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Shota Maehara's Blog

頭脳集団の形成

Posted by Shota Maehara : 9月 20, 2007

ドイツ参謀本部―その栄光と終焉

ドイツ参謀本部―その栄光と終焉

渡辺昇一著『ドイツ参謀本部』は、ドイツの軍事史という特異なテーマを用いて、近代に生まれた巨大組織とそれを支える頭脳集団の生成と崩壊の過程を見事に描き出している。それはまさに組織は非凡な個人に勝つために生み出された凡人の集団であるとのドラッカーの主張を裏書するかのようであり、同時にまたその崩壊の罠にも十分な目配りがなされている。

ヨーロッパに傭兵から国民皆兵時代の到来を告げたのは紛れもなくフランスの天才ナポレオンであった。しかし、その彼がモルトケ率いるドイツ参謀本部の人材育成と組織力の前にあえなく敗れていく場面は圧巻である。ナポレオンは、国民皆兵という大規模な軍隊の力に気づきながら、その力をコントロールするスタッフを持たなかった。

それに対してドイツ参謀本部は、強大な国民軍を幾つかの師団に分け、それぞれに指揮官と参謀を配し、統制と規律を組織の末端まで浸透させることに成功した。これこそが普仏戦争の勝敗を分けるカギとなったとされる。加えて第一次大戦までのドイツの強さのカギは、軍事もさることながら、鉄血宰相ビスマルクの外交手腕にもあった。自然の要害のないドイツが戦争で勝利するためには二正面での戦いを回避することが戦略上不可欠である。このことを知り抜いていたモルトケ参謀総長は、ビスマルクの巧みな外交を尊重し、利用する。この両輪があいまってこそ歴史上はじめてドイツに統一帝国を誕生させることができた。

しかし、この鉄壁に見えたドイツ参謀本部もやがてほころびを見せ始める。その最大の要因は、ビスマルク亡き後政治的リーダーが輩出しなかった一方で、政治のみならずドイツ陸軍内でも指揮官を差し置いて参謀の力が肥大化していく背景だ。このバランスの喪失は、今日でもなお組織において強いリーダーシップとスタッフ育成のバランスがいかに強い組織の要諦であるかということを示している。

そして単純であるがゆえに忘れられがちだが、軍事参謀であれ企業参謀であれ、参謀と名のつく限りは「無名性」を旨としなければならない。なぜなら注目し研究され尽くした時、参謀は参謀でなくなるからである。人間や組織にとって花盛りの季節こそ、終わりが忍び寄っているといえるのかもしれない。組織や人は成功の後でこそ自らを改革することを運命づけられているかのようである。本書はこうした歴史の教訓を印したモニュメントとしてこれからも紐解かれていくだろう。

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