるためによみがえって、それぞれ出てくる時が来るであろう。
05:30> わたしは、自分からは何事もすることができない。ただ聞くままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきは正しい。それは、わたし自身の考えでするのではなく、わたしをつからされたの、み旨を求めているからである。
05:31> もし、わたしが自分自身についてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。
05:32> わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、その人があかしがほんとうであることを、わたしは知っている。
05:33> あなたがたはヨハネのもとへ人をつかわしたが、そのとき彼は真理についてあかしをした。
05:34> わたしは人からあかしを受けないが、このことを言うのは、あなたがたが救われるためである。
05:35> ヨハネは燃えて輝くあかりであった。あなたがたは、しばらくの間その光を喜び楽しもうとした。
05:36> しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっと力があるあかしができる。父がわたしに成就させようとしてお与えになったわざ、すなわち、今わたしがしているこのわざが、父のわたしをつかわされたことをあかししている。
05:37> また、わたしをつかわされた父も、ご自分でわたしについてあかしされた。あなたがたは、まだそのみ声を聞いたこともなく、そのみ姿を見たこともない。
05:38> また、神がつかわされた者を信じないから、神の御言はあなたがたのうちにとどまっていない。
05:39> あなたがたは、聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書は、わたしについてあかしをするものである。
05:40> しかも、あなたがたは、命を得るためにわたしのもとへこようともしない。
05:41> わたしは人からの誉れを受けることはしない。
05:42> しかし、あなたがたのうちには神を愛する愛がないことを知っている。
05:43> わたしは父の名によってきたのに、あなたがたはわたしを受け入れない。もし、ほかの人が彼自身の名によって来るならば、その人を受けいれるのであろう。
05:44> 互いに誉れを受けながら、ただひとりの神からの誉れを求めようとしないあなたがたは、どうして信じることができようか。
05:45> わたしがあなたがたのことを父に訴えると、考えてはいけない。あなたがたを訴える者は、あなたがたが頼みとしているモーセその人である。
05:46> もし、あなたがたがモーセを信じたならば、わたしをも信じたであろう。モーセは、わたしについて書いたのである。
05:47> しかし、モーセの書いたものを信じないならば、どうしてわたしの言葉を信じるだろうか」。

第六章
06:01> そののち、イエスはガリラヤの海、すなわち、テベリヤ湖の向こう岸へ渡られた。
06:02> すると、大ぜいの群衆がイエスについてきた。病人たちになさっていたしるしを見たからである。
06:03> イエスは山に登って、弟子たちと一緒にそこで座につかれた。
06:04> 時に、ユダヤ人の祭である過越が間近になっていた。
06:05> イエスは目をあげ、大ぜいの群衆が自分の方に集まってくるのを見て、ピリポに言われた、「どこからパンを買ってきて、この人人に食べさせようか」。
06:06> これはピリポをためそうとして言われたのであって、ご自分ではしようとすることを、よくご承知であった。
06:07> すると、ピリポはイエスに答えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少しずついただくにも足りますまい」。
06:08> 弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った、
06:09> 「ここに、大麦のパン五つと、さかな二ひきとを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になりましょう」。
06:10> イエスは「人々をすわらせなさい」と言われた。その場所には草が多かった。そこにすわった男の数は五千人ほどであった。
06:11> そこで、イエスはパンを取り、感謝してから、すわっている人々に分け与え、また、さかなをも同様にして、彼らの望むだけを分け与えられた。
06:12> 人々がじゅうぶんに食べたのち、イエスは弟子たちに言われた、「少しでもむだにならないように、パンくずのあまれを集めなさい」。
06:13> そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。
06:14> 人々はイエスのなさったこのしるしを見て、「ほんとうに、この人こそ世にきたるべき預言者である」と言った。
06:15> イエスは人々がきて、自分をとらえて王にしようとしていると知って、ただひとり、また山に退かれた。
06:16> 夕方になったとき、弟子たちは海べに下り、
06:17> 舟に乗って海を渡り、向こう岸のカペナウムに行きかけた。すでに暗くなってたのに、イエスはまだ彼らのところにおいでにならなかった。
06:18> その上、強い風が吹いてきて、海は荒れ出した。
06:19> 四、五十丁こぎ出したとき、イエスが海の上を歩いて舟に近づいてこられるのを見て、彼らは恐れた。
06:20> すると、イエスは彼らに言われた、「わたしだ、恐れることはない」。
06:21> そこで、彼らは喜んでイエスを舟に迎えようとした。すると舟は、すぐ、彼らが行こうとしていた地に着いた。
06:22> その翌日、海の向こう岸に立っていた群衆は、そこに小舟が一そうしかなく、またイエスは弟子たちと一緒に小舟にお乗りにならず、ただ弟子たちだけが船出したのを見た。
06:23> しかし、数そうの小舟がテベリヤからきて、主が感謝されたのちパンを人々に食べさせた場所に近づいた。
06:24> 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないと知って、そこから小舟に乗り、イエスをたずねてカペナウムに行った。
06:25> そして、海の向こう岸でイエスに出会ったので言った、「先生、いつ、ここにおいでになったのですか」。
06:26> イエスは答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたがわたしを尋ねてきているのは、しるしを見たためではなく、パンを食べて満腹したからである。
06:27> 朽ちる食物のためではなく、永遠の命に至る朽ちない食物のために働くがよい。これは人の子があなたがたに与えるものである。父なる神は、人の子にそれをゆだねられたのである」。
06:28> そこで、彼らはイエスに言った、「神のわざを行うために、わたしたちは何をしたらよいでしょうか」。
06:29> イエスは彼らに答えて言われた、「神がつかわされた者を信じることが、神のみわざである」。
06:30> 彼らはイエスに言った、「わたしたちが見てあなたを信じるために、どんなしるしを行って下さいますか。
06:31> わたしたちの先祖は荒野でマナを食べました。それは『天よりのパンを彼らに与えて食べさせた』と書いてあるとおりです」。
06:32> そこでイエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。天からのパンを与えたのは、モーセではない。天からのまことのパンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのである。
06:33> 神のパンは、天から下ってきて、この世に命を与えるものである」。
06:34> 彼らはイエスに言った、「主よ、そのパンをいつもわたしたちに下さい」。
06:35> イエスは彼らに言われた、「わたしが命のパンである。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決してかわくことがない。
06:37> しかし、あなたがたに言ったが、あなたがたがわたしを見たのに信じようとはしない。
06:38> 父がわたしに与えて下さる者は皆、わたしに来るであろう。そして、わたしに来る者を決して拒みはしない。
06:38> わたしが天から下ってきたのは、自分のこころのままを行うのではなく、わたしをつかわされたかたのみこころを行うためである。
06:39> わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしに与えて下さった者を、わたしがひとりも失わずに、終りの日によみがえらせることである。
06:40> わたしの父のみこころは、子を見て信じる者が、ことごとく永遠の命を得ることなのである。そして、わたしはその人々を終わりの日によみがえらせるであろう」。
06:41> ユダヤ人らは、イエスが「わたしは天から下ってきたパンである」と言われたので、イエスについてつぶやき始めた。
06:42> そして言った、「これはヨセフの子イエスではないか。わたしたちはその父母を知っているではないか。わたしは天から下ってきたと、どうして今いうのか」。
06:43> イエスは彼らに答えて言われた、「互いにつぶやいてはいけない。
06:44> わたしをつかわされた父が引きよせて下さらなければ、だれもわたしに来ることはできない。わたしは、その人々を終わりの日によみがえらせるであろう。
06:45> 預言者の書に、『彼らはみな神に教えられるであろう』と書いてある。父から聞いて学んだ者は、みなわたしに来るのである。
06:47> 神から出た者のほかに、だれかが父を見たのではない。その者だけが父を見たのである。よくよくあなたがたに言っておく。信じる者には永遠の命がある。
06:48> わたしは命のパンである。
06:49> あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたが、死んでしまった。
06:50> しかし、天から下ってきたパンを食べる人は、決して死ぬことはない。
06:51> わたしは天から下ってきた生きたパンである。それを食べる者は、いつまでも生きるであろう。わたしが与えるパンは、世の命のために与えるわたしの肉である」。
06:52> そこで、ユダヤ人らが互いに論じて言った、「この人はどうして、自分の肉をわたしたちに与えて食べさせることができようか」。
06:53> イエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。人の子の肉を食べず、また、その血を飲まなければ、あなたがたの内に命はない。
06:54> わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者には、永遠の命があり、わたしはその人を終わりの日によみがえらせるであろう。
06:55> わたしの肉はまことの食物、わたしの血はまことの飲み物である。
06:56> わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者はわたしにおり、わたしもまたその人におる。
06:57> 生ける父がわたしをつかわされた、また、わたしが父によって生きているように、わたしを食べる者もわたしによって生きるであろう。
06:58> 天から下ってきたパンは、先祖たちが食べて死んでしまったようなものではない。このパンを食べる者は、いつまでも生きるであろう」。
06:59> これらのことは、イエスがカペナウムの会堂で教えておられたときに言われたものである。
06:60> 弟子たちのうち多くの者は、これを聞いて言った、「これは、ひどい言葉だ。だれがそんなことを聞いておられようか」。
06:61> しかしイエスは弟子たちがそのことでつぶやいているのを見破って、彼らに言われた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。
06:62> それでは、もし人の子が前にいた所に上るのを見たら、どうなるのか。
06:63> 人を生かすものは霊であって、肉はなんの役にも立たない。わたしがあなたがたに話した言葉は霊であり、また命である。
06:64> しかし、あなたがたの中には信じない者がいる」。イエスは、初めから、だれが信じないか、また、だれが彼を裏切るかを知っておられたのである。
06:65> そしてイエスは言われた、「それだから。父が与えて下さった者でなければ、わたしに来ることができないと、言ったのである」。
06:66> それ以来、おおくの弟子たちは去っていって。もはやイエスと行動を共にしなかった。
06:67> そこでイエスは十二弟子に言われた、「あなたがたも去ろうとするのか」。
06:68> シモン・ペテロが答えた、「主よ、わたしたちは、だれのところに行きましょう。永遠の命の言をもっているのはあなたです。
06:69> わたしたちは、あなたが神の聖者であることを信じ、また知っています」。
06:70> イエスは彼らに答えられた、「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは悪魔である」。
06:71> これは、イスカリオテのシモンの子ユダをさして言われたのである。このユダは、十二弟子のひとりでありながら、イエスを裏切ろうとしていた。

第七章
07:01> そののち、イエスはガリラヤを巡回しておられた。ユダヤ人たちが自分を殺そうとしていたので、ユダヤを巡回しようとはされなかった。
07:02> 時に、ユダヤ人の仮庵の祭が近づいていた。
07:03> そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った、「あなたがしておられるわざを弟子たちにも見せるために、ここを去りユダヤに行ってはいかかです。
07:04> 自分を公にあらわそうと思っている人で、隠れて仕事をするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、自分をはっきりと世にあらわしなさい」。
07:05> こう言ったのは、兄弟たちもイエスを信じていなかったからである。
07:06> そこでイエスは彼らに言われた、「わたしの時がまだきていない。しかし、あなたがたの時はいつも備わっている。
07:07> 世はあなたがたを憎み得ないが、わたしを憎んでいる。わたしが世のおこないの悪いことを、あかししているからである。
07:08> あなたがたこそ祭に行きなさい。わたしはみの祭には行かない。わたしの時がまだ満ちていないから」。
07:09> 彼らにこう言って、イエスはガリラヤにとどまっておられた。
07:10> しかし、兄弟たちが祭に行ったあとで、イエスも人目にたたぬように、ひそかに行かれた。
07:11> ユダヤ人らは祭の時に、「あの人はどこにいるのか」と言って、イエスを捜していた。
07:12> 群衆の中に、イエスについていろいろとうわさが立った。ある人々は、「あれはよい人だ」と言い、他の人々は、「いや、あれは群衆を惑わしている」と言った。
07:13> しかし、ユダヤ人らを恐れて、イエスのことを公然と口にする者はいなかった。
07:14> 祭も半ばになってから、イエスは宮に上って教え始められた。
07:15> すると、ユダヤ人らは驚いて言った、「この人は学問をしたことがないのに、どうして律法の知識をもっているのだろう」。
07:16> そこでイエスは彼らに答えて言われた、「わたしの教えはわたし自信の教えではなく、わたしをつかわされたかたの教えである。
07:17> 神のみこころを行おうと思う者であれば、だれでも、わたしの語っているこの教が神からのものか、それとも、わたし自身から出たものか、わかるであろう。
07:18> 自分から出たことを語る者は、自分の栄光を求めるが、自分をつかわされたかたの栄光を求める者は真実であって、その人の内には偽りがない。
07:19> モーセはあなたがたに律法を与えたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その律法を行う者がひとりもいない。あなたがたは、なぜわたしを殺そうと思っているのか」。
07:20> 群衆は答えた、「あなたは悪霊に取りつかれている。だれがあなたを殺そうと思っているものか」。
07:21> イエスは彼らに答えて言われた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたはみなそれを見て驚いている。
07:22> モーセはあなたがたに礼拝を命じたので、(これは、実は、モーセから始まったのではなく、先祖たちから始まったものである)あなたがたは安息日にも人に割礼を施している。
07:23> もし、モーセの律法が破られないように、安息日であっても割礼を受けるのなら、安息日に人の全身を丈夫にしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。
07:24> うわべで人をさばかないで、正しいさばきをするがよい」。
07:25> さて、エルサレムのある人たちが言った、「この人は人々が殺そうと思っている者ではないか。
07:26> 見よ、彼は公然と語っているのに、人々はこれに対して何も言わない。役人たちは、この人がキリストであることを、ほんとうに知っているのではなかろうか。
07:27> わたしたちはこの人がどこから来るのか知っている者は、ひとりもいない」。
07:28> イエスは宮の内で教えながら、叫んで言われた、「あなたがたは、わたしを知っており、また、わたしがどこからきたかも知っている。しかし、わたしは自分からきたのではない。わたしをつかわされたかたは真実であるが、あなたがたは、そのかたを知らない。
07:29> わたしは、そのかたを知っている。わたしはそのかたのもとからきた者で、そのかたがわたしをつかわされたのである」。
07:30> そこで人々はイエスを捕らえようと計ったが、だれひとり手をかける者はなかった。イエスの時が、まだきていなかったからである。
07:31> しかし、群衆の中の多くの者が、イエスを信じて言った、「キリストがきても、この人が行ったよりも多くのしるしを行うだろうか」。
07:32> 群衆がイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイ人たちは耳にした。そこで祭司長たちやパリサイ人たちは、いえすを捕らえようとして、下役どもをつかわした。
07:33> イエスは言われた、「今しばらくの間、わたしはあなたがたと一緒にいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとに行く。
07:34> あなたがたはわたしを捜すであろうが、見つけることはできない」。
07:35> そこでユダヤ人たちは互いに言った、「わたしたちが見つけることができないというのは、どこへ行こうとしいてるのだろう。ギリシャ人の中に離散している人たちのところにでも行って、ギリシャ人を教えようというのだろうか。
07:36> また、『わたしを捜すが、見つけることができない。そしてわたしのいる所には来ることができないだろう』と言った言葉は、どういう意味だろう」。
07:37> 祭の終わりの大事な日に、イエスは立って、叫んで言われた、「だれでもかわく者は、わたしのところにきて飲むがよい。
07:38> わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう」。
07:39> これは、イエスを信じる人々が受けようとしている御霊をさして言われたのである。すなわち、イエスはまだ栄光を受けておられなかったので、御霊がまだ下っていなかったのである。
07:40> 群衆のある者がこれらの言葉を聞いて、「このかたは、ほんとうに、あの預言者である」と言い、
07:41> ほかの人たちは「このかたはキリストである」と言い、また、ある人々は「キリストはまさか、ガリラヤからは出てこないだろう。
07:42> キリストはダビデの子孫から、またダビデのいたベツレヘムの村から出ると、聖書に書いてあるではないか」と言った。
07:43> こうして、群衆の間にイエスのことで分争が生じた。
07:44> 彼らのうちのある人々は、イエスを捕らえようと思ったが、だれひとり手をかける者はなかった。
07:45> さて、下役どもが祭司長たちやパリサイ人たちのところに帰ってきたので、彼らはその下役どもに言った、「なぜ、あの人を連れてこなかったのか」。
07:46> 下役どもは答えた、「この人の語るように語った者は、これまでにありませんでした」。
07:47> パリサイ人たちが彼らに答えた、「あなたがたまでか、だまされているのではないか。
07:48> 役人たちやパリサイ人たちの中で、ひとりでも彼を信じた者があっただろうか。
07:49> 律法をわきまえないこの群衆は、のろわれている」。
07:50> 彼らの中のひとりで、以前にイエスに会いにきたことのあるニコデモが、彼らに言った、
07:51> 「わたしたちの律法によれば、まずその人の言い分を聞き、その人のしたことを知った上でなければ、さばくことをしないのではないか」。
07:52> 彼らは答えて言った、「あなたもガリラヤ出なのか。よく調べてみなさい、ガリラヤからは預言者が出るものではないことが、わかるだろう」。〔
07:53> そして、人々はおのおのの家に帰って行った。

第八章
08:01> イエスはオリブの山に行かれた。
08:02> 朝早くまた宮にはいられると、人々が皆みもとに集まってきたので、イエスはすわって彼らに教えておられた。
08:03> すると、律法学者やパリサイ人たちが、姦淫している時につかまえられた女をひっぱってきて、中に立たせた上、イエスに言った、
08:04> 「先生、この女は姦淫の場でつかまえられました。
08:05> モーセの律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」。
08:06> 彼らはそう言ったのは、イエスをためして、訴える口実を得るためであった。しかし、イエスは身をかがめて、指で地面に何か書いておられた。
08:07> 彼らが問い続けるので、イエスは身を起こして彼らに言われた、「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。
08:08> そしてまた身をかがめて、地面に物を書きつづけられた。
08:09> これを聞くと、彼らは年寄りから始めて、ひとりびとり出て行き、ついに、イエスだけになり、女は中にいたまま残された。
08:10> そこでイエスは身を起こして女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。
08:11> 女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。〕
08:12> イエスは、また人々に語ってこう言われた、「わたしは世の光である。わたしに従って来る者は、やみのうちを歩くことがなく、命の光をもつであろう」。
08:13> するとパリサイ人たちがイエスに言った、「あなたは、自分のことをあかししている。あなたのあかしは真実ではない」。
08:14> イエスは彼らに答えて言われた、「たとい、わたしが自分のことをあかししても、わたしのあかしは真実である。それは、わたしはどこからきたのか、また、どこへ行くのかを知っているからである。しかし、あなたがたは、わたしがとこからきて、どこへ行くのかを知らない。
08:15> あなたがたは肉によって人をさばくが、わたしはだれもさばかない。
08:16> しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは正しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと一緒だからである。
08:17> あなたがたの律法には、ふたりによる証言は真実だと、書いてある。
08:18> わたし自身のことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされた父も、わたしのことをあかしして下さるのである」。
08:19> すると、彼らはイエスに言った、「あなたの父はどこにいるのか」。イエスは答えられた、「あなたがたは、わたしをもわたしの父をも知っていない。もし、あなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父をも知っていたであろう」。
08:20> イエスが宮の内で教えていた時、これらの言葉をさいせん箱のそばで語られたのであるが、イエスの時がまだきていなかったので、だれも捕らえる者がなかった。
08:21> さて、また彼らに言われた、「わたしは去って行く。あなたがたはわたしを捜し求めるであろう。そして自分の罪のうちに死ぬであろう。わたしの行く所には、あなたがたは来ることができない」。
08:22> そこでユダヤ人たちは言った、「わたしの行く所に、あなたがたは来ることができないと、言ったのは、あるいは自殺でもしょうとするつもりか」。
08:23> イエスは彼らに言われた、「あなたがたは下から出た者だが、わたしは上からきた者である。あなたがたはこの世の者であるが、わたしはこの世の者ではない。
08:24> だからわたしは、あなたがたは自分の罪のうちに死ぬであろうと、言ったのである。もしわたしがそういう者であることをあなたがたが信じなければ、罪のうちに死ぬことになるからである」。
08:25> そこで彼らはイエスに言った、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスは彼らに言われた、「わたしがどういう者であるかは、初めからあなたがたに言っているではないか。
08:26> あなたがたについて、わたしの言うべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは真実なかたである。わたしは、そのかたから聞いたままを世にむかって語るのである」。
08:27> 彼らは、イエスが父について話しておられたことを悟らなかった。
08:29> そこでイエスは言われた、「あなたがたが人の子を上げてしまった後はじめて、わたしがそういう者であること、また、わたしは自分からは何もせず、ただ父が教えて下さったままを話していたことが、わかってくるであろう。
08:29> わたしをつかわされたかたは、わたしと一緒におられる。わたしは、いつも神のみこころにかなうことをしているから、わたしをひとり置きざりになさることはない」。
08:30> これらのことを語られたところ、多くの人々がイエスを信じた。
08:31> イエスは自分を信じたユダヤ人たちに言われた、「もしわたしの言葉のうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの弟子なのである。
08:32> また真理を知るであろう。そして真理は、あなたがたに自由を得させるであろう」。
08:33> そこで、彼らはイエスに言った、「わたしたちはアブラハムの子孫であって、人の奴隷になったことなどは、一度もない。どうして、あなたがたに自由を得させるであろうと、言われるのか」。
08:34> イエスは彼らに答えられた、「よくよくあなたがたに言っておく。すべて罪を犯す者は罪の奴隷である。
08:35> そして、奴隷はいつまでも家にいる者ではない。しかし、子はいつまでもいる。
08:36> だから、もし子があなたがたに自由を得させるならば、あなたがたは、ほんとうに自由な者となるのである。
08:37> わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っている。それだのに、あなたがたはわたしを殺そうとしている。わたしの言葉が、あなたがたのうちに根をおろしていないからである。
08:38> わたしはわたしの父のもとで見たことを語っているが、あなたがたは自分の父から聞いたことを行っている」。
08:39> 彼らはイエスに答えて言った、「わたしたちの父はアブラハムである」。イエスは彼らに言われた、「もしアブラハムの子であるなら、アブラハムのわざをするがよい。
08:40> ところが今、神から聞いた真理をあなたがたに語ってきたこのわたしを、殺そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。
08:41> あなたがたは、あなたがたの父のわざを行っているのである」。彼らは言った、「わたしたちは、不品行の結果うまれた者ではない。わたしたちにはひとりの父がある。それは神である」。
08:42> イエスは彼らに言われた、「神があなたがたの父であるならば、あなたがたはわたしを愛するはずである。わたしは神から出た者、また神からきている者であるからだ。わたしは自分からきたのではなく、神からつかわされたのである。
08:43> どうしてあなたがたは、わたしの話すことがわからないのか。わたしの言葉を悟ることができないからである。
08:44> あなたがたは自分の父、すなわち、悪魔から出てきた者であって、その父の欲望どおりを行おうと思っている。彼は初めから、人殺しであって、真理に立つ者ではない。彼のうちには真理がないからである。彼が偽りを言うとき、いつも自分の本音をはいているのである。彼は偽り者であり、偽りの父であるからだ。
08:45> しかし、わたしが真理を語っているので、あなたがたはわたしを信じようとしない。
08:46> あなたがたのうち、だれがわたしに罪があると責めうるのか。わたしは真理を語っているのに、なぜあなたがたは、わたしを信じないのか。
08:47> 神からきた者は神の言葉に聞き従うが、あなたがたが聞き従わないのは、神からきた者でないからである」。
08:48> ユダヤ人たちはイエスに答えて言った、「あなたはサマリヤ人で、悪霊に取りつかれていると、わたしたちが言うのは、当然ではないか」。
08:49> イエスは答えられた、「わたしは、悪霊に取りつかれているのではなくて、わたしの父を重んじているのだが、あなたがたはわたしを軽んじている。
08:50> わたしは自分の栄光を求めてはいない。それを求めるかたが別にある。そのかたは、またさばくかたである。
08:51> よくよく言っておく。もし人がわたしの言葉を守るならば、その人はいつまでも死を見ることはないであろう」。
08:52> ユダヤ人たちが言った、「あなたが悪霊に取りつかれていることが、今わかった。アブラハムは死に、預言者たちも死んでいる。それだのに、あなたは、わたしの言葉を守る者はいつまでも死を味わうことがないであろう、言われる。
08:53> あなたは、わたしたちの父アブラハムより偉いのだろうか。彼も死に、預言者たちも死んだではないか。あなたは、いったい、自分をだれと思っているのか」。
08:54> イエスは答えられた、「わたしがもし自分に栄光を帰するなら、わたしの栄光は、むなしいものである。わたしに栄光を与えるかたは、わたしの父であって、あなたがたが自分の神だと言っているのは、そのかたのことである。
08:55> あなたがたはその神を知っていないが、わたしは知っている。もしわたしが神を知らないと言うならば、あなたがたと同じような偽り者であろう。しかし、わたしはそのかたを知り、その御言を守っている。
08:56> あなたがたの父アブラハムは、わたしのこの日を見ようとして楽しんでいた。そしてそれを見て喜んだ」。
08:57> そこでユダヤ人たちはイエスに言った、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムを見たのか」。
08:58> イエスは彼らに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。アブラハムの生まれる前からわたしは、いるのである」。
08:59> そこで彼らは石をとって、イエスに投げつけようとした。しかし、イエスは身を隠して、宮から出て行かれた。

第九章
09:01> イエスが道をとおっておられるとき、生まれつきの盲人を見られた。
09:02> 弟子たちはイエスに尋ねて言った、「先生、この人が生まれつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか。本人ですか、それともその両親ですか」。
09:03> イエスは答えられた、「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。
09:04> わたしたちは、わたしたちをつかわされたかたのわざを、昼の間にしなければならない。夜が来る。すると、だれも働けなくなる。
09:05> わたしは、この世にいる間は、世の光である」。
09:06> イエスはそう言って、地につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを盲人の目に塗って言われた、
09:07> 「シロアム(つかわされた者、の意)の池に行って洗いなさい」。そこで彼は行って洗った。そして見えるようになって、帰って行った。
09:08> 近所の人々や、彼がもと、こじきであったのを見知っていた人々が言った、「この人は、すわってこじきをしていた者ではないか」。
09:09> ある人々は、「その人だ」と言い、他の人々は「いや、ただあの人に似ているだけだ」と言った。
09:10> そこで人々が彼に言った、「では、おまえの目はどうしてあいたのか」。
09:11> 彼は答えた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしの目に塗り、『シロアムに行って洗え』と言われました。それで、行って洗うと、見えるようになりました」。
09:12> 人々は彼に言った、「その人はどこにいるのか」。彼は「知りません」と答えた。
09:13> 人々は、もと盲人であったこの人を、パリサイ人たちのところにつれて行った。
09:14> イエスがどろをつくって彼の目をあけたのは、安息日であった。
09:15> パリサイ人たちもまた、「どうして見えるようになったのか」、と彼に尋ねた。彼は答えた、「あのかたがわたしの目にどろを塗り、わたしがそれを洗い、そして見えるようになりました」。
09:16> そこで、あるパリサイ人たちが言った、「その人は神からきた人ではない。安息日を守っていないから」。しかし、ほかの人々は言った、「罪のある人が、どうしてそのようなしるしを行うことができようか」。そして彼らの間に分争が生じた。
09:17> そこで彼らは、もう一度この盲人に聞いた、「おまえの目をあけてくれたその人を、どう思うか」。「預言者だと思います」と彼は言った。
09:18> ユダヤ人たちは、彼がもと盲人であったが見えるようになったことを、まだ信じなかった。ついに彼らは、目が見えるようになったこの人の両親を呼んで、
09:19> 尋ねて言った、「これが、生まれつきの盲人であったと、おまえたちの言っているむすこか。それではどうして、いま目が見えるのか」。
09:20> 両親は答えて言った、「これがわたしどものむすこであること、生まれつき盲人であったことは存じています。
09:21> しかし、どうしていま見えるようになったのか、それは知りません。また、だれがその目をあけて下さったのかも知りません。あれに聞いて下さい。あれはもうおとなですから、自分のことは自分で話せるでしょう」。
09:22> 両親はユダヤ人たちを恐れていたので、こう答えたのである。それは、もしイエスをキリストと告白する者があれば、会堂から追い出すことに、ユダヤ人たちが既に決めていたからである。
09:23> 彼の両親が「おとなですから、あれに聞いて下さい」と言ったのは、そのためであった。
09:24> そこで彼らは、盲人であった人をもう一度呼んで言った、「神に栄光を帰するがよい。あの人が罪人であることは、わたしたちにはわかっている」。
09:25> すると彼は言った、「あのかたが罪人であるかどうか、わたしは知りません。ただ一つのことだけ知っています。わたしは盲人であったが、今は見えるということです」。
09:26> そこで彼らは言った、「その人はおまえに何をしたのか。とんなにしておまえの目をあけたのか」。
09:27> 彼は答えた、「そのことはもう話してあげたのに、聞いてくれませんでした。なぜまた聞こうとするのですか。あなたがたも、あの人の弟子になりたいのですか」。
09:28> そこで彼らは彼をののして言った、「おまえはあれの弟子だが、わたしたちはモーセの弟子だ。
09:29> モーセに神が語られたということは知っている。だが、あの人がどこからきた者か、わたしたちは知らぬ」。
09:30> そこで彼が答えて言った、「わたしの目をあけて下さったのに、そのかたがどこからきたか、ご存じないとは、不思議千万です。
09:31> わたしたちはこのことを知っています。神は罪人の言うことはお聞きいれになりませんが、神を敬い、そのみこころを行う人の言うことは聞きいれて下さいます。
09:32> 生れつき盲人であった者の目をあけた人があるということは、世界が始まって以来、聞いたことがありません。
09:33> もしあのかたが神からきた人でなかったら、何一つできなかったはずです」。
09:34> これを聞いて彼らは言った、「おまえは全く罪の中から生まれていながら、わたしたちを教えようとするのか」。そして彼を外へ追いだした。
09:35> イエスは、その人が外へ追い出されたことを聞かれた。そして彼に会って言われた、「あなたは人の子を信じるか」。
09:36> 彼は答えて言った、「主よ、それはどなたですか。そのかたを信じたいのですが」。
09:37> イエスは彼らに言われた、「あなたは、もうその人にあっている。今あなたと話しているのが、その人である」。
09:38> すると彼は、「主よ、信じます」と言って、イエスを拝した。
09:39> そこでイエスは言われた、「わたしがこの世のきたのは、さばくためである。すなわち、見えない人たちが見えるようになり、見える人たちが見えないようになるためである」。
09:40> そこでイエスと一緒にいたあるパリサイ人たちが、それを聞いてイエスに言った、「それでは、わたしたちも盲人なのでしょうか」。
09:41> イエスは彼らに言われた、「もしあなたがたが盲人であったなら、罪はなかったであろう。しかし、今あなたがたが『見える』と言い張るところに、あなたがたの罪がある。

第一0章
10:01> よくよくあなたがたに言っておく。羊の囲いにはいるのに、門からではなく、ほかの所からのりこえて来る者は、盗人であり、強盗である。
10:02> 門からはいる者は、羊の羊飼である。
10:03> 門番は彼のために門を開き、羊は彼の声を聞く、そして彼は自分の羊の名をよんで連れ出す。
10:04> 自分の羊をみな出してしまうと、彼は羊の先頭に立って行く。羊はその声を知っているので、彼について行くのである。
10:05> ほかの人には、ついて行かないで逃げ去る。その人の声を知らないからである」。
10:06> イエスは彼らにこの比喩を話されたが、彼らは自分たちにお話になっているのが何のことだか、わからなかった。
10:07> そこで、イエスまた言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。わたしは羊の門である。
10:08> わたしよりも前にきた人は、みな盗人であり、強盗である。羊は彼らに聞き従わなかった。
10:09> わたしは門である。わたしをとおってはいる者は救われ、また出入りし、牧草にありつくであろう。
10:10> 盗人が来るのは、盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、羊に命を得させ、豊かに得させるためである。
10:11> わたしはよい羊飼である。よい羊飼は、羊のために命を捨てる。
10:12> 羊飼ではなく、羊が自分のものでもない雇人は、おおかみが来るのを見ると、羊を捨てて逃げ去る。そして、おおかみは羊を奪い、また追い散らす。
10:13> 彼は雇人であって、羊のことを心にかけていないからである。
10:14> わたしはよい羊飼であって、わたしの羊を知り、わたしの羊はまた、わたしを知っている。
10:15> それはちょうど、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。そして、わたしは羊のために命を捨てるのである。
10:16> わたしにはまた、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らも、わたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、ひとりの羊飼となるであろう。
10:17> 父は、わたしが自分の命を捨てるから、わたしを愛して下さるのである。命を捨てるのは、それを再び得るためである。
10:18> だれかが、わたしからそれを取り去るのではない。わたしが、自分からそれを捨てるのである。わたしは、それを捨てる力があり、またそれを受ける力もある。これはわたしの父から授かった定めである」。
10:19> これらの言を語られたため、ユダヤ人の間にまたも分争が生じた。
10:20> そのうちの多くの者が言った、「彼は悪霊に取りつかれて、気が狂っている。どうして、あながたはその言うことを聞くのか」。
10:21> 他の人々は言った、「それは悪霊に取りつかれた者の言ではない。悪霊は盲人の目をあけることができようか」。
10:22> そのころ、エルサレムで宮のきよめの祭が行われた。時は冬であった。
10:23> イエスは、宮の中にあるソロモンの廊を歩いておられた。
10:24> するとユダヤ人たちが、イエスを取り囲んで言った、「いつまでわたしたちを不安のままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり言っていただきたい」。
10:25> イエスは彼らに答えられた、「わたしは話したのだが、あなたがたは信じようとしない。わたしの父の名によってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。
10:26> あなたがたが信じないのは、わたしの羊でないからである。
10:27> わたしの羊はわたしの声に聞き従う。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしについて来る。
10:28> わたしは、彼らに永遠の命を与える。だから、彼らはいつまでも滅びることがなく、また、彼らをわたしの手から奪い去る者はない。
10:29> わたしの父がわたしに下さったものは、すべてにまさるものである。そしてだれも父のみ手から、それを奪い取ることはできない。
10:30> わたしと父は一つである」。
10:31> そこでユダヤ人たちは、イエスを打ち殺そうとして、また石を取りあげた。
10:32> するとイエスは彼らに答えられた、「わたしは、父による多くのよいわざを、あなたがたに示した。その中のどのわざのために、わたしを石で打ち殺そうとするのか」。
10:33> ユダヤ人たちは答えた、「あなたを石で殺そうとするのは、よいわざをしたからではなく、神を汚したからである。また、あなたは人間であるのに、自分を神としているからである」。
10:34> イエスは彼らに答えられた、「あなたがたの律法に、『わたしは言う、あなたがたは神々である』と書いてあるではないか。
10:35> 神の言を託された人々が、神々といわれておるとすれば、(そして聖書の言は、すたることがあり得ない)
10:36> 父が聖別して、世につかわされた者が、『わたしは神の子である』と言ったからとて、どうして『あなたは神を汚す者だ』と言うのか。
10:37> もしわたしが父のわざを行わないとすれば、わたしを信じなくてもよい。
10:38> しかし、もし行っているなら、たといわたしを信じなくても、わたしのわざを信じるがよい。そうすれば、父がわたしにおり、また、わたしが父におることを知って悟であろう」。
10:39> そこで、彼らはまたイエスを捕らえようとしたが、イエスは彼らの手をのがれて、去って行かれた。
10:40> さて、イエスはまたヨルダンの向こう岸、すなわち、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた所に行き、そこに滞在しておられた。
10:41> 多くの人々がイエスの所にきて、互いに言った、「ヨハネはなんのしるしも行わなかったが、ヨハネがこのかたについて言ったことは、皆ほんとうであった」。
10:42> そして、そこで多くの者がイエスを信じた。

第一一章
11:01> さて、一人の病人がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹の村ベタニヤの人であった。
11:02> このマリヤは主に香油をぬり、自分の髪の毛で、主の足をふいた女であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。
11:03> 姉妹たち人をイエスのもとにつかわして、「主よ、ただ今、あなたが愛しておられる者が病気をしています」と言わせた。
11:04> イエスはそれを聞いて言われた、「この病気は死ぬほどのものでない。それは神の栄光のため、また、神の子がそれによって栄光を受けるためのものである」。
11:05> イエスは、マルタとその姉妹とラザロとを愛しておられた。
11:06> ラザロが病気であることを聞いてから、なおふつか、そのおられた所に滞在された。
11:07> それから弟子たちに、「もう一度ユダヤに行こう」と言われた。
11:08> 弟子たちは言った、「先生、ユダヤ人らが、さきほどもあなたを石で殺そうとしていましたのに、またそこに行かれるのですか」。
11:09> イエスは答えられた、「一日には十二時間あるではないか。昼間あるけば、人はつまづくことはない。この世の光を見ているからである。
11:10> しかし、夜あるけば、つまづく。その人のうちに、光がないからである」。
11:11> そう言われたが、それかせまた、彼らに言われた、「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起こしに行く」。
11:12> すると弟子たちは言った、「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」。
11:13> イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、眠って休んでいることをさして言われたのだと思った。
11:14> するとイエスは、あからさまに彼らに言われた、「ラザロは死んだのだ。
11:15> そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜ぶ。それは、あなたがたが信じるようになるためである。では、彼のところへ行こう」。
11:16> するとデドモと呼ばれているトマスが、仲間の弟子たちに言った、「わたしたちも行って、先生と一緒に死のうではないか」。
11:17> さて、イエスが行ってごらんになると、ラザロはすでに四日間も墓の中に置かれていた。
11:18> ベタニヤはエルサレムに近く、二十五丁ばかり離れたところにあった。
11:19> 大ぜいのユダヤ人が、その兄弟のことで、マルタとマリヤとを慰めようとしてきていた。
11:20> マルタはイエスがこられたことを聞いて、出迎えに行ったが、マリヤは家ですわっていた。
11:21> マルタはイエスに言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。
11:22> しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」。
11:23> イエスはマルタに言われた、「あなたの兄弟はよみがえるであろう」。
11:24> マルタは言った、「終わりの日のよみがえりの時によみがえること、存じています」。
11:25> イエスは彼女に言われた、「わたしがよみがえりであり、命である。わたしを信じる者は、たとい死んでも生きる。
11:26> また、生きていて、わたしを信じる者は、いつまでも死なない。あなたはこれを信じるか」。
11:27> マルタはイエスに言った、「主よ、信じます。あなたがこの世にきたるべきキリスト、神の子であると信じております」。
11:28> マルタはこう言ってから、帰って姉妹のマリヤを呼び、「先生がおいでになって、あなたを呼んでおられます」と小声で言った。
11:29> これを聞いたマリヤはすぐに立ち上がって、イエスのもとに行った。
11:30> イエスはまだ村に、はいってこられず、マルタがお迎えしたその場所におられた。
11:31> マリヤと一緒に家にいて彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急いで立ち上がって出て行くのを見て、彼女は墓に泣きに行くのであろうと思い、そのあとからついて行った。
11:32> マリヤはイエスのおられる所に行ってお目にかかり、その足もとにひれ伏して言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう」。
11:33> イエスは、彼女が泣き、また、彼女と一緒にきたユダヤ人たちも泣いているのをごらんになり、激しく感動し、また心を騒がせ、そして言われた、
11:34> 「彼をどこに置いたのか」。彼らはイエスに言った、「主よ、きて、ごらん下さい」。
11:35> イエスは涙を流された。
11:36> するとユダヤ人たちは言った、「ああ、なんと彼を愛しておられたことか」。
11:37> しかし、彼らのある人たちは言った、「あの盲人の目をあけたこの人でも、ラザロを死なせないようには、できなかったのか」。
11:38> イエスはまた激しく感動して、墓にはいられた。それは洞穴であって、そこに石がはめてあった。
11:39> イエスは言われた、「石を取りのけなさい」。死んだラザロの姉妹マルタが言った、「主よ、もう臭くなっております。四日もたっていますから」。
11:40> イエスは彼女に言われた、「もし信じるなら神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではないか」。
11:41> 人々は石を取りのけた。すると、イエスは目を天にむけて言われた、「父よ、わたしの願いをお聞き下さったことを感謝します。
11:42> あなたがいつでもわたしの願いを聞きいれて下さることを、よく知っています。しかし、こう申しますのは、そばに立っている人々に、あなたがわたしをつかわされたことを、信じさせるためであります」。
11:43> こう言いながら、大声で「ラザロよ、出てきなさい」と呼ばわれた。
11:44> すると、死人は手足を布でまかれ、顔も顔おおいで包まれたまま、出てきた。イエスは人々に言われた、「彼をほどいてやって、帰らせなさい」。
11:45> マリヤのところにきて、イエスのなさったことを見た多くのユダヤ人たちは、イエスを信じた。
11:46> しかし、そのうちの数人がパリサイ人たちのところに行って、イエスのされたことを告げた。
11:47> そこで、祭司長たちとパリサイ人たちとは、議会を召集して言った、「この人が多くのしるしを行っているのに、お互いは何をしているのだ。
11:48> もしこのままにしておけば、みんなが彼を信じるようになるだろう。そのうえ、ローマ人がやってきて、わたしたちの土地も人民も奪ってしまうであろう」。
11:49> 彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った、「あなたがたには、何もわかっていないし、
11:50> ひとりの人が人民に代って死んで、全国民が滅びないようにかるのがわたしたちにとって得だということを、考えてもいない」。
11:51> このことは彼が自分から言ったのではない。彼はこの年の大祭司であったので、預言をして、イエスが国民のために、
11:52> ただ国民のためだけではなく、また散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになっていると、言ったのである。
11:53> 彼らはこの日からイエスを殺そうと相談した。
11:54> そのためイエスは、もはや公然とユダヤ人の間を歩かないで、そこを出て、荒野に近い地方のエフライムという町に行かれ、そこに弟子たちと一緒に滞在しておられた。
11:55> さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、多くの人々は身をきよめるために、祭の前に、地方からエルサレムへ上った。
11:56> 人々はイエスを捜し求め、宮の庭に立って互いに言った、「あなたがたはどう思うか、イエスはこの祭にこないのだろうか」。
11:57> 祭司長たちとパリサイ人たちとは、イエスを捕らえようとして、そのいどころを知っている者があれば申し出よ、という指令を出していた。

