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Shota Maehara's Blog

W.バジョット 『イギリス憲政論』(1867年)

Posted by Shota Maehara : 12月 20, 2008

bagehotwalter8289本書以前のイギリス憲政構造のイギリス人自身の解釈は、十八世紀にフランス人モンテスキュウがその 『法の精神』 第十一篇第六章で指摘した権力分立観でした。

十九世紀半ばに表わされた本書は、この分立観を否定し、Crown in Parliament に主権を認めるイギリス憲政の現実運営は、議会と行政機構とをハイフンのように結合する内閣主導による次第を剔示しました。

国王の憲政行動が、名目上はともかく、じっさいには政治家との関係で、国王に立派な分別があるならばもっぱら「相談ヲウケ・激励シ・警告スル」三点にかぎられてきている、との定式化も現実を先取りしつつもバジョット・テーゼとして、今日にいたるまでイギリス政治分析の手引きとされています。

さらに本書は、このように内閣を媒介に結合する立法権力と行政権力とが、王冠の権威と複合し、権力自身もまた権威化しつつ<尊厳的部分>と<実践的部分>との分業と協業との幾重もの重層構造をなす「支配の秘密」を白日の下にあばきだした点でも著名です。

本書が想定した大衆がたしかに王冠に眩惑される善男善女であったとはいえ、マスメディアが発達し・教育が普及した今日の大衆も、やはり権威への自発的同調と需要とを示します。

今年創刊百五十二周年を迎える 『エコノミスト』 誌の二代目の編集長でもあった著者には別にイングランド銀行を中心とする英國金融秩序を考察した 『ロンバード街』 があり、その結論は、理論的にみれば拙劣な制度でも、すでにさまざまな事情の輻輳の結果として一定機能をそれなりに有効にはたしている以上、根本的改革よりは、適宜、弥縫しつつ改良するのがよし、とするものでした。

おそらく、政治制度についても、「狂気のソクラテス達」(E .バーク 『フランス革命の省察』Reflections on the Revolution in France)の企図する設計図にもとづく改造よりは、歴史的現実の累積にもとづいて現在このようになった作動体系の中に、改良しつつ運用するのに足りるものを発見するのが、著者の姿勢といえましょう。

(引用元:前田康博 千葉大学法経学部)

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コメント / トラックバック2件 to “W.バジョット 『イギリス憲政論』(1867年)”

  1. akai1127ohi said

    はじめて秋月さんのブログにコメントします。akai1127ohiです。個人的に興味深いのは『イギリス国制論』が出版された1867年は、同時に第二回選挙法改正が成立した年でもあり、バジョットが描き出したヴィクトリアン的均衡による古き良きイギリス国制が崩壊して大衆デモクラシーの時代へと移り変わる時期でもあることです。ミネルヴァの梟や夕暮れに飛ぶ、というヘーゲルの言葉にならえば、バジョットもやはり19世紀のヴィクトリア的政治体制が瓦解の時期に入ったからこそ、その安定の奥義を克明に描き出せたのではないか、というような気もしているところです。それではまた。

  2. akizukiseijin said

    Akai1127ohiさま。コメントありがとうございます。いつも勉強させていただいています。バジョットはバークの影響も感じさせるイギリスの保守主義の論客であり、カール・マルクス、アレクシス・ド・トクヴィルの同時代人でもあります。この時代はまさしく一部の上流階級や貴族ではなく大衆による民主主義へ向かう時代だったわけですね。

    私が、彼に興味を持つのは次の点です。

    イギリス革命とフランス革命の比較を論じるにあたって、バークやバジョットが前者を過去との継続に、そして後者を過去との断絶に見ていることです。それは王制の継続のことですが、それが国に精神的支柱を提供しているがゆえに安定を齎すと。私はここに地政学的に文明の亜周辺(ウィットフォーゲル)の特徴を垣間見る気がします。つまり、文明からある程度離れた島国であるために、文化や制度が一新されずに残り続けるのです。例えば、日本には中国にすらなくなった仏教や茶道の流派があります。そして、私は何よりも同じ島国という亜周辺である英日の王制・天皇制の継続のことを考えています。こうした角度から、バジョットは英国の民主主義を風土に合わせて、どう安定させていくかを考えていたと思います。それは無論ここ日本においても当てはまります。

    この問題を考える意味で、カントロヴィッチ『王の二つの身体』などはとても参考になります。これは英国論の隠れた名著ですね。『法の精神』も含めて、もっと英国に英国以上のものをみるために研究されなければならない隠れた書物は多いですね。

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