傷ついた時代の肖像
Posted by Shota Maehara : 9月 30, 2009
私たちは今、傷ついた時代の肖像を前にして
それぞれが呻吟し、ため息をついている
走り去った時代を懐かしむ余裕すらなく、
ただあわただしく日々の暮らしに押し流されていく
私たちは互いに視線を交わすこともなく
同じ場所にたたずむ、終電を待つ乗客のようだ
反対のホームで電車を待つ無数の人々は、
何処か遠い世界の顔を失った幻影のように見える
私たちには真昼の光は眩しすぎる、だが夜の街に
光がともる時、人間の本当の孤独が始まる
震えている夜の空気の中を、一人家路へと急ぐ
誰も待つ人はいない、ただ老いと死だけが待つ部屋
私たちの心の動揺を見透かしているように
部屋のカーテンが風に揺られている
自然を否定し、神を否定し、人間を否定した時代
私たちは結局ただ孤独な点のようになった
たとえ次の瞬間に消え去っても、誰も気づくことはないだろう
バビロンの塔の悲劇のように
私たちはもはや互いに言葉が通じず
悲しみも、喜びも、愛も私たちの破れた隙間からこぼれていく
時代の観覧車の乗客のように
私たちは死ぬまで孤独な遊戯を繰り返す
夜の静けさの中で、白い鳥は啼く、ビルの谷間の花、
羽根を休めながら、私たちは神を待ち望む
(2009.9.30 秋月誠仁)
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