第一二章
12:01> 過越の祭の六日まえに、イエスはベタニヤに行かれた。そこは、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロのいた所である。
12:02> イエスのためにそこで夕食が用意された。マルタは給仕をしていた。イエスと一緒に食卓についていた者のうちに、ラザロも加わっていた。
12:03> その時、マリヤは高価で純粋なナルドの香油一斤を持ってきて、イエスの足にぬり、自分の髪の毛でそれをふいた。すると、香油のかおりが家にいっぱいになった。
12:04> 弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った、
12:05> 「なぜこの香油を三百デナリに売って、貧しい人たちに、施さなかったのか」。
12:06> 彼がこう言ったのは、貧しい人たちに対する思いやりがあったからではなく、自分が盗人であり、財布を預かっていて、その中身をこまかしていたからであった。
12:07> イエスは言われた、「この女のするままにさせておきなさい。わたしの葬りの日のために、それをとっておいたのだから。
12:08> 貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいが、わたしはいつも共にいるわけではない」。
12:09> 大ぜいのユダヤ人たちが、そこにイエスのおられるのを知って、押しよせてきた。それはイエスに会うためだけではなく、イエスが死人のなかから、よみがえらせたラザロを見るためでもあった。
12:10> そこで祭司長たちは、ラザロも殺そうと相談した。
12:11> それは、ラザロのことで、多くのユダヤ人が彼らを離れ去って、イエスを信じるように至ったからである。
12:12> その翌日、祭にきていた大ぜいの群衆は、イエスがエルサレムにこられると聞いて、
12:13> しゅろの枝を手にとり、迎えに出て行った、そして叫んだ、「ホサナ、主の御名によってきたる者に祝福あれ、イスラエルの王に」。
12:14> イエスは、ろばの子を見つけて、その上に乗られた。それは、
12:15> 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ、あなたの王がろばの子に乗っておいでになる」と書いてあるとおりであった。
12:16> 弟子たちは初めにはこのことを悟らなかったが、イエスが栄光を受けられた時に、このことがイエスについて書かれてあり、またそのとおりに、人々がイエスに対してしたのだということを、思い起こした。
12:17> また、イエスがラザロを墓から呼び出して、死人の中からよみがえらせたとき、イエスと一緒にいた群衆が、そのあかしをした。
12:18> 群衆がイエスを迎えに出たのは、イエスがこのようなしるしを行われたことを、聞いていたからである。
12:19> そこで、パリサイ人たちは互いに言った、「何をしてもむだだった。世をあげて彼のあとを追って行ったではないか」。
12:20> 祭で礼拝をするために上ってきた人々のうちに、数人のギリシャ人がいた。
12:11> 彼らはガリラヤのベッサイダ出であるピリポのところにきて、「君よ、イエスにお目にかかりたいのですが」と言って頼んだ。
12:22> ピリポはアンデレのところに行ってそのことを話し、アンデレとピリポは、イエスのもとに行って伝えた。
12:23> すると、イエスは答えて言われた、「人の子が栄光を受ける時がきた。
12:24> よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦がちに落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。
12:25> 自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至るであろう。
12:26> もしわたしに仕えようとする人があれば、その人はわたしに従って来るがよい。そうすれば、わたしのおる所に、わたしに仕える者もまた、おるであろう。もしわたしに仕えようとする人があれば、その人は父を重んじて下さるであろう。
12:27> 今わたしは心が騒いでいる。わたしはなんと言おうか。父よ、この時からわたしをお救い下さい。しかし、わたしはこのために、この世に至ったのです。
12:28> 父よ、み名があがめられますように」。すると天から声があった、「わたしはすでに栄光をあらわした。そして、更にそれをあらわすであろう」。
12:29> すると、そこに立っていた群衆がこれを聞いて、「雷がなったのだ」と言い、ほかの人たちは、「御使が彼に話しかけたのだ」と言った。
12:30> イエスは答えて言われた、「この声があったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。
12:31> 今はこの世がさばかれる時である。今こそこの世の君は追い出されるであろう。
12:32> そして、わたしがこの地から上げられる時には、すべての人をわたしのところに引きよせるであろう」。
12:33> イエスはこう言って、自分がどんな死に方で死のうとしていたかを、お示しになったのである。
12:34> すると群衆はイエスにむかって言った、「わたしたちは律法によって、キリストはいつまでも生きておいでになるのだ、と聞いていました。それだのに、どうして人の子は上げられねばならないと、言われるのですか。その人の子とは、だれのことですか」。
12:35> そこでイエスはかれらに言われた、「もうしばらくの間、光はあなたがたと一緒にここにある。光がある間に歩いて、やみに追いつかれないようにしなさい。闇の中を歩く者は、自分がどこへ行くのかわかっていない。
12:36> 光のある間に、光の子となるために、光を信じなさい」。イエスはこれらのことを話してから、そこを立ち去って、彼らから身をお隠しになった。
12:37> このように多くのしるしを彼らの前でなさったが、彼らはイエスを信じなかった。
12:38> それは、預言者イザヤの次の言葉が成就するためである、「主よ、わたしたちの説くところを、誰が信じたでしょうか。また、主のみ腕はだれに示されたでしょうか」。
12:39> こういうわけで、彼らは信じることができなかった。イザヤはまた、こうも言った、
12:40> 「神は彼らの目をくらまし、心をかたくなになさった。それは、彼らが目で見ず。心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである」。
12:41> イザヤがこう言ったのは、イエスの栄光を見たからであって、イエスのことを語ったのである。
12:42> しかし、役人たちの中にも、イエスを信じた者が多かったが、パリサイ人をはばかって、告白はしなかった。会堂から追い出されるのを恐れていたのである。
12:43> 彼らは神のほまれよりも、人のほまれを好んだからである。
12:44> イエスは大声で言われた、「わたしを信じる者は、わたしを信じるのでせはなく、わたしをつかわされたかたを信じるのであり、また、わたしを見る者は、わたしをつかわされたかたを見るのである。
12:46> わたしは光としてこの世にきた。それは、わたしを信じる者が、やみのうちにとどまらないようになるためである。
12:47> たとい、わたしの言うことを聞いてそれを守らない人があっても、わたしはその人をさばかない。わたしがきたのは、この世をさばくためではなく、この世を救うためである。
12:48> わたしを捨てて、わたしの言葉を受けいれない人には、その人をさばくものがある。わたしの語ったその言葉が、終りの日にはその人をさばくであろう。
12:49> わたしは自分から語ったのではなく、わたしをつかわされた父ご自身が、わたしの言うべきこと、語るべきことをお命じになったのである。
12:50> わたしは、この命令が永遠の命であることを知っている。それゆえに、わたしが語っていることは、わたしの父がわたしに仰せになったことを、そのまま語っているのである」。

第一三章
13:01> 過越の祭の前に、イエスは、この世を去って父のみもとに行くべき自分の時がきたことを知り、世にいる自分の者たちを愛して、彼らを最後まで愛し通された。
13:02> 夕食のとき、悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていたが、
13:03> イエスは、父がすべてのものを自分の手にお与えになったこと、また、自分は神から出てきて、神にかえろうとしていることを思い、
13:04> 夕食の席から立ち上がって上着を脱ぎ、手ぬぐいをとって腰に巻き、
13:05> それから水をたらいに入れて、弟子たち足を洗い、腰に巻いた手ぬぐいでふき始められた。
13:06> こうして、シモン・ペテロの番になった。すると彼はイエスに、「主よ、あなたがわたしの足をお洗いになるのですか」と言った。
13:07> イエスは彼に答えて言われた、「わたしのしていることは今あなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。
13:08> ペテロはイエスに言った、「わたしの足を洗わないで下さい」。イエスは彼に答えられた、「もしわたしがあなたの足を洗わないなら、あなたはわたしとなんの係わりもなくなる」。
13:09> シモン。ペテロはイエスに言った、「主よ、では、足だけではなく、ぞうぞ、手も頭も」。
13:10> イエスは彼に言われた、「すでにからだを洗った者は、足のほかは洗う必要がない。全身がきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。
13:11> イエスは自分を裏切る者を知っておられた。それで、「みんながきれいなのではない」と言われたのである。
13:12> こうして彼らの足を洗ってから、上着をつけ、ふたたび席にもどって、彼らに言われた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。
13:13> あなたがたはわたしを教師、また主と呼んでいる。そう言うのは正しい。わたしはそのとおりである。
13:14> しかし、主であり、また教師であるわたしが、あなたがたの足を洗ったからには、あなたがたもまた、互いに足を洗い合うべきである。
13:15> わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは手本を示したのだ。
13:16> よくよくあなたがたに言っておく、しもべはその主人にまさるものではなく、つかわされた者はそのつかわした者にまさるものではない。
13:17> もしこれらのことがわかっていて、それを行うなら、あなたがたはさいわいである。
13:18> あなたがた全部の者について、こう言っているのではない。わたしは自分が選んだ人たちを知っている。しかし、『わたしのパンを食べている者が、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある聖書は成就されなければならない。
13:19> そのことがまだ起こらない今のうちに、あなたがたに言っておく。いよいよ事が起こったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが信じるためである。
13:20> よくよくあなたがたに言っておく。わたしがつかわす者を受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをつかわされたかたを、受けいれるのである」。
13:21> イエスがこれらのことを言われた後、その心が騒ぎ、おごそかに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。
13:22> 弟子たちはだれのことを言われたのか察しかねて、互いに顔を見合わせた。
13:23> 弟子たちのひとりで、イエスを愛しておられた者が、み胸に近く席についていた。
13:24> そこで、シモン・ペテロは彼に合図して言った、「だれのことをおっしゃったのか、知らせてくれ」。
13:25> その弟子はそのままイエスの胸によりかかって、「主よ、だれのことですか」と尋ねると、
13:26> イエスは答えられた、「わたしが一きれの食物をひたして与える者が、それである」。そして、一きれの食物をひたしてとり上げ、シモンの子イスカリオテのユダにお与えになった。
13:27> この一きれの食物を受けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは彼に言われた、「しようとしていることを、今すぐするがよい」。
13:28> 席を共にしていた者のうち、なぜユダにこう言われたのか、わかっていた者はひとりもなかった。
13:29> ある人々は、ユダが金入れをあずかっていたので、イエスが彼に、「祭のために必要なものを買え」と言われたか、あるいは、貧しい者に何か施させようとされたのだと思っていた。
13:30> ユダは一きれの食物を受けると、すぐ出て行った。時は夜であった。
13:31> さて、彼が出て行くと、イエスは言われた、「今や人の子は栄光を受けた、神もまた彼によって栄光をお受けになった。
13:32> 彼によって栄光をお受けになったのなら、神ご自身も彼に栄光をお授けになるであろう。すぐにもお授けになるであろう。
13:33> 子たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒にいる。あなたがたはわたしを捜すだろうが、すでにユダヤ人たちに言ったとおり、今あなたがたにも言う、『あなたがたはわたしの行く所に来ることはできない』。
13:34> わたしは、新しいいましめをあなたがたに与える、互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
13:35> 互いに愛し合うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が認めるであろう」。
13:36> シモン・ペテロがイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのですか」。イエスは答えられた、「あなたはわたしの行くところに、今はついて来ることはできない。しかし、あとになってから、ついて来ることになろう」。
13:37> ペテロはイエスに言った、「主よ、なぜ、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、命も捨てます」。
13:38> イエスは答えられた、「わたしのために命を捨てると言うのか。よくよくあなたに言っておく。鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三度知らないと言うであろう」。

第一四章
14:01> 「あなたがたは、心を騒がせないがよい。神を信じ、またわたしを信じなさい。
14:02> わたしの父の家には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしがそう言っておいたであろう。あなたがたのために、場所の用意をしに行くのだから。
14:03> そして行って、場所の用意ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに迎えよう。わたしのおる所にあなたがたもおらせるためである。
14:04> わたしがどこへ行くのか、その道はあなたがたにわかっている」。
14:05> トマスはイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその場所がわかるでしょう」。
14:06> イエスは彼らに言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。
14:07> もしあなたがたがわたしを知っていたならば、わたしの父をも知ったであろう。しかし、今は父を知っており、またすでに父を見たのである」。
14:08> ピリポはイエスに言った、「主よ、わたしたちに父を示して下さい。そうして下されば、わたしたちは満足します」。
14:09> イエスは彼に言われた、「ピリポよ、こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのである。どうして、わたしたちに父を示してほしいと、言うのか。
14:10> わたしが父におり、父がわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。
14:11> わたしが父におり、父がわたしにおられることを信じなさい。もしそれが信じられないならば、わざそのものによって信じなさい。
14:12> よくよくあなたがたに言っておく。わたしを信じる者は、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっと大きいわざをするであろう。わたしが父のみもとに行くからである。
14:13> わたしの名によって願うことは、なんでもかなえてあげよう。父が子によって栄光をお受けになるためである。
14:14> 何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれをかなえてあげよう。
14:15> もしあなたがたがわたしを愛するならば、わたしのいましめを守るべきである。
14:16> わたしは父にお願いしよう。そうすれば、父は別に助け主を送って、いつまでもあなたがたと共におらせて下さるであろう。
14:17> それは真理の御霊である。この世はそれを見ようともせず、知ろうともしないで、それを受けることができない。あなたがたはそれを知っている。なぜなら、それはあなたがたと共におり、またあなたがたのうちにいるからである。
14:18> わたしはあなたがたを捨てて孤児とはしない。あなたがたのところに帰って来る。
14:19> もうしばらくしたら、世はもはやわたしを見なくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしを見る。わたしが生きるので、あなたがたも生きるからである。
14:20> その日には、わたしはわたしの父におり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。
14:21> わたしのいましめを心にいだいてこれを守る者は、わたしを愛する者である。わたしを愛する者は、わたしの父に愛されるであろう。わたしもその人を愛し、その人にわたし自身をあらわすであろう」。
14:22> イスカリオテでない方のユダがイエスに言った、「主よ、あなたご自身をわたしたちにあらわそうとして、世にあらわそうとされないのはなぜですか」。
14:23> イエスは彼に答えて言われた、「もしだれでもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守るであろう。そして、わたしの父はその人を愛し、また、わたしたちはその人のところに行って、その人と一緒に住むであろう。
14:24> わたしを愛さない者はわたしの言葉を守らない。あなたがたが聞いている言葉は、わたしの言葉ではなく、わたしをつかわされた父の言葉である。
14:25> これらのことは、あなたがたと一緒にいた時、すでに語ったことである。
14:26> しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってつかわされる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、またわたしが話しておいたことを、ことごとく思い起こさせるであろう。
14:27> わたしは平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるようなものとは異なる。あなたがたは心を騒がせるな、またおじけるな。
14:28> 『わたしは去って行くが、またあなたがたのところに帰って来る』と、わたしが言ったのを、あなたがたは聞いている。もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとに行くのを喜んでくれるであろう。父がわたしより大きいかたであるからである。
14:29> 今わたしは、そのことが起こらない先にあなたがたに語った。それは、事が起った時あなたがたが信じるためである。
14:30> わたしはもはや、あなたがたに、多くを語るまい。この世の君が来るからである。だが、彼はわたしに対して、なんの力もない。
14:31> しかし、わたしが父を愛していることを世が知るように、わたしは父がお命じになったとおりのことを行うのである。立て。さあ、ここから出かけて行こう。

第一五章
15:01> わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。
15:02> わたしにつながったいる枝で実を結ばないものは、父がすべこれをとりのぞき、実を結ぶものは、もっと豊かに実らせるために、手入れしてこれをきれいになさるのである。
15:03> あなたがたは、わたしが語った言によって既にきよくされている。
15:04> わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。枝がぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実を結ぶことができない。
15:05> わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。もし人がわたしにつながっており、またわたしがその人とつながっておれば、その人は実を豊から結ぶようになる。わたしから離れては、あなたがたは何一つできないからである。
15:06> 人がわたしにつながっていないならば、枝のように外に投げすてられて枯れる。人々はそれをかき集め、火に投げいれて、焼いてしまうのである。
15:07> あなたがたはわたしんつながっており、わたしの言葉があなたがたにとどまっているならば、なんでも望むものを求めるがよい。そうすれば、与えられるであろう。
15:08> あなたがたが実を豊かに結び、そしてわたしの弟子となるならば、それによって、わたしの父は栄光をお受けになるであろう。
15:09> 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛したのである。わたしの愛のうちにいなさい。
15:10> もしわたしのいましめを守るならば、あなたがたはわたしの愛のうちにおるのである。それはわたしがわたしの父のいましめを守ったので、その愛のうちにおるのと同じである。
15:11> わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちにも宿るため、また、あなたがたの喜びが満ちあふれるためである。
15:12> わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
15:13> 人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。
15:14> あなたがたにわたしが命じることを行うならば、あなたがたはわたしの友である。
15:15> わたしはもう、あなたがたを僕とは呼ばない。僕は主人のしていることを知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼んだ。わたしの父から聞いたことを皆、あなたがたに知らせたからである。
15:16> あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだのである。そして、あなたがたを立てた。それは、あなたがたが行って実をむすび、その実がいつまでも残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものはなんでも、父が与えて下さるためである。
15:17> これらのことを命じるのは、あなたがたが互いに愛し合うためである。
15:18> もし世があなたがたを憎むならば、あなたがたよりも先にわたしを憎んだことを、知っておくがよい。
15:19> もしあなたがたがこの世から出たものであったなら、この世は、あなたがたを自分のものとして愛したであろう。しかし、あなたがたはこの世のものではない。かえって、わたしがあなたがたをこの世から撰び出したのである。だから、この世はあなたがたを憎むのである。
15:20> わたしがあなたがたに『僕はその主人にまさるものではない』と言ったことを、おぼえていなさい。もし人々がわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害するであろう。また、もし彼らがわたしの言葉を守っていたなら、あなたがたの言葉も守るであろう。
15:21> 彼らがわたしの名ゆえに、あなたがたに対してすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたを彼らが知らないからである。
15:22> もしわたしがきて彼らに語らなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし今となっては、彼らには、その罪について言いのがれる道がない。
15:23> わたしを憎む者は、わたしの父わも憎む。
15:24> もし、ほかりだれもがしなかったようなわざを、わたしが彼らの間でしなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし事実、彼らはわたしとわたしの父を見て、憎んだのである。
15:25> それは、『彼らは理由もなしにわたしを憎んだ』と書いてある彼らの律法の言葉が成就するためである。
15:26> わたしが父のみもとからあなたがたにつかわそうとしている助け主、すなわち、父のみもとから来る真理の御霊が下る時、それはわたしについてあかしをするであろう。
15:27> あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのであるから、あかしをするのである。

第一六章
16:01> わたしがこれらのことを語ったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。
16:02> 人々はあなたがたを会堂から追い出すであろう。更にあなたがたを殺す者がみな、それによって自分たちは神に仕えているのだと思う時が来るであろう。
16:03> 彼らがそのようなことをするのは、父をもわたしをも知らないからである。
16:04> わたしがあなたがたにこれらのことを言ったのは、彼らの時がきた場合、わたしが彼らについて言ったことを、思い起こさせるためである。これらのことを初めから言わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからである。
16:05> けれど今わたしは、わたしをつかわされたかたのところに行こうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへ行くのか』と尋ねる者はない。
16:06> かえって、わたしがこれらのことを言ったために、あなたがたの心は憂いで満たされている。
16:07> しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたに言うが、わたしが去って行くことは、あなたがたの益になるのだ。わたしが去って行かなければ、あなたがたのところに助け主はこないであろう。もし行けば、それをあなたがたにつかわそう。
16:08> それがきたら、罪と義とさばきとについて、世の人の目を開くであろう。
16:09> 罪についてと言ったのは、彼らがわたしを信じないからである。
16:10> 義についてと言ったのは、わたしが父のみもとに行き、あなたがたは、もはやわたしを見なくなるからである。
16:11> さばきについてと言ったのは、この世の君がさばかれるからである。
16:12> わたしには、あなたがたに言うべきことがまだ多くあるが、あなたがたは今はそれに堪えられない。
16:13> けれども真理の御霊が来る時には、あなたがたをあらゆる真理に導いてくれるであろう。それは自分から語るのではなく、その聞くところを語り、きたるべき事をあなたがに知らせるであろう。
16:14> 御霊はわたしに栄光を得させるであろう。
16:15> 父がお持ちになっているものはみな、わたしのものである。御霊はわたしのものを受けて、それをあなたがたに知らせるのだと、わたしが言ったのは、そのためである。
16:16> しばらくすれば、あなたがたはもうわたしを見なくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしに会えるであろう」。
16:17> そこで弟子たちのうちのある者は互いに言い合った、「『しばらくすれば、わたしを見なくなる。またしばらくすれば、わたしに会えるであろう』と言われ、『わたしの父のところに行く』と言われたのは、いったい、どういうことなのであろう」。
16:18> 彼らはまた言った、「『しばらくすれば』と言われるのは、どういうことか、わたしたちいは、その言葉の意味がわからない」。
16:19> イエスは、彼らが尋ねたがっていることに気がついて、彼らに言われた、「しばらくすればわたしを見なくなる、またしばらくすればわたしに会えるであろうと、わたしが言ったことで、互いに論じ合っているのか。
16:20> よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたは泣き悲しむが、この世は喜ぶであろう。あなたがたは憂えていろが、その憂いは喜びに変わるであろう。
16:21> 女が子を産む場合には、その時がきたというので、不安を感じる。しかし、子を産んでしまえば、もはやその苦しみをおぼえてはいない。ひとりの人がこの世に生れた、という喜びがあるためである。
16:22> このように、あなたがたにも今は不安がある。しかし、わたしは再びあなたがたと会うであろう。そして、あなたがたの心は喜びに満たされるであろう。その喜びをあなたがたから取り去る者はいない。
16:23> その日には、あなたがたがわたしに問うことは、何もないであろう。よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたが父に求めるものはなんでも、わたしの名によって下さるであろう。
16:24> 今までは、あなたがたはわたしの名によって求めたことはなかった。求めなさい。そうすれば、与えられるであろう。そして、あなたがたの喜びが満ちあふれるであろう。
16:25> わたしはこれらのことを比喩で話したが、もはや比喩では話さないで、あからさまに、父のことをあなたがたに話してきかせる時が来るであろう。
16:26> その日には、あなたがたは、わたしの名によって求めるであろう。わたしは、あなたがたのために父に願ってあげようとは言うまい。
16:27> 父ご自身があなたがたを愛しておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしを愛したため、また、わたしが神のみもとからきたことを信じたためである。
16:28> わたしは父から出てこの世にきたが、またこの世を去って、父のみもとに行くのである」。
16:29> 弟子たちは言った、「今はあからさまにお話になって、少しも比喩ではお話になりません。
16:30> あなたはすべてのことをご存じであり、だれもあなたにお尋ねする必要のないことが、今わかりました。このことによって、わたしたちはあなたが神からこられたかたであると信じます」。
16:31> イエスは答えられた、「あなたがたは今信じているのか。
16:32> 見よ、あなたがたは散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとりだけ残す時が来るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父がわたしと一緒におられるのである。
16:33> これらのことをあなたがたに話したのは、わたしにあって平安を得るためである。あなたがたは、この世ではなやみがある。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている」。

第一七章
17:01> れらのことを語り終えると、イエスは天を見あげて言われた、「父よ、時がきました。あなたの子があなたの栄光をあらわすように、子の栄光をあらわして下さい。
17:02> あなたは、子に賜ったすべての者に、永遠の命を授けさせるため、万民を支配する権威を子にお与えになったのですから。
17:03> 永遠の命とは、唯一の、まことの神でいますあなたと、また、あなたにつかわされたイエス・キリストとを知ることであります。
17:04> わたしは、わたしにさせるためにお授けになったわざをなし遂げて、地上であなたの栄光をあらわしました。
17:05> 父よ、世が造られる前に、わたしがみそばで持っていた栄光で、今み前に、わたしを輝かせて下さい。
17:06> わたしは、あなたが世から選んでわたしに賜った人人に、み名をあらわしました。彼らはあなたのものでありましたが、わたしに下さいました。そして、彼らはあなたの言葉を守りました。
17:07> いま彼らは、わたしに賜ったものはすべて、あなたから出たものであることを知りました。
17:08> なぜなら、わたしはあなたからいただいた言葉を彼らに与え、そして彼らはそれを受け、わたしがあなたから出たものであることをほんとうに知り、また、あなたがわたしをつかわされたことわ信じるに至ったからです。
17:09> わたしは彼らのためにお願いします。わたしがお願いするのは、この世のためではなく、あなたがわたしに賜った者たちのためです。彼らはあなたのものなのです。
17:10> わたしのものは皆あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼らによって栄光を受けました。
17:11> わたしはもうこの世にはいなくなりますが、彼らはこの世に残っており、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに賜った御名によって彼らを守って下さい。それはわたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。
17:12> わたしが彼らと一緒にいた間は、あなたからいただいた御名によって彼らを守り、また保護してまいりました。彼らのうち、だれも滅びず、ただ滅びの子だけは滅びました。それは聖書が成就するためでした。
17:13> 今わたしはみもとに参ります。そして世にいる間にこれらのことを語るのは、わたしの喜びが彼らのうちに満ちあふれるためであります。
17:14> わたしは彼らに御言を与えましたが、世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないいように、彼らも世のものでないからです。
17:15> わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、彼らを悪しき者から守って下さることであります。
17:16> わたしが世のものでないように、彼らももた世のものではありません。
17:17> 真理によって彼らを聖別して下さい。あなたの御言は真理であります。
17:18> あなたがわたしを世につかわされたように、わたしも彼らを世につかわしました。
17:19> また彼らが真理によって聖別されるように、彼らのためわたし自身を聖別いたします。
17:20> わたしは彼らのためばかりではなく、彼らの言葉を聞いてわたしを信じている人々のためにも、お願いいたします。
17:21> 父よ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなの者が一つとなるためであります。すなわち、彼らをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、世が信じるようになるためであります。
17:22> わたしは、あなたからいだいた栄光を彼らにも与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。
17:23> わたしが彼らにおり、あなたがわたしにいますのは、彼らが完全に一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしを愛されたように、彼らお愛しになったことを、世が知るためであります。
17:24> 父よ、あなたがわたしに賜った人々が、わたしのいる所に一緒にいるようにして下さい。
17:25> 正しい父よ、この世はあなたを知っていません。しかし、わたしはあなたを知り、また彼らも、あなたがわたしをおつかわしになったことを知っています。
17:26> そしてわたしは彼らに御名を知らせました。またこれからも知らせましょう。それは、あなたがわたしを愛して下さったその愛が彼らのうちにあり、またわたしも彼らのうちにおるためであります」。

第一八章
18:01> イエスはこれらのことを語り終えて、弟子たちと一緒にケデロンの谷の向こうへ行かれた。そこには園があって、イエスは弟子たちと一緒にその園の中にはいられた。
18:02> イエスを裏切ったユダは、その所をよく知っていた。イエスと弟子たちとがたびたびそこに集まったことがあるからである。
18:03> さてユダは、一隊の兵卒と祭司長やパリサイ人たちの送った下役どもを引き連れ、たいまつやあかりや武器を持って、そこへやってきた。
18:04> しかしイエスは、自分の身に起ころうとすることをことごとく承知しておられ、進み出て彼らに言われた、「だれを捜しているのか」。
18:05> 彼らは「ナザレのイエスを」と答えた。
18:06> イエスは彼らに言われた、「わたしが、それである」。イエスを裏切ったユダも、彼らと一緒に立っていた。イエスが彼らに「わたしが、それである」と言われたとき、彼らはうしろに引きさがってちに倒れた。
18:07> そこでまた彼らに、「だれを捜しているのか」とお尋ねになると、彼らは「ナザレのイエスを」と言った。
18:08> イエスは答えられた、「わたしがそれであると、言ったではないか。わたしを捜しているのなら、この人たちを去らせてもらいたい」。
18:09> それは、「あなたが与えて下さった人たちの中のひとりも、わたしは失わなかった」とイエスの言われた言葉が、成就するためである。
18:10> シモン・ペテロは剣を持っていたが、それを抜いて、大祭司の僕に切りかかり、その右の耳を切り落した。その僕の名はマルコスであった。
18:11> すると、イエスはペテロに言われた、「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さった杯は、飲むべきではないか」。
18:12> それから一隊の兵卒やその千卒長やヤダヤ人の下役どもが、イエスを捕え、縛りあげて、
18:13> まずアンナスのところに引き連れて行った。彼はその年の大祭司カヤバのしゅうとであった。
18:14> カヤバは前に、ひとりの人が民のために死ぬのはよいことだと、ユダヤ人に助言した者であった。
18:15> シモン・ペテロともうひとりの弟子とが、イエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いであったので、イエスと一緒に大祭司の中庭にはいった。
18:16> しかし、ペテロは戸口で立っていた。すると大祭司の知り合いであるその弟子が、外に出て行って門番の女に話、ペテロを内に入れてやった。
18:17> すると、この門番の女がペテロに言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではありませんか」。ペテロは、「いや、そうではない」と答えた。
18:18> 僕や下役どもは、寒い時であったので、炭火をおこし、そこに立ってあたっていた。ペテロもまた彼らに交じり、立ってあたっていた。
18:19> 大祭司はイエスに、弟子たちのことやイエスの教えのことを尋ねた。
18:20> イエスは答えられた、「わたしはこのよに対して公然と語ってきた。すべてのユダヤ人が集まる会堂や宮で、いつも教えていた。何事も隠れて語ったことはない。
18:21> なぜ、わたしに尋ねるのか。わたしが彼らに語ったことは、それを聞いた人々に尋ねるがよい。わたしの言ったことは、彼らが知っているのだから」。
18:22> イエスがこう言われると、そこに立っていた下役のひとりが、「大祭司にむかって、そのような答をするのか」と言って、平手でイエスを打った。
18:23> イエスは答えられた、「もしわたしが何か悪いことを言ったのなら、その悪い理由を言いなさい。しかし、正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか」。
18:24> それからアンナスは、イエスを縛ったまま大祭司のカヤバのところへ送った。
18:25> シモン・ペテロは、立って火にあたっていた。すると人々が彼に言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではないか」、彼はそれをうち消して、「いや、そうではない」と言った。
18:26> 大祭司の僕のひとりで、ペテロに耳を切りおとされた人の親族の者が言った、「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たではないか」。
18:27> ペテロはまたそれを打ち消した。するとすぐに、鶏が鳴いた。
18:28> それから人々は、イエスをカヤパのところから官邸につれて行った。時は夜明けであった。彼らは、けがれを受けないで過越の食事ができるように、官邸にはいらなかった。
18:29> そこで、ピラトは彼らのところに出てきて言った、「あなたがたは、この人に対してどんな訴えを起こすのか」。
18:30> 彼らはピラトに答えて言った、「もしこの人が悪事をはたらかなかったなら、あなたに引き渡すようなことはしなかったでしょう」。
18:31> そこでピラトは彼らに言った、「あなたがたは彼を引き取って、自分たちの律法でさばくがよい」。ユダヤ人らは彼に言った、「わたしたちには、人を死刑にする権限がありません」。
18:32> これは、ご自身がどんな死にかたをするかを示すために言われたイエスの言葉が成就するためである。
18:33> さて、ピラトはまた官邸にはいり、イエスを呼び出して言った、「あなたは、ユダヤ人の王であるか」。
18:34> イエスは答えられた、「あなたがそう言うのは、自分の考えからか。それともほかの人々が、わたしのことをあなたにそう言ったのか」。
18:35> ピラトは答えた、「わたしはユダヤ人なのか。あなたの同族や祭司長たちが、あなたをわたしに引き渡しのだ。あなたは、いったい、何をしたのか」。
18:36> イエスは答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであれば、わたしに従っている者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったであろう。しかし事実は、わたしの国はこの世のものではない」。
18:37> そこでピラトはイエスに言った、「それでは、あなたは王なのだな」。イエスは答えられた、「あなたの言うとおり、わたしは王である。わたしは真理についてあかしをするために生まれ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」。
18:38> ピラトはイエスに言った、「真理とは何か」。こう言って、彼はまたユダヤ人の所に出て行き、彼らに言った、「わたしは、この人になんの罪も見いだせない。
18:39> 過越の時には、わたしがあなたがたのために、ひとりの人を許してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ人の王を許してもらいたいのか」。
18:40> すると彼らは、また叫んで「その人ではなく、バラバを」と言った。このバラバは強盗であった。

第一九章
19:01> そこでピラトは、イエスを捕らえ、むち打たせた。
19:02> 兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、
19:03> それからその前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。
19:04> するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。
19:05> イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。
19:06> 祭司長たちや下役どもはイエスを見ると、叫んで「十字架につけよ、十字架につけよ」と言った。ピラトは彼らに言った、「あなたがたが、この人を引き取って十字架につけるがよい。わたしは、かれにはなんの罪も見いだせない」。
19:07> ユダヤ人たちは彼に答えた、「わたしたちには律法があります。その律法によれば、彼は自分を神の子としたのだから、死罪に当たる者です」。
19:08> ピラトがこの言葉を聞いたとき、ますますおそれ、
19:09> もう一度官邸にはいってイエスに言った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかしイエスはなんの答もなさらなかった。
19:10> そこでピラトは言った、「何も答えないのか。わたしには、あなたを許す権威があり、また十字架にかける権威があることを知らないのか」。
19:11> イエスは答えられた、「あなたは、上から賜るものでなければ、わたしに対してなんの権威もない。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪は、もっと大きい」。
19:12> これを聞いて、ピラトはイエスを許そうと努めた。しかしユダヤ人たちが叫んで言った、「もしこの人を許したなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王とするものはすべて、カイザルにそむく者です」。
19:13> ピラトはこの言葉を聞いて、イエスを外へ引き出して行き、敷石(ヘブル語ではガバタ)という場所で裁判の席についた。
19:14> その日は過越の準備の日であって、時は昼の十二時ころであった。ピラトはユダヤ人らに言った、「見よ、これがあなたがたの王だ」。
19:15> すると彼らは叫んだ、「殺せ、殺せ、彼を十字架につけよ」。ピラトは彼らに言った、「あなたがたの王をわたしが十字架につけるのか」。祭司長たちは答えた、「わたしたちには、カイザル以外には王はありません」。
19:16> そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。彼らはイエスを引き取った。
19:17> イエスはみずから十字架を背負って、されこうべ(ヘブル語ではゴルゴタ)という場所に出て行かれた。
19:18> 彼らはそこで、イエスを十字架につけた。イエスをまん中にして、ほかのふたりの者を両側に、イエスと一緒に十字架につけた。
19:19> ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上にかけさせた。それには「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いてあった。
19:20> イエスが十字架にかけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシャの国語で書いてあった。
19:21> ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った、「『ユダヤ人の王』と書かずに、『この人は、ユダヤ人の王と自称していた』と書いてほしい」。
19:22> ピラトは答えた、「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。
19:23> さて、兵卒たちはイエスを十字架につけてから、その上着をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。
19:24> そこで彼らは互いに言った、「それを裂かないで、だれのものになるか、くじを引こう」。これは、「彼らは互いにわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引きにした」という聖書が成就するためで、兵卒たちはそのようにしたのである。
19:25> さてイエスの十字架のそばには、イエスの母と、母の姉妹と、クロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。
19:26> イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よごらんなさい。これはあなたの子です」。
19:27> そこからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った。
19:28> そののち、イエスは今や万事が終わったことを知って、「わたしは、かわく」と言われた。それは、聖書が全うされるためであった。
19:29> そこに、酢いぶどう酒がいっぱい入れてある器がおいてあったので、人々は、このぶどう酒を含ませた海綿をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口もとにさし出した。
19:30> すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終わった」と言われた、首をたれて息をひきとられた。
19:31> さてユダヤ人たちは、その日が準備の日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておくまいと、(特にその安息日は大事な日であったから)、ピラトに願って、足を折った上で、死体を取りおろすことにした。
19:32> そこで兵卒らがきて、イエスと一緒に十字架につけられた初めの者と、もうひとりの者との足を折った。
19:33> しかし、彼らがイエスのところにきた時、イエスはもう死んでおられるのを見て、その足を折ることはしなかった。
19:34> しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。
19:35> それを見た者があかしをした。そして、そのあかしは真実である。その人は、自分が真実を語っていることを知っている。それは、それはあなたがたも信じるようになるためである。
19:36> これらのことが起こったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。
19:37> また聖書のほかのところに、「彼らは自分が刺し通した者を見るであろう」とある。
19:38> そののち、ユダヤ人をはばかって、ひそかにイエスの弟子となったアリマタヤのヨセフという人が、イエスの死体を取りおろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼はイエスの死体を取りおろしに行った。
19:39> また、前に、夜、イエスのみもとに行ったニコデモも、没薬と沈香とをまぜたものを百斤ほど持ってきた。
19:40> 彼らは、イエスの死体を取りおろし、ユダヤ人の埋葬の習慣にしたがって、香料を入れて亜麻布で巻いた。
19:41> イエスが十字架にかけられた所には、一つの園があり、そこにはまだだれも葬られたことのない新しい墓があった。
19:42> その日はユダヤ人の準備の日であったので、その墓が近くにあったため、イエスをそこに納めた。

