I am the vine; you are the branches

Shota Maehara's Blog

「進歩」という名の逆風

Posted by Shota Maehara : 7月 15, 2010

人は生きるために働くのか、それとも働くために生きるのか。
涙とともに故郷を追われ、家族を奪われ、命さえも奪われる。
人間とはなんと憐れな生き物であろうか。

安らぎもなく、精根が尽き果てるまで働き続け、
命を枯らして、そして死の床に横たわる。

終電で体を弓なりに曲げて眠り込む仕事帰りの乗客。
その姿は、祈りのようにも見える。体を支えられず、
隣の乗客にもたれかかる疲れた男と女。
この夜の墓場。

ゆらゆらと亡霊のように体を左右に揺らしながら、
隣の乗客が席を立つとシートに頭を打ち付ける。
そしてふたたびその単調な動きを繰り返すのだ。

ふと目覚めたときここが天国ではなく、死の谷へ向う、
鉄の箱舟であることに気づくまで。

物のすれ合う音、軋む音、ぶつかり合う金属音。
それは死の谷の住人が奏でる「交響曲」」(symphony)。
下品な哄笑が混ざり合う。一列に並んだ揺れる吊革。

彼らの顔の皺一つ一つが物語るのは、破れたかつての夢の跡。
それは一つの象形文字のように、不気味に闇夜に浮かび上がる。
感傷的な物語。だが誰もそれに見向きもしない。
映画のエキストラ、名もなき者たちに感情移入する客はいない。

いまや貨幣を介して世界は変わる、社会も変わる、
そこに住む人間の精神を置き去りにして。

切なさや情熱とは無関係に新しいものが地上に生み落とされる。
否応なく私たちはそれを受け取り、自らの生活を変えてゆく。
「進歩」という名の逆風、それが善か悪かを誰が知ろう。

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