I am the vine; you are the branches

Shota Maehara's Blog

鉄道―その光と影

Posted by Shota Maehara : 7月 13, 2010

脚色された都会のネオンから錆びついた郊外の街灯へと
疲れてふだんより重くなった体を引きずりながら帰る夜
人もまばらな駅の階段で、赤黒い棒のようなペンが落ちていた。

私はその一本のペンを拾い上げた。
そして、このペンの持ち主は果してどんな人物であったのだろう、
一体、どんな経緯で私の手元に来ることになったのかと、
とりとめのない空想に耽った。

その時に不思議と、
私はけだるい体の内側に新鮮な力が蘇ってくるのを感じた。
何らかのきっかけは思いがけずふとしたところからやってくる。

まさに詩を書くことは、このペンの運命のようだ。
どこからともなく現れて、またどこかへ去りゆく
持ち主が言葉を選ぶのではなく、
言葉が自ら詩となるためにその持ち主を選ぶように。

しばらく世界を見ることを忘れていた私の眼は
夜の静寂と闇を疾走する夜の列車に揺られながら
車窓の外に向かっていた。

一体これから私はどこに運ばれていくのだろう。
そうした疑念とともに、しかし、書くこと、
ただそれだけが唯一の答えだ、という心の声が聞こえる。

夜の車内。顔を失った顔。髪をかき上げるしぐさ。
若さを内に秘めながら、いまだその輝きを燃やすことなく
持て余すようにして途中の駅で列車を降りる女性。

それこそこの時代の最良の隠喩(metaphor)ではないか。
誰からも見捨てられ若さを切り売りする以外に生きる術のない
醒めた老人の国。散乱した人々の魂よ。

(2010.7.13 Akizukiseijin)

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