第二0章
20:01> さて、一週の初めの日に、朝早くまだ暗いうちに、マグダラのマリヤが墓に行くと、墓から石が取りのけてあるのを見た。
20:02> そこで走って、シモン・ペテロとイエスが愛しておられた、もうひとりの弟子のところへ行って、彼らに言った、「だれかが、主を墓から取り去りました。どこへ置いたのか、わかりません」。
20:03> そこでペテロともうひとりの弟子は出かけて、墓へむかって行った。
20:04> ふたりは一緒に走り出したが、そのもうひとりの弟子の方が、ペテロよりも早く走って先に墓に着き、
20:05> そして身をかがめてみると、亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、中へははいらなかった。
20:06> シモン・ペテロも続いてきて、墓の中へはいった。彼は亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、
20:07> イエスの頭に巻いてあった布は亜麻布のそばにはなくて、はなれた別の場所にくるめてあった。
20:08> すると、先に先に墓に着いたもうひとりの弟子もはいってきて、これを見て信じた。
20:09> しかし、彼らは死人のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした聖句を、まだ悟っていなかった。
20:10> それから、ふたりの弟子たちは自分の家に帰って行った。
20:11> しかし、マリヤは墓の外に立って泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中をのぞくと、
20:12> 白い衣を着たふたりの御使が、いえすの死体のおかれていた場所に、ひとりは頭の方に、ひとりは足の方に、すわっているのを見た。
20:13> すると、彼らはマリヤに、「女よ、なぜ泣いているのか」と言った。マリヤは彼らに言った、「だれかが、わたしの主を取り去りました。そして、どこに置いたのか、わからないのです」。
20:14> そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。
20:15> イエスは女に言われた、「女よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」。マリヤは、その人が園の番人だと思って言った、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、ぞうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」。
20:16> イエスは彼女に「マリヤよ」と言われた。マリヤはふり返って、イエスにむかってヘブル語で「ラボニ」と言った。それは、先生という意味である。
20:17> イエスは彼女に言われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ父のみもとに上がっていないのだから。ただ、わたしの兄弟たちの所に行って、『わたしは、わたしの父またはあなたがたの父であって、わたしの神またはあなたがたの神であられるかたのみもとへ上がって行く』と、彼らに伝えなさい」。
20:18> マグダラのマリヤは弟子たちのところに行って、自分が主に会ったこと、またイエスがこれこれのことを自分に仰せになったことを、報告した。
20:19> その日、すなわち、一周の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人をおそれて、自分たちのおる所の戸をみなしめていると、イエスがはいってきて、彼らの中に立ち、「安かれ」と言われた。
20:20> そう言って、手とわきとを、彼らにお見せになった。弟子たちは主を見て喜んだ。
20:21> イエスはまた彼らに言われた、「安かれ。父がわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。
20:22> そう言って、彼らに息を吹きかけて仰せになった、「聖霊を受けよ。あなたがたが許す罪は、だれの罪でもゆるされ、
20:23> あなたがたがゆるさずにおく罪は、そのまま残るであろう」。
20:24> 十二弟子のひとりで、デドモと呼ばれているトマスは、イエスがこられたとき、彼らと一緒にいなかった。
20:25> ほかの弟子たちが、彼に「わたしたちは主にお目にかかった」と言うと、トマスは彼らに言った、「わたしはその手に釘のあとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、また、わたしの手をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない」。
20:26> 八日の後、イエスの弟子たちはまた家の内におり、トマスも一緒にいた。戸はみな閉ざされていたが、イエスがはいってこられ、中に立って「安かれ」と言われた。
20:27> それからトマスに言われた、「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手をのばしてわたしのわきにさし入れてみなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」。
20:28> トマスはイエスに答えて言った、「わが主よ、わが神よ」。
20:29> イエスは彼に言われた、「あなたはわたしを見たので信じたのか。見ないで信ずる者は、さいわいである」。
20:30> イエスは、この書に書かれていないしるしを、ほかにも多く、弟子たちの前で行われた。
20:31> しかし、これらのことを書いたのは、あなたがたがイエスは神の子キリストであると信じるためであり、また、そう信じて。イエスの名によって命を得るためである。

第二一章
21:01> そののち、イエスはデベリヤの海辺で、ご自身をまた弟子たちにあらわされた。そのあらわれた次第は、こうである。
21:02> シモン・ペテロが、デドモと呼ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベタイの子らや、ほかのふたりの弟子たちと一緒にいた時のことである。
21:03> シモン・ペテロは彼らに「わたしは漁に行くのだ」と言うと、彼らは「わたしたちも一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って船に乗った。しかし、その夜はなんの獲物もなかった。
21:04> 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。
21:05> イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。
21:06> すると、イエスは彼らに言われた、「船の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。
21:07> イエスを愛しておられた弟子が、ペテロに「あれは主だ」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸になっていたため、上着をまとって海にとびこんだ。
21:08> しかし、ほかの弟子たちは船に乗ったまま、魚のはいっている網を引きながら帰って行った。陸からあまり遠くない五十間ほどの所にいたからである。
21:09> 彼らが陸に上って見ると、炭火がおこしてあって、その上に魚がのせてあり、またそこにパンがあった。
21:10> イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」。
21:11> シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。
21:12> イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子たちは主であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。
21:13> イエスはそこにきて、パンをとり彼らに与え、また魚も同じようにされた。
21:14> イエスが死人の中からよみがえったのち、弟子たちにあらわれたのは、これで既に三度目である。
21:15> 彼らは食事をすませると、イエスはシモン・ペテロに言われた、「ヨハネの子シモンよ、あなたはこの人たちが愛する以上に、わたしを愛するか」。ペテロは言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に「わたしの小羊を養いなさい」と言われた。
21:16> またもう一度彼に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。彼はイエスに言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を飼いなさい」。
21:17> イエスは三度目に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。ペテロは「わたしを愛するか」と三度も言われたので、心をいためてイエスに言った、「主よ、あなたはすべをご存じです。わたしがあなたを愛していることは、おわかりになっています」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を養いなさい。
21:18> よくよくあなたに言っておく。あなたが若かった時には、自分で帯をしめて、思いのまま歩きまわっていた。しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう」。
21:19> これは、ペテロがどんな死に方で、神の栄光をあらわすかを示すために、お話になったのである。こう話してから、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
21:20> ペテロはふり返ると、イエスの愛しておられた弟子がついて来るのを見た。この弟子は、あの夕食のときイエスの胸近くに寄りかかって、「主よ、あなたを裏切る者は、だれなのですか」と尋ねた人である。
21:21> ペテロはこの弟子を見て、イエスに言った、「主よ、この人はどうなのですか」。
21:22> イエスは彼に言われた、「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたになんの係わりがあるか。あなたは、わたしに従ってきなさい」。
21:23> こういうわけで、この弟子は死ぬことがないといううわさが、兄弟たちの間にひろまった。しかし、イエスは彼が死ぬことがないと言われたのではなく、ただ「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたにはなんの係わりがあるか」と言われただけである。
21:24> これらの事についてあかしをし、またこれらの事を書いたのは、この弟子である。そして彼のあかしが真実であることを、わたしたちは知っている。
21:25> イエスのなさったことは、このほかにもまだ数多くある。もしいちいち書きつけるならば、世界もその書かれた文書を納めきれないであろうと思う。

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使徒行伝

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

使徒行伝

第一章
01:01> テロピロよ、わたしは先に第一巻を著わして、イエスが行い、また教えはじめてから、
01:02> お撰びになった使徒たちに、聖霊によって命じたのち、天に上げられた日までのことを、ことごとくしるした。
01:03> イエスは苦難を受けたのち、自分の生きていることを数々の確かな証拠によって示し、四十日にわたってたびたび彼らに現れて神の国のことを語られた。
01:04> そして食事を共にしているとき、彼らにお命じになった、「エルサレムから離れないで、かねてわたしから聞いていた父の約束を待っているがよい。
01:05> すなわち、ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは間もなく聖霊によって、バプテスマを授けられるであろう」。
01:06> さて、弟子たちが一緒に集まったとき、イエスに問うて言った、「主よ、イスラエルのために国を復興なさるのは、この時なのですか」。
01:07> 彼らに言われた、「時期や場合は、父がご自分の権威によって定めておられるのであって、あなたがたの知る限りではない。
01:08> ただ、聖霊があなたがたにくだる時、あなたがたは力を受けて、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、さらに地のはてまで、わたしの証人となるであろう」。
01:09> こう言い終わると、イエスは彼らの見ている前で天に上げられ、雲に迎えられて、その姿が見えなくなった。
01:10> イエスの上って行かれるとき、彼らが天を見つめていると、見よ、白い衣を着た二人の人が、彼らのそばに立っていて
01:11> 言った、「ガリラヤの人たちよ、なぜ天を仰いで立っているのか。あなたがたを離れて天に上げられたこのイエスは、天に上っていかれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになるであろう」。
01:12>  それから彼らは、オリブという山を下ってエルサレムに帰った。この山はエルサレムに近く、安息日に許されている距離のところにある。
01:13> 彼らは、市内に行って、その泊まっていた屋上の間にあがった。その人たちは、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの子ヤコブと熱心党のシモンとヤコブの子ユダとであった。
01:14> 彼らはみな、婦人たち、特にイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちと共に、心を合わせて、ひたすら祈りをしていた。
01:15> そのころ、百二十名ばかりの人々が、一団となって集まっていたが、ペテロはこれらの兄弟の中に立って言った、
01:16> 「兄弟たちよ、イエスを捕らえた者のてびきになったユダについては、聖霊がダビデの口をとおして預言したその言葉は、成就しなければならなかった。
01:17> 彼はわたしたちの仲間に加えられ、この努めを授かった者であった。(
01:18> 彼は不義の報酬で、ある地所を手に入れたが、そこへまっさかさまに落ちて、腹がまん中から引き裂け、はらわたがみな流れ出てしまった。
01:19> そして、この事はエルサレムの全住民の知れわたり、そこで、この地所が彼らの国語でアケルダマと呼ばれるようになった。「血の地所」との意である。)
01:20> 詩編に、『その屋敷は荒れ果てよ、そこにはひとりの住む者がいなくなれ』と書いてあり、また『その職は、ほかの者に取らせよ』とあるとおりである。
01:21> そういうわけで、主イエスが私たちの間にゆききされた期間中、
01:22> すなわち、ヨハネのバプテスマの時から始まって、わたしたちと行動を共にした人たちのうち、だれかひとりが、わたしたちに加わって主の復活の証人にならねばならない」。
01:23> そこで一同は、バルサバと呼ばれ、またの名をユストというヨセフと、マッテヤとのふたりを立て、
01:24> 祈って言った、「すべての人の心をご存じである主よ。このふたりのうちでどちらを選んで、
01:25> ユダがこの使徒の職務から落ちて、自分の行くべきところへ行ったそのあとを継がせなさいますか、お示し下さい」。
01:26> それから、ふたりのためにくじを引いたところ、マッチヤに当たったので、この人が十一人の使徒たちに加えられることになった。

第二章
02:01> 五旬節の日がきて、みんなの者が一緒に集まっていると、
02:02> 突然、激しい風が吹いてきたような音が天から起こってきて、一同がすわっていた家いっぱいに響きわたった。
02:03> また、舌のようなものが、炎のように分かれて現れ、ひとりひとりの上にとどまった。
02:04> すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろ他国の言葉で語りだした。
02:05> さて、エルサレムには、天下のあらゆる国々から、信仰深いユダヤ人たちがきて住んでいたが、
02:06> この物音に大ぜいの人が集まってきて、彼らの生まれ故郷の国語で、使徒たちが話しているのを、だれもかれも聞いてあっけに取られた。
02:07> そして驚き怪しんで言った、「見よ、いま話しているこの人たちは、皆ガリラヤ人ではないか。
02:08> それだのに、わたしたちがそれぞれ、生れ故郷の国語を彼らから聞かされるとは、いったい、どうとたことか。
02:09> わたしちの中には、パルテヤ人、メジヤ人、エラム人もおれば、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、
02:10> フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに近いリビヤ地方などに住む者もいるし、またローマ人で旅にきている者、
02:11> ユダヤ人と改宗者、クレテ人とアラビヤ人もいるのだが、あの人々がわたしたちの国語で、神の大きな働きを述べるのを聞くとは、どうしたことか」。
02:11> みんなの者は驚き惑って、互いに言い合った、「これは、いったい、どういうわけなのだろう」。
02:13> しかし、ほかの人たちはあざ笑って、「あの人たちは新しい酒で酔っているのだ」と言った。
02:14> そこで、ペテロは十二人の者と共に立ちあがり、声をあげて人々に語りかけた。
 「ユダヤの人たち、ならびにエルサレムに住むすべてのかたがた、どうか、この事を知っていただきたい。わたしの言うことに耳を傾けていただきたい。
02:15> 今は朝の九時であるから、この人たちは、あなたがたが思っているように。酒に酔っているのではない。
02:16> そうではなく、これは預言者ヨエルが預言していたことに外ならないのである。すなわち、
02:17> 『神がこう仰せになる。終わりの時には、わたしの霊をすべての人に注ごう。そして、あなたがたのむすこは娘は預言をし、若者たちは幻を見、老人たちは夢を見るであろう。
02:18> その時には、わたしの男女の僕たちにもわたしの霊を注ごう。そして彼らも預言するであろう。
02:19> また、上では、天に奇跡を見せ、下では、地にしるしを、すなわち、血と火と立ちこめる煙とを、見せるであろう。
02:20> 主が大いなる輝かしい日が来る前に、日はやみに月は血に変わるであろう。
02:21> そのときに、主の名を呼び求める者は、みな救われるであろう』。
02:22> イスラエルの人たちよ、今わたしの語ることを聞きなさい。あなたがたがよく知っているとおり、ナザレ人イエスは、神が彼をとおして、あなたがたの中で行われた数々の力あるわざと奇跡としるしとにより、神かにつかわされた者であることを、あなたがたに示されたかたであった。
02:23> このイエスが渡されたのは神の定めた計画と予知とによるのであるが、あなたがたは彼を不法の人人の手で十字架につけて殺した。
02:24> 神はこのイエスを死の苦しみから解き放って、よみがえらせたのである。イエスが死に支配されているはずはなかったからである。
02:25> ダビデはイエスについてこう言っている、『わたしは常に目の前に主を見た。主は、わたしが動かされないため、わたしの右にいて下さるからである。
02:26> それゆえ、わたしの心は楽しみ、わたしの舌はよろこび歌った。わたしの肉体もまた、望みに生きるであろう。
02:27> あなたは、わたしの魂を黄泉に捨ておくことをせず、あなたの聖者が朽ち果てるのを、お許しにならないであろう。
02:28> あなたは、いのちの道をわたしに示し、み前にあって、わたしを喜びで満たして下さるであろう』。
02:29> 兄弟たちよ、族長ダビデについては、わたしたちはあなたがたにむかって大胆に言うことができる。彼は死んで葬られ、現にその墓が今日に至るまで、わたしたちの間に残っている。
02:30> 彼は預言者であって、『その子孫のひとりを王位につかせよう』と、神が堅く彼に誓われたことを認めていたので、
02:31> キリストの復活をあらかじめ知って、『彼は黄泉に捨ておかれることがなく、またその肉体が朽ち果てることもない』と語ったのである。
02:32> このイエスを、神はよみがえらせた。そして、わたしたちは皆その証人なのである。
02:33> それで、イエスは神の右に上げられ、父から約束の聖霊を受けて、それをわたしたちに注がれたのである。このことは、あなたがたが現に見聞きしているとおりである。
02:34> ダビデが天に上ったのではない。彼自信こう言っている、『主はわが主に仰せになった、
02:35> あなたの敵をあなたの足台にするまでは、わたしの右に座していなさい』。
02:36> だから、イスラエルの全家は、この事をしかと知っておくがよい。あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は、主またキリストとしてお立てになったのである」。
02:37> 人々はこれを聞いて、強く心を刺され、ペテロやほかの使徒たちに、「兄弟たちよ、わたしたちは、どうしたらようのでしょうか」と言った。
02:38> すると、ペテロが答えた、「悔い改めなさい。そして、あなたがたひとりびとりが罪のゆるしを得るために、イエス・キリストの名によって、バプテスマをうけなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊の賜物を受けるであろう。
02:39> この約束は、われらの主なる神の召しにあずかるすべての者、すなわちあなたがたと、あなたがたの子らと、遠くの者一同とに、与えられているものである」。
02:40> ペテロは、ほかになお多くの言葉であかしをなし、人々に「この曲がった時代から救われよ」と言って勧めた。
02:41> そこで、彼の勧めの言葉を受けいれた者たちは、バプテスマを受けたが、その日、仲間に加わったものが三千人ほどであった。
02:42> そして一同はひたすら、使徒たちの教えを守り、信徒の交わりをなし、共にパンをさき、祈りをしていた。
02:43> みんなの者におそれの念が生じ、多くの奇跡としるしとが、使徒たちによって、次々に行われた。
02:44> 信者たちはみな一緒にいて、いっさいのものを共有にし、
02:45> 資産や持ち物を売っては、必要に応じてみんなの者に分け与えた。
02:46> そして日々心を一つにして、絶えず宮もうでをなし、家ではパンをさき、よろこびと、まごころとをもって、食事を共にし、
02:47> 神をさんびし、すべての人に好意を持たれていた。そして主は、救われる者を日々仲間に加えて下さったのである。

第三章
03:01> さて、ペテロとヨハネとが、午後三時の祈りの時に宮に上ろうとしていると、
03:02> 生まれながら足のきかない男が、かかえられてきた。この男は、宮もうでに来る人々に施しをこうため、毎日、「美しの門」と呼ばれる宮の門のところに、置かれていた者である。
03:03> 彼は、ペテロとヨハネとが、宮にはいって行こうとしているのを見て、施しをこうた。
03:04> ペテロとヨハネとは彼をじっと見て、「わたしたちを見なさい」と言った。
03:05> 彼は何かもらえのだろうと期待して、ふたりに注目していると、
03:06> ペテロが言った、「金銀はわたしには無い。しかし、わたしにあるものをあげよう。ナザレ人イエス・キリストの名によって歩きなさい」。
03:07> こう言って彼の右手を取って起こしてやると、足と、くるぶしとが、立ちどころに強くなって、
03:08> 踊りあがって立ち、歩き出した。そして、歩き回ったり踊ったりして神をさんびしんがら、彼らと共に宮にはいって行った。
03:09> 民衆はみな、彼が歩き回り、また神をさんびしているのを見、
03:10> これが宮の「美しの門」のそばにすわって、施しをこうていた者であると知り、彼の身に起こったことについて、驚き怪しんだ。
03:11> 彼がなおもぺてろとヨハネとにつきまとっていると、人々は皆ひどく驚いて、「ソロモンの廊」と呼ばれる柱廊にいた彼らのところに駆け集まってきた。
03:12> ペテロはこれを見て、人々に向かって言った、「イスラエルの人たちよ、なぜこの事を不思議に思うのか。また、わたしたちが自分の力や信心で、あの人を歩かせたかのように、なぜわたしたちを見つめているのか。
03:13> アブラハム、イサク、ヤコブの神、わたしたちの先祖の神は、その僕イエスに栄光を賜ったのであるが、
03:14> あなたがたは、このイエスを引き渡し、ピラトがゆるすことに決めていたのに、それを彼の面前で拒んだ。あなたがたは、この聖なる正しいかたを拒んで、人殺しの男をゆるすように要求し、
03:15> いのちの君を殺してしまった。しかし、神はこのイエスを死人の中から、よみがえらせた。わたしたちは、その事の証人である。
03:16> そして、イエスの名が、それを信じる信仰のゆえに、あなたがたのいま見て知っているこの人を、強くしたのであり、イエスによる信仰が、彼をあなたがた一同の前で、このとおりに完全にいやしたのである。
03:17> さて、兄弟たちよ、あなたがたは知らずにあのような事をしたのであり、あなたがたの指導者たちとても
同様であったことは、わたしにわかっている。
03:18> 神はあらゆる預言者の口をとおして、キリストの受難を予告しておられたが、それをこのように成就なさったのである。
03:19> だから、自分の罪をぬぐい去っていただくために、悔い改めて本心に立ちかえりなさい。
03:20> それは、主のみ前から慰めの時がきて、あなたがたのためにあらかじめ定めてあったキリストなるイエスを、神がつかわして下さるためである。
03:21> このイエスは、神が聖なる預言者たちの口をとおして、昔から預言しておられた万物更新の時まで、天にとどめておかなければならなかった。
03:22> モーセは言った、『主なる神は、わたしをお立てになったように、あなたがたの兄弟の中から、ひとりの預言者をお立てになるであろう。その預言者があなたがたに語ることには、ことごとく聞きしたがいなさい。
03:23> 彼に聞きしたがわない者は、みな民の中から滅ぼし去られるであろう』。
03:24> サムエルをはじめ、その後つづいて語ったほどの預言者はみな、この時のことを予告した。
03:25> あなたがたは預言者の子であり、神があなたがたの先祖たちと結ばれた契約の子であり、神はアブラハムに対して、『地上の諸民族は、あなたの子孫によって祝福を受けるであろう』と仰せられた。
03:26> 神がまずあなたがたのために、その僕を立てて、おつかわしになったのは、あなたがたひとりびとりを、悪から立ちかえらせて、祝福にあずからせるためなのである」。

第四章
04:01> 彼らが人々にこのように語っているあいだに、祭司たち、宮守がしら、サドカイ人たちが近寄ってきて、
04:02> 彼らが人々に教えを説き、イエス自身に起こった死人の復活を宣伝しているのに気をいら立て、
04:03> 彼らに手をかけて捕らえ、はや日が暮れていたので、翌朝まで留置しておいた。
04:04> しかし、彼らの話を聞いた多くの人たちは信じた。そして、その男の数が五千人ほどになった。
04:05> 明くる日、役人、長老、律法学者たちが、エルサレムに召集された。
04:06> 大祭司アンナスをはじめ、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司の一族もみな集まった。
04:07> そして、そのまん中に使徒たちを立たせて尋問した、「あなたがたは、いったい、なんの権威、また、だれの名によって、このことをしたのか」。
04:08> その時、ペテロが聖霊に満たされて言った、「民の役人たち、ならびに長老たちよ、
04:09> わたしたちが、きょう、取調べを受けているのは、病人に対してした良いわざについてであり、この人がどうしていやされたかについてであろなら、
04:10> あなたがた一同も、またイスラエルの人々全体も、知っていたもらいたい。この人が元気になってみんなの前に立っているのは、ひとえに、あなたがたが十字架につけて殺したのを、神が死人の中からよみがえらせたナザレ人イエス・キリストの御名によるのである。
04:11> このイエスこそは『あなたがた家造りらに捨てられたが、隅のかしら石になった石』なのである。
04:12> この人による以外には救いはない。わたしたちを救いうる名は、にれを別にしては、天下のだれにも与えられていないからである」。
04:13> 人々はペテロとヨハネとの大胆な話ぶりを見、また同時に、ふたりが無学な、ただの人たちであることを知って、不思議に思った。そして彼らがイエスと共にいた者であることを認め、
04:14> かつ、彼らにいやされた者がそのばに立っているのを見ては、まったく返す言葉がなかった。
04:15> そこで、ふたりに議会から退場するように命じてから、互いに協議をつづけて
04:16> 言った、「あの人たちを、どうしたらよかろうか。彼らによって著しいしるしが行われたことは、エルサレムの住民全体に知れわたっているので、否定しようもない。
04:17> ただ、これ以上このことが民衆の間にひろまらないように、今後はこの名によって、いっさいだれにも語ってはいけないと、おどしてやろうではないか」。
04:18> そこで、ふたりを呼び入れて、イエスの名によって語ることも説くことも、いっさい相成らぬと言いわたした。
04:19> ペテロとヨハネとは、これに対して言った、「神に聞き従うよりも、あなたがたに聞き従う方が、神の前に正しいかどうか、判断してもらいたい。
04:20> わたしたちとしては、自分の見たこと聞いたことを、語らないわけにはいかない」。
04:21> そこで、彼らはふたりを更におどしたうえ、ゆるしてやった。みんなの者が、この出来事のために、神をあがめていたので、その人々の手前、ふたりを罰するすべがなかったからである。
04:22> そのしるしによっていやされたのは、四十歳あまりの人であった。
04:23> ふたりはゆるされてから、仲間たちのところに帰って、祭司長たちや長老たちが言ったいっさいのことを報告した。
04:24> 一同はこれを聞くと、口をそろえて、神にむかっい声をあげて言った、「天と地と海と、その中のすべてのものとの造りぬしなる主よ。
04:25> あなたは、わたしたちの先祖、あなたの僕ダビデの口をとおして、聖霊によって、こう仰せになりました、『なぜ、異邦人らは、騒ぎ立ち、もろもろの民は、むなしいことを図り、
04:26> 地上の王たちは、立ちかまえ、支配者たちは、党を組んで、主とそのキリストとに逆らったのか』。
04:27> まことに、ヘロデとポンティオ・ピラトとは、異邦人らやイスラエルの民と一緒になって、この都に集まり、あなたから油を注がれた聖なる僕イエスに逆らい。
04:28> み手とみ旨とによって、あらかじめ定められていたことを、なし遂げたのです。
04:29> 主よ、いま、彼らの脅迫に目をとめ、僕たちに、思い切って大胆に御言葉を語らせて下さい。
04:30> そしてみ手を伸ばしていやしをなし、聖なる僕イエスの名によって、しるしと奇跡とを行わせて下さい」。
04:31> 彼らが祈りを終えると、その集まっていた場所が揺れ動き、一同は聖霊に満たされて、大胆に神の言を語り出した。
04:32> 信じた者の群れは、心を一つにし思いを一つにして、だれひとりその持ち物を自分のものだと主張する者がなく、いっさいの物を共有にしていた。
04:33> 使徒たちは主イエスの復活について、非常に力強くあかしをした。そして大きなめぐみが、彼ら一同に注がれた。
04:34> 彼らの中に乏しい者は、ひとりもいなかった。地所や家屋を持っている人たちは、それを売り、売った物の代金をもってきて、
04:35> 使徒たちの足もとに置いた。そしてそれぞれの必要に応じて、だれにでも分け与えられた。
04:36> クプロ生まれのレビ人で、使徒たちにバルナバ(「慰めの子」との意)と呼ばれていたヨセフは、
04:37> 自分の所有する畑を売り、その代金をもってきて、使徒たちの足もとに置いた。

第五章
05:01> ところが、アナニヤという人とその妻サッピラとは共に資産を売ったが、
05:02> 共謀して、その代金をごまかし、一部だけを持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。
05:03> そこで、ペテロが言った、「アナニヤと、どうしてあなたは、自分の心をサタンに奪われて、聖霊を欺き、地所の代金をごまかしたのか。
05:04> 売らずに残しておけば、あなたのものであり、売ってしまっても、あなたの自由になったはずではないか。どうして、こんなことをする気になったのか。あなたは人を欺いたのではなくて、神を欺いたのだ」。
05:05> アナニヤはこの言葉を聞いているうちに、倒れて息が絶えた。このことを伝え聞いた人々は、みな非常なおそれを感じた。
05:06> それから、若者たちが立って、その死体を包み、運び出して葬った。
05:07> 三時間ばかりたってから、たまたま彼の妻が、この出来事を知らずに、はいってきた。
05:08> そこで、ペテロが彼女にむかって言った、「あの地所は、これこれの値段で売ったのか。そのとおりか」。彼女は「そうです、その値段です」と答えた。
05:09> ペテロは言った、「あなたがたあたりが、心を合わせて、主の御霊を試みるとは、何事であるか。見よ、あなたの夫を葬った人たちの足が、そこの門口にきている。あなたも運び出されるであろう」。
05:10> すると女は、たちまち彼の足もとに倒れて、息が絶えた。そこに若者たちがはいってきて、女がしんでしまっているのを見、それを運び出してその夫のそばに葬った。
05:11> 教会全体ならびにこれを伝え聞いた人たちは、みな非常に恐れを感じた。
05:12> そのころ、多くのしるしと奇跡とが、次々に使徒たちの手により人々の中で行われた。そして、一同は心を一つにして、ソロモンの廊に集まっていた。
05:13> ほかの者たちは、だれひとり、その交わりに入ろうとはしなかったが、民衆は彼らを尊敬していた。
05:14> しかし、主を信じて仲間に加わる者が、男女とも、ますます多くなってきた。
05:15> ついには、病人を大通りに運び出し、寝台や寝床の上に置いて、ペテロが通るとき、彼の影なりと、そのうちのだれかにかかるようにしたほどであった。
05:16> またエルサレム附近の町々からも、大ぜいの人が、病人や汚れた霊に苦しめられている人たちを引き連れて、集まってきたが、その全部の者が、ひとり残らずいやされた。
05:17> そこで、大祭司とその仲間の者、すなわち、サドカイ派の人たちが、みな嫉妬の念に満たされて立ちあがり、
05:18> 使徒たちに手をかけて捕らえ、公共の留置場に入れた。
05:19> ところが夜、主の使が獄の戸を開き、彼らを連れだして言った、
05:20> 「さあ行きなさい。そして、宮の庭に立ち、この命の言葉を漏れなく、人々に語りなさい」。
05:21> 彼らはこれを聞き、夜明けごろ宮にはいって教えはじめた。一方では、大祭司とその仲間の者とが、集まってきて、議会とイスラエルの長老一同とを召集し、使徒たちを引き出してこさせるために、人を獄につかわした。
05:22> そこで、下役どもが行って見ると、使徒たちが獄にいないので、引き返して報告した、
05:23> 「獄には、しっかりと錠がかけてあり、戸口には、番人が立っていました。ところが、あけて見たら、中にはだれもいませんでした」。
05:24> 宮守がしらと祭司長たちとは、この報告を聞いて、これは、いったい、どんな事になるのだろうと、あわて惑った。
05:25> そこへ、ある人がきて知らせた、「行ってごらんなさい。あなたがたが獄に入れたあの人たちが、宮の庭に立って、民衆に教えています」。
05:26> そこで宮守がしらが、下役どもと一緒に出かけて行って、使徒たちを連れてきた。しかし、人々に石で打ち殺されるのを恐れて、手荒なことはせず、
05:27> 彼らを連れてきて、議会の中に立たせた。すると、大祭司が問うて
05:28> 言った、「あの名を使って教えてはならないと、きびしく命じておいたではないか。それだのに、なんという事だ。エネサレム中にあなたがたの教を、はんらんさせている。あなたがたは確かに、あの人の血の責任をわたしたちに負わせようと、たくらんでいるのだ」。
05:29> これに対して、ペテロをはじめ使徒たちは言った、「人間に従うよりは、神に従うべきである。
05:30> わたしたちの先祖の神は、あなたがたが木にかけて殺したイエスをよみがえらせ、
05:31> そして、イスラエルを悔い改めさせてこれに罪のゆるしを与えるために、このイエスを導き手とし救主として、ご自身の右に上げられたのである。
05:32> わたしたちはこれらの事の証人である。神がご自身に聞き従う者に賜った聖霊もまた、その証人である」。
05:33> これを聞いた者たちは、激しく怒りのあまり、使徒たちを殺そうと思った。
05:34> ところが、国民全体に尊敬されていた律法学者ガマリエルというバリサイ人が、議会で立って、使徒たちをしばらくのあいだ外へ出すように要求してから、
05:36> 一同にむかって言った、「イスラエルの諸君、あの人たちをどう扱うのか、よく気をつけるがよい。先ごろ、チュダが起って、自分を何か偉い者のように言いふらしたため、彼に従った男の数が、四百人ほどもあったが、結局、彼は殺されてしまい、従った者もみな四散して、全く跡方もなくなっている。
05:37> そののち、人口調査の時に、ガリラヤ人ユダが民衆を率いて反乱を起こしたが、この人も滅び、従った者もみな散らされてしまった。
05:38> そこで、この際、諸君に申し上げる。あの人たちから手を引いて、そのなすままにしておきなさい。その企てや、しわざか、人間から出たものなら、自滅するだろう。
05:39> しかし、もし神から出たものなら、あの人たちを滅ぼすことはできまい。まかり違えば、諸君は神を敵にまわすことになるなも知れない」。そこで彼らはその勧告にしたがい、
05:40> 使徒たちを呼び入れて、むち打ったのち、今後イエスの名によって語ることは相成らぬと言いわたして、ゆるしてやった。
05:41> 使徒たちは、御名のために恥を加えるに足りぬ者とされたことを喜びながら、議会から出てきた。
05:42> そして、毎日、宮や家で、イエスがキリストであることを、引きつづき教えたり宣べ伝えたりした。

第六章
06:01> そのころ、弟子の数がふえてくるにつれて、ギリシャ語を使うユダヤ人たちから、ヘブル語を使うユダヤ人たちに対して、自分たちのやもめらが、日々の配給で、おろそかにされがちだと、苦情を申し立てた。
06:02> そこで、十二使徒は弟子全体を呼び集めて言った、「わたしたちが神の言をさしおいて、食卓のことに携わるのはおもしろくない。
06:03> そこで、兄弟たちよ、あなたがたの中から、御霊と知恵とに満ちた、評判のよい人たち七人を探し出してほしい。その人たちにこの仕事をまかせ、
06:04> わたしたちは、もっぱら祈りと御言のご用に当たることにしよう」。
06:05> この提案は会衆一同の賛成するところとなった。そして信仰と聖霊とに満ちた人ステハノ、それからピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、およびアンティオケの改宗者ニコラオを選び出して、
06:06> 使徒たちの前に立たせた。すると、使徒たちは祈って手を彼らの上においた。
06:07> こうして、神の言は、ますますひろまり、エルサレムにおける弟子の数が、非常にふえていき、祭司たちも多数、信仰を受けいれるようになった。
06:08> さて、ステパノは恵みと力とに満ちて、民衆の中で、めざましい奇跡としるしとを行っていた。
06:09> すると、いわゆる「リベルテン」の会堂に属する人々、クレネ人、アレキサンドリヤ人、キリキヤやアジヤからきた人々などが立って、ステパノと議論したが、
06:10> 彼は知恵と御霊とで語っていたので、それに対抗できなかった。
06:11> そこで、彼らは人々をそそのかして、「わたしたちは、彼がモーセと神とを汚す言を吐くのを聞いた」と言わせた。
06:12> その上、民衆や長老たちや律法学者たちを扇動し、彼を襲って捕えさせ、議会にひっぱってこさせた。
06:13> それから、偽りの証人たちを立てて言わせた、「この人は、この聖所と律法とに逆らう言葉を吐いて、どうしても、やめようとはしません。
06:14> 『あのナザレ人イエスは、この聖所を打ちこわし、モーセがわたしたちに伝えた慣例を変えてしまうだろう』などと、彼が言うのを、わたしたちは聞きました」。
06:15> 議会で席についていた人たちは皆、ステパノに目を注いだが、彼の顔は、ちょうど天使の顔のように見えた。

第七章
07:01> 大祭司は「そのとおりか」と尋ねた。
07:02> そこで、ステパノは言った、「兄弟たち、父たちよ、お聞き下さい。わたしたちの祖父アブラハムが、カナンに住む前、まだメソポタミヤにいたとき、栄光の神が彼に現れて、
07:03> 仰せになった、『あなたの土地と親族から離れて、あなたにさし示す地に行きなさい』。
07:04> そこで、アブセハムはカルデヤ人の地を出て、カランに住んだ。そして、彼の父が死んだのち、神は彼をそこから、今あなたがたの住んでいるこの地に移住させたが、
07:05> そこでは、遺産となるものは何一つ、一歩の幅の土地すらも、与えられなかった。ただ、その地を所領として授けようとの約束を、彼と、そして彼にはまだ子がなかったのに、その子孫とに与えられたのである。
07:06> 神はこう仰せになった、『彼の子孫は他国に身を寄せるであろう。そして、そこで四百年のあいだ、奴隷にされて虐待を受けるであろう』。
07:07> それから、さらに仰せになった、『彼らを奴隷にする国民を、わたしはさばくであろう。その後、彼らはそこからのがれ出て、この場所でわたしを礼拝するであろう』。
07:08> そして、神はアブラハムに、割礼の契約をお与えになった。こうして、彼はイサクの父となり、これに八日目に割礼を施し、それから、イサクはヤコブの父となり、ヤコブは十二の族長たちの父となった。
07:09> 族長たちは、ヨセフをねたんで、エジプトに売りとばした。しかし、神は彼と共にいまして、
07:10> あらゆる苦難から彼を救い出し、エジプト王パロの前で恵みを与え、知恵をあらわされた。そこで、パロは彼を宰相の任につかせ、エジプトならびに王家全体の支配に当たらせた。
07:11> 時に、エジプトとカナンとの全土にわたって、ききんが起こり、大きな苦難が襲ってきて、わたしたちの先祖たちは、食物が得られなくなった。
07:12> ヤコブは、エジプトには食糧があると聞いて、初めに先祖たちをつかわしたが、
07:13> 二回目の時に、ヨセフが兄弟たちに、自分の身の上を打ち明けたので、彼の親族関係がパロに知れてきた。
07:14> ヨセフは使をやって、父ヤコブと七十五人にのぼる親族一同とを招いた。
07:15> こうして、ヤコブはエジプトに下り、彼自身も先祖たちもそこで死に、
07:16> それから彼らは、シケムに移されて、かねてアブラハムがいくらかの金を出してこの地のハモルの子らから買っておいた墓に、葬られた。
07:17> 神がアブラハムに対して立てられた約束の時期が近づくにつれ、民はふえてエジプト全土にひろがった。
07:18> やがて、ヨセフのことを知らない別の王が、エジプトに起こった。
07:19> この王は、わたしたちの同族に対し策略をめぐらして、先祖たちを虐待し、その幼な子らを生かしておかないように捨てさせた。
07:20> モーセが生まれたのは、ちょうどこのころのことである。彼はまれに見る美しい子であった、三か月の間は、父の家で育てられたが、
07:21> そののち捨てられたのを、パロの娘が拾いあげて、自分の子として育てた。
07:22> モーセはエジプト人のあらゆる学問を教え込まれ、言葉にもわざにも、力があった。
07:23> 四十歳になった時、モーセは自分の兄弟であるイスラエル人たちために尽くすことを、思い立った。
07:24> ところが、そのひとりがいじめられているのを見て、これをかばい、虐待されているその人のために、相手のエジプト人を撃って仕返しをした。
07:25> 彼は、自分の手によって神が兄弟たちを救って下さることを、みんなが悟るものと思っていたが、実際はそれを悟らなかったのである。
07:26> 翌日モーセは、彼らが争い合っているところに現れ、仲裁しようとして言った、『まて、君たちは兄弟同志ではないか。どうして互いに傷つけ合っているのか』。
07:27> すると、仲間をいじめていた者が、モーセを突き飛ばして言った、『だれが、君をわれわれの支配者や裁判人にしたのか。
07:28> 君は、きのう、エジプト人を殺したように、わたしたちも殺そうと思っているのか』。
07:29> モーセはこの言葉を聞いて逃げ、ミデアンの地に身を寄せ、そこで男の子ふたりをもうけた。
07:30> 四十年たった時、シナイ山の荒野において、御使が柴の燃える炎の中でモーセに現れた。
07:31> 彼はこの光景を見て不思議に思い、それを見きわめるために近寄ったところ、主の声が聞こえてきた。
07:32> 『わたしは、あなたの先祖たちの神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である』。モーセは恐れおののいて、もうそれを見る勇気もなくなった。
07:33> すると、主が彼に言われた、『あなたの足から、くつを脱ぎなさい。あなたの立っているこの場所は、聖なる地である。
07:34> わたしは、エジプトにいるわたしの民が虐待されている有様を確かに見とどけ、その苦悩のうめき声を聞いたので、彼らを救い出すために下ってきたのである。さあ、今あなたをエジプトにつかわそう』。
07:35> こうして、『だれが、君を支配者ゆ裁判人にしたのか』と言って排斥されたこのモーセを、神は、柴の中で彼に現れた御使の手によって、支配者、解放者として、おつかわしになったのである。
07:36> この人が、人々を導き出して、エジプトの地においても、紅海においても、また四十年のあいだ荒野において、奇跡としるしとを行ったのである。
07:37> この人が、イスラエル人たちに、『神はわたしたちをお立てになったように、あなたがたの兄弟たちの中から、ひとりの預言者をお立てになるであろう』と言ったモーセである。
07:38> この人が、シナイ山で、彼に語りかけた御使や先祖たちと共に、荒野における集会にいて、生ける御言葉を授かり、それをあなたがたに伝えたのである。
07:39> ところが、先祖たちはかれに従おうとはせず、かえって彼を退け、心の中でエジプトにあこがれて、
07:40> 『わたとたちを導いてくれる神々を造って下さい。わたしたちをエジプトの地から導いてきたあのモーセがどうなったのか、わかりませんから』とアロンに言った。07:41> そのころ、彼らは子牛の像を造り、その偶像に供え物をささげ、自分たちの手で造ったものを祭ってうち興じていた。
07:42> そこで、神は顔をそむけ、彼らを天の星を拝むままに任せられた、預言者の書にこう書いてあるとおりである。『イスラエルの家よ、四十年のあいた荒野にいた時に、いけにえと供え物とを、わたしにささげたことがあったか。
07:43> あなたがたは、モロクの幕屋やロンパの星の神を、かつぎ回った。それらは、拝むために自分で造った偶像に過ぎぬ。だからわたしは、あなたがたをバビロンのかなたへ、移してしまうであろう』。
07:44> わたしたちの先祖には、荒野にあかしの幕屋があった。それは、見たままの型にしたがって造るようにと、モーセに語ったかたのご命令どおりに造ったものである。
07:45> この幕屋は、わたしたちの先祖が、ヨシュアに率いられ、神によって諸民族を彼らの前から追い払い、その所領をのり取ったときに、ダビデの時代に及んだものである。
07:46> ダビデは、神の恵みをこうむり、そして、ヤコブの神のために宮を造営したいと願った。
07:47> けれども、じっさいにその宮を建てたのは、ソロモンであった。
07:48> しかし、いと高き者は、手で造った家の内にはお住みにならない。預言者が言っているとおりである、
07:49> 『主が仰せられる、どんな家をわたしのために建てるのか。わたしのいこいの場所は、どれか。天はわたしの王座、地はわたしの足台である。
07:50> これは皆わたしの手が造ったものではないか』。
07:51> ああ、強情で、心にも耳にも割礼のない人たちよ。あなたがたは、いつも聖書に逆らっている。それは、あなたがたの先祖たちと同じである。
07:52> いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、ひとりでもいたか。彼らは正しいかたの来ることを予告した人たちを殺し、今やあなたがたは、その正しいかたを裏切る者、また殺す者となった。
07:53> あなたがたは、御使たちによって伝えられた律法を受けたのに、それを守ることをしなかった」。
07:54> 人々はこれを聞いて、心の底から激しく怒り、ステパノにむかって、歯ぎしりをした。
07:55> しかし、彼は聖霊に満たされて、天を見つめていると、神の栄光が現れ、イエスが神の右に立っておられるのが見えた。
07:56> そこで、彼は「ああ、天が開けて、人の子が神の右に立っておいでになるのが見える」と言った。
07:57> 人々は大声で叫びながら、耳をおおい、ステパノを目がけて、いっせいに殺到し、
07:58> 彼を市外に引き出して、石で打った。これに立ち会った人たちは、自分の上着を脱いで、サウロという若者の足もとに置いた。
07:59> こうして、彼らがステパノに石を投げつけている間、ステパノは祈りつづけて言った、「主イエスよ、わたしの霊をお受け下さい」。
07:60> そして、ひざまずいて、大声で叫んだ、「主よ、ぞうぞ、この罪を彼らに負わせないで下さい」。こう言って、彼は眠りについた。

