欲望の翼
Posted by Shota Maehara : 9月 2, 2009
遥かなる架空の都市に
欲望の翼をもった人々が
天空を飛翔していた
女は女を愛し、男は男を愛した
老人は谷底に投げ入れられ、
幼児は生まれてすぐ絞殺された
いにしえのイスラエルの物語の如く
この都市の虚栄は、神の御座にまで届いた
神は使者/死者を遣わし、彼らが一体どんな
生活をしているのか確かめさせた
すると、見慣れぬ装いを纏った二、三の使者を群衆は
取り囲み、処刑してしまった。
神はいまやこの都市の虚栄が真実であったことを知り、
この地上に被造物を生み出したことを深く後悔された。
人は歩くことをやめ、天から地上を支配した
そして、いつしか神そのものになれるのではないか
と錯覚するようにさえなった
その時だった
天空から真紅の炎の火柱が、地上に突き刺ささった
人びとの欲望の翼は焼けただれ、次々に地上へ失墜していった
遠い記憶の中にだけある故郷の言葉をたよりに
人は地上にふたたび文明を築くだろう
だがその時欲望の翼の痕跡もまた背中に
はっきりと浮かび上がるだろう
もはや天空を飛翔することはなくとも、
この地上から離れることを夢見て
憐れな種族、欲望の翼をもった、
かつて天空を支配した種族の末裔よ
(2009.9.3)
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