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Shota Maehara's Blog

霊と肉

Posted by Shota Maehara : 9月 14, 2008

 

 

 対話篇

 

―ねえ、きみ、ひとつ尋ねたいことがあるんだ。

一体、霊と肉とは、果たして神の救いによって一つになり得るんだろうか?

私にはなにか、むしろ汚れた肉の中にこそ神聖なものが宿っているという転倒も、いささか信じられないんだ。

それこそ俗悪なロマン主義なんじゃないかな。

まるで都市という人工の楽園を捨てて、自然へ還れというかの如くじゃないか。むかしヴォルテールはルソーに、あなたの本を読んでいると、四足で歩きたくなると言ったそうだ。

そりゃ、私だって自然を愛している。燦燦と降り注ぐ太陽の光を浴びると、身も心も清められそうだからね。

でもこの文明の時代に本当に手つかずの自然なんて残されているのだろうか。自然は比類なく美しくもあるが、時として病気や飢饉によって害をなすこともある。そもそも薬を必要としない体なんてあるんだろうか。

でも不思議だね。人間だってこの大きな自然の一部なのに、いまさら自然に還れだなんて。

 

―ねえ、きみ、ひとつ訊きたいんだ。

人間は自然へ向かおうとする抑えがたい本能があるけど、そのとき人は破滅と死に魅了されてもいる気がするんだ。すべての生きとし生けるものの根源に溯れば、それは死だ。それを無と呼ぼうが、無意識(エス)と呼ぼうが変わりない。

ゴーギャンは、フランスという文明の重しに耐えきれず、自由を求めてタヒチへ向かった。でも、彼は果たして自由を得ただろうか。人間から遠く隔たった未開の地で客死したその時に。「私たちは何処から来たか、私たちとはなにか、私たちは何処へいくか」という彼の最後の作品を眺めていると、ふとそんなことを考えてしまう。

 

―ねえ、きみ、ずいぶん話がまわり道して悪かったね。

つまり、霊性の欺瞞は、肉体によって食い破られるとしても、やがて肉体は眼の前のすべてのもの、いや自らをも焼き尽すだろう。その先にあるのは唯、破滅と死しかない。

私はなぜか満面の水に湛えられた海や川に見入ってしまうことがある。なぜって、そこには抑制された知性を感じるから。荒々しいまでの力を身内に秘めていながら、ただ静かにそこに横たわる海や川には、自然の抑制された知性と呼べるようななにかが存在する様な気がしてならない。

私は人間と契約を交わした神の摂理はどうも作り話めいて信じれないが、カントやヴィーコが歴史の上に見出した自然の摂理ならばきっとあるような気がする。

 

―ねえ、きみ、本当に訊いてもらいたいんだ。

一度大きな失敗をするとね、人は何年たってもそれを忘れないものだ。たとえ無意識に同じ過ちを繰り返しそうになっても、体が憶えていたりする。友人や恋人を傷つけた何気ない言葉は、いつまでも消えない痛みを体に刻みこむんだね。平和だって、敗戦の経験があるから、もう二度と繰り返してはいけないと体でわかる。

決して頭だけで論理的に考えたくない。ただ、論理を超えるものを論理的にとらえたいと思うだけだ。例えば、職人が知性と同時に歴史と経験を重視し、永遠に未完成なものを追い続けるように。

かくして、霊と肉の相克は、本当の解決の道へ向かってにじり寄れる。自然こそ最良の知性だといったらきみは笑うだろうか。

 

ゲーテはこう言っている―「人間は行きたい方へゆくがいい。人間はしたいことをするがいい。しかし人間は、自然がつくった道へ、必ず戻ってくるにちがいない」。

 

―ねえ、イエス、きみに最後に訊きたいことがあるんだ。

「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」(エリ、エリ、レマ、サバクタニ)と叫んだ時、果たして霊と肉は神によって本当に一つになり得たのかを。

 

(2008.9.14 秋月誠仁)

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コメント / トラックバック3件 to “霊と肉”

  1. dbadmin said

    あ・どもー!

    先日はチョイ酒呑んでまして・・なんつって。
    しかしながら アジア・デモクラシー のくだりは恐ろしくもあり、また視野の狭い人間(わきち含)
    に強烈な衝撃があると思います。

    脆弱なルーティン思考・被害者思考・全身寄っかかりに馴れきった国には、こういった思想・また教育が必要かと。

    力士がガンジャ喰った程度でメディアタイムが埋め尽くされ、右往左往大騒ぎしてるようでは、世界に向けて【日本はこんなにひ弱ですよー】
    と発信してるようなモノかと。

    そんで外交しっかりしろ言われても、世界から舐められるんのはアタリマエと思います。

    その他も然り。ホント、ゴーン氏では無いですが、プーチン統領あたりに仕切って貰いたいモノです。

    違法物の推奨はしてませんw

    語彙が少ないので、
    記事に対するコメントは正面切って入れられませんが、コチラでUPされた記事をなるたけ理解できるよう、勉強しようと思います。

    また、わきちのブログの性質上【悪フザケが基本】なんで、レスは気にしないで下さい。

    あ・そんで、登録があっても無くても、世界からコメントが入るように設定してありますので、ヒマは無いと思いますが、

    日記に関係無く、TB、また辛口の世論切り(笑)を打ち込んで欲しいと思います。

    ——-
    PS

    死者or使者の【詞】は素晴しいですね。

    http://plaza.rakuten.co.jp/andbigups/

  2. プルーデンシャル said

    たまたま拝見しましたが、素晴らしい内容のブログですね。日本の問題に限らず、世界全体の事を考えるこんなブログがもっと増えてくれたらと思います。期待しています。また遊びに来ますのでよろしくお願いいたします。

  3. akizukiseijin said

    dbadminさん。コメントしていただきありがとうございます。相変わらずそちらのブログの方は絶好調のようですね。楽天ブログは、マーケット(市場)型ブログであるために訪問者数やレヴュー数がすごいですね。それにスピードも速く回転していく感じでビックリしています。それだけにいろいろ勉強になります。コメント欄の質問については、dbadminさんの所は誰でも書き込めるようになっているとの御返事でしたので、安心して今後書き込ませていただきます。自分自身の執筆のかたわらで気になったこと気づいたことなどを折に触れてブログにアップしていきますのでこれからもよろしくお願いします。それにしてもdbadminさんはユーモアを持つつ、世の中の大切な部分をしっかりつかまえてもいらっしゃって素晴らしい。一ファンとしてこれからも楽しみにしています!!!

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