第八章
08:01> サウロはステパノを殺すことに賛成していた。その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起り、使徒以外の者はことごとく、ユダヤとサマリヤとの地方に散らされて行った。
08:02> 信仰深い人たちはステパノを葬り、彼のために胸を打って、非常に悲しんだ。
08:03> ところが、サウロは家々に押し入って、男や女を引きずり出し、次次に獄に渡して、教会を荒し回った。
08:04> さて、散らされて行った人たちは、御言を宣べ伝えながら、めぐり歩いた。
08:05> ピリポはサマリヤの町に下って行き、人々にキリストを宣べはじめた。
08:06> 群衆はピリポの話を聞き、その行っていたしるしを見て、こぞって彼の語ることに耳を傾けた。
08:07> 汚れた霊につかれた多くの人々からは、その霊が大声でわめきながら出て行くし、また、多くの中風をわずらっている者や、足のきかない者がいやされたからである。
08:08> それで、この町では人々が、大変なよろこびかたであった。
08:09> さて、この町に以前からシモンという人がいた。彼は魔術を行ってサマリヤの人たちを驚かし、自分をさも偉い者のように言いふらしていた。
08:10> それで、小さい者から大きい者にいたるまで皆、彼について行き、「この人こそは『大能』と呼ばれる神の力である」と言っていた。
08:11> 彼らがこの人について行ったのは、ながい間その魔術に驚かされていたためであった。
08:12> ところが、ピリポが神の国とイエス・キリストの名について宣べ伝えるに及んで、男も女も信じて、ぞくぞくとバプテスマを受けた。
08:13> シモンも信じて、バプテスマを受け、それから、引きつづきピリポについて行った。そして、数々のしるしやめざましい奇跡が行われるのを見て、驚いていた。
08:14> エルサレムにいる使途たちは、サマリヤの人々が、神の言を受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネとを、そこにつかわした。
08:15> ふたりはサマリヤに下って行って、みんなが聖霊を受けるようにと、彼らのために祈った。
08:16> それは、彼らはただ主イエスの名によってバプテスマを受けていただけで、聖霊はまだだれにも下っていなかったからである。
08:17> そこで、ふたりが手を彼らの上においたところ、彼らは聖霊を受けた。
08:18> シモンは、使徒たちが手をおいたために、御霊が人々に授けられたのを見て、金をさし出し、
08:19> 「わたしが手をおけばだれでにでも聖霊が授けられるように、その力をわたしにも下さい」と言った。
08:20> そこで、ペテロが彼に言った、「おまえの金は、おまえものとも、うせてしまえ。神の賜物が、金で得られるなどと思っているのか。
08:21> おまえの心が神の前に正しくないから、おまえは、とうてい、この事にあずかることができない。
08:22> だから、この悪事を悔いて、主に祈れ。そうすればあるいはそんな思いを心にいだいたことが、ゆるされるかも知れない。
08:23> おまえには、まだ苦い胆汁があり、不義のなわ目がからみついている。それが、わたしにわかっている」。
08:24> シモンはこれを聞いて言った、「仰せのような事が、わたしの身に起こらないように、ぞうぞ、わたしのために主に祈って下さい」。
08:25> 使徒たちは力強くあかしをなし、また主の言を語った後、サマリヤ人の多くの村々に福音を宣べ伝えて、エルサレムへ帰った。
08:26> しかし、主の使いがピリポにむかって言った、「立って南方に行き、エルサレムからガザへ下る道に出なさい」(このガザは、今は荒れはてている)。
08:27> そこで、彼は立って出かけた。すると、ちょうど、エチオピア人の女王がカンダケの高官で、女王の財宝全部を管理していた宦官であるエチオピア人が、礼拝のためにエルサレムに上り、
08:28> その帰途についていたところであった。彼は自分の馬車に乗って、預言者イザヤの書を読んでいた。
08:29> 御霊がピリポに「進み寄って、あの馬車に並んで行きなさい」と言った。
08:30> そこでピリポが駆けて行くと、預言者イザヤの書を読んでいるその人の声が聞こえたので、「あなたは、読んでいることが、おわかりですか」と尋ねた。
08:31> 彼は「だれかが、手びきをしてくれなければ、どうしてわかりましょう」と答えた。そして、馬車に乗って一緒にすわるようにと、ピリポにすすめた。
08:32> 彼が読んでいた聖書の箇所は、こうであった、「彼は、ほふり場に引かれて行く羊のように、また、黙々として、毛を刈る者の前に立つ小羊のように、口を開かない。
08:33> 彼は、いやしめられて、そのさばきも行われなかった。だれが、彼の子孫のことを語ることができようか、彼の命が地上から取り去られているからには」。
08:34> 宦官はピリポにむかって言った、「お尋ねしますが、ここで預言者はだれのことを言っているのですか。自分のことですか、それとも、だれかほかの人のことですか」。
08:35> そこでピリポは口を開き、この聖句から説き起こして、イエスのことを宣べ伝えた。
08:36> 道を進んで行くうちに、水のある所にきたので、宦官が言った、「ここに水があります。わたしがバプテスマを受けるのに、なんのさしつかえがありますか」。〔
08:37> これに対して、ピリポは、「あなたがまごころから信じるなら、受けてさしつかえはありません」と言った。すると、彼は「わたしは、イエス・キリストを神の子と信じます」と答えた。〕
08:38> そこで車をとめさせ、ピリポは宦官と、ふたりとも、水の中に降りて行き、ピリポが宦官にバプテスマを授けた。
08:39> ふたりが水から上がると、主の霊がピリポをさらって行ったので、宦官はもう彼を見ることができなかった。宦官はよろこびながら旅をつづけた。
08:40> その後、ピリポはアゾトに姿をあらわして、町々をめぐり歩き、いたるところで福音を宣べ伝えて、ついにカイザリヤに着いた。

第九章
09:01> さてサウロは、なおも主の弟子たちに対する迫害、殺害の息をはずませながら、大祭司のところに行って、
09:02> ダマスコの諸会堂あての添書を求めた。それは、この道の者を見つけ次第、男女の別なく縛りあげて、エルサレムにひっぱって来るためであった。
09:03> ところが、道を急いでダマスコの近くにきたとき、突然、天から光がさして、彼をみぐり照らした。
09:04> 彼は地に倒れたが、その時「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。
09:05> そこで彼は「主よ、あなたは、どなたですか」と尋ねた。すると答があった、「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
09:06> さあ立って、町にはいって行きなさい。そうすれば、そこであなたのなすべき事が告げられるであろう」。
09:07> サウロの同行者たちは物を言えずに立っていて、声だけは聞こえた、だれも見えなかった。
09:08> サウロは地から起き上がって目を開いてみたが、何も見えなかった。そこで人々は、彼の手を引いてダマスコへ連れて行った。
09:09> 彼は三日間、目が見えず、また食べることも飲むこともしなかった。
09:10> さて、ダマスコにアナニヤというひとりの弟子がいた。この人に主が幻の中に現れて、「アナニヤよ」とお呼びになった。彼は「主よ、わたしでございます」と答えた。
09:11> そこで主が彼に言われた、「立って、『真すぐ』という名の路地に行き、ユダの家でサウロというタルソ人を尋ねなさい。彼はいま祈っている。
09:12> 彼はアナニヤという人がはいってきて、手を自分の上において再び見えるようにしてくれるのを、幻でみたのである」。
09:13> アナニヤは答えた、「主よ、あの人がエルサレムで、どんなにひどい事をあなたの聖徒たちにしたかについては、多くの人たちから聞いています。
09:14> そして彼はここでも、御名をとなえる者たちをみな捕捉する権を、祭司長たちから得てきているのです」。
09:15> しかし、主は仰せになった、「さあ、行きなさい。あの人は、異邦人たち、王たち、またイスラエルの子らにも、わたしの名を伝える器として、わたしが選んだ者である。
09:16> わたしの名のために彼がどんなに苦しまなければならないかを、彼に知らせよう」。
09:17> そこでアナニヤは、出かけて行ってその家にはいり、手をサウロの上において言った、「兄弟サウロよ、あなたがくる途中で現れた主イエスは、あなたが再び見えるようになるため、そして聖霊に満たされるために、わたしをおつかわしになったのです」。
09:18> するとたちどころに、サウロの目から、うろこのようなものが落ちて、元どおりに見えるようになった。そこで彼は立ってバプテスマを受け、
09:19> また食事をとって元気を取りもどした。サウロはダマスコにいる弟子たちとともに数日間を過ごしてから、
09:20> ただちに諸会堂でイエスのことを宣べ伝え、このイエスこそ神の子であると説きはじめた。
09:21> これを聞いた人たちはみな非常に驚いて言った、「あれは、エルサレムで御名をとなえる者たちを苦しめた男ではないか。その上ここにやってきたのも、彼らを縛りあげて、祭司長たちのところへひっぱって行くためではなかったか」。
09:22> しかし、サウロはますます力が加わり、このイエスがキリストであることを論証して、ダマスコに住むユダヤ人たちを言い伏せた。
09:23> 相当の日数がたったころ、ユダヤ人たちはサウロを殺す相談をした。
09:24> ところが、その陰謀が彼の知るところとなった。彼らはサウロを殺そうとして、夜昼、町の門を見守っていたのである。
09:25> そこで彼の弟子たちが、夜の間に彼をかごに乗せて、町の城壁づたいにつりおろした。
09:26> サウロはエルサレムに着いて、弟子たちの仲間に加わろうと努めたが、みんなの者は彼を弟子だとは信じないで、恐れていた。ところが、
09:27> バルナバは彼の世話をして使徒たちのところへ連れて行き、途中で主が彼に彼に現れて語りかけたことや、彼がダマスコでイエスの名で大胆に宣べ伝えた次第を、彼らに説明して聞かせた。
09:28> それ以来、彼は使徒たちの仲間に加わり、エルサレムに出入りし、主の名によって大胆に語り、
09:29> ギリシャ語を使うユダヤ人たちとしばしば語り合い、また論じ合った。しかし、彼らは彼を殺そうとねらっていた。
09:30> 兄弟たちはそれと知って、彼をカイザリヤに連れてくだり、タルソへ送り出した。
09:31> こうして教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤ全地方にわたって平安を保ち、基礎がかたまり、主をおそれ聖霊にはげまされて歩み、次第に信徒の数を増して行った。
09:32> ペテロは方々をめぐり歩いたが、ルダに住む聖徒たちのところへも下って行った。
09:33> そして、そこで、八年間も床についているアイネヤという人に会った。この人は中風であった。
09:34> ペテロが彼に言った、「アイネヤよ、イエス・キリストがあなたをいやして下さるのだ。起きなさい。そして床を取りあげなさい」。すると、彼はただちに起きあがった。
09:35> ルダとサロンに住む人たちは、みなそれを見て、主に帰依した。
09:36> ヨッパにタビタ(これを訳すと、ドルカス、かなわち、かもしか)という女弟子がいた。数々のよい働きや施しをしていた婦人であった。
09:37> ところが、そのころ病気になって死んだので、人々はそのからだを洗って、屋上の間に安置した。
09:38> ルダはヨッパに近かったので、弟子たちはペテロがルダにきていると聞き、ふたりの者を彼のもとにやって、「どうぞ、早くこちらにおいで下さい」と頼んだ。
09:38> そこでペテロは立って、ふたりの者に連れられてきた。彼が着くとすぐ、屋上の間に案内された。すると、やまめたちがみんな彼のそばに寄ってきて、ドルカスが生前つくった下着や上着の数々を、泣きながら見せるのであった。
09:40> ペテロはみんなの者を外に出し、ひざまずいて祈った。それから死体の方に向いて、「タビタよ、起きなさい」と言った。すると彼女は目をあけ、ペテロを見て起きなおった。
09:41> ペテロは彼女に手をかして立たせた。それから、聖徒たちや、やもめたちを呼び入れて、彼女が生きかえっているのを見せた。
09:42> このことがヨッパ中に知れわたり、多くの人々が主を信じた。
09:43> ペテロは、皮なめしシモンという人の家に泊まり、しばらくの間ヨッパに滞在した。

第十章
10:01> さて、カイザリヤにコルネリオという名の人がいた。イタリヤ隊と呼ばれた部隊の百卒長で、
10:02> 信心深く、家族一同と共に神を敬い、民に数々の施しをなし、絶えず神に祈りをしていた。
10:03> ある日の午後三時ごろ、神の使いが彼のところにきて、「コルネリオよ」と呼ぶのを、幻ではっきり見た。
10:04> 彼は御使を見つめていたが、恐ろしくなって、「主よ、なんでございますか」と言った。すると御使が言った、「あなたの祈りや施しは神のみ前にとどいて、おぼえられている。
10:05> ついては今、ヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれているシモンという人を招きなさい。
10:06> この人は、海辺に家をもつ皮なめしシモンという者の客となっている」。
10:07> このお告げをした御使が立ち去ったのち、コルネリオは、僕ふたりと、部下の中で信心深い兵卒ひとりとを呼び、
10:08> いっさいの事を説明して聞かせ、ヨッパへ送り出した。
10:09> 翌日、この三人が旅をつづけて町の近くにきたころ、ペテロは祈りをするため屋上にのぼった。時は昼の十二時ごろであった。
10:10> 彼は空腹をおぼえ、何か食べたいと思った。そして、人々が食事の用意をしている間に、夢心地になった。
10:11> すると、点が開け、大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、地上に降りて来るのを見た。
10:12> その中には、地上の四つ足や這うもの、また空の鳥など、各種の生きものがはいっていた。
10:13> そして声が彼に聞こえてきた、「ペテロよ。立って、それらをほふって食べなさい」。
10:14> ペテロは言った、「主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないもの。汚れたものは、何一つ食べたことがありません」。
10:15> すると、声が二度目にかかってきた、「神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない」。
10:16> こんなことが三度もあってから、その入れ物はすぐ天に引き上げられた。
10:17> ペテロはいま見た幻はなんの事だろうかと、ひとり思案にくれていると、ちょうどその時、コルネリオから送られた人たちが、シモンの家を訪ね当てて、その門口に立っていた。
10:18> そして声をかけて、「ペテロと呼ばれるシモンというかたが、こちらにお泊まりではございませんか」と尋ねた。
10:19> ペテロはなおも幻について、思いめぐらしていると、御霊が言った、「ごらんなさい、三人の人たちが、あなたを尋ねてきている。
10:20> さあ、立って下に降り、ためらわないで、彼らと一緒に出かけるがよい。わたしが彼らをよこしたのである」。
10:21> そこでペテロは、その人たちのところに降りて行って言った、「わたしがお尋ねのペテロです。どんなご用でおいでになったのですか」。
10:22> 彼らは答えた、「正しい人で、神を敬い、ユダヤの全国民に好感を持たれている百卒長コルネリオが、あなたを家に招いてお話を伺うようにとのお告げを、聖なる御使から受けましたので、参りました」。
10:23> そこで、ペテロは、彼らを迎えて泊まらせた。翌日、ペテロは立って、彼らと連れだって出発した。ヨッパの兄弟たち数人も一緒に行った。
10:24> その次の日に、一行はカイザリヤに着いた。コルネリオは親類や親しい友人たちを呼び集めて、待っていた。
10:25> ペテロはいよいよ到着すると、コルネリオは出迎えて、彼の足元にひれ伏して拝した。
10:26> するとペテロは、彼を引き起こして言った、「お立ちなさい、わたしも同じ人間です」。
10:27> それから共に話ながら、へやにはいって行くと、そこには、すでに大ぜいの人が集まっていた。
10:28> ペテロは彼らに言った、「あなたがたが知っているとおり、ユダヤ人が他国の人と交際したり、出入りしたりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くないとか、汚れているとか言ってはならないと、わたしたちにお示しになりました。
10:29> お招きにあずかった時、少しもためらわずに参ったのは、そのためなのです。そこで伺いますが、どういうわけで、わたしを招いてくださったのですか」。
10:30> これに対してコルネリオが答えた、「四日前、ちょうどこの時刻に、わたしが自宅で午後三時の祈りをしていますと、突然、輝いた衣を着た人が、前に立って申しました、
10:31> 『コルネリオよ、あなたの祈りは聞きいれられ、あなたの施しは神のみ前におぼえられている。
10:32> そこでヨッパに人を送ってペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。その人は皮なめしシモンの海沿いの家に泊まっている』。
10:33> それで、早速あなたをお呼びしたのです。ようこそおいで下さいました。今わたしたちは、主があなたにお告げになったことを残らず伺おうとして、みな神のみ前にまかり出ているのです」。
10:34> そこでペテロは口を開いて言った、「神は人をかたよりみないかたで、
10:35> 神を敬い議を行う者はどの国民でも受けいれて下さることが、ほんとうによくわかってきました。
10:36> あなたがたは、神がすべての者の主なるイエス・キリストによって平和の福音を宣べ伝えて、イスラエルの子らにお送り下さった御言をご存知でしょう。
10:37> それは、ヨハネがバプテスマを説いた後、ガリラヤから始まってユダヤ全土にひろまった福音を述べたものです。
10:38> 神はナザレのイエスに聖霊と力とを注がれました。このイエスは、神が共におられるので、よい働きをしながら、また悪魔に押さえつけられている人々をことごとくいやしながら、巡回されました。
10:39> わたしたちは、イエスがこうしてユダヤの地やエルサレムでなさったすべてのことの証人であります。人々はこのイエスを木にかけて殺したのです。
10:40> しかし神はイエスを三日目によみがえらせ、
10:41> 全部の人々にではなかったが、わたしたち証人としてあらかじめ選ばれた者たちに現れるようにして下さいました。わたしたちは、イエスが死人の中から復活された後、共に飲食しました。
10:42> それから、イエスご自身が生者と死者との審判者として神に定められたかたであることを、人々に宣べ伝え、またあかしをするようにと、神はわたしたちにお命じになったのです。
10:43> 預言者たちもみな、イエスを信じる者はことごとく、その名によって罪のゆるしが受けられると、あかしをしています」。
10:44> ペテロがこれらの言葉をまだ語り終えないうちに、それを聞いていたみんなの人たちに、聖霊がくだった。
10:45> 割礼を受けている信者で、ペテロについてきた人たちは、異邦人たちにも聖霊の賜物が注がれたのを見て、驚いた。
10:46> それは、彼らが異言を語って神をさんびしているのを聞いたからである。そこで、ペテロが言い出した、
10:47> 「この人たちが、わたしたちと同じように聖霊を受けたからには、彼らに水でバプテスマを授けるのを、だれがこばみ得ようか」。
10:48> こう言って、ペテロはその人々に命じて、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けさせた。それから、彼らはペテロに願って、なお数日のあいだ滞在してもらった。

第十一章
11:01> さて、異邦人たちも神の言を受けいれたいとということが、使徒たちやユダヤにいる兄弟たちに聞こえてきた。
11:02> そこでペテロがエルサレムに上ったとき、割礼を重んじる者たちが彼をとがめて言った、
11:03> 「あなたは、割礼のない人たちのところに行って、食事を共にしたということだが」。
11:04> そこでペテロは口を開いて、順序正しく説明して言った、
11:05> 「わたしがヨッパの町で祈っていると、夢心地になって幻を見た。大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、天から降りてきて、わたしのところにとどいた。
11:06> 注意して見つめていると、地上の四つ足、野の獣、這うもの、空の鳥などが、はいっていいた。
11:07> それから声がして、『ペテロよ、立って、それらをほふって食べなさい』と、わたしに言うのが聞こえた。
11:08> わたしは言った、『主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないものや汚れたものを口に入れたことが一度もございません』。
11:09> すると、二度目に天から声がかかってきた、『神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない』。
11:10> こんなことが三度もあってから、全部のものがまた天に引き上げられてしまった。
11:11> ちょうどその時、カイザリヤからつかわされてきた三人の人が、わたしたちの泊まっていた家に着いた。
11:12> 御霊がわたしに、ためらわずに彼らと共に行けと言ったので、ここにいる六人の兄弟たちも、わたしと一緒に出かけて行き、一同がその人の家にはいった。
11:13> すると彼はわたしたちに、御使が彼の家に現れて、『ヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。
11:14> この人は、あなたとあなたの全家族とが救われる言葉を語って下さるであろう』と告げた次第を、話してくれた。
11:15> そこでわたしが語り出したところ、聖霊が、ちょうど最初わたしたちの上にくだったと同じように、彼らの上にくだった。
11:16> その時わたしは、主が『ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは聖霊によってバプテスマを受けるであろう』と仰せになった言葉を思い出した。
11:17> このように、わたしたちが主イエス・キリストを信じた時に下さったのと同じ賜物を、神が彼らにもお与えになったとすれば、わたしのような者が、どうして神を妨げることができようか」。
11:18> 人々はこれを聞いて黙ってしまった。それから神をさんびして、「それでは神は、異邦人にも命にいたる悔改めをお与えになったのだ」と言った。
11:19> さて、ステパノのことで起こった迫害のために散らされていた人々は、ピニケ、クプロ、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者には、だれにも御言を語っていなかった。
11:20> ところが、その中に数人のクプロ人とクレネ人がいて、アンテオケに行ってからギリシャ人にも呼びかけ、主イエスを宣べ伝えていた。
11:21> そして、主のみ手が彼らと共にあったため、信じて主に帰依するものの数が多かった。
11:22> このうわさがエルサレムにある教会に伝わってきたので、教会はバルナバをアンテオケにつかわした。
11:23> 彼は、そこに着いて、神のめぐみを見てよろこび、主に対する信仰を揺るがない心で持ちつづけるようにと、みんなの者を励ました。
11:24> 彼は聖霊と信仰とに満ちた立派な人であったからである。こうして主に加わる人々が、大ぜいになった。
11:25> そこでバルナバはサウロを捜しにタルソへ出かけて行き、
11:26> 彼を見つけたうえ、アンテオケに連れて帰った。ふたりは、まる一年、ともどもに教会で集まりをし、大ぜいの人々を教えた。このアンテオケで初めて、弟子たちがクリスチャンと呼ばれるようになった。
11:27> そのころ、預言者たちがエルサレムからアンテオケにくだってきた。
11:28> その中のひとりであるアガボという者が立って、世界中に大ききんが起こるだろうと、御霊によって預言したところ、果たしてそれがクラウデオ帝の時に起こった。
11:29> そこで弟子たちは、それぞれの力に応じて、ユダヤに住んでいる兄弟たちに援助を送ることに決めた。
11:30> そして、それをバルナバとサウロとの手に託して、長老たちに送りとどけた。

第十二章
12:01> そのころ、ヘロデ王は教会のある者たちに圧迫の手をのばし、
12:02> ヨハネの兄弟ヤコブをつるぎで切り殺した。
12:03> そして、それがユダヤ人たちの意にかなったのを見て、さらにペテロをも捕らえにかかった。それは徐酵際の時のことであった。
12:04> ヘロデはペテロを捕らえて獄に投じ、四人一組の兵卒四組に引き渡して、見張りをさせておいた。過越の祭のあとで、彼を民衆の前に引きずり出すつもりであったのである。
12:05> こうして、ペテロは獄に入れられていた。教会では、彼のために熱心な祈が神にささげられていた。
12:06> ヘロデが彼を引き出そうとしていたその夜、ペテロは二重の鎖につながれ、ふたりの兵卒の間に置かれて眠っていた。番兵たちは戸口で獄を見張っていた。
12:07> すると、突然、主の使いがそばに立ち、光が獄を照らした。そして御使はペテロのわき腹をつついて起こし、「早く起きあがりなさい」と言った。すると鎖が彼の両手から、はずれ落ちた。
12:08> 御使が「帯をしめ、くつをはきなさい」と言ったので、彼はそのとおりにした。それから「上着を着て、ついてきなさい」と言われたので、
12:09> ペテロはついて出て行った。彼には御使のしわざが現実のこととは考えられず、ただ幻を見ているように思われた。
12:10> 彼らは第一、第二の衛所を通りすぎて、町に抜ける鉄門のところに来ると、そこがひとりでに開いたので、そこを出て一つの通路に進んだとたんに、御使は彼を離れ去った。
12:11> その時ペテロはわれにかえって言った、「今はじめて、ほんとうのことがわかった。主が御使をつかわして、ヘロデの手から、またユダヤ人たちの待ちもうけていたあらゆる災いから、わたしを救い出して下さったのだ」。
12:12> ペテロはこうとわかってから、マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家に行った。その家には大ぜいの人が集まって祈っていた。
12:13> 彼が門のとをたたいたところ、ロダという女中が取次きに出てきたが、
12:14> ペテロの声だとわかると、喜びのあまり、門をあけもしないで、家に駆け込み、ペテロが門口に立っていると報告した。
12:15> 人々は「あなたは気が狂っている」と言ったが、彼女は自分の言うことに間違いないと、言い張った。そこで彼らは「それでは、ペテロの御使だろう」と言った。
12:16> しかし、ペテロが門をたたきつづけるので、彼らがあけると、そこにペテロがいたのを見て驚いた。
12:17> ペテロは手を振って彼らを静め。主が獄から彼を連れ出して下さった次第を説明し、「このことを、ヤコブやほかの兄弟たちに伝えて下さい」と言い残して、どこかほかの所へ出て行った。
12:18> 夜が明けると、兵卒たちの間に、ペテロはいったいどうなったのだろうと、大へんな騒ぎが起こった。
12:19> ヘロデはペテロを捜しても見つからないので、番兵たちを取り調べたうえ、彼らを死刑に処するように命じ、そして、ユダヤからカイザリヤにくだって行って、そこに滞在した。
12:20> さて、ツロとシドンとの人々はヘロデの怒りに触れていたので、一同うちそろって王をおとずれ、王の侍従官ブラストに取りいって、和解かたを依頼した。彼らの地方が、王の国から食料を得ていたからである。
12:21> 定められた日に、ヘロデは王服をまとって王座にすわり、彼らにむかって演説をした。
12:22> 集まった人々は、「これは神の声だ、人間の声ではない」と叫びつづけた。
12:23> するとたちまち、主の使いが彼を打った。神に栄光を帰すことをしなかったからである。彼は虫にかまれて息が絶えてしまった。
12:24> こうして、主の言はますます盛んにひろまって行った。
12:25> バルナバとサウロとは、その任務を果たしたのち、マルコと呼ばれていたヨハネを連れて、エルサレムから帰ってきた。

第十三章
13:01> さて、アンテオケにある教会には、バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、クレネ人ルキオ、領主ヘロデの乳兄弟マナエン、およびサウロなどの預言者や教師がいた。
13:02> 一同は主に礼拝をささげ、断食していると、聖霊が「さあ、バルナバとサウロとを、わたしのために聖別して、彼らに授けておいた仕事に当らせなさい」と告げた。
13:03> そこで一同は、断食と祈りとをして、手をふたりの上においた後、出発させた。
13:04> ふたりは聖霊に送り出されて、セルキヤに下り、そこから船でクプロに渡った。
13:05> そしてサラミスに着くと、ユダヤ人の諸会堂で神の言を宣べはじめた。彼らはヨハネを助け手として連れていた。
13:06> 島全体を巡回して、パポスまで行ったところ、そこでユダヤ人の魔術師、バルイエスというにせ預言者に出会った。
13:07> 彼は地方総督セルギオ・パウロのところに出入りをしていた。この総督は賢明な人であって、バルナバとサウロとを招いて、神の言を聞こうとした。
13:08> ところが魔術師エルマ(彼の名は「魔術師」との意)は、総督を信仰からそらそうとして、しきりにふたりの邪魔をした。
13:09> サウロ、またの名はパウロ、は聖霊に満たされ、彼をにらみつけて
13:10> 言った、「ああ、あらゆる偽りと邪悪とでかたまっている悪魔の子よ、すべて正しいものの敵よ。
13:11> 見よ、主のみ手がおまえの上に及んでいる。おまえは盲目になって、当分、日の光が見えなくなるのだ」。たちまち、かすみとやみとか彼にかかったため、彼は手さぐりをしながら、手を引いてくれる人を捜しまわった。
13:12> 総督はこの出来事を見て、主の教えにすっかり驚き、そして信じた。
13:13> パウロとその一行は、パポスから船出して、パンフリヤのペルガに渡った。ここでヨハネは一行から身を引いて、エルサレムに帰ってしまった。
13:14> しかしふたりは、ペルガからさらに進んで、ピシデヤのアンテオケに行き、安息日に会堂にはいって席に着いた。
13:15> 律法と預言書の朗読があったのち、会堂司たちが彼らのところに人をつかわして、「兄弟たちよ、もしあなたがたのうち、どなたか、この人々に何か奨励の言葉がありましたら、ぞうぞお話下さい」と言わせた。
13:16> そこでパウロが立ちあがって、手を振りながら言った。「イスラエルの人たち、ならびに神を敬うかたがたよ、お聞き下さい。
13:17> この民イスラエルの神は、わたしたちの先祖を撰び、エジプトの地に滞在中、この民を大いなるものとし、み腕を高くさし上げて、彼らをその地から導き出された。
13:18> そして約四十年にわたって、荒野で彼らをはぐくみ、
13:19> カナンの地では七つの異民族を打ち滅ぼし、その地を彼らに譲り与えられた。
13:20> それらのことが四百五十年の年月にわたった。その後、神はさばき人たちをおつかわしになり、預言者サムエルの時に及んだ。
13:21> その時、人々が王を要求したので、神はベニヤミン族の人、キスの子サウロを四十年間、彼らにおつかわしになった。
13:22> それから神はサウロを退け、ダビデを立てて王とされたが、彼についてあかしをして、『わたしはエッサイの子ダビデを見つけた。彼はわたしの心にかなった人で、わたしの思うところを、ことごとく実行してくれるであろう』と言われた。
13:23> 神は約束にしたがって、このダビデの子孫の中から救主イエスをイスラエルに送られたが、
13:24> そのこられる前に、ヨハネがイスラエルのすべての民に悔い改めのバプテスマを、あらかじめ宣べ伝えていた。
13:25> ヨハネはその一生の行程を終わろうとするに当たって言った、『わたしは、あなたがたが考えているような者ではない。しかし、わたしのあとから来るかたがいる。わたしはそのくつを脱がせてあげる,値うちもない』。
13:26> 兄弟たち、アブラハムの子孫のかたがた、ならびに皆さんの中の神を敬う人たちよ。この救の言葉はわたしたちに送られたのである。
13:27> エルサレムに住む人々やその指導者たちは、イエスを認めずに刑に処し、それによって、安息日ごとに読む預言者の言葉が成就した。
13:28> また、なんら死に当たる理由が見いだせなかったのに、ピラトに強要してイエスを殺してしまった。
13:29> そして、イエスについて書いてあることを、皆なし遂げてから、人々はイエスを木から取りおろして墓に葬った。
13:30> しかし、神はイエスを死人の中から、よみがえらせたのである。
13:31> イエスは、ガリラヤからエルサレムへ一緒に上った人たちに、幾日ものあいだ現れ、そして、彼らは今や、人々に対してイエスの証人となっている。
13:32> わたしたちは、神が先祖たちに対してなされた約束を、ここに宣べ伝えているのである。
13:33> 神は、イエスをよみがえらせて、わたしたち子孫にこの約束を、お果たしになった。それは詩編の第二編にも、『あなたこそは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ』と書いてあるとおりである。
13:34> また、神がイエスを死人の中からよみがえらせて、いつまでも朽ち果てることのないものとされたことについては、『わたしは、ダビデに約束した確かな聖なる祝福を、あなたがたに授けよう』と言われた。
13:35> だから、ほかの箇所でもこう言っておられる、『あなたの聖者が朽ち果てるようなことは、お許しにならないであろう』。
13:36> 事実、ダビデは、その時代の人々に神のみ旨にしたがって仕えたが、やがて眠りにつき、先祖たちの中に加えられて、ついに朽ち果ててしまった。
13:37> しかし、神がよみがえらせたかたは、朽ち果てることがなかったのである。
13:38> だから、兄弟たちよ、この事を承知しておくがよい。すなわち、イエスによる罪のゆるしの福音が、今やあなたがたに宣べ伝えられている。そして、モーセの律法では義とされることができなかったすべての事についても、
13:39> 信じる者はもれなくイエスによって義とされるのである。
13:40> だから預言者たちの書にかいてある次のようなことが、あなたがたの身に起らないように気をつけなさい。
13:41> 『見よ、侮る者たちよ。驚け、そして滅び去れ。わたしは、あなたがたの時代に一つの事をする。それは、人がどんなに説明して聞かせても、あなたがたのとうてい信じないような事なのである』」。
13:42> ふたりが会堂を出る時、人々は次の安息日にも、これと同じ話をしてくれるようにと、しきりに願った。
13:43> そして集会が終わってからも、大ぜいのユダヤ人や信心深い改宗者たちが、パウロとバルナバとについてきたので、ふたりは、彼らが引きつづき神のめぐみにとどまっているようにと、説きすすめた。
13:44> 次の安息日には、ほとんど全市をあげて、神の言を聞きに集まってきた。
13:45> するとユダヤ人たちは、その群衆を見てねたましく思い。パウロの語ることに口ぎたなく反対した。
13:46> パウロとバルナバとは大胆に語った、「神の言は、まず、あなたがたに語り伝えられなければならなかった。しかし、あなたがたはそれを退け、自分自身を永遠の命にふさわしからぬ者にしてしまったから、さあ、わたしたちはこれから方向をかえて、異邦人たちの方に行くのだ。
13:47> 主はわたしたちに、こう命じておられる、『わたしは、あなたを立てて異邦人の光とした。あなたが地の果までも救をもたらすためである』」。
13:48> 異邦人たちはこれを聞いて喜び、主の御言をほめたたえてやまなかった。そして、永遠の命にあずかるように定められていた者は、みな信じた。
13:49> こうして、主の御言はこの地方全体にひろまって行った。
13:50> ところが、ユダヤ人たちは、信心深い貴婦人たちや町の有力者たちを煽動して、パウロとバルナバを迫害させ、ふたりをその地方から追い出させた。
13:51> ふたりは、彼らに向けて足のちりを払い落として、イコニオムへ行った。
13:52> 弟子たちは、ますます喜びと聖霊とに満たされていた。

第十四章
14:01> ふたりは、イコニオムでも同じようにユダヤ人の会堂にはいって語った結果、ユダヤ人やギリシャ人が大ぜい信じた。
14:02> ところが、信じなかったユダヤ人たちは異邦人たちをそそのかして、兄弟たちに対して悪意をいだかせた。
14:03> それにもかかわらず、ふたりは長い期間そこで過ごして、大胆に主のことを語った。主は、彼らの手によってしるしと奇跡とを行わせ、そのめぐみの言葉をあかしされた。
14:04> そこで町の人々が二派に分かれ、ある人たちは使徒の側についた。
14:05> その時、異邦人やユダヤ人が役人たちと一緒になって反対運動を起こし、使徒たちをはずかしめ、石で打とうとしたので、
14:06> ふたりはそれと気づいて、ルカニヤの町々、ルステラ、デルベおよびその附近の地へのがれ、
14:07> そこで引きつづき福音を伝えた。
14:08> ところが、ルステラに足のきかない人が、すわっていた。彼は生まれながらの足なえで、歩いた経験が全くなかった。
14:09> この人がパウロの語るのを聞いていたが、パウロは彼をじっと見て、いやされるほどの信仰が彼にあるのを認め、
14:10> 大声で「自分の足で、まっすぐに立ちなさい」と言った。すると彼は踊り上がって歩き出した。
14:11> 群衆はパウロのしたことを見て、声を張りあげ、ルカオニヤの地方語で、「神々が人間の姿をとって、わたしたちのところにお下りになったのだ」と叫んだ。
14:12> 彼らはバルナバをゼウスと呼び、パウロはおもに語る人なので、彼をヘルメスと呼んだ。
14:13> そして、郊外にあるゼウスの神殿の祭司が、群衆と共に、ふたりに犠牲をささげようと思って、雄牛数頭と花輪とを門前に持ってきた。
14:14> ふたりの使徒バルナバとパウロとは、これを聞いて自分の上着を引き裂き、群衆の中に飛び込んで行き、叫んで
14:15> 言った、「皆さん、なぜこんな事をするのか。わたしたちとても、あなたがたと同じような人間である。そして、あなたがたがこのような愚にもつかぬものを捨てて、天と地と海と、その中のすべてのものをお造りになった生ける神に立ち帰るようにと、福音を説いているものである。
14:16> 神は過ぎ去った時代には、すべての国々の人が、それぞれの道を行くままにしておかれたが、
14:17> それでも、ご自分のことをあかししないでおられたわけではない。すなわち、あなたがたのために天から雨を降らせ、実りの季節を与え、食物と喜びとで、あなたがたの心を満たすなど、いろいろのめぐみをお与えになっているのである」。
14:18> こう言って、ふたりは、やっとのことで、群衆が自分たちに犠牲をささげるのを、思い止まらせた。
14:19> ところが、あるユダヤ人たちはアンテオケやイコニオムから押しかけてきて、群衆を仲間に引き入れたうえ、パウロを石で打ち、死んでしまったと思って、彼を町の引きずり出した。
14:20> しかし、弟子たちがパウロを取り囲んでいる間に、彼は起きあがって町にはいって行った。そして翌日には、バルナバと一緒にデルベに向かって出かけた。
14:21> その町で福音を伝えて、大ぜいの人を弟子とした後、ルステラ、イコニオム、アンテオケの町々に帰って行き、
14:22> 弟子たちを力づけ、信仰を持ちつづけるようにと奨励し、「わたしたちが神の国にはいるのには、多くの苦難を経なければならない」と語った。
14:23> また教会ごとに彼らのために長老たちを任命し、断食をして祈り、彼らをその信じている主にゆだねた。
14:24> それから、ふたりはピシデヤを通過してパンフリヤにきたが、
14:25> ペルガで御言を語った後、アタリヤにくだり、
14:26> そこから舟でアンテオケに帰った。彼らが今なし終わった働きのために、神の祝福を受けて送り出されたのは、このアンテオケであった。
14:27> 彼らは到着早々、教会の人々を呼び集めて、神が彼らと共にいてして下さった数々のこと、また信仰の門を異邦人に開いて下さったことなどを、報告した。
14:28> そして、ふたりはしばらくの間、弟子たちと一緒に過ごした。

