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Shota Maehara's Blog

第3部 韓国における「ネティズン」の台頭

Posted by Shota Maehara : 8月 16, 2007

こうした希望を抱かせる一つの兆しがある。それは新しい盧武鉉政権を支えた「ネティズン」(ネット市民)と呼ばれる人々の台頭である。彼らは二〇代、三〇代を中心とする若い世代に属している。そしてインターネット上での言論活動・共同討議を通して、新聞などの古いメディアに独占されていた「言論の自由」を市民の手に回復しようとする。まさに新しいタイプの市民である。韓国では植民地時代以来、三大紙「朝鮮日報」、「中央日報」、「東亜日報」が古い保守政党の親日・親米・反共思想の広報機関と化していた。それが地域主義、派閥政治の温床ともなっていたのである。それゆえに、韓国の民主化は、まず彼らから「言論の自由」を勝ち取るための運動という形で先鋭化したのである。

こうして生まれた韓国のネティズンは、「オーマイニュース」や「プレシアン」などのインターネット新聞や政治批評サイトなどで市民の市民による市民のための言論活動を展開する。このネットを介した市民の政治参加の取り組みについて、玄武岩は、『韓国のデジタル・デモクラシー』の中で、いくつかの特徴を描き出している。

それは主に三つに要約できるだろう。第一に、既成組織のピラミッド型の階層構造に対して、自発的で水平的なネットワークであること。第二に、ネットのオンラインでの活動がデモや投票などのオフラインでの活動とリンクしていること。第三に、情報を独占し世論を誘導する一方向的な従来のコミュニケーションに対して、対等で双方向的な対話の場であるということ。これによって先進国でも稀に見るほどのe‐ポリティクス、e‐デモクラシーの空間が韓国に出現したのである。いまやかつての保守勢力さえもこのネット上の言論を無視しては選挙を乗り切ることはできない。

かくして韓国政治を特徴付ける地域主義と政治と言論の癒着はその権力基盤を急速に切り崩されていった。ネティズンという新しい市民の支持を受けて、盧武鉉政権はかねてから目的としていたデモクラシーの原則に則った緩やかな中央集権制を実現したかに見える。ただ、かつてのフェデラリスト以降のアメリカがそうであったように、韓国の市民社会でも「民主化以後の民主化」(崔章集)という課題がこれで完全に解決されたわけではない。

そこにはインターネットというテクノロジー自体が孕む問題もある。たとえばインターネットを介しての市民の政治参加は、一方で開かれた対話の可能性を生み出すが、他方で情報の一極集中や格差を生み出しもする。日本などではインターネットは普及しているとはいえ、韓国のようにデモクラシーや公開討論の場になっているとは言いがたい。むしろ、自分の態度決定もあいまいで、他人の意見を扱き下ろすことだけが目的の言説がまかり通っている。日本には互いの立場と立場を闘わせ、論じ合う、正しい意味での「対話」(dialogue)は今日どこにも存在していない。これは日本の市民社会にとって重大な危機である。

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コメント / トラックバック2件 to “第3部 韓国における「ネティズン」の台頭”

  1. もぐらもち said

     韓国におけるネチズンの台頭と言うことに関しては異論有りませんが、インターネットの中というものはまだまだ未熟で、真に平等で公正な世論というものを形成するに至っていません。(課題は有りすぎて、いちいち述べることはできませんが)その点を考慮する必要があるように思われます。  日本の現状について言えば、言われることもっともと思われることもありますが、30年前も同じようなことを誰かが言ったような、(進歩していないという意味ではありません。)成長はしているが完成にほど遠い。でも、これって完成するような事柄ではないですよね。切り込み口を変えて、総論より各論で具体的に迫った方が事態をとらえやすいのではないでしょうか。  門外漢が口をはさんで、申し訳ありません。

  2. 門外漢だなんて、とんでもありません。貴重な意見をありがとうございました。これらのアドバイスをいただきながら建設的に考えを進め、深めていくことができます。 「インターネットの中というものはまだまだ未熟で、真に平等で公正な世論というものを形成するに至っていません。」 「総論より各論で具体的に迫った方が事態をとらえやすいのではないでしょうか。」 これらのことはまったくおっしゃるとおり。だから今後はネット言論における秩序はいかにして形成されるかも含めて考えていきたいと思います。 またアドバイスよろしくお願いいたしますね。

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