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Shota Maehara's Blog

生と死を見つめて―写真家・星野道夫

Posted by Shota Maehara : 1月 14, 2008

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日本の写真家の星野道夫はライフワークとしてアラスカの自然をフィルムに収める活動を行なっていた。彼独自の眼差しから眺められたアラスカの自然と動物の姿は、一篇の「詩」(ポエム)のように見るものに語りかけてきた。

だが1996年に星野はテレビ・クルーとの取材の最中にそのアラスカでヒグマに襲われて命を落としてしまう。それは全く不意の出来事であった。いや、アラスカの自然や人々の生活の奥深くに入り込んで内側から対象を捉えようとしたがゆえの事故だった。

では、星野がそこまでフィルムに納めようと魅せられたものは一体何だったのだろうか。これは私の中で小さなトゲのように刺さったままであった。

しかし、ある日ふと目にとめた雑誌に星野の死をめぐる池澤夏樹の印象的な文章がその答えを教えてくれるかのように思えた。それは現代人が忘れかけていた「生きる」ということの意味である。

長生きした果てに大往生を遂げるだけが死ではないだろうし、それだけが人間の終り方ではない。それ以外の死が途上であり、全部失敗でも中断でもないだろうということがおぼろげながら見えてきた。長生きの果ての大往生というのは、いわば農耕的なんですよ。ストックがある世界の話です。動物の大半は老衰ではなく事故で死ぬ。事故には偶然が大きく関わる。ちょっとした時間のズレ、条件のわずかな違い、自然の気まぐれがあれば、別な結果を及ぼす。…本来人間にとって事故死というのが人生の終り方の一つの形としてあった。ところが、僕らはそれをうまいことすり抜ける方法を発明して、長生きできるようになった。あげくの果てに平均寿命なんてことを言い出すようになった。それよりも少しでも短いともったいないというような顔をする。しかし、我々は死の意味を無視することによって、生の意味も失ってしまったのではないか。それがこの生ぬるいだらしない今の生き方なのではないかと考える。畳の上の大往生でないからといって、星野の死が彼の人生全体を否定することにはならない。そんなものではない。

星野の残したメッセージとはこういうことなのかもしれない。つまり大切なのは長く生きることではなく、良く生きることだと。ここには近代化して以後、日本人が忘れかけていた生きることの強さと美しさの秘密のすべてがあるような気がしてならない。

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コメント / トラックバック4件 to “生と死を見つめて―写真家・星野道夫”

  1. 未悠 said

    自身の生きる目的を見出す事、というのは難しい。そしてまた、見出す事に成功しても十分に果たす事は難しい。そういった意味で…尊敬する生き方だなぁと感じるのは、よく笑われるのですが、お笑いの江頭2:50。そしてもう一人は、大量殺人を犯した故カールパンズラム。私も彼らのように、生きる目的を十分に果たす事が出来たらと思います。

  2.  未悠さん。コメントありがとうございます。いつもながら独特の感受性ですね。興味が尽きません。人間は悲しいかな生きる目的を必要とする生き物のようです。お金のため、恋人のため、子どものため、地位のため、名声のため、主義・信条のためなど、その種類は実にさまざまです。 特にそれが強い聖人と悪人は実は合わせ鏡のような関係にある。どちらも自分を超える絶対的な存在や論理に身を捧げていて、自分をその伝道師と見なすことに最上の喜びを見出しているからです。その意味で宗教原理主義者とテロリストとは極めて近い関係にあるのです。 では私たちが今後この不毛な希望なき世の中を渡っていくために何が必要なのでしょうか。少なくとも私は生きる希望や目的などもとめずに、今ここで、いや人生の途上でこれ以上はないというほどの美しい一篇の詩が創れたらそれで満足できる。そういう生き方はないものかと感じているのです。

  3. カノン said

    私は、とある高校に通う
    写真部副部長です。
    ちょうど、生と死についての詩を
    書いていた処でこの写真を拝見させて
    頂きました。

    私は、最近は死というものが余りにも
    遠くなってしまい
    若者が生を軽はずむ傾向にあるのを嘆いて
    いました。
    しかし、私はこの写真を見て感動しました。
    世界はここまで美しいとはーー。

    素晴らしい写真をありがとうございます。

    • akizukiseijin said

      コメントをいただきましてありがとう。写真部にいらっしゃるのですね。お話に深く同感します。このエントリーは私が大学生のときに手帳に書きつけてたものが基になっています。当時を思い出します。ありがとう。素敵な高校生活を過ごしてくださいね。また遊びに来て下さい。

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