第十五章
15:01> さて、ある人たちがユダヤから下ってきて、兄弟たちに「あなたがたも、モーセの慣例にしたがって割礼を受けなければ、救われない」と、説いていた。
15:02> そこで、パウロやバルナバと彼らとの間に、少なからぬ紛争と争論とが生じたので、パウロ、バルナバそのほかの数人のものがエルサレムに上り、使徒たちや長老たちと、この問題について協議することになった。
15:03> 彼らは教会の人々に見送られ、ピニケ、サマリヤをとおって、道すがら、異邦人たちの改宗の模様をくわしく説明し、すべての兄弟たちを大いに喜ばせた。
15:04> エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たち、長老たちに迎えられて、神が彼らと共にいてなされたことを、ことごとく報告した。
15:05> ところが、パリサイ派から信仰にはいってきた人たちが立って、「異邦人にも割礼を施し、またモーセの律法を守らせるべきである」と主張した。
15:06> そこで、使途たちや長老たちが、この問題について審議するために集まった。
15:07> 激しい争論があった後、ペテロが立って言った、「兄弟たちよ、ご承知のとおり、異邦人がわたしたちの口から福音の言葉を聞いて信じるようにと、神は初めのころに、諸君の中からわたしをお選びになったのである。
15:08> そして、人の心をご存知である神は聖霊をわれわれに賜ったと同様に彼らにも賜って、彼らに対してあかしをなし、
15:09> また、その信仰によって彼らの心をきよめ、われわれと彼らとの間に、なんの分けへだてもなさらなかった。
15:10> しかるに、諸君はなぜ、われわれの先祖もわれわれ自身も、負いきれなかったくびきをあの弟子たちの首にかけて、神の試みるのか。
15:11> 確かに、主イエスのめぐみによって、われわれは救われるのだと信じるが、彼らとても同様である」。
15:12> すると、全会衆は黙ってしまった。それから、バルナバとパウロとが、彼らをとおして異邦人の間に神が行われた数々のしるしと奇跡のことを、説明するのを聞いた。
15:13> ふたりが語り終えた後、ヤコブはそれに応じて述べた、「兄弟たちよ、わたしの意見を聞いていただきたい。
15:14> 神が初めに異邦人たちを顧みて、その中から御名を負う民を選び出された次第は、シメオンがすでに説明した。
15:15> 預言者たちの言葉も、それと一致している。すなわち、こう書いてある、
15:16> 『その後、わたしは帰ってきて、倒れたダビデの幕屋を立てかえ、くずれた箇所を修理し、それを立て直そう。
15:17> 残っている人々も、わたしの名を唱えているすべての異邦人も、主を尋ね求めるようになるためである。
15:18> 世の初めからこれらの事を知らせておられる主が、こう仰せになった』。
15:19> そこで、わたしの意見では、異邦人の中から神に帰依している人たちに、わずらいをかけてはいけない。
15:20> ただ、偶像に供えて汚れた物と、不品行と、絞め殺したものと、血とを、避けるようにと、彼らに書き送ることにしたい。
15:21> 古い時代から、どの町にもモーセの律法を宣べ伝える者がいて、安息日ごとにそれを諸会堂で朗読するならわしであるから」。
15:22> そこで、使途たちや長老たちは、全教会と協議した末、お互いの中から人々を選んで、パウロやバルナバと共に、アンテオケに派遣することに決めた。選ばれたのは、バルサバというユダとシラスとであった、いずれも兄弟たちの間で重んじられていた人たちであった。
15:23> この人たちに託された書面はこうである。「あなたがたの兄弟である使途および長老たちから、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人の兄弟がたに、あいさつを送る。
15:24> こちらから行ったある者たちが、わたしたちからの指示もないのに、いろいろなことを言って、あなたがたを騒がせ、あなたがたの心を乱したと伝え聞いた。
15:25> そこで、わたしたちは人々を選んで、愛するバルナバおよびパウロと共に、あなたがたのもとに派遣することに、衆議一決した。
15:26> このふたりは、われらの主イエス・キリストの名のために、その命を投げ出した人々である。
15:27> 彼らと共に、ユダとシラスとを派遣する次第である。この人たちは、あなたがたに、同じ趣旨のことを、口頭でも伝えるであろう。
15:28> すなわち、聖霊とわたしたちとは、次の必要事項のほかは、どんな負担をも、あなたがたに負わせないことを決めた。
15:29> それは、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを、避けるということである。これらのものから遠ざかっておれば、それでよろしい。以上」。
15:30> さて、一行は人々に見送られて、アンテオケに下って行き、会衆を集めて、その書面を手渡した。
15:31> 人々はそれを読んで、その勧めの言葉をよろこんだ。
15:32> ユダとシラスとはともに預言者であったので、多くの言葉をもって兄弟たちを励まし、また力づけた。
15:33> ふたりは、しばらくの時を、そこで過ごした後、兄弟たちから、旅の平安を祈られて、見送りを受け、自分らを派遣した人々のところに帰って行った。〔
15:34> しかし、シラスだけは、引きつづきとどまることにした。〕
15:35> パウロとバルナバとはアンテオケに滞在をつづけて、ほかの多くの人たちと共に、主の言葉を教えかつ宣べ伝えた。
15:36> 幾日かの後、パウロはバルナバに言った、「さあ、前に主の言葉を伝えたすべての町々にいる兄弟たちを、また訪問してみんながどうしているかを見てこようではないか」。
15:37> そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒に連れて行くつもりでいた。
15:38> しかし、パウロは、前にパンフリヤで一行から離れて、働きを共にしなかったような者は、連れて行かないがよいと考えた。
15:39> こうして激論が起こり、その結果ふたりは互いに別れ別れになり、バルナバはマルコを連れてクプロにわたって行き、
15:40> パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。
15:41> そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方をとおって、諸協会を力づけた。

第十六章
16:01> それから。彼はデルベに行き、次にルステラに行った。そこにテモテという名の弟子がいた。信者のユダヤ婦人を母とし、ギリシャ人を父としており、
16:02> ルステラとイコニオムの兄弟たちの間で、評判のよい人物であった。
16:03> パウロはこのテモテをつれて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、まず彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシャ人であることは、みんな知っていたからである。
16:04> それから彼らは通る町々で、エルサレムの使途たちや長老たちの取り決めた事項を守るようにと、人々にそれを渡した。
16:05> こうして、諸協会はその信仰を強められ、日ごとに数を増していった。
16:06> それから彼らは、アジヤで御言を語ることを聖霊に禁じられたので、フルギヤ・ガラテアをとおって行った。
16:07> そして、ムシヤのあたりにきてから、ビテニヤに進んで行こうとしたところ、イエスの御霊がこれを許さなかった。
16:08> それで、ムシヤを通過して、トロアスに下って行った。
16:09> ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。
16:10> パウロがこの幻を見たとき、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。
16:11> そこで、わたしたちはトロアスから船出して、サモトラケに直行し、翌日ネアポリスに着いた。
16:12> そこからピリピへ行った。これはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。わたしたちは、この町に数日間滞在した。
16:13> ある安息日に、わたしたちは町の門を出て、祈りの場があると思って、川のほとりに行った、そして、そこにすわり、集まってきた婦人たちに話をした。
16:14> ところが、テアテラ市の紫布の商人で、神を敬うルデヤという婦人が聞いていた。主は彼女の心を開いて、パウロの語ることに耳を傾けさせた。
16:15> そして、この婦人もその家族も、共にバプテスマを受けたが、その時、彼女は「もし、わたしを主を信じる者とお思いでしたら、どうぞ、わたしの家にきて泊まって下さい」と懇望し、しいてわたしたちをつれて行った。
16:16> ある時、わたしたちが、祈りの場に行く途中、占いの霊につかれた女奴隷に出会った。彼女は占いをして、その主人たちに多くの利益をえさせていた者である。
16:17> この女が、パウロやわたしたちのあとを追ってきては、「この人たちは、いと高き神の僕たちで、あなたがたの救いの道を伝えるかただ」と、叫び出すのであった。
16:18> そして、そんなことを幾日間もつづけていた。パウロは困りはてて、その霊にむかい「イエス・キリストの名によって命じる。その女から出て行け」と言った。すると、その瞬間に霊が女から出て行った。
16:19> 彼女の主人たちは、自分らの利益を得る望みが耐えたのを見て、パウロとシラスとを捕らえ、役人に引き渡すため広場に引きずって行った。
16:20> それから、ふたりを長官たちの前に引き出して訴えた、「この人たちはユダヤ人でありまして、わたしたちの町をかき乱し、
16:21> わたしたちローマ人が、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しているのです」。
16:22> 群衆もいっせいに立って、ふたりを責めたてたので、長官たちはふたりの上着をはぎ取り、むちで打つことを命じた。
16:23> それで、ふたりに何度もむちを加えさせたのち、獄に入れ、
16:24> 獄吏にしっかり番をするようにと命じた。獄吏はこの厳命を受けたので、ふたりを奥の獄屋に入れ、その足に足かせをしっかりとかけておいた。
16:25> 真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけたが、囚人たちは耳をすまして聞きいっていた。
16:26> ところが突然、大地震が起こって、獄の土台が揺れ動き、戸は全部たちまち開いて、みんなの者の鎖が解けてしまった。
16:27> 獄吏は目をさまし、獄の戸が開いてしまっているのを見て、囚人たちが逃げ出したものと思い、つるぎを抜いて自殺しかけた。
16:28> そこでパウロは大声をあげて言った、「自害してはいけない。われわれは皆ひとり残らず、ここにいる」。
16:29> すると、獄吏は、あかりを手に入れた上、獄に駆け込んできて、おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した。
16:30> それから、ふたりを外に連れ出して言った、「先生がた、わたしは救われるために、何をすべきでしょうか」。
16:31> ふたりが言った、「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」。
16:32> それから、彼とその家族一同とに、神の言を語って聞かせた。
16:33> 彼は真夜中にもかかわらず、ふたりを引き取って、その打ち傷を洗ってやった。そして、その場で自分も家族も、ひとり残らずバプテスマを受け、
16:34> さらに、ふたりを自分の家に案内して食事のもてなしをし、神を信じる者となったことを、全家族と共に心から喜んだ。
16:35> 夜が明けると、長官たちは警吏らをつかわして、「あの人たちを釈放せよ」と言わせた。
16:36> そこで、獄吏はこの言葉をパウロに伝えて言った、「長官たちが、あなたがたを釈放させるようにと、使いをよこしました。さあ、出てきて、無事にお帰りなさい」。
16:37> ところが、パウロは警史らに言った、「彼らは、ローマ人であるわれわれを、裁判にかけもせず、公衆の前でむち打ったあげく、獄に入れてしまった。しかるに今になって、ひそかに、われわれを出そうとするのか。それは、いけない。彼ら自身がここにきて、われわれを連れ出すべきである」。
16:38> 警史らはこの言葉を長官たちに報告した。すると長官たちは、ふたりがローマ人だと聞いて恐れ、
16:39> 自分でやってきてわびた上、ふたりを獄から連れ出し、町から立ち去るようにと頼んだ。
16:40> ふたりは獄を出て、ルデヤの家に行った。そして、兄弟たちに会って勧めをなし、それから出かけた。

第十七章
17:01> 一行は、アムピポリスとアポロニヤをとおって、テサロニケに行った。ここにはユダヤ人の会堂があった。
17:02> パウロは例によって、そのかいどうにはいって行って、三つの安息日にわたり、聖書に基づいて彼らと論じ、
17:03> キリストは必ず苦難を受け、そして死人の中からよみがえるべきことを、また「わたしがあなたがたに伝えているこのイエスこそは、キリストである」とのことを、説明もし論証もした。
17:04> ある人たちは納得がいって、パウロとシラスにしたがった。その中には、信心深いギリシャ人が多数あり、貴婦人たちも少なくなかった。
17:05> ところが、ユダヤ人たちは、それをねたんで、町をぶらついているならず者らを集めて暴動を起こし、町を騒がせた。それからヤソンの家を襲い、ふたりを民衆の前にひっぱり出そうと、しきりに捜した。
17:06> しかし、ふたりが見つからないので、ヤソンの兄弟たち数人を、市の当局者のところに引きずって行き、叫んで言った、「天下をかき回してこの人たちが、ここにもはいり込んでいます。
17:07> その人たちをヤソンが自分の家に迎え入れました。この連中は、みなカイザルの詔勅にそむいて行動し、イエスという別の王がいるなどと言っています」。
17:08> これを聞いて、群衆と市の当局者は不安に感じた。17:09> そして、ヤソンやほかの者たちから、保証金を取った上、彼らを釈放した。
17:10> そこで、兄弟たちはただちに、パウロとシラスとを、夜の間にベレヤへ送り出した。ふたりはベレヤに到着すると、ユダヤ人の会堂に行った。
17:11> ここにいるユダヤ人はテサロニケの者たちよりも素直であって、心から教えを受けいれ、果たしてそのとおりがどうかを知ろうとして、日々聖書を調べていた。
17:12> そういうわけで、彼らのうちの多くの者が信者になった。また、ギリシャの貴婦人や男子で信じた者も、少なくなかった。
17:13> テサロニケのユダヤ人たちは、パウロがベレヤでも神の言を伝えていることを知り、そこにも押しかけてきて、群衆を扇動して騒がせた。
17:14> そこで兄弟たちは、ただちにパウロを送り出しいて、海べまで行かせ、シラスとテモテとはベレヤに居残った。
17:15> パウロを案内した人たちは、彼をアテネまで連れて行き、テモテとシラスとになるべく早くくるようにとのパウロの伝言を受けて、帰った。
17:16> さて、パウロはアテネで彼らを待っている間に、市内に偶像がおびただしくあるのを見て、心に憤りを感じた。
17:17> そこで彼は、会堂ではユダヤ人の信心深い人たちと論じ、広場では毎日そこで出会う人々を相手に論じた。
17:18> また、エピクロス派やストア派の哲学者数人も、パウロと議論を戦わせていたが、その中のある者たちが言った、「このおしゃべりは、いったい、何を言おうとしているのか」。また、ほかの者たちは、「あれは、異国の神々を伝えようとしているらしい」と言った。パウロがイエスと復活とを、宣べ伝えていたからである。
17:19> そこで、彼らはパウロをアレオパゴスの評議所に連れて行って、「君の語っている新しい教えがどんなものか、知らせてもらえまいか。
17:20> 君がなんだか珍しいことをわれわれに聞かせているので、それがなんの事なのか知りたいと思うのだ」と言った。
17:21> いったい、アテネ人もそこに滞在している外国人もみな、何か耳新しいことを話したり聞いたりする事のみに、時を過ごしていたのである。
17:22> そこでパウロは、アレオパゴスの評議所のまん中に立って言った。「アテネの人たちよ、あなたがたは、あらゆる点において、すこぶる宗教心に富んでおられると、わたとは見ている。
17:23> 実は、わたしが道を通りながら、あなたがたの拝むいろいろなものを、よく見ているうちに、『知られない神に』と刻まれた祭壇もあるのに気がついた。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるものを、いま知らせてあげよう。
17:24> この世界と、その中にある万物とを造った神は、天地の主であるのだから、手で造った宮などにはお住みにならない。
17:25> また、何か不足でもしておるかのように、人の手によって仕えられる必要もない。神は、すべての人々に命と息と万物とを与え、
17:26> また、ひとりの人から、あらゆる民族を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに時代を区分し、国土の境界を定めて下さったのである。
17:27> こうして、人々が熱心に追い求めて捜しさえすれば、神を見いだせるようにして下さった。事実、神はわれわれひとりびとりから遠くは離れておいでになるのではない。
17:28> われわれは神のうちに生き、動き、存在しているからである。あなたがたのある詩人たちも言ったように。『われわれも、確かにその子孫である』。
17:29> このように、われわれは神の子孫なのであるから、神たる者を、人間の技巧や空想で金や銀や石などに彫り付けたものと同じと、見なすべきではない。
17:30> 神は、このような無知の時代をこれまでは見過ごしにされていたが、今はどこにおる人でも、みな悔い改めなければならないことを命じておられる。
17:31> 神は、議をもってこの世界をさばくためその日を定め、お選びになったかたによってそれをなし遂げようとされている。すなわち、このかたを死人の中からよみがえらせ、その確証をすべての人に示されたのである」。
17:32> 死人のよみがえりのことを聞くと、ある者たちはあざ笑い、またある者たちは、「この事については、いずれまた聞くことにする」と言った。
17:33> こうして、パウロは彼らの中から出て行った。
17:34> しかし、彼にしたがって信じた者も、幾人かあった。その中には、アレオパゴスの裁判人デオヌシオとダマリスという女、また、その他の人々もいた。

第十八章
18:01> その後、パウロはアテネを去ってコリントへ行った。
18:02> そこで、アクラというポント生まれのユダヤ人と、その妻プリスキラとに出会った。クラウデオ帝が、すべてのユダヤ人をローマから退去させるようにと、命令したため、彼らは近ごろイタリヤから出てきたのである。
18:03> パウロは彼らのところに行ったが、互いに同業であったので、その家に住み込んで、一緒に仕事をした。天幕づくりがその職業であった。
18:04> パウロは安息日ごとに会堂で論じては、ユダヤ人やギリシャ人の説得に努めた。
18:05> シラスとテモテが、マケドニヤから下ってきてからは、パウロは御言を伝える事に専念し、イエスがキリストであることを、ユダヤ人たちに強くあかしした。
18:06> しかし、彼らがこれに反抗してののしり続けたので、パウロは自分の上着を振りはらって、彼らに言った、「あなたがたの血は、あなたがた自身にかえれ。わたしには責任がない。今からわたしは異邦人の方に行く」。
18:07> こう言って、彼はそこを去り、テテオ・ユストという神を敬う人の家に行った。その家は会堂と隣り合っていた。
18:08> 会堂司リクスポは、その家族一同と共に主を信じた。また多くのコリント人も、パウロの話を聞いて信じ、ぞくぞくとバプテスマを受けた。
18:09> すると、ある夜、幻のうちに主がパウロに言われた、「恐れるな。語りつづけよ、黙っているな。
18:10> あなたには、わたしがついている。だれもあなたを襲って、危害を加えるようなことはない。この町にはわたしの民が大ぜいいる」。
18:11> パウロは一年六か月の間ここに腰をすえて、神の言を彼らの間に教えつづけた。
18:12> ところが、ガリオがアカヤの総督であった時、ユダヤ人たちは一緒になってパウロを襲い、彼を法廷にひっぱって行って訴えた、
18:13> 「この人は、律法にそむいて神を拝むように、人々をそそのかしています」。
18:14> パウロが口を開こうとすると、ガリオはユダヤ人たちに言った、「ユダヤ人諸君、何か不法行為とか、悪質な犯罪とかのことなら、わたしは当然、諸君の訴えを取り上げもしようが、
18:15> これは諸君の言葉や名称や律法に関する問題なのだから、諸君みずから始末するがよかろう。わたしはそんな事の裁判人にはなりたくない」。
18:16> こう言って、彼らを法廷から追いはらった。
18:17> そこで、みんなの者は、会堂司ソステネを引き捕らえ、法廷の前で打ちたたいた。ガリオはそれに対して、そ知らぬ顔をしていた。
18:18> さてパウロはなお幾日ものあいだ滞在した後、兄弟たちに別れを告げて、シリヤへ向け出帆した。プリスキラとアリラも同行した。パウロは、かねてから、ある誓願を立てていたので、ケンクレヤで頭をそった。
18:19> 一行がエペソに着くと。パウロはふたりをそこに残しておき、自分だけ会堂にはいって、ユダヤ人たちと論じた。
18:20> 人々は、パウロにもっと長いあいだ滞在するように願ったが、彼は聞きいれないで、
18:21> 「神のみこころなら、またあなたがたのところに帰ってこよう」と言って、別れを告げ、エペソから船出した。
18:22> それから、カイザリヤで上陸してエルサレムに上り、教会にあいさつしてから、アンテオケに下って行った。
18:23> そこにしばらくいてから、彼はまた出かけ、ガラテアおよびフルギヤの地方を歴訪して、すべての弟子たちを力づけた。
18:24> さて、アレキサンデリヤ生まれで、聖書に精通し、しかも、雄弁なアポロというユダヤ人が、エペソにきた。
18:25> この人は主の道に通じており、また、霊に燃えてイエスのことを詳しく語ったり教えたりしていたが、ただヨハネのバプテスマしか知っていなかった。
18:26> 彼は会堂で大胆に語り始めた。それをプリスキラとアクラとが聞いて、彼を招きいれ、さらに詳しく神の道を説き聞かせた。
18:27> それから、アポロがアカヤに渡りたいと思っていたので、兄弟たちは彼を励まし、先方の弟子たちに、彼をよく迎えるようにと、手紙を書き送った。彼は到着して、すでにめぐみによって信者になっていた人たちに、大いに力になった。
18:28> 彼はイエスがキリストであることを、聖書に基づいて示し、公然と、ユダヤ人たちを激しい語調で論破したからである。

第十九章
19:01> アポロがコリントにいた時、パウロは奥地をとおってエペソにきた。そして、ある弟子たちに出会って、
19:02> 彼らに「あなたがたは、信仰にはいった時に、聖霊を受けたのか」と尋ねたところ、「いいえ、聖霊なるものがあることさえ、聞いたことがありません」と答えた。
19:03> 「では、だれの名によってバプテスマを受けたのか」と彼がきくと、彼らは「ヨハネの名によるバプテスマを受けました」と答えた。
19:04> そこで、パウロが言った、「ヨハネは悔い改めのバプテスマを授けたが、それによって、自分のあとに来るかた、すなわち、イエスを信じるように、人々に勧めたのである」。
19:05> 人々はこれを聞いて、主イエスの名によるバプテスマを受けた。
19:06> そして、パウロが彼らの上に手をおくと、聖霊が彼らに下り、それから彼らが異言を語ったり、預言をしたりし出した。
19:07> その人たちはみんなで十二人ほどであった。
19:08> それから、パウロは会堂にはいって、三か月のあいだ、大胆に神の国について論じ、また勧めをした。
19:09> ところが、ある人たちは心をかたくなにして、信じようとせず、会衆の前でこの道をあしざまに言ったので、彼は弟子たちを引き連れて、その人たちから離れ、ツラノの講堂で毎日論じた。
19:10> それが二年間も続いたので、アジヤにすんでいる者は、ユダヤ人もギリシャ人も皆、主の言を聞いた。
19:11> 神は、パウロの手によって、異常な力あるわざを次次になされた。
19:12> たとえば、人々が、彼の身につけている手ぬぐいや前掛けを取って病人にあてると、その病気が除かれ、悪霊が出て行くのであった。
19:13> そこで、ユダヤ人のまじない師で、遍歴している者たちが、悪霊につかれている者にむかって、主イエスの名をとなえ、「パウロの宣べ伝えているイエスによって命じる。出て行け」と、ためしに言ってみた。
19:14> ユダヤの祭司長スケワという者の七人のむすこたちも、そんなことをしていた。
19:15> すると悪霊がこれに対して言った、「イエスなら自分は知っている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者だ」。
19:16> そして、悪霊につかれている人が、彼らに飛びかかり、みんなを押さえつけて負かしたので、彼らは傷を負ったまま裸になって、その家を逃げ出した。
19:17> このことがエペソに住むすべてのユダヤ人やギリシャ人に知れわたって、みんな恐怖に襲われ、そして、主イエスの名があがめられた。
19:18> また信者になった者が大ぜいきて、自分の行為を打ちあけて告白した。
19:19> それから、魔術を行っていた多くの者が、魔術の本を持ち出してきては、みんなの前で焼き捨てた。その値段を総計したところ、銀五万にも上ることがわかった。
19:20> このようにして、主の言はますます盛んにひろまり、また力を増し加えていった。
19:21> これらの事があった後、パウロは御霊に感じて、マケドニヤ、アカヤをとおって、エルサレムへ行く決心をした。そして言った、「わたしは、そこに言ったのち、ぜひローマをも見なければならない」。
19:22> そこで、自分に仕えている者の中から、テモテとエラストとのふたりを、まずマケドニヤに送り出し、パウロ自身は、なおしばらくアジヤにとどまった。
19:23> そのころ、この道について容易ならぬ騒動が起こった。
19:24> そのいきさつは、こうである。デメテリオという銀細工人が、銀でアルテミス神殿の模型を造って、職人たちに少なからぬ利益を得させていた。
19:25> この男がその職人たちや、同類の仕事をしていた者たちを集めて言った、「諸君、われわれがこの仕事で、金もうけしていることは、ご承知のとおりだ。
19:26> しかるに、諸君の見聞きしているように、あのパウロが、手で造られたものは神様ではないなどと言って、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体にわたって、大ぜいの人々を説きつけて誤らせた。
19:27> これでは、お互いの仕事に悪評がたつおそれがあるばかりか、大女神アルテミスの宮も軽んじられ、ひいては全アジヤ、いや全世界が拝んでいるこの大女神のご威光さえも、消えてしまいそうである」。
19:28> これを聞くと、人々は怒りに燃え、大声で「大いなるかな、エペソのアルテミス」と叫びつづけた。
19:29> そして、町中が大混乱に陥り、人々はパウロの道連れであるマケドニヤ人ガイオとアリスタルコとを捕えて、いっせいに劇場へなだれ込んだ。
19:30> パウロは群衆の中にはいって行こうとしたが、弟子たちがそれをさせなかった。
19:31> アジヤ州の議員で、パウロの友人であった人たちも、彼に使いをよこして、劇場にはいって行かないようにと、しきりに頼んだ。
19:32> 中では、集会が混乱に陥ってしまって、ある者はこのことを、ほかの者はあのことを、どなりつづけていたので、大多数の者は、なんのために集まったのかも、わからないでいた。
19:33> そこで、ユダヤ人たちが、前に押し出したアレキサンデルなる者を、群衆の中のある人たちが促したため、彼は手を振って、人々に弁明を試みようとした。
19:34> ところが、彼がユダヤ人だとわかると、みんなの者がいっせいに「大いなるかな、エペソ人アルテミス」と二時間ばかりも叫びつづけた。
19:35> ついに、市の書記役が群衆を押し静めて言った、「エペソの諸君、エペソ市が大女神アルテミスと、天くだったご神体との守護役であることを知らない者が、ひとりでもいるだろうか。
19:36> これは否定できない事実であるから、諸君はよろしく静かにしているべきで、乱暴な行動は、いっさいしてはならない。
19:37> 諸君はこの人たちをここにひっぱってきたが、彼らは宮を荒らす者でも、われわれの女神をそしる者でもない。
19:38> だから、もしデメテリオなりその職人仲間なりが、だれかに対して訴え事があるなら、裁判の日はあるし、総督もいるのだから、それぞれ訴え出るがよい。
19:39> しかし、何かもっと要求したい事があれば、それは正式の議会で解決してもらうべきだ。
19:40> きょうの事件については、この騒ぎを弁護できるような理由が全くないのだから、われわれは治安をみだす罪に問われるおそれがある」。
19:41> こう言って、彼はこの集会を解散させた。

第二十章
20:01> 騒ぎがやんだ後、パウロは弟子たちを呼び集めて激励を与えた上、別れのあいさつを述べ、マケドニヤへ向かって出発した。
20:02> そして、その地方をとおり、多くの言葉で人々を励ましたのち、ギリシャにきた。
20:03> 彼はそこで三か月を過ごしした。それからシリヤへ向かって、船出しようとしていた矢先、彼に対するユダヤ人の陰謀が起こったので、マケドニヤを経由して帰ることに決した。
20:04> プロの子であるベレヤ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、それからテモテ、またアジヤ人テキコとトロピモがパウロの同行者であった。
20:05> この人たちは先発して、トロアスでわたしたちを待っていた。
20:06> わたしたちは、徐酵際が終わったのちに、ピリピから出帆し、五日かかってトロアスに到着して、彼らと落ち合い、そこに七日間滞在した。
20:07> 週の初めの日に、わたしたちがパンをさくために集まった時、パウロは翌日出発することにしていたので、しきりに人々と語り合い、夜中まで語りつづけた。
20:08> わたしたちが集まっていた屋上の間には、あんりがたくさんともしてあった。
20:09> ユテコという若者が窓に腰をかけていたところ、パウロの話がながながと続くので、ひどく眠けがさしてきて、とうとうぐっすり寝入ってしまい、三階から下に落ちた。抱き起こしてみたら、もう死んでいた。
20:10> そこでパウロは降りてきて、若者の上に身をかがめ、彼を抱き上げて、「騒ぐことはない、まだ命がある」と言った。
20:11> そして、また上がって行って、パンをさいて食べてから、明けがたまで長いあいだ人々と語り合って、ついに出発した。
20:12> 人々は生きかえった若者を連れかえり、ひとかたならず慰められた。
20:13> さて、わたしたちは先に舟に乗り込み、アソスへ向かって出帆した。そこからパウロを舟に乗せて行くことにしていた。彼だけは陸路をとることに決めていたからである。
20:14> パウロがアソスで、わたしたちと落ち合った時、わたしたちは彼を舟に乗せてミテレネに行った。
20:15> そこから出帆して、翌日キヨスの沖合いにいたり、次の日にサモスに寄り、その翌日ミレトに着いた。
20:16> それは、パウロがアジヤで時間をとられないため、エペソには寄らないで続航することに決めていたからである。彼は、できればペンテコステの日には、エルサレムに着いていたかったので、旅を急いでいたわけである。
20:17> そこでパウロは、ミレトからエペソに使いをやって、教会の長老たちを呼び寄せた。
20:18> そして、彼のところに寄り集まってきた時、彼らに言った。「わたしが、アジヤの地に足を踏み入れた最初の日以来、いつもあなたがたとどんなふうに過ごしてきたか、よくご存知である。
20:19> すなわち、謙遜の限りをつくし、涙を流し、ユダヤ人の陰謀によってわたしの身に及んだ数数の試練の中にあって、主に仕えてきた。
20:20> また、あなたがたの益になることは、公衆の前でも、また家々でも、すべてあますことなく話して聞かせ、また教え、
20:21> ユダヤ人にもギリシャ人にも、神に対する悔改めと、わたしたちの主イエスに対する信仰とを、強く勧めてきたのである。
20:22> 今や、わたしは御霊に迫られてエルサレムへ行く。あの都で、どんな事がわたしの身にふりかかって来るか、わたしにはわからない。
20:23> ただ、聖霊が至るところの町々で、わたしにはっきり告げているのは、投獄と患難とが、わたしを待ちうけているということだ。
20:24> しかし、わたしは自分の行程を走り終え、主イエスから賜った、神のめぐみの福音をあかしする任務を果たし得さえしたら、このいのちは自分にとって、少しも惜しいとは思わない。
20:25> わたしはいま信じている、あなたがたの間を歩き回って御国を宣べ伝えたこのわたしの顔を、みんなが今後二度と見ることはあるまい。
20:26> だから、きょう、この日にあなたがたに断言しておく。わたしは、すべての人の血について、なんら責任がない。
20:27> 神のみ旨を皆あますところなく、あなたがたに伝えておいたからである。
20:28> どうか、あなたがた自身に気をつけ、また、すべての群れに気をくばっていただきたい。聖霊は、神が御子の血であがない取られた神の教会を牧させるために、あなたがたにその群れの監督者にお立てになったのである。
20:29> わたしが去った後、狂暴なおおかみが、あなたがたの中にはいり込んできて、容赦なく群れを荒らすようになることを、わたしは知っている。
20:30> また、あなたがた自身の中からも、いろいろ曲がったことを言って、弟子たちを自分の方に、ひっぱり込もうとする者が起こるであろう。
20:31> だから、目をさましていなさい。そして、わたしが三年の間、夜も昼も涙をもって、あなたがたひとりびとりを絶えずさとしてきたことを、忘れないでほしい。
20:32> 今わたしは、主とその恵みの言とに、あなたがたをゆだねる。御言には、あなたがたの徳をたて、聖別されたすべての人々と共に、御国をつがせる力がある。
20:33> わたしは、人の金や銀や衣服をほしがったことはない。
20:34> あなたがた自身が知っているとおり、わたしのこの両手は、自分の生活のためにも、また一緒にいた人たちのためにも、働いてきたのだ。
20:35> わたしは、あなたがたにもこのように働いて、弱い者を助けなければならないこと、また『受けるよりは与える方が、さいわいである』と言われた主イエスの言葉を記憶しているべきことを、万事について教え示したのである」。
20:36> こう言って、パウロは一同と共にひざまづいて祈った。
20:37> みんなの者は、はげしく泣き悲しみ、パウロの首を抱いて、幾度も接吻し、
20:38> もう二度と自分の顔を見ることはあるまいと彼が言ったので、特に心を痛めた。それから彼を舟まで見送った。

第二十一章
21:01> さて、わたしたちは人々と別れて船出してから、コスに直航し、次の日はロドスに、そこからパタラに着いた。
21:02> ここでピニケ行きの船を見つけたので、それに乗り込んで出帆した。
21:03> やがてクプロが見えてきたが、それを左手にして通りすぎ、シリヤへ航行をつづけ、ツロに入港した。ここで積荷が陸上げされることになっていたからである。
21:04> わたしたちは、弟子たちを捜し出して、そこに七日間泊まった。ところが彼らは、御霊の示しを受けて、エルサレムには上って行かないようにと、しきりにパウロに注意した。
21:05> しかし、滞在期間が終わった時、わたしたちはまた旅立つことにしたので、みんなの者は、妻や子を引き連れて、町はずれまで、わたしたちを見送りにきてくれた。そこで、共に海岸にひざまづいて祈り、
21:06> 互いに別れを告げた。それから、わたしたちは船に乗り込み、彼らはそれぞれ自分の家に帰った。
21:07> わたしたちは、ツロからの航行を終わってトレマイに着き、そこの兄弟たちにあいさつをし、彼らのところに一日滞在した。
21:08> 翌日そこをたって、カイザリヤに着き、かの七人のひとりである伝道者ピリポの家に行き、そこに泊まった。
21:09> この人に四人の娘があったが、いずれも処女であって、預言をしていた。
21:10> 幾日か滞在している間に、アガボという預言者がユダヤから下ってきた。
21:11> そして、わたしたちのところにきて、パウロの帯を取り、それで自分の手足を縛って言った、「聖霊がこうお告げになっている、『この帯の持ち主を、ユダヤ人たちがエルサレムでこのように縛って、異邦人の手に渡すであろう』」。
21:12> わたしたちはこれを聞いて、土地の人たちと一緒になって、エルサレムには上って行かないようにと、パウロに願い続けた。
21:13> その時パウロは答えた、「あなたがたは、泣いたり、わたしの心をくじいたりして、いったい、どうしようとするのか。わたしは、主イエスの名のためなら、エルサレムで縛られるだけでなく、死ぬことも覚悟しているのだ」。
21:14> こうして、パウロが勧告を聞きいれてくれないので、わたしたちは「主のみこころが行われますように」と言っただけで、それ以上、何も言わなかった。
21:15> 数日後、わたしたちは旅装を整えてエルサレムへ上って行った。
21:16> カイザリヤの弟子たちも数人、わたしたちと同行して、古くからの弟子であるクプロ人マナソンの家に案内してくれた。わたしたちはその家に泊まることになっていたのである。
21:17> わたしたちがエルサレムに到着すると、兄弟たちは喜んで迎えてくれた。
21:18> 翌日パウロはわたしたちを連れて、ヤコブを訪問しに行った。そこに長老たちがみな集まっていた。
21:19> パウロは彼らにあいさつをした後、神が自分の働きをとおして、異邦人の間になさった事どもを一々説明した。
21:20> 一同はこれを聞いて神をほめたたえ、そして彼に言った、「兄弟よ、ご承知のように、ユダヤ人の中で信者になった者が、数万にものぼっているが、みんな律法に熱心な人たちである。
21:21> ところが、彼らが伝え聞いているところによれば、あなたは異邦人の中にいるユダヤ人一同に対して、子供に割礼を施すな、またユダヤの慣例にしたがうなと言って、モーセにそむくことを教えている、ということである。
21:22> どうしたらよいか。あなたがここにきていることは、彼らもきっと聞き込むに違いない。
21:23> ついては、今わたしたちが言うとおりのことをしなさい。わたしたちの中に、誓願を立てている者が四人いる。
21:24> この人たちを連れて行って、彼らと共にきよめを行い、また彼らの頭をそる費用を引き受けてやりなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、根も葉もないことで、あなたは律法を守って、正しい生活をしていることが、みんなにわかるであろう。
21:25> 異邦人で信者になった人たちには、すでに手紙で、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したもの、不品行とを、慎むようにとの決議が、わたしたちから知らせてある」。
21:26> そこでパウロは、その次の日に四人の者を連れて、彼らと共にきよめを受けてから宮にはいった。そしてきよめの期間が終って、ひとりびとりのために供え物をささげる時を報告しておいた。
21:27> 七日の期間が終わろうとしていた時、アジヤからきたユダヤ人たちが、宮の内でパウロを見かけて、群衆全体を扇動しはじめ、パウロに手をかけて叫び立てた、
21:28> 「イスラエルの人々よ、加勢にきてくれ。この人は、いたるところで民と律法とこの場所にそむくことを、みんなに教えている。その上に、ギリシャ人を宮の内に連れ込んで、この神聖な場所を汚したのだ」。
21:29> 彼らは、前にエペソ人トロピモが、パウロと一緒に町を歩いていたのを見かけて、その人をパウロが宮の内に連れ込んだのだと思ったのである。
21:30> そこで、市全体が騒ぎ出し、民衆が駆け集まってきて、パウロを捕らえ、宮の外に引きずり出した。そして、すぐそのあとに宮の門が閉ざされた。
21:31> 彼らがパウロを殺そうとしていた時に、エルサレム全体が混乱状態に陥っているとの情報が、守備隊の千卒長にとどいた。
21:32> そこで、彼はさっそく、兵卒や百卒長たちを率いて、その場に駆けつけた。人々は千卒長や兵卒たちを見て、パウロを打ちたたくのをやめた。
21:33> 千卒長は近寄ってきてパウロを捕え、彼を二重の鎖で縛っておくように命じた上、パウロは何者か、また何をしたのか、と尋ねた。
21:34> しかし、群衆がそれぞれ違ったことを叫びつづけるため、、騒がしくて、確かなことがわからないので、彼はパウロを兵営に連れて行くように命じた。
21:35> パウロが階段にさしかかった時には、群衆の暴行を避けるため、兵卒たちにかつがれて行くという始末であった。
21:36> 大ぜいの民衆が「あれをやっつけてしまえ」と叫びながら、ついてきたからである。
21:37> パウロが兵営の中に連れて行かれようとした時、千卒長に、「ひと言あなたにお話してもよろしいですか」と尋ねると、千卒長が言った、「おまえはギリシャ語が話せるのか。
21:38> では、もしかおまえは、先ごろ反乱を起こした後、四千人の刺客を引き連れて荒野へ逃げて行ったあのエジプト人ではないか」。
21:39> パウロは答えた、「わたしはタルソ生まれのユダヤ人で、キリキヤのれっきとした都市の市民です。お願いですが、民衆に話しをさせて下さい」。
21:40> 千卒長が許してくれたので、パウロは階段の上に立ち、民衆にむかって手を振った。すると、一同がすっかり静粛になったので、パウロはヘブル語で話し出した。

