I am the vine; you are the branches

Shota Maehara's Blog

なぜ今人は生きる希望を失い始めているのか?

Posted by Shota Maehara : 11月 24, 2007

left

“人々は生きるためにこの都会へ集まって来るらしい。しかし、僕にはむしろ、ここではみんなが死んでゆくとしか思えないのだ。”―――リルケ『マルテの手記』

バブル崩壊以降、小泉政権は一連の構造改革によって、弱者を切り捨て、強い者の力によって社会を牽引していくことを目指した。彼は改革に際して、「能力によって格差ができることは悪いことではない」と国会で答弁した。しかしここには強きを助け弱きを挫くという恐るべき含みがあることを見逃してはならない。事実、2003年に小泉首相は、財界の要望を受けて、これまで禁止されていた製造業における日雇い派遣という雇用形態を解禁する措置を採った。こうして景気はやや上向いたものの、夫婦共働き、派遣、日雇い、ネットカフェ難民、生活保護で何とか暮らしている人の数がいま確実に増えつつある。現在ネットカフェ難民の数は推定5400人。ただしここにはハンバーガーショップ等での難民の数は含まれていない。

彼らは断じて生きる意欲のないホームレスではない。ポスト終身雇用時代の産業構造に組み込まれた現代の難民なのである。

元外務省主任分析官・作家の佐藤優は今月の「SIGHT」のインタビューのなかで、こうした事態が第二段階に入りつつあることに警鐘を鳴らしている。例えば、最近ではネットカフェ難民のことを、人々が「臭い」奴らだと蔑み、劣った人間と見なすようになりつつあるという。それは一歩間違えれば民主主義から形を変えたファシズムになる恐れがある。そしてこうした人種差別まがいの扱いを放置すれば、最終的には彼らを再チャレンジの名の下に「救貧院」(強制労働)に入れることにもつながりかねないと危惧する。

かつてナチスに捕まったユダヤ人が押し込められた「絶滅収容所」には、入り口の門に、「労働は人を自由にする」という文句が掲げられていたという。しかしそれはいうまでもなく欺瞞であった。実際は、多くのユダヤ人がガス室で殺され、焼却処分されたのである。これに対していま我々はどう立ち向かっていくべきであろうか。

こうした問題の背景にあるのは、実は、産業化に伴う家族や地域社会の崩壊である。哲学者のイヴァン・イリイチも指摘するように、本来人間は自分でできるだけ自分の生活をコントロールして生きるべきである。言い換えれば、我々は、他人とお金を介したビジネスライクな付き合い以外の多様な人間関係を持っているはずなのである。例えば、映画『Always 三丁目の夕日』でノスタルジックに描かれているように、そこではコンビニ帰りの個人がただ一人で暮らしているのではなく、まず家族があり、そしてそれらが街の中で互いに助け合いながら暮らしていた。それは「互酬制」(=相互扶助)と呼ばれる関係で、たとえ金がなくとも一時的に住む所と食べ物だけは与えてもらえるセーフティネットの役割を果たす。

では一体、何がこうした関係を壊しているのだろうか。それは国家の中央集権化と民営化の同時並行現象である。それは、一言でいえば「互酬制」(=相互扶助)を、お金を介したサービスや商品交換に置き換えていく過程である。例えば、国家が担うべき教育や福祉などが完全に民営化されたらどうなるかを考えてみよう。おそらく、お金を払ってサービスを受けられない人は、それらを利用することができない。つまり日雇いの不定期雇用者となり、もし病気をしたら死ねというに等しい。ゆえに民営化とは体のいい弱者切捨て政策なのである。

本来人間や社会には、営利を求める企業によって担われてはならない生活の根幹に関わる領域というものがある。それは教育であり、医療であり、福祉である。なぜなら、企業は利益を上げていくためにそれらのサービスがいらなくなるようにではなく、むしろそれらに依存せざるをえない人々を多量に生み出さざるを得ないからである。だからこそ、私はこうした生活の根幹に関わる領域は、国家でもなく、市場でもなく、今後よりNGOやNPOなどの非営利団体の手で運営管理されていくべきだと考える。それには市民社会を支えるお金の損得を超えた「奉仕の精神」に目覚めることが必要である。われわれ市民一人一人、とりわけこの国の知識人の責任ではないだろうか。 

■関連リンク

NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい(http://www.moyai.net/) 

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中