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Shota Maehara's Blog

この政治家を見よ―マキャベリズムと権力の本質

Posted by Shota Maehara : 8月 11, 2007

1 参院選の光と影

参院選は、いうまでもなく6年に一回、政権交代を問わない選挙である。しかし、そうであるがゆえ逆に、現政権へのシビアな国民の判断がストレートに投票行動に反映されてしまう。今回の自民党の予想を上回る惨敗は、そのことを物語っている。だからこれが民主の躍進と単純には同一視できないことをまず強調したい。その上で、国民の年金・格差問題への怒りが爆発した選挙だったとまずは総括できる。しかし、小泉・安倍政権は、政策的には一貫し引き継いだものだ。つまり、市場自由化・民営化・福祉のカットである。安倍が踏み込んだのは、憲法改正・教育改革・公務員改革などでたんに保守色を強めただけだ。ではなぜ両政権の間にこれほどの違いを生んだのか。もちろん、小泉改革の負の遺産である都市の一部若者と地方農村の老人の「格差」に安部政権は苦しめられたなどがあげられるだろう。だが、ここに「リーダー」と国民の観点から違う光を当てることができる。

2 日本政治の構造

実は、小泉チルドレンの議員に象徴されるように、すでに前政権でも「ニート・フリーター」は社会問題化していた。それにもかかわらず、都市部の多くの若者は、自らの首を絞める結果につながる自由化を推し進める小泉&竹中政権を強く支持した。ここには格差社会が生み出した犠牲者たる弱者がむしろその強力な推進役を支えるというねじれた日本政治の構造があった。内田樹氏はこれを次のように表現している。「弱者は醜い」という「勝者の美意識」に大都市圏の「弱者」たちが魅了されたという倒錯のうちに私はこの時代の特異な病像を見る(「勝者の非情・弱者の瀰漫」)。

3 現代の君主

かつてマルクスは、ナポレオンの甥であること以外何のとりえもない、ナポレオン3世がいかにして権力の座につくかを分析した優れた論文『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を書いた。その中で示されたのは、本来なら自らの首を絞める結果になるにもかかわらず零細な分割地農民がかつての皇帝の甥を再び欲したということだ。マルクスは、独自の分析から階級を成していないため自らを代表する政治家を持たない分割地農民は、すべての階級を超える「王」を欲すると述べている。そしてこれこそが近代の代議制民主主義の埋めようのない穴だと。そのときマルクスはこう付け加えるのを忘れていなかっただろうか。つまり、弱者は弱者であることに耐えられない。弱者が最も憎むものは弱者であると。本質的に弱者は弱者を見たがらない。そこにどうしようもなく自分の無力感を見てしまうからだ。それゆえに、弱者が最もあこがれるものは万能の権力をもつかのように見える人物である。そうした政治家は傲慢だから独裁者なのではない。むしろ独裁者であり続けるために権力者は傲慢でなければならないのだ。片時も自分の弱みを見せることは許されない。小泉のような政治家はこのこと本能的に見抜いていた。

4 職業としての政治

安倍首相の致命的な欠点は現代日本政治のいや政治原理のこうした倒錯を見抜けなかったことだ。彼は確かに誠実な政治家だった。しかし、政治家は誠実であってはならない。政治家は偽善者でなければならないと述べたのはマキャべリである。そして大事なのは国民にはそう映らないことであると。この言葉に接するたびに、私はよく小泉批判で「彼の言っていることは矛盾している」と繰り返し非難したマスコミのことを思い出す。しかし、矛盾こそ政治の本領であると指摘した人は誰もいなかった。ただ一人マキャベリを除いては。

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コメント / トラックバック2件 to “この政治家を見よ―マキャベリズムと権力の本質”

  1. ribon5235 said

    全く小泉勝たせるなんて自らの首絞めるのにとずっと思ってきました。歯がゆいです。

  2. サイバー said

    政治の本質を垣間見たような選挙でした。なるほど政治家とはそういうものなのですね。マキャベリも読んでみたいと思います。ありがとうございました。

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