第二十二章
22:01> 「兄弟たち、父たちよ、いま申し上げるわたしの弁明を聞いていただきたい」。
22:02> パウロが、ヘブル語でこう語りかけるのを聞いて、人々はますます静粛になった。
22:03> そこで彼は言葉をついで言った、「わたしはキリキヤのタルソで生まれたユダヤ人であるか、この都で育てられ、ガマリエルのひざもとで先祖伝来の律法について、きびしい薫陶を受け、今日の皆さんと同じく神に対して熱心な者であった。
22:04> そして、この道を迫害し、男であれ女であれ、縛りあげて獄に投じ、彼らを死に至らせた。
22:05> このことは、大祭司も長老たちも一同も、証明するところである。さらにわたしは、この人たちからダマスコの同志たちへあてた手紙をもらって、その地にいる者たちを縛り上げ、エルサレムにひっぱってきて、処罰するため、出かけて行った。
22:06> 旅をつづけてダマスコの近くにきた時に、真昼ごろ、突然、つよい光が天からわたしをめぐり照らした。
22:07> わたしは地に倒れた。そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか』と、呼びかける声を聞いた。
22:08> これに対してわたしは、『主よ、あなたはどなたですか』と言った。すると、その声が、『わたしは、あなたがはくがいしているナザレ人イエスである』と答えた。
22:09> わたしと一緒にいた者たちは、その光は見たが、わたしに語りかけたかたの声は聞かなかった。
22:10> わたしが『主よ、わたしは何をしたらよいでしょうか』と尋ねたところ、主は言われた、『起きあがってダマスコに行きなさい。そうすれば、あなたがするように決めてある事が、すべてそこで告げられるであろう』。
22:11> わたしは、光の輝きで目がくらみ、何も見えなくなっていたので、連れの者たちに手を引かれながら、ダマスコに行った。
22:12> すると、律法に忠実で、ダマスコ在住のユダヤ人全体に評判のよいアナニヤという人が、
22:13> わたしのところにきて、そばに立ち、『兄弟サウロよ、見えるようになりなさい』と言った。するとその瞬間に、わたしの目が開いて、彼の姿が見えた。
22:14> 彼は言った、『わたしたちの先祖の神が、あなたを選んでみ旨を知らせ、かの義人を見させ、その口から声をお聞かせになった。
22:15> それはあなたが、その見聞きした事につき、すべての人に対して、彼の証人になるためである。
22:16> そこで今、なんのためらうことがあろうか。すぐ立って、みなをとなえてバプテスマを受け、あなたの罪を洗い落としなさい』。
22:17> それからわたしは、エルサレムに帰って宮で祈っているうちに、夢うつつになり、
22:18> 主にまみえたが、主は言われた、『急いで、すぐにエルサレムを出て行きなさい。わたしについてのあなたのあかしを、人々が受けいれないから』。
22:19> そこで、わたしが言った、『主よ、彼らは、わたしがいたるところの会堂で、あなたを信じる人人を獄に投じたり、むち打ったりしていたことを、知っています。
22:20> また、あなたの証人ステパノの血が流された時も、わたしは立ち会っていてそれに賛成し、また彼を殺した人たちの上着の番をしていたのです』。
22:21> すると、主がわたしに言われた、『行きなさい。わたしが、あなたを遠く異邦の民へつかわすのだ』」。
22:22> 彼の言葉をここまで聞いていた人々は、このとき、声を張りあげて言った、「こんな男は地上から取り除いてしまえ。生かしておくべきではない」。
22:23> 人々がこうわめき立てて、空中に上着を投げ、ちりをまき散らす始末であったので、
22:24> 千卒長はパウロを兵営に引き入れるように命じ、どういうわけで、彼に対してこんなにわめき立てているのかを確かめるため、
22:25> 彼をむちの拷問にかけて、取り調べるように言いわたした。彼らがむちを当てるため、彼を縛りつけていた時、パウロはそばに立っている百卒長に言った、「ローマの市民たる者を、裁判にかけもしないで、むち打ってよいのか」。
22:26> 百卒長はこれを聞き、千卒長のところに行って報告し、そして言った、「どうなさいますか。あの人はローマの市民なのです」。
22:27> そこで、千卒長がパウロのところにきて言った、「わたしに言ってくれ。あなたはローマの市民なのか」。ぱうろは「そうです」と言った、
22:28> これに対して千卒長が言った、「わたしはこの市民権を、多額の金で買い取ったのだ」。するとパウロは言った、「わたしは生まれながらの市民です」。
22:29> そこで、パウロを取り調べようとしていた人たちは、ただちに彼から身を引いた。千卒長も、パウロがローマの市民であること、また、そういう人を縛っていたことがわかって、恐れた。
22:30> 翌日、彼は、ユダヤ人がなぜパウロを訴え出たのか、その真相を知ろうと思って彼を解いてやり、同時に祭司長たちと全議会とを召集させ、そこに彼を引き出して、彼らの前に立たせた。

第二十三章
23:01> パウロは議会を見つめて言った、「兄弟たちよ、わたしは今日まで、神の前に、ひたすら明かな良心にしたがって行動してきた」。
23:02> すると、大祭司アナニヤが、パウロのそばに立っている者たちに、彼の口を打てと命じた。
23:03> そのとき、パウロはアナニヤに向かって言った、「白く塗られた壁よ、神があなたを打つであろう。あなたは、律法にしたがって、わたしをさばくためについているのに、律法にそむいて、わたしを打つことを命じるのか」。
23:04> すると、そばに立っている者たちが言った、「神の大祭司に対して無礼なことを言うのか」。
23:05> パウロは言った、「兄弟たちよ、彼が大祭司だとは知らなかった。聖書に『民のかしらを悪く言ってはいけない』と、書いてあるのだった」。
23:06> パウロは、議員の一部がサドカイ人であり、一部はパリサイ人であるのを見て、議会の中で声を高めて言った、「兄弟たちよ、私はパリサイ人であり、パリサイ人の子である。わたしは、死人の復活の望みをいだいていることで、裁判を受けているのである」。
23:07> 彼がこう言ったところ、パリサイ人とサドカイ人との間に争論が生じ、会衆が相分かれた。
23:08> 元来、サドカイ人は、復活とか天使とか霊とかは、いっさい存在しないと言い。パリサイ人は、それらは、みな存在すると主張している。
23:09> そこで、大騒ぎとなった。パリサイ派のある律法学者たちが立って、強く主張して言った、「われわれは、この人には何も悪いことがないと思う。あるいは、霊か天使かが、彼に告げたのかも知れない」。
23:10> こうして、争論が激しくなったので、千卒長は、パウロが彼らに引き裂かれるのを気づかって、兵卒どもに、降りて行ってパウロを彼らの中から力づくで引き出し、兵営につれて来るように、命じた。
23:11> その夜、主がパウロに望んで言われた、「しっかりせよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなくてはならない」。
23:12> 夜が明けると、ユダヤ人らは申し合わせをして、パウロを殺すまでは飲食をいっさい断つと、誓いあった。
23:13> この陰謀に加わった者は、四十人あまりであった。
23:14> 彼らは、祭司長たちや長老たちのところに行って、こう言った。「われわれは、パウロを殺すまでは何も食べないと、堅く誓い合いました。
23:15> ついては、あなたがたは議会と組んで、彼のことでなお詳しく取調をするように見せかけ、パウロをあなたがたのところに連れ出すように、千卒長に頼んで下さい。われわれとしては、パウロがそこにこないうちに殺してしまう手はずをしています」。
23:16> ところが、パウロの姉妹の子が、この待伏せのことを耳にし、兵営にはいって行って、パウロにそれを知らせた。
23:17> そこでパウロは、百卒長のひとりを呼んで言った、「この若者を千卒長のところに連れて行って下さい。何か報告することがあるようですから」。
23:18> この百卒長は若者を連れて行き、千卒長に引きあわせて言った、「囚人パウロが、この若者があなたに話したいことがあるので、あなたのところに連れて行ってくれるようにと、わたしを呼んで頼みました」。
23:19> そこで千卒長は、若者の手を取り、人のいないところへ連れて行って尋ねた、「わたしにはなしたいことというのは、何か」。
23:20> 若者が言った、「ユダヤ人たちが、パウロのことをもっと詳しく取調べすると見せかけて、あす議会に彼を連れ出すように、あなたに頼むことに決めています。
23:21> ぞうぞ、彼らの頼みを取り上げないで下さい。四十人あまりの者が、パウロを待伏せしているのです。彼らは、パウロを殺すまではいっさいを断つと、堅く誓い合っています。そして、いま手はずをととのえて、あなたの許可を待っているところなのです」。
23:22> そこで千卒長は、「このことをわたしに知らせたことは、だれにも口外するな」と命じて、若者を帰した。
23:23> それから彼は、百卒長ふたりを呼んで言った、「歩兵二百名、騎兵七十名、槍兵二百名をカイザリヤに向け出発できるように、今夜九時までに用意せよ。
23:24> また、パウロを乗せるために馬を用意して、彼を総督ペリクスのもとへ無事に連れて行け」。
23:25> さらに彼は、次のような文面の手紙を書いた、
23:26> 「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督ペリクス閣下の平安を祈ります。
23:27> 本人のパウロが、ユダヤ人らに捕らえられ、まさに殺されようとしていたのを、彼のローマ市民であることを知ったので、わたしは兵卒たちを率いて行って、彼を救い出しました。
23:28> それから、彼が訴えられた理由を知ろうと思い、彼を議会に連れて行きました。
23:29> ところが、彼はユダヤ人の律法の問題で訴えられたものであり、なんら死刑または投獄に当たる罪のないことがわかりました。
23:30> しかし、この人に対して陰謀がめぐらされているとの報告がありましたので、わたしは取りあえず、彼を閣下のもとにお送りすることにし、訴える者たちには、閣下の前で、彼に対する申立てをするようにと、命じておきました」。
23:31> そこで歩兵たちは、命じられたとおりパウロを引き取って、夜の間にアンテパトリスまで連れて行き、
23:32> 翌日は、騎兵たちにパウロを護送させることにして、兵営に帰って行った。
23:33> 騎兵たちは、カイザリヤに着くと、手紙を総督に手渡し、さらにパウロを彼に引き合わせた。
23:34> 総督は手紙を読んでから、パウロに、どの州の者かと尋ね、キリキヤの出だと知って、
23:35> 「訴え人たちがきた時に、おまえを調べることにする」と言った。そして、ヘロデの官邸に彼を守っておくように命じた。

第二十四章
24:01> 五日の後、大祭司アナニヤは、長老数名と、テルトロという弁護人を連れて下り、総督にパウロを訴え出た。
24:02> パウロが呼び出されたので、テルトロは論告を始めた。「ペリクス閣下、わたしたちが、閣下のお陰でじゅうぶんに平和を楽しみ、またこの国が、ご配慮によって、
24:03> あらゆる方面に、またいたるところで改善されていることは、わたしたちの感謝してやまないところであります。
24:04> しかし、ご迷惑をかけないように、くどくどと述べずに、手短に申し上げますから、ぞうぞ、忍んでお聞き取りのほど、お願いいたします。
24:05> さて、この男は、疫病のような人間で、世界中のすべてのユダヤ人の中に騒ぎを起こしている者であり、また、ナザレ人らの異端のかしらであれます。
24:06> この者が宮までも汚そうとしていたので、わたしたちは彼を捕縛したのです。〔そして、律法にしたがって、さばこうとしていたところ、
24:07> 千卒長ルシヤが干渉して、彼を無理にわたしたちの手から引き離してしまい、
24:08> 彼を訴えた人たちには、閣下のところに来るようにと命じました。〕それで、閣下ご自身でお調べになれば、わたしたちが彼を訴えでた理由が、全部おわかりになるでしょう」。
24:09> ユダヤ人たちも、この訴えに同調して、全くそのとおりだと言った。
24:10> そこで、総督が合図をして発言を促したので、パウロは答弁して言った。「閣下が、多年にわたり、この国民の裁判をつかさどっておられることを、よく承知していますので、わたしは喜んで、自分のことを弁明いたします。
24:11> お調べになればわかるはずですが、わたしが礼拝をしにエルサレムに上ってから、まだ十二日そこそこにしかなりません。
24:12> そして、宮の内でも、会堂内でも、あるいは市内でも、わたしがだれかと争論したり、群衆を扇動したりするのを見たものはありませんし、
24:13> 今わたしを訴え出ていることについて、閣下の前に、その証拠をあげうるものはありません。
24:14> ただ、わたしのこの事は認めます。わたしは、彼らが異端だとしている道にしたがって、わたしたちの先祖の神に仕え、律法の教えるところ、また預言者の書に書いてあることを、ことごとく信じ、
24:15> また、正しい者も正しくない者も、やがてよみがえるとの希望を、神を仰いでいだいているものです。この希望は、彼ら自身も持っているのです。
24:16> わたしはまた、神に対しまた人に対して、良心に責められることのないように、常に努めています。
24:17> さてわたしは、幾年ぶりかに帰ってきて、同胞に施しをし、また、供え物をしていました。
24:18> そのとき、彼らはわたしが宮できよめを行っているのを見ただけであって、群衆もいず、騒動もなかったのです。
24:19> ところが、アジヤからきた数人のユダヤ人がーー彼らが、わたしに対して、何かとがめ立てをすることがあったなら、よろしく閣下の前にきて、訴えるべきでした。
24:20> あるいは、何かわたしに不正なことがあったなら、わたしが議会の前に立っていた時、彼らみずから、それを指摘するべきでした。
24:21> ただ、わたしは、彼らの中に立って、『わたしは、死人のよみがえりのことで、きょう、あなたがたの前でさばきを受けているのだ』と叫んだだけのことです」。
24:22> ここでペリクスは、この道のことを相当わきまえていたので、「千卒長ルシヤが下って来るのを待って、おまえたちの事件を判決することにする」と言って、裁判を延期した。
24:23> そして百卒長に、パウロを監禁するように、しかし彼を寛大に取り扱い、友人らが世話をするのを止めないようにと、命じた。
24:24> 数日たってから、ペリクスは、ユダヤ人である妻ドルシラと一緒にきて、パウロを呼び出し、キリスト・イエスに対する信仰のことを、彼から聞いた。
24:25> そこで、パウロが、正義、節制、未来の裁判などについて論じていると、ペリクスは不安を感じてきて、言った、「きょうはこれで帰るがよい。また、よい機会を得たら、呼び出すことにする」。
24:26> 彼は、それと同時に、パウロから金をもらいたい下ごころがあったので、たびたびパウロを呼び出しては語り合った。
24:27> さて、二か年たった時、ポルキオ・フェストが、ペリクスと交代して任についた。ペリクスは、ユダヤ人の歓心を買おうと思って、パウロを監禁したままにしておいた。

第二十五章
25:01> さて、フェストは、任地に着いてから三日の後、カイザリヤからエルサレムに上ったところ、
25:02> 祭司長たちやユダヤ人の重立った者たちが、パウロを訴え出て、
25:03> 彼をエルサレムに呼び出すように取り計らっていただきたいと、しきりに願った。彼らは途中で待ち伏せして、彼を殺す考えがあった。
25:04> ところがフェストは、パウロがカイザリヤに監禁してあり、自分もすぐそこへ帰ることになっていると答、
25:05> そして言った、「では、もしあの男になにか不都合なことがあるなら、おまえたちのうちの有力者らが、わたしと一緒に下って行って、訴えるがよかろう」。
25:06> フェストは、彼らのあいだに八日か十日ほど滞在した後、カイザリヤに下って行き、その翌日、裁判の席について、パウロを引き出すように命じた。
25:07> パウロが姿をあらわすと、エルサレムから下ってきたユダヤ人たちが、彼を取りかこみ、彼に対してさまざまの重い罪状を申し立てたが、いずれもその証拠をあげることはできなかった。
25:08> パウロは「わたしは、ユダヤ人の律法に対しても、宮に対しても、またカイザルに対しても、なんら罪を犯したことはない」と弁明した。
25:09> ところが、フェストはユダヤ人の歓心を買おうと思って、パウロにむかって言った、「おまえはエルサレムに上り、この事件に関し、わたしからそこで裁判を受けることを承知するか」。
25:10> パウロは言った、「わたしは今、カイザルの法廷に立っています。わたしはこの法廷で裁判されるべきです。よくご承知のとおり、わたしはユダヤ人たちに何も悪いことはしていません。
25:11> もしわたしが悪いことをし、死に当たるようなことをしているのなら、死を免れようとはしません。しかし、もし彼らの訴えることに、なんの根拠もないとすれば、だれもわたしを彼らに引き渡す権利はありません。わたしはカイザルに上訴します」。
25:12> そこでフェストは、陪席の者たちと協議したうえ答えた、「おまえはカイザルに上訴を申し出た。カイザルのところに行くがよい」。
25:13> 数日たった後、アグリッパ王とベルニケとが、フェストに敬意を表するため、カイザリヤにきた。
25:14> ふたりは、そこに何日間も滞在していたので、フェストは、パウロのことを王に話して言った、「ここに、ペリクスが囚人として残して行ったひとりの男がいる。
25:15> わたしがエルサレムに行った時、この男のことを、祭司長たちやユダヤ人の長老たちが、わたしに報告し、彼を罪に定めるようにと要求した。
25:16> そこでわたしは、彼らに答えた。『訴えられた者が、訴えた者の前に立って、告訴に対し弁明する機会を与えない前に、その人を見放してしまうのは、ローマ人の慣例にはないことである』。
25:17> それで、彼らがここに集まってきた時、わたしは時をうつさず、次の日に裁判の席について、その男を引き出させた。
25:18> 訴えた者たちは立ち上がったが、わたしが推測していたような悪事は、彼について何一つ申し立てはしなかった。
25:19> ただ、彼と争い合っているのは、彼ら自身の宗教に関し、また、死んでしまったのに生きているとパウロが主張しているイエスなる者に関する問題に過ぎない。
25:20> これらの問題を、どう取り扱ってよいかわからなかったので、わたしは彼に、『エルサレムに行って、これらの問題について、そこでさばいてもらいたくはないか』と尋ねてみた。
25:21> ところがパウロは、皇帝の判決を受ける時まで、このまま自分をとどめておいてほしいと言うので、カイザルに彼を送りとどける時までとどめておくようにと、命じておいた」。
25:22> そこで、アグリッパがフェストに「わたしも、その人の言い分を聞いて見たい」と言ったので、フェストは、「では、あす彼から聞きとるようにしてあげよう」と答えた。
25:23> 翌日、アグリッパとベルニケとは、大いに威儀をととのえて、千卒長たちや市の重立った人たちと共に、引見所にはいってきた。すると、フェストの命によって、パウロがそこに引き出された。
25:24> そこで、フェストが言った、「アグリッパ王、ならびにご臨席の諸君。ごらんになっているこの人物は、ユダヤ人たちがこぞって、エルサレムにおいても、また、この地においても、これ以上、生かしておくべきでないと叫んで、わたしに訴え出ている者である。
25:25> しかし、彼は死に当たることは何もしていないと、わたしは見ているのだが、彼自身が皇帝に上訴すると言い出したので、彼をそちらへ送ることに決めた。
25:26> ところが、彼について、主君に書きおくる確かなものが何もないので、わたしは、彼を諸君の前に、特に、アグリッパ王よ、あなたの前に引き出して、取調をしたのち、上書すべき材料を得ようと思う。
25:27> 囚人を送るのに、その告訴の理由を示さないということは、不合理だと思うからである」。

第二十六章
26:01> アグリッパはパウロに、「おまえ自身のことを話してもよい」と言った。そこでパウロは、手をさしのべて、弁明を始めた。
26:02> 「アグリッパ王よ、ユダヤ人たちから訴えられているすべての事に関して、きょう、あなたの前で弁明することになったのは、わたしのしあわせに思うところであります。
26:03> あなたは、ユダヤ人のあらゆる慣例や問題を、よく知り抜いておられるかたですから、わたしの申すことを、寛大なお心で聞いていただきたいのです。
26:04> さて、わたしは若い時代には、初めから自国民の中で、またエルサレムで過ごしたのですが、そのころのわたしの生活ぶりは、ユダヤ人がみなよく知っているところです。
26:05> 彼らはわたしを初めから知っているので、証言しようと思えばできるのですが、わたしは、わたしたちの宗教の最も厳格な派にしたがって、パリサイ人としての生活をしていたのです。
26:06> 今わたしは、神がわたしたちの先祖に約束なさった希望をいだいているために、裁判を受けているのであります。
26:07> わたしたちと十二の部族は、夜昼、熱心に神に仕えて、その約束を得ようと望んでいるのです。王よ、この希望のために、わたしはユダヤ人から訴えられています。
26:08> 神が死人をよみがえらせるということが、あなたがたには、どうして信じられないことと思えるのでしょうか。
26:09> わたし自身も、以前は、ナザレ人イエスの名に逆らって反対の行動をすべきだと、思っていました。
26:10> そしてわたしは、それをエルサレムで敢行し、祭司長たちから権限を与えられて、多くの聖徒たちを獄に閉じ込め、彼らが殺される時には、それに賛成の意を表しました。
26:11> それから、いたるところの会堂で、しばしば彼らを罰して、無理やりに神をけがす言葉を言わせようとし、彼らに対してひどく荒れ狂い、ついに外国の町々にまで、迫害の手をのばすに至りました。
26:12> こうして、わたしは、祭司長たちから権限と委任とを受けて、ダマスコに行ったのですが、
26:13> 王よ、その途中、真昼に、光が天からさして来るのを見ました。それは、太陽よりも、もっと光り輝いて、わたしと同行者たちとをめぐり照らしました。
26:14> わたしたちはみな地に倒れましたが、その時ヘブル語でわたしにこう呼びかける声を聞きました、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである』。
26:15> そこで、わたしが『主よ、あなたはどなたですか』と尋ねると、主は言われた、『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
26:16> さあ、起きあがって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたがわたしに会った事と、あなたに現れて示そうとしている事とをあかしし、これを伝える務めに、あなたを任じるためである。
26:17> わたしは、この国民と異邦人との中から、あなたを救い出し、あらためてあなたを彼らにつかわすが、
26:18> それは、彼らの目を開き、彼らの目を開き、彼らをやみから光へ、悪魔の支配から神のみもとへ帰らせ、また、彼らが罪のゆるしを得、わたしを信じる信仰によって、聖別された人々に加わるためである』。
26:19> それですから、アグリッパ王よ、わたしは天よりの啓示にそむかず、
26:20> まず初めにダマスコにいる人々、それからエルサレムにいる人々に、さらにユダヤ全土、ならびに異邦人たちに、悔い改めて神に立ち帰り、悔い改めにふさわしいわざを行うようにと、説き勧めました。
26:21> そのために、ユダヤ人は、わたしを宮で引き捕らえて殺そうとしたのです。
26:22> しかし、わたしは今日に至るまでの神の加護を受け、このように立って、小さい者にも大きい者にもあかしをなし、預言者たちやモーセが、今後おきるべきだと語ったことを、そのまま述べてきました。
26:23> すなわち、キリストが苦難を受けること、また、死人の中から最初によみがえって、この国民と異邦人とに、光を述べ伝えるに至ったことを、あかししたのです」。
26:24> パウロがこのように弁明をしていると、フェストは大声で言った、「パウロよ、おまえは気が狂っている。博学が、おまえを狂わせている」。
26:25> パウロが言った、「フェスト閣下よ、わたしは気が狂ってはいません。わたしは、まじめな真実の言葉を語っているだけです。
26:26> 王はこれらのことをよく知っておられるので、王に対しても、率直に申し上げているのです。それは、片すみで行なわれたのではないのですから、一つとして、王が見のがされたことはないと信じます。
26:27> アグリッパ王よ、あなたは預言者を信じますか。信じておられると思います」。
26:28> アグリッパがパウロに言った、「おまえは少し説いただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」。
26:29> パウロが言った、「説くことが少しであろうと、多くであろうと、わたしが神に祈るのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの言葉を聞いた人もみな、わたしのようになって下さることです。このような鎖は別ですが」。
26:30> それから、王も総督もベルニケも、また列席の人々も、みな立ちあがった。
26:31> 退場してから、互いに語り合って言った、「あの人は、死や投獄に当たるようなことをしてはいない」。
26:32> そして、アグリッパがフェストに言った、「あの人は、カイザルに上訴していなかったら、ゆるされたであろうに」。

第二十七章
27:01> さて、わたしたちが、船でイタリヤに行くことが決まった時、パウロとそのほかの数人の囚人とは、近衛隊の百卒長ユリアスに託された。
27:02> そしてわたしたちは、アジヤ沿岸の各所に寄港することになっているアドラミテオの船に乗り込んで、出帆した。テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した。
27:03> 次の日、シドンに入港したが、ユリアスは、パウロを親切に取り扱い、友人をあとずれてかんたいを受けることを、許した。
27:04> それからわたしたちは、ここから船出してが、逆風にあったので、クプロの島かげを航行し、
27:05> キリキヤとパンフリヤの沖を過ぎて、ルキヤのミラに入港した。
27:06> そこに、イタリヤ行きのアレキサンドリヤの船があったので、百卒長は、わたしたちをその船に乗り込ませた。
27:07> 幾日ものたいだ、船の進みがおそくて、わたしたちは、かろうじてクエドの沖合いにきたが、風がわたしたちの行く手をはばむので、サルモネの沖、クレテの島かげを航行し、
27:08> その岸に沿って進み、かろうじて「良き港」と呼ばれる所に着いた。その近くにラサヤの町があった。
27:09> 長い時が経過し、断食期も過ぎてしまい、すでに航海が危険な季節になったので、パウロは人々に警告して言った、
27:10> 「皆さん、わたしの見るところでは、この航海では、積み荷や船体ばかりでなく、われわれの生命にも、危害と大きな損失が及ぶであろう」。
27:11> しかし百卒長は、パウロの意見よりも、船長や船主の方を信頼した。
27:12> なお、この港は冬を過ごすのに適していないので、大多数の者は、ここから出て、できればなんとかして、南西と北西とに面しているクレテのビニクス港に行って、そこで冬を過ごしたいと主張した。
27:13> 時に、南風が静かに吹いてきたので、彼らは、この時ばかりにいかりを上げて、クレテの岸に沿って航行した。
27:14> すると間もなく、ユーラクロンと呼ばれる暴風が、島から吹きおろしてはた。
27:15> そのために、船が流されて風に逆らうことができないいので、わたしたちは吹き流されるままに任せた。
27:16> それから、クラウダという小島の陰に、はいり込んだので、わたしたちは、やっとのことで小舟を処置することができ、
27:17> それを船に引き上げてから、綱で船体を巻きつけた。また、スルテスの州に乗り上げるのを恐れ、帆をおろして流されるままにした。
27:18> わたしたちは、暴風にひどく悩まされつづけたので、次の日に、人々は積み荷を捨てはじめ、
27:19> 三日目には、船具までも、てずから投げすてた。
27:20> 幾日ものあいだ、太陽も星も見えず、暴風は激しく吹きすさぶので、わたしたちの助かる最後の望みもなくなった。
27:21> みんなの者は、長いあいだ食事もしないでいたが、その時、パウロが彼らの中に立って言った、「皆さん、あなたがたが、わたしの忠告を聞きいれて、クレテから出なかったら、このような危害や損失を被らなくてすんだはずであった。
27:22> だが、この際、お勧めする。元気を出しなさい。船は失われるだけで、あなたがたの中で生命を失うものは、ひとりもいないであろう。
27:23> 昨夜、わたしが仕え、また拝んでいる神からの御使が、わたしのそばに立って言った、
27:24> 『パウロよ、恐れるな。あなたには必ずカイザルの前に立たなければならない。たしかに神は、あなたと同船の者を、ことごとくあなたに賜っている』。
27:25> だから、皆さん、元気を出しなさい。万事はわたしに告げられたとおりに成って行くと、わたしは、神かけて信じている。
27:26> われわれは、どこかの島に打ちあげられるに相違ない」。
27:27> わたしたちがアドリヤ海に漂ってかせ十四日目の夜になった時、真夜中ごろ、水夫らはどこかの陸地に近づいたように感じた。
27:28> そこで、水の深さを計ってみたところ、二十ひろであることがわかった。それから少し進んでもう一度測ってみたら、十五ひろであった。
27:29> わたしたちが、万一暗礁に乗り上げては大変だと、人々は気づかって、ともから四つのいかりを投げおろし、夜の明けるのを待ちわびていた。
27:30> その時、水夫らが船から逃げ出そうと思って、へさきからいかりを投げおろすと見せかけて、小舟を海におろしていたので、
27:31> パウロは百卒長や兵卒たちに言った、「あの人たちが、船に残っていなければ、あなたがたは助からない」。
27:32> そこで兵卒たちは、小舟の綱を断ち切って、その流れて行くままに任せた。
27:33> 夜が明けかけたころ、パウロは一同の者に、食事をするように勧めて言った、「あなたがたが食事もせずに、見張りを続けてから、何も食べないで、きょうが十四日目に当る。
27:34> だから、いま食事を取ることをお勧めする。それが、あなたがたを救うことになるのだから。たしかに髪の毛ひとすじでも、あなたがたの頭から失われることはないであろう」。
27:35> 彼はこう言って、パンを取り、みんなの前で神に感謝し、それをさいて食べはじめた。
27:36> そこで、みんなの者も元気づいて食事をした。
2737舟にいたわたしたちは、合わせて二百七十六人であった。
27:38> みんなの者は、じゅうぶんに食事をした後、穀物を海に投げすてて船を軽くした。
27:39> 夜が明けて、どこの土地かよくわからなかったが、砂浜のある入江が見えたので、できれば、それに船を乗り入れようということになった。
27:40> そこで、いかりを切り離して海に捨て、同時にかじの綱をゆるめ、風に前帆をあげて、砂浜にむかって進んだ。
27:41> ところが、潮流の流れ合う所に突き進んだため、船を浅瀬に乗りあげてしまった、へさきがめり込んで動かなくなり、ともの方は激浪のためこわされた。
27:42> 兵卒たちは、囚人らが泳いで逃げるおそれがあるので、殺してしまおうと図ったが、
27:43> 百卒長は、パウロを救いたいと思うところから、その意図をしりぞけ、泳げる者はまず海に飛び込んで陸に行き、
27:44> その他の者は、板や船の破片に乗って行くように命じた。こうして、全部の者が上陸して救われたのであった。

第二十八章
28:01> わたしたちが、こうして救われてからわかったが、これはマルタと呼ばれる島であった。
28:02> 土地の人々は、わたしたちに並々ならぬ親切をあらわしてくれた。かなわち、降りしきる雨や寒さをしのぐために、火をたいてわたしたち一同をねぎらってくれたのである。
28:03> そのとき、パウロはひとかかえの柴をたばねて火にくべたところ、熱気のためにまむしが出てきて、彼の手にかみついた。
28:04> 土地の人々は、この生きものがパウロの手からぶら下がっているのを見て、互いに言った、「この人は、きっと人殺しに違いない。海からはのがれたが、ディケーの神様が彼を生かしてはおかないのだ」。
28:05> ところがパウロは、まむしを火の中に振り落として、なんの害も被らなかった。
28:06> 彼らは、彼が間もなくはれあがるか、あるいは、たちまち倒れて死ぬだろうと、様子をうかがっていた。しかし、長い間うかがっていても、彼の身になんの変わったことも起こらないのを見て、彼らは考えを変えて、「この人は神様だ」と言い出した。
28:07> さて、その場所の近くに、島の首長、ポプリオという人の所有地があった。彼は、そこにわたしたちを招待して、三日のあいだ親切にもてなしてくれた。
28:08> たまたま、ポプリオの父が赤痢をわずらい、高熱で床についていた。そこでパウロは、その人のところにはいって行って祈り、手を彼の上においていやしてやった。
28:09> このことがあってから、ほかに病気をしている島の人たちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。
28:10> 彼らはわたしたちを非常に尊敬し、出帆の時には、必要な品々を持ってきてくれた。
28:11> 三か月たった後、わたしたちは、この島に冬ごもりをしていたデオスクリの船飾りのあるアレキサンドリヤの船で、出帆した。
28:12> そして、シラクサに寄港して三日のあいだ停泊し、
28:13> そこから進んでレギオンに行った。それから一日おいて、南風が吹いてきたのに乗じ、ふつか目にポテオリに着いた。
28:14> そこで兄弟たちに会い、勧められるまま、彼のところに七日間も滞在した。それからわたしたちは、ついにローマに到着した。
28:15> ところが、兄弟たちは、わたしたちのことを聞いて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎えてくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝し勇み立った。
28:16> わたしたちがローマに着いた後、パウロは、ひとりの番兵をつけられ、ひとりで住むことを許された。
28:17> 三日たってから、パウロは、重立ったユダヤ人たちを招いた。みんなの者が集まったとき、彼らに言った、「兄弟たちよ、わたしは、わが国民に対しても、あるいは先祖伝来の慣例に対しても、何一つそむく行為がなかったのに、エルサレムで囚人としてローマ人たちの手に引き渡された。
28:18> 彼らはわたしを取り調べた結果、なんら死に当たる罪状もないので、わたしを釈放しようと思ったのであるが、
28:19> ユダヤ人たちがこれに反対したため、わたしはやむを得ず、カイザルに上訴するに至ったのである。しかしわたしは、わが同胞を訴えようなどとしているのではない。
28:20> こういうわけで、あなたがたに会って語り合いと願っていた。事実、わたしは、イスラエルのいだいている希望のゆえに、この鎖につながれているのである」。
28:21> そこで彼らは、パウロに言った、「わたしたちは、ユダヤ人たちから、あなたについて、なんの文書も受け取っていないし、また、兄弟たちの中からここにきて、あなたについて不利な報告をしたり、悪口を言ったりした者もなかった。
28:22> わたしたちは、あなたの考えていることを、直接あなたから聞くのが、正しいことだと思っている。この宗派については、いたるところで反対のあることが、わたしたちの耳にもはいっている」。
28:23> そこで、日を定めて、大ぜいの人が、パウロの宿につめかけてきたので、朝から晩まで、パウロは語り続け、神の国のことをあかしし、またモーセの律法や預言者の書を引いて、イエスについて彼らの説得につとめた。
28:24> ある者はパウロの言うことを受けいれ、ある者は信じようともしなかった。
28:25> 互いに意見が合わなくて、みんなの者が帰ろうとしていた時、パウロはひとこと述べて言った、「聖霊はよくも預言者イザヤによって、あなたがたの先祖に語ったものである。
28:26> 『この民に行って言え、あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。
28:27> この民の心は鈍くなり、その耳は聞こえにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。
28:28> そこで、あなたがたは知っておくがよい。神のこの救いの言葉は、異邦人に送られたのだ。彼らは、これに聞きしたがうであろう」。〔
28:29> パウロがこれらのことを述終わると、ユダヤ人らは、互に論じ合いながら帰って行った。〕
28:30> パウロは、自分の借りた家に満二年のあいだ住んで、たずねて来る人々をみな迎え入れ、はばからず、また妨げられることもなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えつづけた。

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ローマ人への手紙

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

ローマ人への手紙
 第一章

01:01> 神の福音のために選び分けられ、使徒として召されたキリスト・イエスのしもべパウロ、
01:02> この福音は、神がその預言者たちを通して、聖書において前から約束されたもので、
01:03> 御子に関することです。御子は、肉によればダビデの子孫として生まれ、
01:04> 聖い御霊によれば、死者の中からの復活により、大能によって公に神の御子として示された方、私たちの主イエス・キリストです。
01:05> このキリストによって、私たちは恵みと使徒の務めを受けました。それは、御名のためにあらゆる国の人々の中に信仰の従順をもたらすためなのです。
01:06> あなたがたも、それらの人々の中にあって、イエス・キリストによって召された人々です。このパウロから、
01:07> ローマにいるすべての、神に愛されている人々、召された聖徒たちへ。私たちの父なる神と主イエス・キリストから恵みと平安があなたがたの上にありますように。
01:08> まず第一に、あなたがたすべてのために、私はイエス・キリストによって私の神に感謝します。それは、あなたがたの信仰が全世界に言い伝えられているからです。
01:09> 私が御子の福音を宣べ伝えつつ霊をもって仕えている神があかししてくださることですが、私はあなたがたのことを思わぬ時はなく、
01:10> いつも祈りのたびごとに、神のみこころによって、何とかして、今度はついに道が開かれて、あなたがたのところに行けるようにと願っています。
01:11> 私があなたがたに会いたいと切に望むのは、御霊の賜物をいくらかでもあなたがたに分けて、あなたがたを強くしたいからです。
01:12> というよりも、あなたがたの間にいて、あなたがたと私との互いの信仰によって、ともに励ましを受けたいのです。
01:13> 兄弟たち。ぜひ知っておいていただきたい。私はあなたがたの中でも、ほかの国の人々の中で得たと同じように、いくらかの実を得ようと思って、何度もあなたがたのところに行こうとしたのですが、今なお妨げられているのです。
01:14> 私は、ギリシヤ人にも未開人にも、知識のある人にも知識のない人にも、返さなければならない負債を負っています。
01:15> ですから、私としては、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたいのです。
01:16> 私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。
01:17> なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。「義人は信仰によって生きる。」と書いてあるとおりです。
01:18> というのは、不義をもって真理をはばんでいる人々のあらゆる不敬虔と不正に対して、神の怒りが天から啓示されているからです。
01:19> なぜなら、神について知りうることは、彼らに明らかであるからです。それは神が明らかにされたのです。
01:20> 神の、目に見えない本性、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって、彼らに弁解の余地はないのです。
01:21> というのは、彼らは、神を知っていながら、その神を神としてあがめず、感謝もせず、かえってその思いはむなしくなり、その無知な心は暗くなったからです。
01:22> 彼らは、自分では知者であると言いながら、愚かな者となり、
01:23> 不滅の神の御栄えを、滅ぶべき人間や、鳥、獣、はうもののかたちに似た物と代えてしまいました。
01:24> それゆえ、神は、彼らをその心の欲望のままに汚れに引き渡され、そのために彼らは、互いにそのからだをはずかしめるようになりました。
01:25> それは、彼らが神の真理を偽りと取り代え、造り主の代わりに造られた物を拝み、これに仕えたからです。造り主こそ、とこしえにほめたたえられる方です。アーメン。
01:26> こういうわけで、神は彼らを恥ずべき情欲に引き渡されました。すなわち、女は自然の用を不自然なものに代え、
01:27> 同じように、男も、女の自然な用を捨てて男どうしで情欲に燃え、男が男と恥ずべきことを行なうようになり、こうしてその誤りに対する当然の報いを自分の身に受けているのです。
01:28> また、彼らが神を知ろうとしたがらないので、神は彼らを良くない思いに引き渡され、そのため彼らは、してはならないことをするようになりました。
01:29> 彼らは、あらゆる不義と悪とむさぼりと悪意とに満ちた者、ねたみと殺意と争いと欺きと悪だくみとでいっぱいになった者、陰口を言う者、
01:30> そしる者、神を憎む者、人を人と思わぬ者、高ぶる者、大言壮語する者、悪事をたくらむ者、親に逆らう者、
01:31> わきまえのない者、約束を破る者、情け知らずの者、慈愛のない者です。
01:32> 彼らは、そのようなことを行なえば、死罪に当たるという神の定めを知っていながら、それを行なっているだけでなく、それを行なう者に心から同意しているのです。

