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Shota Maehara's Blog

人間の複数性―絶望は死に至る病である

Posted by Shota Maehara : 10月 5, 2008

「孤立」と全体支配

何から救われたのか?答えはおそらく全体主義の本性にもう一度注目することによって見つかるだろう。すなわち、テロルの本質と論理性の原理、これが結びつくことで全体主義の本質をなす。テロルの最も恐るべき側面とは、テロルが孤立した個人を完全に束ね合わせ、そうすることによってこうした個人をいっそう孤立させることだと繰り返し述べてきた。これは文句なく正しい。何らかの共通の関心によって集まった集団はどのようなものであろうと、全体的支配にとってはこの上ない脅威であることを、おそらくヒトラーもスターリンもすべての歴史上の暴政の例から学んでいたかもしれない。孤立した個人だけが全体的に支配されうる。(ハンナ・アーレント「全体主義の本性について」/『アーレント政治思想集成2』みすず書房、二〇〇二年、p.183)

「原子化された社会」と「孤立した個人」

「原子化された社会」と「孤立した個人」という言葉が意味するのは、人びとが共通のものを何ももたずに、世界の眼に見え触れることのできる領域をわかちあうことなく生きている状態である。アパートの住人がその建物を分かちあっていることを土台として集団を形成しているのと同じように、私たちの共生にあらゆる通常のコミュニケーションの回路を与える政治的および法的制度を頼りとして、私たちは社会的集団や社会や人民や国民などになるのである。そして、何らかの理由によって建物が取りあげられてしまえば、アパートの住人がお互いに孤立するであろうように、私たちの制度の崩壊―政治的および物理的な故郷喪失者と精神的および社会的な根無し草の絶えざる増加―は、影響や貧困の度合いは異なりながらも私たちすべてが参加している自分たちの時代の、一つの巨大な運命である。(同論文、p184)

「論理性と孤立」

論理性は孤立した(アイソレイティッド)人間に訴える力をもつ。なぜなら、人間は―同輩たちとの接触なしに、つまり経験の何らかの可能性なしに完全に単独な状態(ソリチュード)にある―推論の最も抽象的な規則しか頼れるものがないからである。論理性と孤立の間の親密な関係は、あまり知られていないが、次の聖書の一節のマルティン・ルターによる解釈のなかで強調された。神は人間、すなわち男性と女性を創造した。なぜなら、「ひとが独りでいるのはよくないからである」。ルターはいっている。「見棄てられた孤独な(ロンリー)人間はいつも一つのことから別のことを演繹し、すべてのことを最も悪い結論へと導く」(『教化のための書』所収「なぜ孤独を避けるべきか」より)。(同論文、p185)

「論理性と孤独」(続)

論理性、すなわち事実と経験を考慮することのないたんなる推論は、単独であることのもつ真の悪徳である。しかし、単独であること(ソリチュード)の悪徳は、見棄てられた孤独な(ロンリー)な状態の絶望のなかからのみ生ずる。人間的接触が難しくなった今日―共通の故郷(ホーム)の崩壊によって、あるいは実質、すなわち人間関係の現実の事柄をゆっくりと食い尽くすようなたんなる機能の拡張によって、あるいは崩壊の結果として起こる革命の破局的な発展によって―、そのような世界における見棄てられた状態はもはや、「内向性」あるいは「外向性」といった美しくて意味のない言葉で扱われる心理学的な事柄ではない。故郷喪失と根無し草がもたらす見棄てられた孤独な状態は、人間的にいえば、私たちの時代の病理そのものである。」(同論文、p.185-6)

「単独であることと見棄てられ孤独な状態であることは異なる」

自分自身と一緒にいる単独である状態は他者との接触を放棄する必要がなく、人間的な付き合いのまったく外部にあるわけではない。むしろ逆に、単独であることは私たちを友情や愛のような傑出した人間関係(ラボール)のかたちへ、すなわち人間的コミュニケーションの既存の回路を超えるすべての関係(ラボール)へと準備させるのである。もし単独であることに耐えうるならば、他者と交わることにも耐えられるし、その覚悟もできることだろう。他の人間に耐えられない人間はふつう自己自身にも耐えられないだろう。(同論文、p.186)

 

絶望者は何かについて絶望する。一瞬それはそう見える、しかしそれはほんの一瞬だけである、―その同じ瞬間に真実の絶望がすなわち絶望の真相が示される。彼が何かについて絶望しているのは本当は自分自身について絶望しているのであり、そこで自分自身から脱け出ようと欲するのである。―セーレン・キルケゴール『死に至る病』

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