 第二章

02:01> ですから、すべて他人をさばく人よ。あなたに弁解の余地はありません。あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めています。さばくあなたが、それと同じことを行なっているからです。
02:02> 私たちは、そのようなことを行なっている人々に下る神のさばきが正しいことを知っています。
02:03> そのようなことをしている人々をさばきながら、自分で同じことをしている人よ。あなたは、自分は神のさばきを免れるのだとでも思っているのですか。
02:04> それとも、神の慈愛があなたを悔い改めに導くことも知らないで、その豊かな慈愛と忍耐と寛容とを軽んじているのですか。
02:05> ところが、あなたは、かたくなさと悔い改めのない心のゆえに、御怒りの日、すなわち、神の正しいさばきの現われる日の御怒りを自分のために積み上げているのです。
02:06> 神は、ひとりひとりに、その人の行ないに従って報いをお与えになります。
02:07> 忍耐をもって善を行ない、栄光と誉れと不滅のものとを求める者には、永遠のいのちを与え、
02:08> 党派心を持ち、真理に従わないで不義に従う者には、怒りと憤りを下されるのです。
02:09> 患難と苦悩とは、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、悪を行なうすべての者の上に下り、
02:10> 栄光と誉れと平和は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、善を行なうすべての者の上にあります。
02:11> 神にはえこひいきなどはないからです。
02:12> 律法なしに罪を犯した者はすべて、律法なしに滅び、律法の下にあって罪を犯した者はすべて、律法によってさばかれます。
02:13> それは、律法を聞く者が神の前に正しいのではなく、律法を行なう者が正しいと認められるからです。
02:14> 律法を持たない異邦人が、生まれつきのままで律法の命じる行ないをするばあいは、律法を持たなくても、自分自身が自分に対する律法なのです。
02:15> 彼らはこのようにして、律法の命じる行ないが彼らの心に書かれていることを示しています。彼らの良心もいっしょになってあかしし、また、彼らの思いは互いに責め合ったり、また、弁明し合ったりしています。
02:16> 私の福音によれば、神のさばきは、神がキリスト・イエスによって人々の隠れたことをさばかれる日に、行なわれるのです。
02:17> もし、あなたが自分をユダヤ人ととなえ、律法を持つことに安んじ、神を誇り、
02:18> みこころを知り、なすべきことが何であるかを律法に教えられてわきまえ、
02:19> また、知識と真理の具体的な形として律法を持っているため、盲人の案内人、やみの中にいる者の光、愚かな者の導き手、幼子の教師だと自任しているのなら、
02:20> 前節に合節
02:21> どうして、人を教えながら、自分自身を教えないのですか。盗むなと説きながら、自分は盗むのですか。
02:22> 姦淫するなと言いながら、自分は姦淫するのですか。偶像を忌みきらいながら、自分は神殿の物をかすめるのですか。
02:23> 律法を誇りとしているあなたが、どうして律法に違反して、神を侮るのですか。
02:24> これは、「神の名は、あなたがたのゆえに、異邦人の中でけがされている。」と書いてあるとおりです。
02:25> もし律法を守るなら、割礼には価値があります。しかし、もしあなたが律法にそむいているなら、あなたの割礼は、無割礼になったのです。
02:26> もし割礼を受けていない人が律法の規定を守るなら、割礼を受けていなくても、割礼を受けている者とみなされないでしょうか。
02:27> また、からだに割礼を受けていないで律法を守る者が、律法の文字と割礼がありながら律法にそむいているあなたを、さばくことにならないでしょうか。
02:28> 外見上のユダヤ人がユダヤ人なのではなく、外見上のからだの割礼が割礼なのではありません。
02:29> かえって人目に隠れたユダヤ人がユダヤ人であり、文字ではなく、御霊による、心の割礼こそ割礼です。その誉れは、人からではなく、神から来るものです。

 第三章

03:01> では、ユダヤ人のすぐれたところは、いったい何ですか。割礼にどんな益があるのですか。
03:02> それは、あらゆる点から見て、大いにあります。第一に、彼らは神のいろいろなおことばをゆだねられています。
03:03> では、いったいどうなのですか。彼らのうちに不真実な者があったら、その不真実によって、神の真実が無に帰することになるでしょうか。
03:04> 絶対にそんなことはありません。たとい、すべての人を偽り者としても、神は真実な方であるとすべきです。それは、「あなたが、そのみことばによって正しいとされ、さばかれるときには勝利を得られるため。」と書いてあるとおりです。
03:05> しかし、もし私たちの不義が神の義を明らかにするとしたら、どうなるでしょうか。人間的な言い方をしますが、怒りを下す神は不正なのでしょうか。
03:06> 絶対にそんなことはありません。もしそうだとしたら、神はいったいどのように世をさばかれるのでしょう。
03:07> でも、私の偽りによって、神の真理がますます明らかにされて神の栄光となるのであれば、なぜ私がなお罪人としてさばかれるのでしょうか。
03:08> 「善を現わすために、悪をしようではないか。」と言ってはいけないのでしょうか。私たちはこの点でそしられるのです。ある人たちは、それが私たちのことばだと言っていますが、もちろんこのように論じる者どもは当然罪に定められるのです。
03:09> では、どうなのでしょう。私たちは他の者にまさっているのでしょうか。決してそうではありません。私たちは前に、ユダヤ人もギリシヤ人も、すべての人が罪の下にあると責めたのです。
03:10> それは、次のように書いてあるとおりです。「義人はいない。ひとりもいない。
03:11> 悟りのある人はいない。神を求める人はいない。
03:12> すべての人が迷い出て、みな、ともに無益な者となった。善を行なう人はいない。ひとりもいない。」
03:13> 「彼らののどは、開いた墓であり、彼らはその舌で欺く。」「彼らのくちびるの下には、まむしの毒があり、」
03:14> 「彼らの口は、のろいと苦さで満ちている。」
03:15> 「彼らの足は血を流すのに速く、
03:16> 彼らの道には破壊と悲惨がある。
03:17> また、彼らは平和の道を知らない。」
03:18> 「彼らの目の前には、神に対する恐れがない。」
03:19> さて、私たちは、律法の言うことはみな、律法の下にある人々に対して言われていることを知っています。それは、すべての口がふさがれて、全世界が神のさばきに服するためです。
03:20> なぜなら、律法を行なうことによっては、だれひとり神の前に義と認められないからです。律法によっては、かえって罪の意識が生じるのです。
03:21> しかし、今は、律法とは別に、しかも律法と預言者によってあかしされて、神の義が示されました。
03:22> すなわち、イエス・キリストを信じる信仰による神の義であって、それはすべての信じる人に与えられ、何の差別もありません。
03:23> すべての人は、罪を犯したので、神からの栄誉を受けることができず、
03:24> ただ、神の恵みにより、キリスト・イエスによる贖いのゆえに、価なしに義と認められるのです。
03:25> 神は、キリスト・イエスを、その血による、また信仰による、なだめの供え物として、公にお示しになりました。それは、ご自身の義を現わすためです。というのは、今までに犯されて来た罪を神の忍耐をもって見のがして来られたからです。
03:26> それは、今の時にご自身の義を現わすためであり、こうして神ご自身が義であり、また、イエスを信じる者を義とお認めになるためなのです。
03:27> それでは、私たちの誇りはどこにあるのでしょうか。それはすでに取り除かれました。どういう原理によってでしょうか。行ないの原理によってでしょうか。そうではなく、信仰の原理によってです。
03:28> 人が義と認められるのは、律法の行ないによるのではなく、信仰によるというのが、私たちの考えです。
03:29> それとも、神はユダヤ人だけの神でしょうか。異邦人にとっても神ではないのでしょうか。確かに神は、異邦人にとっても、神です。
03:30> 神が唯一ならばそうです。この神は、割礼のある者を信仰によって義と認めてくださるとともに、割礼のない者をも、信仰によって義と認めてくださるのです。
03:31> それでは、私たちは信仰によって律法を無効にすることになるのでしょうか。絶対にそんなことはありません。かえって、律法を確立することになるのです。

 第四章

04:01> それでは、肉による私たちの先祖アブラハムのばあいは、どうでしょうか。
04:02> もしアブラハムが行ないによって義と認められたのなら、彼は誇ることができます。しかし、神の御前では、そうではありません。
04:03> 聖書は何と言っていますか。「それでアブラハムは神を信じた。それが彼の義と見なされた。」とあります。
04:04> 働く者のばあいに、その報酬は恵みでなくて、当然支払うべきものとみなされます。
04:05> 何の働きもない者が、不敬虔な者を義と認めてくださる方を信じるなら、その信仰が義とみなされるのです。
04:06> ダビデもまた、行ないとは別の道で神によって義と認められる人の幸いを、こう言っています。
04:07> 「不法を赦され、罪をおおわれた人たちは、幸いである。
04:08> 主が罪を認めない人は幸いである。」
04:09> それでは、この幸いは、割礼のある者にだけ与えられるのでしょうか。それとも、割礼のない者にも与えられるのでしょうか。私たちは、「アブラハムには、その信仰が義とみなされた。」と言っていますが、
04:10> どのようにして、その信仰が義とみなされたのでしょうか。割礼を受けてからでしょうか。まだ割礼を受けていないときにでしょうか。割礼を受けてからではなく、割礼を受けていないときにです。
04:11> 彼は、割礼を受けていないとき信仰によって義と認められたことの証印として、割礼というしるしを受けたのです。それは、彼が、割礼を受けないままで信じて義と認められるすべての人の父となり、
04:12> また割礼のある者の父となるためです。すなわち、割礼を受けているだけではなく、私たちの父アブラハムが無割礼のときに持った信仰の足跡に従って歩む者の父となるためです。
04:13> というのは、世界の相続人となるという約束が、アブラハムに、あるいはまた、その子孫に与えられたのは、律法によってではなく、信仰の義によったからです。
04:14> もし律法による者が相続人であるとするなら、信仰はむなしくなり、約束は無効になってしまいます。
04:15> 律法は怒りを招くものであり、律法のないところには違反もありません。
04:16> そのようなわけで、世界の相続人となることは、信仰によるのです。それは、恵みによるためであり、こうして約束がすべての子孫に、すなわち、律法を持っている人々にだけでなく、アブラハムの信仰にならう人々にも保証されるためなのです。「わたしは、あなたをあらゆる国の人々の父とした。」と書いてあるとおりに、アブラハムは私たちすべての者の父なのです。
04:17> このことは、彼が信じた神、すなわち死者を生かし、無いものを有るもののようにお呼びになる方の御前で、そうなのです。
04:18> 彼は望みえないときに望みを抱いて信じました。それは、「あなたの子孫はこのようになる。」と言われていたとおりに、彼があらゆる国の人々の父となるためでした。
04:19> アブラハムは、およそ百歳になって、自分のからだが死んだも同然であることと、サラの胎の死んでいることとを認めても、その信仰は弱りませんでした。
04:20> 彼は、不信仰によって神の約束を疑うようなことをせず、反対に、信仰がますます強くなって、神に栄光を帰し、
04:21> 神には約束されたことを成就する力があることを堅く信じました。
04:22> だからこそ、それが彼の義とみなされたのです。
04:23> しかし、「彼の義とみなされた。」と書いてあるのは、ただ彼のためだけでなく、
04:24> また私たちのためです。すなわち、私たちの主イエスを死者の中からよみがえらせた方を信じる私たちも、その信仰を義とみなされるのです。
04:25> 主イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私たちが義と認められるために、よみがえられたからです。

 第五章

05:01> ですから、信仰によって義と認められた私たちは、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っています。
05:02> またキリストによって、いま私たちの立っているこの恵みに信仰によって導き入れられた私たちは、神の栄光を望んで大いに喜んでいます。
05:03> そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、
05:04> 忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。
05:05> この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。
05:06> 私たちがまだ弱かったとき、キリストは定められた時に、不敬虔な者のために死んでくださいました。
05:07> 正しい人のためにでも死ぬ人はほとんどありません。情け深い人のためには、進んで死ぬ人があるいはいるでしょう。
05:08> しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます。
05:09> ですから、今すでにキリストの血によって義と認められた私たちが、彼によって神の怒りから救われるのは、なおさらのことです。
05:10> もし敵であった私たちが、御子の死によって神と和解させられたのなら、和解させられた私たちが、彼のいのちによって救いにあずかるのは、なおさらのことです。
05:11> そればかりでなく、私たちのために今や和解を成り立たせてくださった私たちの主イエス・キリストによって、私たちは神を大いに喜んでいるのです。
05:12> そういうわけで、ちょうどひとりの人によって罪が世界にはいり、罪によって死がはいり、こうして死が全人類に広がったのと同様に、それというのも全人類が罪を犯したからです。
05:13> というのは、律法が与えられるまでの時期にも罪は世にあったからです。しかし罪は、何かの律法がなければ、認められないものです。
05:14> ところが死は、アダムからモーセまでの間も、アダムの違反と同じようには罪を犯さなかった人々をさえ支配しました。アダムはきたるべき方のひな型です。
05:15> ただし、恵みには違反のばあいとは違う点があります。もしひとりの違反によって多くの人が死んだとすれば、それにもまして、神の恵みとひとりの人イエス・キリストの恵みによる賜物とは、多くの人々に満ちあふれるのです。
05:16> また、賜物には、罪を犯したひとりによるばあいと違った点があります。さばきのばあいは、一つの違反のために罪に定められたのですが、恵みのばあいは、多くの違反が義と認められるからです。
05:17> もしひとりの人の違反により、ひとりによって死が支配するようになったとすれば、なおさらのこと、恵みと義の賜物とを豊かに受けている人々は、ひとりの人イエス・キリストにより、いのちにあって支配するのです。
05:18> こういうわけで、ちょうど一つの違反によってすべての人が罪に定められたのと同様に、一つの義の行為によってすべての人が義と認められて、いのちを与えられるのです。
05:19> すなわち、ちょうどひとりの人の不従順によって多くの人が罪人とされたのと同様に、ひとりの従順によって多くの人が義人とされるのです。
05:20> 律法がはいって来たのは、違反が増し加わるためです。しかし、罪の増し加わるところには、恵みも満ちあふれました。
05:21> それは、罪が死によって支配したように、恵みが、私たちの主イエス・キリストにより、義の賜物によって支配し、永遠のいのちを得させるためなのです。

 第六章

06:01> それでは、どういうことになりますか。恵みが増し加わるために、私たちは罪の中にとどまるべきでしょうか。
06:02> 絶対にそんなことはありません。罪に対して死んだ私たちが、どうして、なおもその中に生きていられるでしょう。
06:03> それとも、あなたがたは知らないのですか。キリスト・イエスにつくバプテスマを受けた私たちはみな、その死にあずかるバプテスマを受けたのではありませんか。
06:04> 私たちは、キリストの死にあずかるバプテスマによって、キリストとともに葬られたのです。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中からよみがえられたように、私たちも、いのちにあって新しい歩みをするためです。
06:05> もし私たちが、キリストにつぎ合わされて、キリストの死と同じようになっているのなら、必ずキリストの復活とも同じようになるからです。
06:06> 私たちの古い人がキリストとともに十字架につけられたのは、罪のからだが滅びて、私たちがもはやこれからは罪の奴隷でなくなるためであることを、私たちは知っています。
06:07> 死んでしまった者は、罪から解放されているのです。
06:08> もし私たちがキリストとともに死んだのであれば、キリストとともに生きることにもなる、と信じます。
06:09> キリストは死者の中からよみがえって、もはや死ぬことはなく、死はもはやキリストを支配しないことを、私たちは知っています。
06:10> なぜなら、キリストが死なれたのは、ただ一度罪に対して死なれたのであり、キリストが生きておられるのは、神に対して生きておられるのだからです。
06:11> このように、あなたがたも、自分は罪に対しては死んだ者であり、神に対してはキリスト・イエスにあって生きた者だと、思いなさい。
06:12> ですから、あなたがたの死ぬべきからだを罪の支配にゆだねて、その情欲に従ってはいけません。
06:13> また、あなたがたの手足を不義の器として罪にささげてはいけません。むしろ、死者の中から生かされた者として、あなたがた自身とその手足を義の器として神にささげなさい。
06:14> というのは、罪はあなたがたを支配することがないからです。なぜなら、あなたがたは律法の下にはなく、恵みの下にあるからです。
06:15> それではどうなのでしょう。私たちは、律法の下にではなく、恵みの下にあるのだから罪を犯そう、ということになるのでしょうか。絶対にそんなことはありません。
06:16> あなたがたはこのことを知らないのですか。あなたがたが自分の身をささげて奴隷として服従すれば、その服従する相手の奴隷であって、あるいは罪の奴隷となって死に至り、あるいは従順の奴隷となって義に至るのです。
06:17> 神に感謝すべきことには、あなたがたは、もとは罪の奴隷でしたが、伝えられた教えの規準に心から服従し、
06:18> 罪から解放されて、義の奴隷となったのです。
06:19> あなたがたにある肉の弱さのために、私は人間的な言い方をしています。あなたがたは、以前は自分の手足を汚れと不法の奴隷としてささげて、不法に進みましたが、今は、その手足を義の奴隷としてささげて、聖潔に進みなさい。
06:20> 罪の奴隷であった時は、あなたがたは義については、自由にふるまっていました。
06:21> その当時、今ではあなたがたが恥じているそのようなものから、何か良い実を得たでしょうか。それらのものの行き着く所は死です。
06:22> しかし今は、罪から解放されて神の奴隷となり、聖潔に至る実を得たのです。その行き着く所は永遠のいのちです。
06:23> 罪から来る報酬は死です。しかし、神の下さる賜物は、私たちの主キリスト・イエスにある永遠のいのちです。

 第七章

07:01> それとも、兄弟たち。あなたがたは、律法が人に対して権限を持つのは、その人の生きている期間だけだ、ということを知らないのですか。私は律法を知っている人々に言っているのです。
07:02> 夫のある女は、夫が生きている間は、律法によって夫に結ばれています。しかし、夫が死ねば、夫に関する律法から解放されます。
07:03> ですから、夫が生きている間に他の男に行けば、姦淫の女と呼ばれるのですが、夫が死ねば、律法から解放されており、たとい他の男に行っても、姦淫の女ではありません。
07:04> 私の兄弟たちよ。それと同じように、あなたがたも、キリストのからだによって、律法に対しては死んでいるのです。それは、あなたがたが他の人、すなわち死者の中からよみがえった方と結ばれて、神のために実を結ぶようになるためです。
07:05> 私たちが肉にあったときは、律法による数々の罪の欲情が私たちのからだの中に働いていて、死のために実を結びました。
07:06> しかし、今は、私たちは自分を捕えていた律法に対して死んだので、それから解放され、その結果、古い文字にはよらず、新しい御霊によって仕えているのです。
07:07> それでは、どういうことになりますか。律法は罪なのでしょうか。絶対にそんなことはありません。ただ、律法によらないでは、私は罪を知ることがなかったでしょう。律法が、「むさぼってはならない。」と言わなかったら、私はむさぼりを知らなかったでしょう。
07:08> しかし、罪はこの戒めによって機会を捕え、私のうちにあらゆるむさぼりを引き起こしました。律法がなければ、罪は死んだものです。
07:09> 私はかつて律法なしに生きていましたが、戒めが来たときに、罪が生き、私は死にました。
07:10> それで私には、いのちに導くはずのこの戒めが、かえって死に導くものであることが、わかりました。
07:11> それは、戒めによって機会を捕えた罪が私を欺き、戒めによって私を殺したからです。
07:12> ですから、律法は聖なるものであり、戒めも聖であり、正しく、また良いものなのです。
07:13> では、この良いものが、私に死をもたらしたのでしょうか。絶対にそんなことはありません。それはむしろ、罪なのです。罪は、この良いもので私に死をもたらすことによって、罪として明らかにされ、戒めによって、極度に罪深いものとなりました。
07:14> 私たちは、律法が霊的なものであることを知っています。しかし、私は罪ある人間であり、売られて罪の下にある者です。
07:15> 私には、自分のしていることがわかりません。私は自分がしたいと思うことをしているのではなく、自分が憎むことを行なっているからです。
07:16> もし自分のしたくないことをしているとすれば、律法は良いものであることを認めているわけです。
07:17> ですから、それを行なっているのは、もはや私ではなく、私のうちに住みついている罪なのです。
07:18> 私は、私のうち、すなわち、私の肉のうちに善が住んでいないのを知っています。私には善をしたいという願いがいつもあるのに、それを実行することがないからです。
07:19> 私は、自分でしたいと思う善を行なわないで、かえって、したくない悪を行なっています。
07:20> もし私が自分でしたくないことをしているのであれば、それを行なっているのは、もはや私ではなくて、私のうちに住む罪です。
07:21> そういうわけで、私は、善をしたいと願っているのですが、その私に悪が宿っているという原理を見いだすのです。
07:22> すなわち、私は、内なる人としては、神の律法を喜んでいるのに、
07:23> 私のからだの中には異なった律法があって、それが私の心の律法に対して戦いをいどみ、私を、からだの中にある罪の律法のとりこにしているのを見いだすのです。
07:24> 私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか。
07:25> 私たちの主イエス・キリストのゆえに、ただ神に感謝します。ですから、この私は、心では神の律法に仕え、肉では罪の律法に仕えているのです。

 第八章

08:01> こういうわけで、今は、キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決してありません。
08:02> なぜなら、キリスト・イエスにある、いのちの御霊の原理が、罪と死の原理から、あなたを解放したからです。
08:03> 肉によって無力になったため、律法にはできなくなっていることを、神はしてくださいました。神はご自分の御子を、罪のために、罪深い肉と同じような形でお遣わしになり、肉において罪を処罰されたのです。
08:04> それは、肉に従って歩まず、御霊に従って歩む私たちの中に、律法の要求が全うされるためなのです。
08:05> 肉に従う者は肉的なことをもっぱら考えますが、御霊に従う者は御霊に属することをひたすら考えます。
08:06> 肉の思いは死であり、御霊による思いは、いのちと平安です。
08:07> というのは、肉の思いは神に対して反抗するものだからです。それは神の律法に服従しません。いや、服従できないのです。
08:08> 肉にある者は神を喜ばせることができません。
08:09> けれども、もし神の御霊があなたがたのうちに住んでおられるなら、あなたがたは肉の中にではなく、御霊の中にいるのです。キリストの御霊を持たない人は、キリストのものではありません。
08:10> もしキリストがあなたがたのうちにおられるなら、からだは罪のゆえに死んでいても、霊が、義のゆえに生きています。
08:11> もしイエスを死者の中からよみがえらせた方の御霊が、あなたがたのうちに住んでおられるなら、キリスト・イエスを死者の中からよみがえらせた方は、あなたがたのうちに住んでおられる御霊によって、あなたがたの死ぬべきからだをも生かしてくださるのです。
08:12> ですから、兄弟たち。私たちは、肉に従って歩む責任を、肉に対して負ってはいません。
08:13> もし肉に従って生きるなら、あなたがたは死ぬのです。しかし、もし御霊によって、からだの行ないを殺すなら、あなたがたは生きるのです。
08:14> 神の御霊に導かれる人は、だれでも神の子どもです。
08:15> あなたがたは、人を再び恐怖に陥れるような、奴隷の霊を受けたのではなく、子としてくださる御霊を受けたのです。私たちは御霊によって、「アバ、父。」と呼びます。
08:16> 私たちが神の子どもであることは、御霊ご自身が、私たちの霊とともに、あかししてくださいます。
08:17> もし子どもであるなら、相続人でもあります。私たちがキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているなら、私たちは神の相続人であり、キリストとの共同相続人であります。
08:18> 今の時のいろいろの苦しみは、将来私たちに啓示されようとしている栄光に比べれば、取るに足りないものと私は考えます。
08:19> 被造物も、切実な思いで神の子どもたちの現われを待ち望んでいるのです。
08:20> それは、被造物が虚無に服したのが自分の意志ではなく、服従させた方によるのであって、望みがあるからです。
08:21> 被造物自体も、滅びの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由の中に入れられます。
08:22> 私たちは、被造物全体が今に至るまで、ともにうめきともに産みの苦しみをしていることを知っています。
08:23> そればかりでなく、御霊の初穂をいただいている私たち自身も、心の中でうめきながら、子にしていただくこと、すなわち、私たちのからだの贖われることを待ち望んでいます。
08:24> 私たちは、この望みによって救われているのです。目に見える望みは、望みではありません。だれでも目で見ていることを、どうしてさらに望むでしょう。
08:25> もしまだ見ていないものを望んでいるのなら、私たちは、忍耐をもって熱心に待ちます。
08:26> 御霊も同じようにして、弱い私たちを助けてくださいます。私たちは、どのように祈ったらよいかわからないのですが、御霊ご自身が、言いようもない深いうめきによって、私たちのためにとりなしてくださいます。
08:27> 人間の心を探り窮める方は、御霊の思いが何かをよく知っておられます。なぜなら、御霊は、神のみこころに従って、聖徒のためにとりなしをしてくださるからです。
08:28> 神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています。
08:29> なぜなら、神は、あらかじめ知っておられる人々を、御子のかたちと同じ姿にあらかじめ定められたからです。それは、御子が多くの兄弟たちの中で長子となられるためです。
08:30> 神はあらかじめ定めた人々をさらに召し、召した人々をさらに義と認め、義と認めた人々にはさらに栄光をお与えになりました。
08:31> では、これらのことからどう言えるでしょう。神が私たちの味方であるなら、だれが私たちに敵対できるでしょう。
08:32> 私たちすべてのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方が、どうして、御子といっしょにすべてのものを、私たちに恵んでくださらないことがありましょう。
08:33> 神に選ばれた人々を訴えるのはだれですか。神が義と認めてくださるのです。
08:34> 罪に定めようとするのはだれですか。死んでくださった方、いや、よみがえられた方であるキリスト・イエスが、神の右の座に着き、私たちのためにとりなしていてくださるのです。
08:35> 私たちをキリストの愛から引き離すのはだれですか。患難ですか、苦しみですか、迫害ですか、飢えですか、裸ですか、危険ですか、剣ですか。
08:36> 「あなたのために、私たちは一日中、死に定められている。私たちは、ほふられる羊とみなされた。」と書いてあるとおりです。
08:37> しかし、私たちは、私たちを愛してくださった方によって、これらすべてのことの中にあっても、圧倒的な勝利者となるのです。
08:38> 私はこう確信しています。死も、いのちも、御使いも、権威ある者も、今あるものも、後に来るものも、力ある者も、
08:39> 高さも、深さも、そのほかのどんな被造物も、私たちの主キリスト・イエスにある神の愛から、私たちを引き離すことはできません。

 第九章

09:01> 私はキリストにあって真実を言い、偽りを言いません。次のことは、私の良心も、聖霊によってあかししています。
09:02> 私には大きな悲しみがあり、私の心には絶えず痛みがあります。
09:03> もしできることなら、私の同胞、肉による同国人のために、この私がキリストから引き離されて、のろわれた者となることさえ願いたいのです。
09:04> 彼らはイスラエル人です。子とされることも、栄光も、契約も、律法を与えられることも、礼拝も、約束も彼らのものです。
09:05> 先祖たちも彼らのものです。またキリストも、人としては彼らから出られたのです。このキリストは万物の上にあり、とこしえにほめたたえられる神です。アーメン。
09:06> しかし、神のみことばが無効になったわけではありません。なぜなら、イスラエルから出る者がみな、イスラエルなのではなく、
09:07> アブラハムから出たからといって、すべてが子どもなのではなく、「イサクから出る者があなたの子孫と呼ばれる。」のだからです。
09:08> すなわち、肉の子どもがそのまま神の子どもではなく、約束の子どもが子孫とみなされるのです。
09:09> 約束のみことばはこうです。「私は来年の今ごろ来ます。そして、サラは男の子を産みます。」
09:10> このことだけでなく、私たちの先祖イサクひとりによってみごもったリベカのこともあります。
09:11> その子どもたちは、まだ生まれてもおらず、善も悪も行なわないうちに、神の選びの計画の確かさが、行ないにはよらず、召してくださる方によるようにと、
09:12> 「兄は弟に仕える。」と彼女に告げられたのです。
09:13> 「わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ。」と書いてあるとおりです。
09:14> それでは、どういうことになりますか。神に不正があるのですか。絶対にそんなことはありません。
09:15> 神はモーセに、「わたしは自分のあわれむ者をあわれみ、自分のいつくしむ者をいつくしむ。」と言われました。
09:16> したがって、事は人間の願いや努力によるのではなく、あわれんでくださる神によるのです。
09:17> 聖書はパロに、「わたしがあなたを立てたのは、あなたにおいてわたしの力を示し、わたしの名を全世界に告げ知らせるためである。」と言っています。
09:18> こういうわけで、神は、人をみこころのままにあわれみ、またみこころのままにかたくなにされるのです。
09:19> すると、あなたはこう言うでしょう。「それなのになぜ、神は人を責められるのですか。だれが神のご計画に逆らうことができましょう。」
09:20> しかし、人よ。神に言い逆らうあなたは、いったい何ですか。形造られた者が形造った者に対して、「あなたはなぜ、私をこのようなものにしたのですか。」と言えるでしょうか。
09:21> 陶器を作る者は、同じ土のかたまりから、尊いことに用いる器でも、また、つまらないことに用いる器でも作る権利を持っていないのでしょうか。
09:22> ですが、もし神が、怒りを示してご自分の力を知らせようと望んでおられるのに、その滅ぼされるべき怒りの器を、豊かな寛容をもって忍耐してくださったとしたら、どうでしょうか。
09:23> それも、神が栄光のためにあらかじめ用意しておられたあわれみの器に対して、その豊かな栄光を知らせてくださるためになのです。
09:24> 神は、このあわれみの器として、私たちを、ユダヤ人の中からだけでなく、異邦人の中からも召してくださったのです。
09:25> それは、ホセアの書でも言っておられるとおりです。「わたしは、わが民でない者をわが民と呼び、愛さなかった者を愛する者と呼ぶ。
09:26> 『あなたがたは、わたしの民ではない。』と、わたしが言ったその場所で、彼らは、生ける神の子どもと呼ばれる。」
09:27> また、イスラエルについては、イザヤがこう叫んでいます。「たといイスラエルの子どもたちの数は、海ベの砂のようであっても、救われるのは、残された者である。
09:28> 主は、みことばを完全に、しかも敏速に、地上に成し遂げられる。」
09:29> また、イザヤがこう預言したとおりです。「もし万軍の主が、私たちに子孫を残されなかったら、私たちはソドムのようになり、ゴモラと同じものとされたであろう。」
09:30> では、どういうことになりますか。義を追い求めなかった異邦人は義を得ました。すなわち、信仰による義です。
09:31> しかし、イスラエルは、義の律法を追い求めながら、その律法に到達しませんでした。
09:32> なぜでしょうか。信仰によって追い求めることをしないで、行ないによるかのように追い求めたからです。彼らは、つまずきの石につまずいたのです。
09:33> それは、こう書かれているとおりです。「見よ。わたしは、シオンに、つまずきの石、妨げの岩を置く。彼に信頼する者は、失望させられることがない。」

 第十章

10:01> 兄弟たち。私が心の望みとし、また彼らのために神に願い求めているのは、彼らの救われることです。
10:02> 私は、彼らが神に対して熱心であることをあかしします。しかし、その熱心は知識に基づくものではありません。
10:03> というのは、彼らは神の義を知らず、自分自身の義を立てようとして、神の義に従わなかったからです。
10:04> キリストが律法を終わらせられたので、信じる人はみな義と認められるのです。
10:05> モーセは、律法による義を行なう人は、その義によって生きる、と書いています。
10:06> しかし、信仰による義はこう言います。「あなたは心の中で、だれが天に上るだろうか、と言ってはいけない。」それはキリストを引き降ろすことです。
10:07> また、「だれが地の奥底に下るだろうか、と言ってはいけない。」それはキリストを死者の中から引き上げることです。
10:08> では、どう言っていますか。「みことばはあなたの近くにある。あなたの口にあり、あなたの心にある。」これは私たちの宣べ伝えている信仰のことばのことです。
10:09> なぜなら、もしあなたの口でイエスを主と告白し、あなたの心で神はイエスを死者の中からよみがえらせてくださったと信じるなら、あなたは救われるからです。
10:10> 人は心に信じて義と認められ、口で告白して救われるのです。
10:11> 聖書はこう言っています。「彼に信頼する者は、失望させられることがない。」
10:12> ユダヤ人とギリシヤ人との区別はありません。同じ主が、すべての人の主であり、主を呼び求めるすべての人に対して恵み深くあられるからです。
10:13> 「主の御名を呼び求める者は、だれでも救われる。」のです。
10:14> しかし、信じたことのない方を、どうして呼び求めることができるでしょう。聞いたことのない方を、どうして信じることができるでしょう。宣べ伝える人がなくて、どうして聞くことができるでしょう。
10:15> 遣わされなくては、どうして宣べ伝えることができるでしょう。次のように書かれているとおりです。「良いことの知らせを伝える人々の足は、なんとりっぱでしょう。」
10:16> しかし、すべての人が福音に従ったのではありません。「主よ。だれが私たちの知らせを信じましたか。」とイザヤは言っています。
10:17> そのように、信仰は聞くことから始まり、聞くことは、キリストについてのみことばによるのです。
10:18> でも、こう尋ねましょう。「はたして彼らは聞こえなかったのでしょうか。」むろん、そうではありません。「その声は全地に響き渡り、そのことばは地の果てまで届いた。」
10:19> でも、私はこう言いましょう。「はたしてイスラエルは知らなかったのでしょうか。」まず、モーセがこう言っています。「わたしは、民でない者のことで、あなたがたのねたみを起こさせ、無知な国民のことで、あなたがたを怒らせる。」
10:20> またイザヤは大胆にこう言っています。「わたしは、わたしを求めない者に見いだされ、わたしをたずねない者に自分を現わした。」
10:21> またイスラエルについては、こう言っています。「不従順で反抗する民に対して、わたしは一日中、手を差し伸べた。」

 第十一章

11:01> すると、神はご自分の民を退けてしまわれたのですか。絶対にそんなことはありません。この私もイスラエル人で、アブラハムの子孫に属し、ベニヤミン族の出身です。
11:02> 神は、あらかじめ知っておられたご自分の民を退けてしまわれたのではありません。それともあなたがたは、聖書がエリヤに関する個所で言っていることを、知らないのですか。彼はイスラエルを神に訴えてこう言いました。
11:03> 「主よ。彼らはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇をこわし、私だけが残されました。彼らはいま私のいのちを取ろうとしています。」
11:04> ところが彼に対して何とお答えになりましたか。「バアルにひざをかがめていない男子七千人が、わたしのために残してある。」
11:05> それと同じように、今も、恵みの選びによって残された者がいます。
11:06> もし恵みによるのであれば、もはや行ないによるのではありません。もしそうでなかったら、恵みが恵みでなくなります。
11:07> では、どうなるのでしょう。イスラエルは追い求めていたものを獲得できませんでした。選ばれた者は獲得しましたが、他の者は、かたくなにされたのです。
11:08> こう書かれているとおりです。「神は、彼らに鈍い心と見えない目と聞こえない耳を与えられた。今日に至るまで。」
11:09> ダビデもこう言います。「彼らの食卓は、彼らにとってわなとなり、網となり、つまずきとなり、報いとなれ。
11:10> その目はくらんで見えなくなり、その背はいつまでもかがんでおれ。」
11:11> では、尋ねましょう。彼らがつまずいたのは倒れるためなのでしょうか。絶対にそんなことはありません。かえって、彼らの違反によって、救いが異邦人に及んだのです。それは、イスラエルにねたみを起こさせるためです。
11:12> もし彼らの違反が世界の富となり、彼らの失敗が異邦人の富となるのなら、彼らの完成は、それ以上の、どんなにかすばらしいものを、もたらすことでしょう。
11:13> そこで、異邦人の方々に言いますが、私は異邦人の使徒ですから、自分の務めを重んじています。
11:14> そして、それによって何とか私の同国人にねたみを引き起こさせて、その中の幾人でも救おうと願っているのです。
11:15> もし彼らの捨てられることが世界の和解であるとしたら、彼らの受け入れられることは、死者の中から生き返ることでなくて何でしょう。
11:16> 初物が聖ければ、粉の全部が聖いのです。根が聖ければ、枝も聖いのです。
11:17> もしも、枝の中のあるものが折られて、野生種のオリーブであるあなたがその枝に混じってつがれ、そしてオリーブの根の豊かな養分をともに受けているのだとしたら、
11:18> あなたはその枝に対して誇ってはいけません。誇ったとしても、あなたが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのです。
11:19> 枝が折られたのは、私がつぎ合わされるためだ、とあなたは言うでしょう。
11:20> そのとおりです。彼らは不信仰によって折られ、あなたは信仰によって立っています。高ぶらないで、かえって恐れなさい。
11:21> もし神が台木の枝を惜しまれなかったとすれば、あなたをも惜しまれないでしょう。
11:22> 見てごらんなさい。神のいつくしみときびしさを。倒れた者の上にあるのは、きびしさです。あなたの上にあるのは、神のいつくしみです。ただし、あなたがそのいつくしみの中にとどまっていればであって、そうでなければ、あなたも切り落とされるのです。
11:23> 彼らであっても、もし不信仰を続けなければ、つぎ合わされるのです。神は、彼らを再びつぎ合わすことができるのです。
11:24> もしあなたが、野生種であるオリーブの木から切り取られ、もとの性質に反して、栽培されたオリーブの木につがれたのであれば、これらの栽培種のものは、もっとたやすく自分の台木につがれるはずです。
11:25> 兄弟たち。私はあなたがたに、ぜひこの奥義を知っていていただきたい。それは、あなたがたが自分で自分を賢いと思うことがないようにするためです。その奥義とは、イスラエル人の一部がかたくなになったのは異邦人の完成のなる時までであり、
11:26> こうして、イスラエルはみな救われる、ということです。こう書かれているとおりです。「救う者がシオンから出て、ヤコブから不敬虔を取り払う。
11:27> これこそ、彼らに与えたわたしの契約である。それは、わたしが彼らの罪を取り除く時である。」
11:28> 彼らは、福音によれば、あなたがたのゆえに、神に敵対している者ですが、選びによれば、先祖たちのゆえに、愛されている者なのです。
11:29> 神の賜物と召命とは変わることがありません。
11:30> ちょうどあなたがたが、かつては神に不従順であったが、今は、彼らの不従順のゆえに、あわれみを受けているのと同様に、
11:31> 彼らも、今は不従順になっていますが、それは、あなたがたの受けたあわれみによって、今や、彼ら自身もあわれみを受けるためなのです。
11:32> なぜなら、神は、すべての人をあわれもうとして、すべての人を不従順のうちに閉じ込められたからです。
11:33> ああ、神の知恵と知識との富は、何と底知れず深いことでしょう。そのさばきは、何と知り尽くしがたく、その道は、何と測り知りがたいことでしょう。
11:34> なぜなら、だれが主のみこころを知ったのですか。また、だれが主のご計画にあずかったのですか。
11:35> また、だれが、まず主に与えて報いを受けるのですか。
11:36> というのは、すべてのことが、神から発し、神によって成り、神に至るからです。どうか、この神に、栄光がとこしえにありますように。アーメン。

 第十二章

12:01> そういうわけですから、兄弟たち。私は、神のあわれみのゆえに、あなたがたにお願いします。あなたがたのからだを、神に受け入れられる、聖い、生きた供え物としてささげなさい。それこそ、あなたがたの霊的な礼拝です。
12:02> この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい。
12:03> 私は、自分に与えられた恵みによって、あなたがたひとりひとりに言います。だれでも、思うべき限度を越えて思い上がってはいけません。いや、むしろ、神がおのおのに分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深い考え方をしなさい。
12:04> 一つのからだには多くの器官があって、すべての器官が同じ働きはしないのと同じように、
12:05> 大ぜいいる私たちも、キリストにあって一つのからだであり、ひとりひとり互いに器官なのです。
12:06> 私たちは、与えられた恵みに従って、異なった賜物を持っているので、もしそれが預言であれば、その信仰に応じて預言しなさい。
12:07> 奉仕であれば奉仕し、教える人であれば教えなさい。
12:08> 勧めをする人であれば勧め、分け与える人は惜しまずに分け与え、指導する人は熱心に指導し、慈善を行なう人は喜んでそれをしなさい。
12:09> 愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善に親しみなさい。
12:10> 兄弟愛をもって心から互いに愛し合い、尊敬をもって互いに人を自分よりまさっていると思いなさい。
12:11> 勤勉で怠らず、霊に燃え、主に仕えなさい。
12:12> 望みを抱いて喜び、患難に耐え、絶えず祈りに励みなさい。
12:13> 聖徒の入用に協力し、旅人をもてなしなさい。
12:14> あなたがたを迫害する者を祝福しなさい。祝福すべきであって、のろってはいけません。
12:15> 喜ぶ者といっしょに喜び、泣く者といっしょに泣きなさい。
12:16> 互いに一つ心になり、高ぶった思いを持たず、かえって身分の低い者に順応しなさい。自分こそ知者だなどと思ってはいけません。
12:17> だれに対してでも、悪に悪を報いることをせず、すべての人が良いと思うことを図りなさい。
12:18> あなたがたは、自分に関する限り、すべての人と平和を保ちなさい。
12:19> 愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい。それは、こう書いてあるからです。「復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる。」
12:20> もしあなたの敵が飢えたなら、彼に食べさせなさい。渇いたなら、飲ませなさい。そうすることによって、あなたは彼の頭に燃える炭火を積むことになるのです。
12:21> 悪に負けてはいけません。かえって、善をもって悪に打ち勝ちなさい。

 第十三章

13:01> 人はみな、上に立つ権威に従うべきです。神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです。
13:02> したがって、権威に逆らっている人は、神の定めにそむいているのです。そむいた人は自分の身にさばきを招きます。
13:03> 支配者を恐ろしいと思うのは、良い行ないをするときではなく、悪を行なうときです。権威を恐れたくないと思うなら、善を行ないなさい。そうすれば、支配者からほめられます。
13:04> それは、彼があなたに益を与えるための、神のしもべだからです。しかし、もしあなたが悪を行なうなら、恐れなければなりません。彼は無意味に剣を帯びてはいないからです。彼は神のしもべであって、悪を行なう人には怒りをもって報います。
13:05> ですから、ただ怒りが恐ろしいからだけでなく、良心のためにも、従うべきです。
13:06> 同じ理由で、あなたがたは、みつぎを納めるのです。彼らは、いつもその務めに励んでいる神のしもべなのです。
13:07> あなたがたは、だれにでも義務を果たしなさい。みつぎを納めなければならない人にはみつぎを納め、税を納めなければならない人には税を納め、恐れなければならない人を恐れ、敬わなければならない人を敬いなさい。
13:08> だれに対しても、何の借りもあってはいけません。ただし、互いに愛し合うことについては別です。他の人を愛する者は、律法を完全に守っているのです。
13:09> 「姦淫するな、殺すな、盗むな、むさぼるな。」という戒め、またほかにどんな戒めがあっても、それらは、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」ということばの中に要約されているからです。
13:10> 愛は隣人に対して害を与えません。それゆえ、愛は律法を全うします。
13:11> あなたがたは、今がどのような時か知っているのですから、このように行ないなさい。あなたがたが眠りからさめるべき時刻がもう来ています。というのは、私たちが信じたころよりも、今は救いが私たちにもっと近づいているからです。
13:12> 夜はふけて、昼が近づきました。ですから、私たちは、やみのわざを打ち捨てて、光の武具を着けようではありませんか。
13:13> 遊興、酩酊、淫乱、好色、争い、ねたみの生活ではなく、昼間らしい、正しい生き方をしようではありませんか。
13:14> 主イエス・キリストを着なさい。肉の欲のために心を用いてはいけません。

 第十四章

14:01> あなたがたは信仰の弱い人を受け入れなさい。その意見をさばいてはいけません。
14:02> 何でも食べてよいと信じている人もいますが、弱い人は野菜よりほかには食べません。
14:03> 食べる人は食べない人を侮ってはいけないし、食べない人も食べる人をさばいてはいけません。神がその人を受け入れてくださったからです。
14:04> あなたはいったいだれなので、他人のしもべをさばくのですか。しもべが立つのも倒れるのも、その主人の心次第です。このしもべは立つのです。なぜなら、主には、彼を立たせることができるからです。
14:05> ある日を、他の日に比べて、大事だと考える人もいますが、どの日も同じだと考える人もいます。それぞれ自分の心の中で確信を持ちなさい。
14:06> 日を守る人は、主のために守っています。食べる人は、主のために食べています。なぜなら、神に感謝しているからです。食べない人も、主のために食べないのであって、神に感謝しているのです。
14:07> 私たちの中でだれひとりとして、自分のために生きている者はなく、また自分のために死ぬ者もありません。
14:08> もし生きるなら、主のために生き、もし死ぬなら、主のために死ぬのです。ですから、生きるにしても、死ぬにしても、私たちは主のものです。
14:09> キリストは、死んだ人にとっても、生きている人にとっても、その主となるために、死んで、また生きられたのです。
14:10> それなのに、なぜ、あなたは自分の兄弟をさばくのですか。また、自分の兄弟を侮るのですか。私たちはみな、神のさばきの座に立つようになるのです。
14:11> 次のように書かれているからです。「主は言われる。わたしは生きている。すべてのひざは、わたしの前にひざまずき、すべての舌は、神をほめたたえる。」
14:12> こういうわけですから、私たちは、おのおの自分のことを神の御前に申し開きすることになります。
14:13> ですから、私たちは、もはや互いにさばき合うことのないようにしましょう。いや、それ以上に、兄弟にとって妨げになるもの、つまずきになるものを置かないように決心しなさい。
14:14> 主イエスにあって、私が知り、また確信していることは、それ自体で汚れているものは何一つないということです。ただ、これは汚れていると認める人にとっては、それは汚れたものなのです。
14:15> もし、食べ物のことで、あなたの兄弟が心を痛めているのなら、あなたはもはや愛によって行動しているのではありません。キリストが代わりに死んでくださったほどの人を、あなたの食べ物のことで、滅ぼさないでください。 14:16> ですから、あなたがたが良いとしている事がらによって、そしられないようにしなさい。
14:17> なぜなら、神の国は飲み食いのことではなく、義と平和と聖霊による喜びだからです。
14:18> このようにキリストに仕える人は、神に喜ばれ、また人々にも認められるのです。
14:19> そういうわけですから、私たちは、平和に役立つことと、お互いの霊的成長に役立つこととを追い求めましょう。
14:20> 食べ物のことで神のみわざを破壊してはいけません。すべての物はきよいのです。しかし、それを食べて人につまずきを与えるような人のばあいは、悪いのです。
14:21> 肉を食べず、ぶどう酒を飲まず、そのほか兄弟のつまずきになることをしないのは良いことなのです。
14:22> あなたの持っている信仰は、神の御前でそれを自分の信仰として保ちなさい。自分が、良いと認めていることによって、さばかれない人は幸福です。
14:23> しかし、疑いを感じる人が食べるなら、罪に定められます。なぜなら、それが信仰から出ていないからです。信仰から出ていないことは、みな罪です。

 第十五章

15:01> 私たち力のある者は、力のない人たちの弱さをになうべきです。自分を喜ばせるべきではありません。
15:02> 私たちはひとりひとり、隣人を喜ばせ、その徳を高め、その人の益となるようにすべきです。
15:03> キリストでさえ、ご自身を喜ばせることはなさらなかったのです。むしろ、「あなたをそしる人々のそしりは、わたしの上にふりかかった。」と書いてあるとおりです。
15:04> 昔書かれたものは、すべて私たちを教えるために書かれたのです。それは、聖書の与える忍耐と励ましによって、希望を持たせるためなのです。
15:05> どうか、忍耐と励ましの神が、あなたがたを、キリスト・イエスにふさわしく、互いに同じ思いを持つようにしてくださいますように。
15:06> それは、あなたがたが、心を一つにし、声を合わせて、私たちの主イエス・キリストの父なる神をほめたたえるためです。
15:07> こういうわけですから、キリストが神の栄光のために、私たちを受け入れてくださったように、あなたがたも互いに受け入れなさい。
15:08> 私は言います。キリストは、神の真理を現わすために、割礼のある者のしもべとなられました。それは先祖たちに与えられた約束を保証するためであり、
15:09> また異邦人も、あわれみのゆえに、神をあがめるようになるためです。こう書かれているとおりです。「それゆえ、私は異邦人の中で、あなたをほめたたえ、あなたの御名をほめ歌おう。」
15:10> また、こうも言われています。「異邦人よ。主の民とともに喜べ。」
15:11> さらにまた、「すべての異邦人よ。主をほめよ。もろもろの国民よ。主をたたえよ。」
15:12> さらにまた、イザヤがこう言っています。「エッサイの根が起こる。異邦人を治めるために立ち上がる方である。異邦人はこの方に望みをかける。」
15:13> どうか、望みの神が、あなたがたを信仰によるすべての喜びと平和をもって満たし、聖霊の力によって望みにあふれさせてくださいますように。
15:14> 私の兄弟たちよ。あなたがた自身が善意にあふれ、すべての知恵に満たされ、また互いに訓戒し合うことができることを、この私は確信しています。
15:15> ただ私が所々、かなり大胆に書いたのは、あなたがたにもう一度思い起こしてもらうためでした。
15:16> それも私が、異邦人のためにキリスト・イエスの仕え人となるために、神から恵みをいただいているからです。私は神の福音をもって、祭司の務めを果たしています。それは異邦人を、聖霊によって聖なるものとされた、神に受け入れられる供え物とするためです。
15:17> それで、神に仕えることに関して、私はキリスト・イエスにあって誇りを持っているのです。
15:18> 私は、キリストが異邦人を従順にならせるため、この私を用いて成し遂げてくださったこと以外に、何かを話そうなどとはしません。キリストは、ことばと行ないにより、
15:19> また、しるしと不思議をなす力により、さらにまた、御霊の力によって、それを成し遂げてくださいました。その結果、私はエルサレムから始めて、ずっと回ってイルリコに至るまで、キリストの福音をくまなく伝えました。
15:20> このように、私は、他人の土台の上に建てないように、キリストの御名がまだ語られていない所に福音を宣べ伝えることを切に求めたのです。
15:21> それは、こう書いてあるとおりです。「彼のことを伝えられなかった人々が見るようになり、聞いたことのなかった人々が悟るようになる。」
15:22> そういうわけで、私は、あなたがたのところに行くのを幾度も妨げられましたが、
15:23> 今は、もうこの地方には私の働くべき所がなくなりましたし、また、イスパニヤに行くばあいは、あなたがたのところに立ち寄ることを多年希望していましたので、
15:24> というのは、途中あなたがたに会い、まず、しばらくの間あなたがたとともにいて心を満たされてから、あなたがたに送られ、そこへ行きたいと望んでいるからです。
15:25> ですが、今は、聖徒たちに奉仕するためにエルサレムへ行こうとしています。
15:26> それは、マケドニヤとアカヤでは、喜んでエルサレムの聖徒たちの中の貧しい人たちのために醵金することにしたからです。
15:27> 彼らは確かに喜んでそれをしたのですが、同時にまた、その人々に対してはその義務があるのです。異邦人は霊的なことでは、その人々からもらいものをしたのですから、物質的な物をもって彼らに奉仕すべきです。
15:28> それで、私はこのことを済ませ、彼らにこの実を確かに渡してから、あなたがたのところを通ってイスパニヤに行くことにします。
15:29> あなたがたのところに行くときは、キリストの満ちあふれる祝福をもって行くことと信じています。
15:30> 兄弟たち。私たちの主イエス・キリストによって、また、御霊の愛によって切にお願いします。私のために、私とともに力を尽くして神に祈ってください。
15:31> 私がユダヤにいる不信仰な人々から救い出され、またエルサレムに対する私の奉仕が聖徒たちに受け入れられるものとなりますように。
15:32> その結果として、神のみこころにより、喜びをもってあなたがたのところへ行き、あなたがたの中で、ともにいこいを得ることができますように。
15:33> どうか、平和の神が、あなたがたすべてとともにいてくださいますように。アーメン。

 第十六章

16:01> ケンクレヤにある教会の執事で、私たちの姉妹であるフィベを、あなたがたに推薦します。
16:02> どうぞ、聖徒にふさわしいしかたで、主にあってこの人を歓迎し、あなたがたの助けを必要とすることは、どんなことでも助けてあげてください。この人は、多くの人を助け、また私自身をも助けてくれた人です。
16:03> キリスト・イエスにあって私の同労者であるプリスカとアクラによろしく伝えてください。
16:04> この人たちは、自分のいのちの危険を冒して私のいのちを守ってくれたのです。この人たちには、私だけでなく、異邦人のすべての教会も感謝しています。
16:05> またその家の教会によろしく伝えてください。私の愛するエパネトによろしく。この人はアジヤでキリストを信じた最初の人です。
16:06> あなたがたのために非常に労苦したマリヤによろしく。
16:07> 私の同国人で私といっしょに投獄されたことのある、アンドロニコとユニアスにもよろしく。この人々は使徒たちの間によく知られている人々で、また私より先にキリストにある者となったのです。
16:08> 主にあって私の愛するアムプリアトによろしく。
16:09> キリストにあって私たちの同労者であるウルバノと、私の愛するスタキスとによろしく。
16:10> キリストにあって練達したアペレによろしく。アリストブロの家の人たちによろしく。
16:11> 私の同国人ヘロデオンによろしく。ナルキソの家の主にある人たちによろしく。
16:12> 主にあって労している、ツルパナとツルポサによろしく。主にあって非常に労苦した愛するペルシスによろしく。
16:13> 主にあって選ばれた人ルポスによろしく。また彼と私との母によろしく。
16:14> アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよびその人たちといっしょにいる兄弟たちによろしく。
16:15> フィロロゴとユリヤ、ネレオとその姉妹、オルンパおよびその人たちといっしょにいるすべての聖徒たちによろしく。
16:16> あなたがたは聖なる口づけをもって互いのあいさつをかわしなさい。キリストの教会はみな、あなたがたによろしくと言っています。
16:17> 兄弟たち。私はあなたがたに願います。あなたがたの学んだ教えにそむいて、分裂とつまずきを引き起こす人たちを警戒してください。彼らから遠ざかりなさい。
16:18> そういう人たちは、私たちの主キリストに仕えないで、自分の欲に仕えているのです。彼らは、なめらかなことば、へつらいのことばをもって純朴な人たちの心をだましているのです。
16:19> あなたがたの従順はすべての人に知られているので、私はあなたがたのことを喜んでいます。しかし、私は、あなたがたが善にはさとく、悪にはうとくあってほしい、と望んでいます。
16:20> 平和の神は、すみやかに、あなたがたの足でサタンを踏み砕いてくださいます。どうか、私たちの主イエスの恵みが、あなたがたとともにありますように。
16:21> 私の同労者テモテが、あなたがたによろしくと言っています。また私の同国人ルキオとヤソンとソシパテロがよろしくと言っています。
16:22> この手紙を筆記した私、テルテオも、主にあってあなたがたにごあいさつ申し上げます。
16:23> 私と全教会との家主であるガイオも、あなたがたによろしくと言っています。市の収入役であるエラストと兄弟クワルトもよろしくと言っています。
16:24> [本節欠如]
16:25> 私の福音とイエス・キリストの宣教によって、すなわち、世々にわたって長い間隠されていたが、今や現わされて、永遠の神の命令に従い、預言者たちの書によって、信仰の従順に導くためにあらゆる国の人々に知らされた奥義の啓示によって、あなたがたを堅く立たせることができる方、
16:26> [前節に合節]
16:27> 知恵に富む唯一の神に、イエス・キリストによって、御栄えがとこしえまでありますように。アーメン。

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コリント人への手紙1

Posted by Shota Maehara : 5月 3, 2011

コリント人への手紙1

 第一章
01:01> 神のみこころによってキリスト・イエスの使徒として召されたパウロと、兄弟ソステネから、
01:02> コリントにある神の教会へ。すなわち、私たちの主イエス・キリストの御名を、至る所で呼び求めているすべての人々とともに、聖徒として召され、キリスト・イエスにあって聖なるものとされた方々へ。主は私たちの主であるとともに、そのすべての人々の主です。
01:03> 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。
01:04> 私は、キリスト・イエスによってあなたがたに与えられた神の恵みのゆえに、あなたがたのことをいつも神に感謝しています。
01:05> というのは、あなたがたは、ことばといい、知識といい、すべてにおいて、キリストにあって豊かな者とされたからです。
01:06> それは、キリストについてのあかしが、あなたがたの中で確かになったからで、
01:07> その結果、あなたがたはどんな賜物にも欠けるところがなく、また、熱心に私たちの主イエス・キリストの現われを待っています。
01:08> 主も、あなたがたを、私たちの主イエス・キリストの日に責められるところのない者として、最後まで堅く保ってくださいます。
01:09> 神は真実であり、その方のお召しによって、あなたがたは神の御子、私たちの主イエス・キリストとの交わりに入れられました。
01:10> さて、兄弟たち。私は、私たちの主イエス・キリストの御名によって、あなたがたにお願いします。どうか、みなが一致して、仲間割れすることなく、同じ心、同じ判断を完全に保ってください。
01:11> 実はあなたがたのことをクロエの家の者から知らされました。兄弟たち。あなたがたの間には争いがあるそうで、
01:12> あなたがたはめいめいに、「私はパウロにつく。」「私はアポロに。」「私はケパに。」「私はキリストにつく。」と言っているということです。
01:13> キリストが分割されたのですか。あなたがたのために十字架につけられたのはパウロでしょうか。あなたがたがバプテスマを受けたのはパウロの名によるのでしょうか。
01:14> 私は、クリスポとガイオのほか、あなたがたのだれにもバプテスマを授けたことがないことを感謝しています。
01:15> それは、あなたがたが私の名によってバプテスマを受けたと言われないようにするためでした。
01:16> 私はステパナの家族にもバプテスマを授けましたが、そのほかはだれにも授けた覚えはありません。
01:17> キリストが私をお遣わしになったのは、バプテスマを授けさせるためではなく、福音を宣べ伝えさせるためです。それも、キリストの十字架がむなしくならないために、ことばの知恵によってはならないのです。
01:18> 十字架のことばは、滅びに至る人々には愚かであっても、救いを受ける私たちには、神の力です。
01:19> それは、こう書いてあるからです。「わたしは知恵ある者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さをむなしくする。」
01:20> 知者はどこにいるのですか。学者はどこにいるのですか。この世の議論家はどこにいるのですか。神は、この世の知恵を愚かなものにされたではありませんか。
01:21> 事実、この世が自分の知恵によって神を知ることがないのは、神の知恵によるのです。それゆえ、神はみこころによって、宣教のことばの愚かさを通して、信じる者を救おうと定められたのです。
01:22> ユダヤ人はしるしを要求し、ギリシヤ人は知恵を追求します。
01:23> しかし、私たちは十字架につけられたキリストを宣べ伝えるのです。ユダヤ人にとってはつまずき、異邦人にとっては愚かでしょうが、
01:24> しかし、ユダヤ人であってもギリシヤ人であっても、召された者にとっては、キリストは神の力、神の知恵なのです。
01:25> なぜなら、神の愚かさは人よりも賢く、神の弱さは人よりも強いからです。
01:26> 兄弟たち、あなたがたの召しのことを考えてごらんなさい。この世の知者は多くはなく、権力者も多くはなく、身分の高い者も多くはありません。
01:27> しかし神は、知恵ある者をはずかしめるために、この世の愚かな者を選び、強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選ばれたのです。
01:28> また、この世の取るに足りない者や見下されている者を、神は選ばれました。すなわち、有るものをない者のようにするため、無に等しいものを選ばれたのです。
01:29> これは、神の御前でだれをも誇らせないためです。
01:30> しかしあなたがたは、神によってキリスト・イエスのうちにあるのです。キリストは、私たちにとって、神の知恵となり、また、義と聖めと、贖いとになられました。
01:31> まさしく、「誇る者は主にあって誇れ。」と書かれているとおりになるためです。

 第二章
02:01> さて兄弟たち。私があなたがたのところへ行ったとき、私は、すぐれたことば、すぐれた知恵を用いて、神のあかしを宣べ伝えることはしませんでした。
02:02> なぜなら私は、あなたがたの間で、イエス・キリスト、すなわち十字架につけられた方のほかは、何も知らないことに決心したからです。
02:03> あなたがたといっしょにいたときの私は、弱く、恐れおののいていました。
02:04> そして、私のことばと私の宣教とは、説得力のある知恵のことばによって行なわれたものではなく、御霊と御力の現われでした。
02:05> それは、あなたがたの持つ信仰が、人間の知恵にささえられず、神の力にささえられるためでした。
02:06> しかし私たちは、成人の間で、知恵を語ります。この知恵は、この世の知恵でもなく、この世の過ぎ去って行く支配者たちの知恵でもありません。
02:07> 私たちの語るのは、隠された奥義としての神の知恵であって、それは、神が、私たちの栄光のために、世界の始まる前から、あらかじめ定められたものです。
02:08> この知恵を、この世の支配者たちは、だれひとりとして悟りませんでした。もし悟っていたら、栄光の主を十字架につけはしなかったでしょう。
02:09> まさしく、聖書に書いてあるとおりです。「目が見たことのないもの、耳が聞いたことのないもの、そして、人の心に思い浮んだことのないもの。神を愛する者のために、神の備えてくださったものは、みなそうである。」
02:10> 神はこれを、御霊によって私たちに啓示されたのです。御霊はすべてのことを探り、神の深みにまで及ばれるからです。
02:11> いったい、人の心のことは、その人のうちにある霊のほかに、だれが知っているでしょう。同じように、神のみこころのことは、神の御霊のほかにはだれも知りません。
02:12> ところで、私たちは、この世の霊を受けたのではなく、神の御霊を受けました。それは、恵みによって神から私たちに賜わったものを、私たちが知るためです。
02:13> この賜物について話すには、人の知恵に教えられたことばを用いず、御霊に教えられたことばを用います。その御霊のことばをもって御霊のことを解くのです。
02:14> 生まれながらの人間は、神の御霊に属することを受け入れません。それらは彼には愚かなことだからです。また、それを悟ることができません。なぜなら、御霊のことは御霊によってわきまえるものだからです。
02:15> 御霊を受けている人は、すべてのことをわきまえますが、自分はだれによってもわきまえられません。
02:16> いったい、「だれが主のみこころを知り、主を導くことができたか。」ところが、私たちには、キリストの心があるのです。

 第三章
03:01> さて、兄弟たちよ。私は、あなたがたに向かって、御霊に属する人に対するようには話すことができないで、肉に属する人、キリストにある幼子に対するように話しました。
03:02> 私はあなたがたには乳を与えて、堅い食物を与えませんでした。あなたがたには、まだ無理だったからです。実は、今でもまだ無理なのです。
03:03> あなたがたは、まだ肉に属しているからです。あなたがたの間にねたみや争いがあることからすれば、あなたがたは肉に属しているのではありませんか。そして、ただの人のように歩んでいるのではありませんか。
03:04> ある人が、「私はパウロにつく。」と言えば、別の人は、「私はアポロに。」と言う。そういうことでは、あなたがたは、ただの人たちではありませんか。
03:05> アポロとは何でしょう。パウロとは何でしょう。あなたがたが信仰にはいるために用いられたしもべであって、主がおのおのに授けられたとおりのことをしたのです。
03:06> 私が植えて、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させたのは神です。
03:07> それで、たいせつなのは、植える者でも水を注ぐ者でもありません。成長させてくださる神なのです。
03:08> 植える者と水を注ぐ者は、一つですが、それぞれ自分自身の働きに従って自分自身の報酬を受けるのです。
03:09> 私たちは神の協力者であり、あなたがたは神の畑、神の建物です。
03:10> 与えられた神の恵みによって、私は賢い建築家のように、土台を据えました。そして、ほかの人がその上に家を建てています。しかし、どのように建てるかについてはそれぞれが注意しなければなりません。
03:11> というのは、だれも、すでに据えられている土台のほかに、ほかの物を据えることはできないからです。その土台とはイエス・キリストです。
03:12> もし、だれかがこの土台の上に、金、銀、宝石、木、草、わらなどで建てるなら、
03:13> 各人の働きは明瞭になります。その日がそれを明らかにするのです。というのは、その日は火とともに現われ、この火がその力で各人の働きの真価をためすからです。
03:14> もしだれかの建てた建物が残れば、その人は報いを受けます。
03:15> もしだれかの建てた建物が焼ければ、その人は損害を受けますが、自分自身は、火の中をくぐるようにして助かります。
03:16> あなたがたは神の神殿であり、神の御霊があなたがたに宿っておられることを知らないのですか。
03:17> もし、だれかが神の神殿をこわすなら、神がその人を滅ぼされます。神の神殿は聖なるものだからです。あなたがたがその神殿です。
03:18> だれも自分を欺いてはいけません。もしあなたがたの中で、自分は今の世の知者だと思う者がいたら、知者になるためには愚かになりなさい。
03:19> なぜなら、この世の知恵は、神の御前では愚かだからです。こう書いてあります。「神は、知者どもを彼らの悪賢さの中で捕える。」
03:20> また、次のようにも書いてあります。「主は、知者の論議を無益だと知っておられる。」
03:21> ですから、だれも人間を誇ってはいけません。すべては、あなたがたのものです。
03:22> パウロであれ、アポロであれ、ケパであれ、また世界であれ、いのちであれ、死であれ、また現在のものであれ、未来のものであれ、すべてあなたがたのものです。
03:23> そして、あなたがたはキリストのものであり、キリストは神のものです。

 第四章
04:01> こういうわけで、私たちを、キリストのしもべ、また神の奥義の管理者だと考えなさい。
04:02> このばあい、管理者には、忠実であることが要求されます。
04:03> しかし、私にとっては、あなたがたによる判定、あるいは、およそ人間による判決を受けることは、非常に小さなことです。事実、私は自分で自分をさばくことさえしません。
04:04> 私にはやましいことは少しもありませんが、だからといって、それで無罪とされるのではありません。私をさばく方は主です。
04:05> ですから、あなたがたは、主が来られるまでは、何についても、先走ったさばきをしてはいけません。主は、やみの中に隠れた事も明るみに出し、心の中のはかりごとも明らかにされます。そのとき、神から各人に対する称賛が届くのです。
04:06> さて、兄弟たち。以上、私は、私自身とアポロに当てはめて、あなたがたのために言って来ました。それは、あなたがたが、私たちの例によって、「書かれていることを越えない。」ことを学ぶため、そして、一方にくみし、他方に反対して高慢にならないためです。
04:07> いったいだれが、あなたをすぐれた者と認めるのですか。あなたには、何か、もらったものでないものがあるのですか。もしもらったのなら、なぜ、もらっていないかのように誇るのですか。
04:08> あなたがたは、もう満ち足りています。もう豊かになっています。私たち抜きで、王さまになっています。いっそのこと、あなたがたがほんとうに王さまになっていたらよかったのです。そうすれば、私たちも、あなたがたといっしょに王になれたでしょうに。
04:09> 私は、こう思います。神は私たち使徒を、死罪に決まった者のように、行列のしんがりとして引き出されました。こうして私たちは、御使いにも人々にも、この世の見せ物になったのです。
04:10> 私たちはキリストのために愚かな者ですが、あなたがたはキリストにあって賢い者です。私たちは弱いが、あなたがたは強いのです。あなたがたは栄誉を持っているが、私たちは卑しめられています。
04:11> 今に至るまで、私たちは飢え、渇き、着る物もなく、虐待され、落ち着く先もありません。
04:12> また、私たちは苦労して自分の手で働いています。はずかしめられるときにも祝福し、迫害されるときにも耐え忍び、
04:13> ののしられるときには、慰めのことばをかけます。今でも、私たちはこの世のちり、あらゆるもののかすです。
04:14> 私がこう書くのは、あなたがたをはずかしめるためではなく、愛する私の子どもとして、さとすためです。
04:15> たといあなたがたに、キリストにある養育係が一万人あろうとも、父は多くあるはずがありません。この私が福音によって、キリスト・イエスにあって、あなたがたを生んだのです。
04:16> ですから、私はあなたがたに勧めます。どうか、私にならう者となってください。
04:17> そのために、私はあなたがたのところへテモテを送りました。テモテは主にあって私の愛する、忠実な子です。彼は、私が至る所のすべての教会で教えているとおりに、キリスト・イエスにある私の生き方を、あなたがたに思い起こさせてくれるでしょう。
04:18> 私があなたがたのところへ行くことはあるまいと、思い上がっている人たちがいます。
04:19> しかし、主のみこころであれば、すぐにもあなたがたのところへ行きます。そして、思い上がっている人たちの、ことばではなく、力を見せてもらいましょう。
04:20> 神の国はことばにはなく、力にあるのです。
04:21> あなたがたはどちらを望むのですか。私はあなたがたのところへむちを持って行きましょうか。それとも、愛と優しい心で行きましょうか。

 第五章
05:01> あなたがたの間に不品行があるということが言われています。しかもそれは、異邦人の中にもないほどの不品行で、父の妻を妻にしている者がいるとのことです。
05:02> それなのに、あなたがたは誇り高ぶっています。そればかりか、そのような行ないをしている者をあなたがたの中から取り除こうとして悲しむこともなかったのです。
05:03> 私のほうでは、からだはそこにいなくても心はそこにおり、現にそこにいるのと同じように、そのような行ないをした者を主イエスの御名によってすでにさばきました。
05:04> あなたがたが集まったときに、私も、霊においてともにおり、私たちの主イエスの権能をもって、
05:05> このような者をサタンに引き渡したのです。それは彼の肉が滅ぼされるためですが、それによって彼の霊が主の日に救われるためです。
05:06> あなたがたの高慢は、よくないことです。あなたがたは、ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくらませることを知らないのですか。
05:07> 新しい粉のかたまりのままでいるために、古いパン種を取り除きなさい。あなたがたはパン種のないものだからです。私たちの過越の小羊キリストが、すでにほふられたからです。
05:08> ですから、私たちは、古いパン種を用いたり、悪意と不正のパン種を用いたりしないで、パン種のはいらない、純粋で真実なパンで、祭りをしようではありませんか。
05:09> 私は前にあなたがたに送った手紙で、不品行な者たちと交際しないようにと書きました。
05:10> それは、世の中の不品行な者、貪欲な者、略奪する者、偶像を礼拝する者と全然交際しないようにという意味ではありません。もしそうだとしたら、この世界から出て行かなければならないでしょう。
05:11> 私が書いたことのほんとうの意味は、もし、兄弟と呼ばれる者で、しかも不品行な者、貪欲な者、偶像を礼拝する者、人をそしる者、酒に酔う者、略奪する者がいたなら、そのような者とはつきあってはいけない、いっしょに食事をしてもいけない、ということです。
05:12> 外部の人たちをさばくことは、私のすべきことでしょうか。あなたがたがさばくべき者は、内部の人たちではありませんか。
05:13> 外部の人たちは、神がおさばきになります。その悪い人をあなたがたの中から除きなさい。

 第六章
06:01> あなたがたの中には、仲間の者と争いを起こしたとき、それを聖徒たちに訴えないで、あえて、正しくない人たちに訴え出るような人がいるのでしょうか。
06:02> あなたがたは、聖徒が世界をさばくようになることを知らないのですか。世界があなたがたによってさばかれるはずなのに、あなたがたは、ごく小さな事件さえもさばく力がないのですか。
06:03> 私たちは御使いをもさばくべき者だ、ということを、知らないのですか。それならこの世のことは、言うまでもないではありませんか。
06:04> それなのに、この世のことで争いが起こると、教会のうちでは無視される人たちを裁判官に選ぶのですか。
06:05> 私はあなたがたをはずかしめるためにこう言っているのです。いったい、あなたがたの中には、兄弟の間の争いを仲裁することのできるような賢い者が、ひとりもいないのですか。
06:06> それで、兄弟は兄弟を告訴し、しかもそれを不信者の前でするのですか。
06:07> そもそも、互いに訴え合うことが、すでにあなたがたの敗北です。なぜ、むしろ不正をも甘んじて受けないのですか。なぜ、むしろだまされていないのですか。
06:08> ところが、それどころか、あなたがたは、不正を行なう、だまし取る、しかもそのようなことを兄弟に対してしているのです。
06:09> あなたがたは、正しくない者は神の国を相続できないことを、知らないのですか。だまされてはいけません。不品行な者、偶像を礼拝する者、姦淫をする者、男娼となる者、男色をする者、
06:10> 盗む者、貪欲な者、酒に酔う者、そしる者、略奪する者はみな、神の国を相続することができません。
06:11> あなたがたの中のある人たちは以前はそのような者でした。しかし、主イエス・キリストの御名と私たちの神の御霊によって、あなたがたは洗われ、聖なる者とされ、義と認められたのです。
06:12> すべてのことが私には許されたことです。しかし、すべてが益になるわけではありません。私にはすべてのことが許されています。しかし、私はどんなことにも支配されはしません。
06:13> 食物は腹のためにあり、腹は食物のためにあります。ところが神は、そのどちらをも滅ぼされます。からだは不品行のためにあるのではなく、主のためであり、主はからだのためです。
06:14> 神は主をよみがえらせましたが、その御力によって私たちをもよみがえらせてくださいます。
06:15> あなたがたのからだはキリストのからだの一部であることを、知らないのですか。キリストのからだを取って遊女のからだとするのですか。そんなことは絶対に許されません。
06:16> 遊女と交われば、一つからだになることを知らないのですか。「ふたりの者は一心同体となる。」と言われているからです。
06:17> しかし、主と交われば、一つ霊となるのです。
06:18> 不品行を避けなさい。人が犯す罪はすべて、からだの外のものです。しかし、不品行を行なう者は、自分のからだに対して罪を犯すのです。
06:19> あなたがたのからだは、あなたがたのうちに住まれる、神から受けた聖霊の宮であり、あなたがたは、もはや自分自身のものではないことを、知らないのですか。
06:20> あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。ですから自分のからだをもって、神の栄光を現わしなさい。

 第七章
07:01> さて、あなたがたの手紙に書いてあったことについてですが、男が女に触れないのは良いことです。
07:02> しかし、不品行を避けるため、男はそれぞれ自分の妻を持ち、女もそれぞれ自分の夫を持ちなさい。
07:03> 夫は自分の妻に対して義務を果たし、同様に妻も自分の夫に対して義務を果たしなさい。
07:04> 妻は自分のからだに関する権利を持ってはおらず、それは夫のものです。同様に夫も自分のからだについての権利を持ってはおらず、それは妻のものです。
07:05> 互いの権利を奪い取ってはいけません。ただし、祈りに専心するために、合意の上でしばらく離れていて、また再びいっしょになるというのならかまいません。 あなたがたが自制力を欠くとき、サタンの誘惑にかからないためです。
07:06> 以上、私の言うところは、容認であって、命令ではありません。
07:07> 私の願うところは、すべての人が私のようであることです。しかし、ひとりひとり神から与えられたそれぞれの賜物を持っているので、人それぞれに行き方があります。
07:08> 次に、結婚していない男とやもめの女に言いますが、私のようにしていられるなら、それがよいのです。
07:09> しかし、もし自制することができなければ、結婚しなさい。情の燃えるよりは、結婚するほうがよいからです。
07:10> 次に、すでに結婚した人々に命じます。命じるのは、私ではなく主です。妻は夫と別れてはいけません。
07:11> ・・もし別れたのだったら、結婚せずにいるか、それとも夫と和解するか、どちらかにしなさい。・・また夫は妻を離別してはいけません。
07:12> 次に、そのほかの人々に言いますが、これを言うのは主ではなく、私です。信者の男子に信者でない妻があり、その妻がいっしょにいることを承知している場合は、離婚してはいけません。
07:13> また、信者でない夫を持つ女は、夫がいっしょにいることを承知しているばあいは、離婚してはいけません。
07:14> なぜなら、信者でない夫は妻によって聖められており、また、信者でない妻も信者の夫によって聖められているからです。そうでなかったら、あなたがたの子どもは汚れているわけです。ところが、現に聖いのです。
07:15> しかし、もし信者でないほうの者が離れて行くのであれば、離れて行かせなさい。そのようなばあいには、信者である夫あるいは妻は、縛られることはありません。神は、平和を得させようとしてあなたがたを召されたのです。
07:16> なぜなら、妻よ。あなたが夫を救えるかどうかが、どうしてわかりますか。また、夫よ。あなたが妻を救えるかどうかが、どうしてわかりますか。
07:17> ただ、おのおのが、主からいただいた分に応じ、また神がおのおのをお召しになったときのままの状態で歩むべきです。私は、すべての教会で、このように指導しています。
07:18> 召されたとき割礼を受けていたのなら、その跡をなくしてはいけません。また、召されたとき割礼を受けていなかったのなら、割礼を受けてはいけません。
07:19> 割礼は取るに足らぬこと、無割礼も取るに足らぬことです。重要なのは神の命令を守ることです。
07:20> おのおの自分が召されたときの状態にとどまっていなさい。
07:21> 奴隷の状態で召されたのなら、それを気にしてはいけません。しかし、もし自由の身になれるなら、むしろ自由になりなさい。
07:22> 奴隷も、主にあって召された者は、主に属する自由人であり、同じように、自由人も、召された者はキリストに属する奴隷だからです。
07:23> あなたがたは、代価をもって買われたのです。人間の奴隷となってはいけません。
07:24> 兄弟たち。おのおの召されたときのままの状態で、神の御前にいなさい。
07:25> 処女のことについて、私は主の命令を受けてはいませんが、主のあわれみによって信頼できる者として、意見を述べます。
07:26> 現在の危急のときには、男はそのままの状態にとどまるのがよいと思います。
07:27> あなたが妻に結ばれているなら、解かれたいと考えてはいけません。妻に結ばれていないのなら、妻を得たいと思ってはいけません。
07:28> しかし、たといあなたが結婚したからといって、罪を犯すのではありません。たとい処女が結婚したからといって、罪を犯すのではありません。ただ、それらの人々は、その身に苦難を招くでしょう。私はあなたがたを、そのようなめに会わせたくないのです。
07:29> 兄弟たちよ。私は次のことを言いたいのです。時は縮まっています。今からは、妻のある者は、妻のない者のようにしていなさい。
07:30> 泣く者は泣かない者のように、喜ぶ者は喜ばない者のように、買う者は所有しない者のようにしていなさい。
07:31> 世の富を用いる者は用いすぎないようにしなさい。この世の有様は過ぎ去るからです。
07:32> あなたがたが思い煩わないことを私は望んでいます。独身の男は、どうしたら主に喜ばれるかと、主のことに心を配ります。
07:33> しかし、結婚した男は、どうしたら妻に喜ばれるかと世のことに心を配り、
07:34> 心が分かれるのです。独身の女や処女は、身もたましいも聖くなるため、主のことに心を配りますが、結婚した女は、どうしたら夫に喜ばれるかと、世のことに心を配ります。
07:35> ですが、私がこう言っているのは、あなたがた自身の益のためであって、あなたがたを束縛しようとしているのではありません。むしろあなたがたが秩序ある生活を送って、ひたすら主に奉仕できるためなのです。
07:36> もし、処女である自分の娘の婚期も過ぎようとしていて、そのままでは、娘に対しての扱い方が正しくないと思い、またやむをえないことがあるならば、その人は、その心のままにしなさい。罪を犯すわけではありません。彼らに結婚させなさい。
07:37> しかし、もし心のうちに堅く決意しており、ほかに強いられる事情もなく、また自分の思うとおりに行なうことのできる人が、処女である自分の娘をそのままにしておくのなら、そのことはりっぱです。
07:38> ですから、処女である自分の娘を結婚させる人は良いことをしているのであり、また結婚させない人は、もっと良いことをしているのです。
07:39> 妻は夫が生きている間は夫に縛られています。しかし、もし夫が死んだなら、自分の願う人と結婚する自由があります。ただ主にあってのみ、そうなのです。
07:40> 私の意見では、もしそのままにしていられたら、そのほうがもっと幸いです。私も、神の御霊をいただいていると思います。

 第八章
08:01> 次に、偶像にささげた肉についてですが、私たちはみな知識を持っているということなら、わかっています。しかし、知識は人を高ぶらせ、愛は人の徳を建てます。
08:02> 人がもし、何かを知っていると思ったら、その人はまだ知らなければならないほどのことも知ってはいないのです。
08:03> しかし、人が神を愛するなら、その人は神に知られているのです。
08:04> そういうわけで、偶像にささげた肉を食べることについてですが、私たちは、世の偶像の神は実際にはないものであること、また、唯一の神以外には神は存在しないことを知っています。
08:05> なるほど、多くの神や、多くの主があるので、神々と呼ばれるものならば、天にも地にもありますが、
08:06> 私たちには、父なる唯一の神がおられるだけで、すべてのものはこの神から出ており、私たちもこの神のために存在しているのです。また、唯一の主なるイエス・キリストがおられるだけで、すべてのものはこの主によって存在し、私たちもこの主によって存在するのです。
08:07> しかし、すべての人にこの知識があるのではありません。ある人たちは、今まで偶像になじんで来たため偶像にささげた肉として食べ、それで彼らのそのように弱い良心が汚れるのです。
08:08> しかし、私たちを神に近づけるのは食物ではありません。食べなくても損にはならないし、食べても益にはなりません。
08:09> ただ、あなたがたのこの権利が、弱い人たちのつまずきとならないように、気をつけなさい。
08:10> 知識のあるあなたが偶像の宮で食事をしているのをだれかが見たら、それによって力を得て、その人の良心は弱いのに、偶像の神にささげた肉を食べるようなことにならないでしょうか。
08:11> その弱い人は、あなたの知識によって、滅びることになるのです。キリストはその兄弟のためにも死んでくださったのです。
08:12> あなたがたはこのように兄弟たちに対して罪を犯し、彼らの弱い良心を踏みにじるとき、キリストに対して罪を犯しているのです。
08:13> ですから、もし食物が私の兄弟をつまずかせるなら、私は今後いっさい肉を食べません。それは、私の兄弟につまずきを与えないためです。

 第九章